ビジネスシーンでよく使う「おかげさまで」の敬語をマスターしよう
誰もが知らず知らずのうちに口にしている敬語「おかげさまで」というフレーズ。多くの人が社会人として働くようになると、必然的に普段の会話が敬語になります。そのため先輩や上司との会話からビジネストークスキルを耳から覚えていくのではないでしょうか。しかし、言葉の意味をあまり考えずに敬語フレーズを乱用していると、相手を敬うつもりがバカにしているような発言をしてしまうという怖い落とし穴が待っています。
したがって、仕事上のお付き合いがある人との会話は、できる限り失礼がないように普段から自分の言葉遣いに敏感になっておく必要があるのです。一見、便利で簡単な敬語「おかげさまで」も使い方や仕事場での会話例を参考にして、改めて気持ちが伝わるビジネストークを目指しましょう。
ビジネスシーンで「おかげさまで」の敬語を使う状況&2つのメリット
「おかげさまで」を使うシチュエーション、それは目上の方にお礼を言ったり感謝の気持ちを伝える時ではないでしょうか。「あなたのおかげで~することができました」という気持ちを「おかげさまで」という一言に凝縮させているのです。ありがとうの気持ちを伝える際に使う敬語であると同時に、何気ない挨拶を交わす時にも「お元気そうですね」「おかげさまで」なんてやり取りを耳にしたことがあるのではないでしょうか。
挨拶時に交わされる「おかげさまで」は、「皆さんのおかげで/ありがたいことに、元気に過ごさせてもらっています」という気持ちが込められています。特に、誰かに感謝の気持ちを伝えたい時に「おかげさまで」を使うと使わないとでは、かなり相手に与える印象が大きく変わります。では、「おかげさまで」を使うことで、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット1.感謝の気持ちが2倍伝わる?!
「おかげさまで」という枕詞を使うだけで、伝えたい感謝の気持ちが2倍になって伝わります。例えば上司に仕事を助けてもらった際に、「先日はありがとうございました」だけではちょっぴり味気なく感じてしまいます。そこに「先日はご助言頂きありがとうございました。おかげさまで期日に提出することができました」と言葉を加えるだけで、言われた相手も「助けてあげて良かったな」とより実感できるのです。
メリット2.友好的な人間関係を作りやすくなる
「仕事は仕事」なんて割り切った考え方を持つクールな社会人が増える中、人間関係が円滑になるような言葉選びをする人が減少傾向にあるのも事実です。しかし、人間はいつピンチに陥ってしまうかは分かりません。仕事で大きな問題を抱えてしまった時にも、周囲の人と友好的な関係を築けていると大変な時に助けてもらうことができます。
友好的な人間関係を作る際に必要なのが、相手との距離を縮めて好感を与える言葉選び。「おかげさまで」という敬語は、そんな人と人を繋ぐ場面で大変効果的な役割をしてくれているのです。もちろん目上の人だけではなく、同僚との会話でも「この間は大変だったね!」「おかげさまで、本当に助かったよ!ありがとうな!」と言うだけで、友好的な会話が生まれることが分かるのではないでしょうか。
職場で使える敬語「おかげさまで」の正しい会話例&NGな言い回し
では、ビジネスシーンで「おかげさまで」を使った会話例を見ていきましょう。また、言い回しによっては失礼な表現になってしまうNG例も要チェックです。
職場での「おかげさまで」の会話例1
部下:課長、昨日お話されていた資料を作成致しました。
上司:田中くん、最近調子いいじゃない!どうしちゃったの?!
部下:はい、おかげさまで心を入れ替えて頑張っております。
(NG例:「はい、おかげさまで毎日クタクタですよ」)
部下と上司の会話ですが、常日頃からの上司の叱咤激励によって、最近頑張りを見せている部下の田中くんです。NG例のように、「おかげさまで」の後にネガティブな表現を持ってきてしまうと、「課長のおかげで疲れていますよ」という生意気な言い回しになってしまいます。
職場での「おかげさまで」の会話例2
自分:山田さま、本日は遠方よりご来場頂きありがとうございます。
顧客:田中くん、いつも以上に賑わっているじゃない。オープンして何年になるの?!
