5月の時候の挨拶ってどんなものが考えられる?
皆さんは5月というとどのようなイメージを持っていますか。5月と言えば季節の上では春。つゆの前の時期に当たり、汗ばむ日もある時期ですよね。そうした空気を感じ、夏を感じ始めるのがこの時期でもあります。5月の時候のあいさつは春の季節の挨拶であり、植物の生命力を感じさせるような挨拶が一般的です。
時候の挨拶では草木の緑、香り、心地よい風などを表現すると良いでしょう。
- 晩春(ばんしゅん)
- 暮春(ぼしゅん)
- 惜春(せきしゅん)
- 軽夏(けいしょ)
- 向夏(こうしょ)
- 新緑(しんりょく)
- 立夏(りっか)
- 残春(ざんしゅん)
など季語を使った表現がよく「~の候」「~のみぎり」といった形で用いられますが、書きだしにこのように季語を使った「~の候」を入れておけば初旬・中旬・下旬などを意識しなくても大丈夫です。
しかし上旬・中旬・下旬と細かな季節の流れにそってその表現もまた変わってくるものです。これらを使い分けて5月の季節感を出した時候の挨拶にしていく場合、それぞれの時期にふさわしい表現はどのようなものがあるのか考えていきましょう。
新緑が芽吹く5月上旬の時候の挨拶
5月と言っても時期によって挨拶の文言が違います。最初に5月上旬の挨拶をご紹介します。この挨拶文を参考にして手紙を書いてみましょう。
5月上旬はどんな季節?
上旬とは1日~10日までのことを言います。5月上旬はちょうど新茶の季節です。
- 「日本各地で新茶の便りが聞かれる頃となりました。お元気でお過ごしでしょうか」
のように新茶をいれた表現や立春を1日目として88日目である「八十八夜」もこの時期なので、以下のように始めるのも季節がよくわかりいいですね。
- 「八十八夜も過ぎ、穏やかな日差しの日が続いています。」
5月初旬の挨拶は?
5月5日頃には「端午・鯉のぼり」を用いて
- 「青空に子供たちとあげた鯉のぼりたちが泳いでいます。皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか?」「端午の節句を迎え」
- 「皐月の空に響く矢車の音と子供たちの遊ぶ声」
など歳時記を取り入れて挨拶文を作るのは季節を限定するほど表してくれるものです。初旬には母の日もありますので
- 「母の日がちかづくにつれ、私の第二の母とも言える○○さんのことが思い出されます。」
- 「一輪ざしのカーネーションから娘の気持ちがあふれてきます」
と母の日にちなんだ表現もよいでしょう。
- 「藤の花が咲き誇る今日この頃」
- 「田んぼの蛙が泣きはじめる季節になりました」
などの書きだしは5月初旬をよく表している表現です。
- 「行く春を惜しむ間もなく、○○様におかれましてはますますご活躍のことと存じます。」
- 「うつりゆく春の惜しまれる今日このごろ。」
- 「散り始めたサクラの下から新緑の芽が顔をのぞかせています。」
など春が終わりをつげ木々からは新緑が芽吹き、それは勢いを増して枝を覆っていく。そんな春から初夏へと移り変わっていく季節を表現に盛り込んでいきましょう。
夏を目の前にした5月中旬の時候の挨拶
5月中旬になると夏を目前にした挨拶に変わります。では、5月中旬の挨拶はどのようなものがあるでしょうか。ここでは5月中旬の挨拶についてご紹介します。
5月中旬はどんな季節?
中旬とは11日~20日までのことを言います。5月中旬は夏を前にした一番カラッと爽やかな季節ではないでしょうか。また新緑の緑もいっそう濃く、青葉若葉がいきいきと茂り、萌出でる生命力の強さを感じる季節です。
5月中旬の挨拶は?
ビジネスの挨拶は
- 「目にも鮮やかな新緑の候。貴社の皆様におかれましては、爽やかな空の元ますますご活躍のことと存じます。」
- 「鮮やかな青葉の香がそよぐ薫風の候、○○様におかれましては日々ご多忙なことと存じます。」「五月晴れの爽やかな日が続いております。」
- 「青若葉を爽快にわたるかぜが私の頬をなでていきます」
- 「新緑のまぶしさが目にしみるこの頃」
- 「木々の緑が目にまぶしく、心若やぐ季節となりました。」
- 「青葉の香をのせて風邪が吹き渡っていきます」
など青々した木々の新緑を感じさせる文章が良いでしょう。また「ご家族で楽しいゴールデンウィークをお過ごしになったことと存じます。」のように少し違ったアプローチも面白いですね。
日差しが強くなり始める5月下旬の時候の挨拶
5月も下旬になると夏は目前ですよね。気温が上がれば夏かと勘違いするぐらいです。こうした時期の挨拶はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは5月下旬の挨拶についてご紹介します。
5月下旬はどんな季節?
