ビジネスでよく聞く「ご容赦ください」の意味や使い方について
社会人になると文書やメールを書く機会が増え、正しい言葉遣いをしなくてはいけない場面に遭遇します。普段使っている日本語も、正しい意味を知らないと使う相手を間違えては失礼な印象を与えてしまいます。ビジネスで文書を交わすときは、日本語の意味をきちんと知り上手く使いこなすことも、社会人としてのマナーの一つです。今回はビジネスシーンで多用される「ご容赦ください」とはどういう意味なのかについて解説していきます。
「ご容赦ください」の意味
まず、漢字の一つ一つの意味について解説していきます。
「容」とは、訓読みで容す(ゆるす)と読むことができ、「受け入れる」「聞き入れる」という意味があります。「容認」「受容」「寛容」「許容」など、いずれも許可を与えたり肯定的に相手を受け入れたりするときに使われる熟語です。
「赦」という漢字も訓読みで赦す(ゆるす)と読み、「罪を許す」という意味があります。「恩赦」「特赦」といった、刑罰の免除・軽減の際に使われることが多いので、自分がした悪いことに対し、それを責めないでほしいときに使うこともあります。
以上二つの漢字が合わさってできる熟語が「容赦」であり、「ご容赦ください」は「許してください」だけでは軽くきこえてしまうシーンで使います。畏まった表現なので、目上の人やお客さんに対して角が立たないように詫びるときに用いるのが正しい使い方です。
「ご容赦ください」の同義語
「ご容赦ください」と同義語に当たるのが以下3つです。これらと違い「ご容赦ください」は、問題の事前事後どちらにも使える言葉です。それぞれ微妙に違うニュアンスを含んでいるので、その時々のビジネスシーンに最適な言葉を選んで使いましょう。
ご理解ください
「ご理解ください」とは、相手に対してこちらの状況・立場を分かってほしい、広い心で受け止めて責めないでほしいという意味があり、すでに起きてしまったことに対して許してもらうときに使う言葉です。
ご寛恕(かんじょ)ください
「寛恕」とは失敗等を咎めずに許すという意味のある熟語で、「ご寛恕ください」は広い心を持って許してくださいという意味です。既に起きてしまったことを謝る際に使います。
ご了承ください
「ご了承ください」とは相手に分かってもらうことを強制する言葉で「許してほしい」という意味は同じですが、一方的に許しを請う言葉です。まだ始まっていない、あるいはこれから起こる事象に対して詫びるときに用い、目上の人に対して使う場合は注意が必要です。
「ご容赦ください」の正しい使い方
意味を理解したところで、実際にどのように使えるのかについて説明していきたいと思います。使う相手、シーンを想像して、正しい使い方を身に付けましょう。はじめに、「ご容赦ください」を単体で使う例文を紹介します。
「ご容赦ください」の基本的な使い方
「ご容赦ください」は、取引先やお客さんに対して連絡をするときの挨拶として使えます。
次の例文は「書類の提出期限を過ぎても連絡のない」相手に向けたメールですが、催促メールで使っている「ご容赦ください」がかかっているのは「行き違いでご提出いただいておりましたら」です。ということは「催促のメールを送りましたが、行き違いで提出済みでしたら申し訳ありません」という意味になります。文末にこの一文を付けることで提出の催促を柔らかく強要でき、なおかつ入れ違いですでに提出をした人からのクレームを回避する効果も期待できます。
自分に非があるかもしれない場合
弊社よりお送りした○○について確認いただいておりますでしょうか。すでに提出期間を過ぎておりますが、まだ提出書類を確認できていない状況でございます。大変恐れ入りますが、同封されている○○にご記入いただき、お早めにご提出いただきますようお願いいたします。
なお、行き違いでご提出いただいておりましたらご容赦ください。
次に挙げた例の場合、「突然連絡したこと」を許してもらおうと思って使っているのではなく、ご容赦くださいと書くことで「これから伝える事項は緊急で重要な内容です」というニュアンスを表現することに一役買っています。しかし連絡事項が重大な内容の時だけ使うようにしましょう。
これから書く内容を意識させる場合
お世話になっております、○○株式会社の△△です。突然ご連絡差し上げたこと、ご容赦ください。
「ご容赦ください」の丁寧な表現
それでは次に、丁寧な使い方について紹介していきます。発送が遅れたり自分が失敗したりしたことで相手に迷惑をかけてしまったときには、「お願い申し上げます」を付けることで丁寧に非礼を詫びられます。手紙やメールに良く使われる文章です。
迷惑をかけたお客さんに対して使う場合
この度は、こちらの不手際につき発送が遅れてしまいお客様に多大な迷惑をおかけしたこと、深くお詫び申し上げます。発送手順を見直し今後同じことが起きないよう細心の注意を払いますので、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