自分:はい、おかげさまで20周年を迎えることができました。
こちらの「おかげさま」は、顧客である山田さまはもちろん、他のお客さまや支えてくれている方たちに向けた、幅広い感謝の気持ちを表した「おかげさまで」の使い方になります。
職場での「おかげさまで」の会話例3
自分:山田さま、お久しぶりでございます。
顧客:ああ!田中さんじゃないですか。どこか雰囲気が少し変わられましたね。
自分:そうでしょうか。おかげさまで、係長に昇格することができました。山田さまに頂いたご助言に大変感謝しております。
(NG例:「おかげさまで地方に左遷になりましたよ」)
こちらも「おかげさまで」の後に、マイナスな印象の「左遷」という言葉を使っています。少々嫌味や愚痴を言っているような言い回しになるので、あくまでも「おかげさまで」の後にはプラスな内容を述べましょう。
ビジネスメールや文書上での「おかげさまで」を使うポイント
会話で頻繁に使われる「おかげさまで」ですが、ビジネスメールや手紙など、文字にして伝える際には以下のポイントに気を付けましょう。
ポイント1.「おかげさま」を文字にする場合にはフォーマルな印象を心がけて
「おかげさまで」をメールや書面上で記す際には、話し言葉ではなくきちんとした敬語表現を一緒に用いて、フォーマルな文面と印象を作りましょう。「おかげさまで皆さんに支えられて頑張っています」と伝えたい際には、「おかげさまで、皆様より温かいご愛顧を頂いております」と「皆さま」「ご愛顧」「頂いております」など感謝の気持ちが伝わる言葉のアクセサリーで、「おかげさま」をよりフォーマルに形作ります。
ポイント2.文字にする場合には「お陰様で」か「お陰さまで」
文字にする際には、全部平仮名で「おかげさまで」では、ポイント1で挙げたフォーマル感が薄くなってしまいます。だからと言って「御陰様で」のように漢字詰めにしてしまうと読みづらいので、「お陰様で」か「お陰さまで」のように、平仮名と漢字をミックスにしてバランスを取りましょう。ビジネスメールや文書を作る際には、その見やすさ&読みやすさに注意することも、社会人に問われるひとつのスキルでもあります。
敬語「おかげさまで」の類語とは?言い換え表現を学ぼう
「おかげさまで」は、言い慣れると自然と口から出てくる便利な敬語であります。正しい使い方を学んだ後には、「おかげさまで」と同じ意味を持ちながらも違う言い方をチェックしてみましょう。ボキャブラリーを増やすことで自らの表現の幅を広げ、ビジネスシーンでも周囲を惹きつける魅力的な会話ができる人になりますよ。
「おかげさまで」の言い換え表現
・「○○様にご助言を頂きましたおかげで~することができました」
・「おかげをもちまして、20周年を迎えさせて頂くことができました」
・「○○様には~して頂き大変感謝しております」
枕詞として「おかげさまで」を使わない場合、感謝している内容を詳細に述べることが同様の意味合いと気持ちが伝わる表現になります。その際には、「誰に=○○さんには」「何を=○○して頂き」「お礼=感謝しております」という3つのポイントを盛り込むことが重要です。
ビジネスシーンでは「おかげさまで」を使って心の交流を!
仕事場で交わされる会話であっても、あまりにビジネスライクになってしまうのは少々寂しい感じがします。どんな職場であってもその仕事の根本にあるのはそこに働く人たちとの人間関係であり、それは何気なく普段から交わされる会話の中で育てていくことができるのです。「おかげさまで」という一言を付け加えるだけで、シンプルな感謝の言葉も一気に友好的な響きをまといます。ぜひ、職場の人間関係を良好にして、これからの仕事に活かしていきましょう。