下旬とは21日~31日までのことを言います。この頃になるともう夏を目前にして春は姿を消し、少し汗ばむくらいの初夏を感じる日も増えてくるでしょう。挨拶にもそのような表現をいれてあげるとよいでしょう。
5月下旬の挨拶は?
ビジネスの挨拶では
- 「強まる日差しに夏の気配を感じる薄暑の候。貴社におかれましては皆さまますますご活躍のことと存じます。」
- 「若葉そよぐ香に心身伸びやかな心地となるこの頃。ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。」
プライベートの挨拶では
- 「吹き渡る風も夏めいて来た今日この頃」
- 「夏の気配はもうすぐそこに。」
- 「はや夏を思わせる日差しの強さに汗がにじみます」
- 「汗ばむ陽気に半そでで過ごす日も増えてきました」
- 「走り梅雨にぬれたつつじがいっそう美しく色づいています。皆さまお変わりございませんか?」
など参考にして頂ければと思います。移りゆく季節を表すのに天気予報の言葉が参考になります。ぜひそのような視点で視聴してみましょう。
5月の時候の挨拶・書き出し文例
さてこれまで5月上旬・中旬・下旬と分けて時候の挨拶を説明してきました。ここでは5月の時候の挨拶をまとめてご紹介します。この挨拶の文例をビジネスや親しい人への手紙で利用してみましょう。難しいと思えた挨拶も簡単に書くことが出来ると思いますよ。
手紙の構成
手紙の構成では「時候挨拶」の後に「相手方の安否を尋ねる挨拶」が続きます。「時候の挨拶+安否の挨拶」の例文を紹介していきます。
ビジネスの場合の文例
ビジネス文書やかしこまった手紙を書く際には
- 「晩春・残春・惜春・暮春・葉桜・陽光・新緑・青葉・立夏・初夏・梅雨・向暑・軽暑」
の5月の季節の言葉を入れた
- 「~の候」「~のみぎり」「~の折」
の後に、以下のような安否の挨拶を続ければ季節感を意識した挨拶となるでしょう。
- 「皆さまにおかれましては益々ご健勝のこととお慶びもうしあげます」
- 「貴社におかれましては益々ご清祥のことと心よりお慶び申し上げます。」
- 「皆さまにはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。」
プライベートの場合の文例
プライベートの手紙であれば5月の風物詩を入れて差し出す相手への気持ちを込めた文章にしていきます。定型句はないので自由に書いてみましょう。「五月晴れ」を使った文例を紹介します。
- 「五月晴れの空に鯉のぼりが気持ちよさそうに舞い踊るこの頃、皆さまにお変わりございませんでしょうか?」
- 「五月晴れの爽やかな日々をどうぞご家族でお健やかにお過ごし下さい。」
- 「ふと見上げると、空は五月晴れ。澄み切った空気に満ちていました。」
- 「五月晴れのように皆さまのお気持ちも晴れやかでありますようお祈り申し上げます。」
よく使われる5月の言葉として「新緑」がありますのでこちらの文例も挙げておくと
- 「新緑のまぶしい季節となりました。」
- 「新緑の若葉が高く天に向かって繁っています。」
- 「新緑の青葉が繁る季節迎え、みなさまお元気にお過ごしと存じます。」
またよく使う「新緑・若葉・青葉」を使い、以下のような表現を自分の言葉で綴ってみてはいかがでしょうか。
- 「新緑の目にしみる今日この頃、いかがお過ごしですか。」
- 「若葉の萌え立つ季節となりました。皆さまにおかれましてはお変わりございませんか。」
- 「きらめく青葉が繁れる季節を迎え、みなさまなおいっそうのご活躍のことと存じます。」
5月の結びの挨拶の文例
時候の挨拶というのは冒頭に書かれるものだけではありません。手紙には結びの挨拶もあるのです。ここでは5月の結びの挨拶の文例をご紹介します。
結びの挨拶の役割
コミュニケーションである手紙。「最初の挨拶」だけでなく「結びの挨拶」も当然必要になります。誰かに合って話し、分かれる際にいきなり立ち去る人はいないですよね。