以下の場合も、「お願い申し上げます」の一言を添えることで丁寧な印象を与えます。謝罪の気持ちを強く伝えられるので、すでに起こったことに対して使うときに最適です。
希望に沿えなかったお客さんに対して使う場合
この度は、○○様のご希望に沿えられず大変申し訳ありませんでした。ご理解の上ご容赦いただきますようお願い申し上げます。
不特定多数に向けた「ご容赦ください」
次は、イベントなどにおける大人数に向けた使い方です。「駐車場が十分に確保できなかったことのお詫び」と「公共交通機関を使って来てくださいというお願い」の二つの意味を伝えます。「何卒」とは「どうか」や「どうぞ」と同じ意味で、相手に対して何かを強く願うときに使える言葉ですので、相手の取り計らいを丁寧にお願いできます。
案内メールの場合
当日は混雑が予想されますので、お車でのお越しは何卒ご容赦ください。
下の例文は何かを目当てに来てくれた人に向けて「人数分用意できなかったことのお詫び」と「これ以上販売できないということを理解してほしいというお願い」を伝えられます。接客でよく使う「ませ」は丁寧語「ます」の命令形なので、語尾に付けることで相手に敬意を表しながら命令できます。
わざわざ足を運んで来てくれた人への謝罪
本日の限定△△は終了いたしました。何卒ご容赦くださいませ。
「ご容赦ください」の使い方でありがちな失敗例
「ご容赦ください」はこちらに不手際があった際に、謝罪の意味を込めて許してもらうことを要求する言葉です。よって、謝罪の気持ちのみを表したいときに使うと誤解を招いてしまうことがあります。例文を紹介するので、使い方を間違えないよう参考にして下さい。
ここでは不具合があったことをお詫びするために「大変申し訳ありませんでした」を使うのが望ましいです。「ご容赦ください」を使うと「自分に非があるのは分かっているけれど許してね」と、謝りもせずに許しを請う失礼な印象を与えてしまいます。
商品に対する謝罪
弊社が販売する商品○○に不具合があったこと、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
次の例文では「申し訳ありません」の後に「ご容赦ください」を使っているので謝罪の気持ちは伝わりますが、反省の色が見えません。ここでは「ご容赦ください」の前に「従業員一同深く反省しております」と付け、反省をしているという気持ちを伝えることが大切です。
お客さんに対する不手際
先日はお客様に大変不快な思いをさせてしまったこと、大変申し訳ありませんでした。ご容赦いただきますようお願い申し上げます。
下の例のような使い方をすると「注文の品を発送するからこの件は水に流してくれ」という印象を与えてしまいます。ここでは、「本日発送予定ですので、ご確認いただきますようお願いいたします」が適切な表現です。
不手際への対応
先日は誤った商品を発送してしまい、大変申し訳ありませんでした。本日ご注文の品を発送予定ですので、ご容赦ください。
「ご容赦ください」を使いこなせると便利なシーン
「ご容赦ください」は非常に便利な表現で、クレームの回避にも使われます。「ご容赦ください」と類似の言葉である「ご了承ください」を使って同じ文章を比較し、その捉え方の違いを見ていきましょう。
「ご了承ください」と「ご容赦ください」の比較
- こちらの商品は手荒く扱うと一部部品が壊れることがあるので、予めご了承ください。
- こちらの商品は手荒く扱うと一部部品が壊れることがあるので、何卒ご容赦ください。
「ご了承ください」の場合、初めから分かっているのなら何か対策をしてくれればいいのではないかと思われても仕方がありません。簡単に壊れるような商品を販売しているのに購入者に、そのことを一方的に理解してもらおうとするのはクレームが発生してもおかしくありません。しかし「ご容赦ください」の場合は謝罪の気持ちも込められているので、消費者も商品を手荒く扱わないように気を付けようという、ある種覚悟をもって購入できます。
このように、二つの言葉は同じような意味ですが、言われた相手の捉え方は全く異なります。「ご容赦ください」を上手に使いこなせると、不手際があったとしても相手に不快感を与えることなく対処できます。
「ご容赦ください」で丁寧に気持ちを伝えよう
誰しも人間ですので失敗したり、予想と違うことが起こったりする場合が誰にでもあります。ミスによって得た汚名を返上するためには、まず謝罪をしなくてはいません。しかしお詫びはスピード勝負とはいえ、謝罪文に適切な日本語を選ばないと相手からの印象を更に悪くしかねません。特にメールや手紙の場合は対面での謝罪とは違い、誤解をされることが多いので使う言葉にも神経を尖らせる必要があります。
お詫びの時に多用される「ご容赦ください」は非常に便利な言葉です。この意味をきちんと習得し、上手にお詫びができる人になりましょう。謝罪の気持ちを伝えられれば、間違いや失敗の後でも巻き返しを図ることができます。