また次に合える日を約束したり、願ったり。今日会えたことへの感謝の気持ちを述べるのではないでしょうか。「結びの挨拶」は、手紙においては「要件はここまで」という合図であると同時に、相手を気遣い、相手に感謝の気持ちを伝えるための重要な要素でもあります。
目前に迫った夏を表現した結びの文例
5月という夏が近づく季節を意識すると素敵な移り変わりを表現することができますよ。以下のような文例はいかがでしょう。冒頭の挨拶文と会うような結びの文例を考えてみてください。
- 「過ごしやすい季節とはいえ、お体には十分お気をつけ下さい」
- 「春から夏への季節の変わり目、お体には十分お気をつけ下さい。」
- 「風が快い季節となりましたので、お出かけを存分に楽しんで下さい。」
- 「風かおる新緑の中、大いに英気を養いたいものです。」
- 「夏に向け、さらなるご活躍を願っております。」
- 「暑い夏に向けてさらにご飛躍なさることと存じております。」
- 「暑い季節に向かいますゆえ、無理なさらないようご自愛ください。」
- 「向暑の折から、くれぐれもご自愛ください。」
時候の挨拶に役立つ5月の行事
5月の挨拶に欠かせないのは5月の行事や自然・食材などですよね。こうしたものを知らなければそもそも挨拶文を書けません。ここでは5月に関係する言葉をご紹介します。これらの言葉をふまえて挨拶を書くようにしましょう。
5月に行われる主な行事
5月の行事といえば2日ごろの八十八夜と単語の節句・立夏、小満ですよね。八十八夜は立春から数えて八十八日目になります。春から夏に移る節目の日になっており、だんだんと温かくなっている時期でもあります。
「夏も近づく八十八夜…」という「茶摘」の歌は聞いたことがあると思います。こちらは1912年に発表された日本の童謡・唱歌です。この時期は遅霜が発生して農作物がダメになることがあるので、その注意を喚起するために作られた歌であるとも言われています。
端午の節句は5月5日だと知っていますよね。5月5日は男の子の節句で、鯉のぼりを飾っていますよね。立夏も同じ時期で5月6日頃です。春分と夏至のちょうど真ん中にあたります。新緑の季節を表してもいます。
小満はあまり聞いたことがないかもしれませんが、5月21日ごろを指します。陽気が良くなって、あらゆる生き物が成長する時期であることを小満と言います。最近では母の日やゴールデンウィークの挨拶として手紙を書くこともあるでしょう。
5月の挨拶に使える季節感のある言葉
5月と言えば五月晴れは有名ですよね。ただ本来の使い方は梅雨の晴れ間のことなので、6月に使っていたのですが、現在は5月の晴れの日にも使われます。
また五月雨という言葉も聞いたことがありますよね。五月雨は梅雨時の雨のことなのですが、こちらは6月の挨拶で使うのが一般的です。
他には薫風という言葉も知っていますよね。「風薫る五月~」という使い方の方が有名かもしれません。風が若葉の間を通って吹いてくる気持ちの良い風のことを言います。他にも5月に関係する言葉はたくさんありますので、ぜひ調べてみましょう。
時候の挨拶は5月も積極的に使っていきましょう
自分で時候の挨拶を考えるなんて難しいと思うかもしれません。手紙やメールを出す相手のことを思いながら書いてみるとその気持ちが伝わるのではないでしょうか。元気にしているかな、しばらく会っていないからまた会いたいななど、相手への思いやり愛おしさを込めた言葉は貰ったひとの心へと届きます。
その気遣いの言葉の前にぜひ季節感を取り入れて、季節にふれる手紙の美しい伝統を引き継いで見て下さい。ここに書いたいくつかの表現を参考にされるもよし、好きな本や慣用句の言葉を入れてみるもよし、自分なりの言葉で綴るのも素晴らしいですよね。
手紙を書くことが少なくなってきた昨今。是非ご自分の言葉で挨拶から始めてみて欲しいと思います。書くことは自身の気持ちもまた整理される作業です。爽やかな5月にご自身を見つめ相手も喜ぶ手紙を書いてみましょう!