二重敬語に気をつけて、すっきり知的に話しましょう
二重敬語は間違っているということは頭で理解していても、敬語表現のどの部分が二重敬語になってしまうのかは難しいものです。よく使いがちな二重敬語と、本来の正しい敬語の使い方について見て行きましょう。
尊敬を示す動詞+尊敬を示す助動詞「れる・られる」は二重敬語
もっともありがち、言ってしまいがちなのがこのパターンです。例えば「おっしゃる」という言葉は、これ一つで「言う」という言葉を尊敬の対象に向けて使った言葉です。ですが、この「おっしゃる」に尊敬の意味を示す「られる」をつけて「おっしゃられる」と話すならば、二重敬語になってしまいくどい表現になってしまうのです。
もちろん、「おっしゃられる」という言葉自体はあまりにも普通に使われるようになってしまったので、「おっしゃられる」と言ったからと言って「くどい」「非常識だ」と指摘されることはまずないと思いますが、文法的にはアウトな表現なのだということは理解しておきましょう。このパターンの二重敬語には以下のような表現があります。
「さきほど、おっしゃられたことから判断しますと・・・」
→ 「さきほど、おっしゃったことから判断しますと・・・」
「どれをご覧になられますか?」
→ 「どれをご覧になりますか?」
「社長はお帰りになられました」
→ 「社長はお帰りになりました」もしくは「社長は帰られました」
「社長がお越しになられました」
→ 「社長がお越しになりました」もしくは「社長がいらっしゃいました」
「社長が御希望になられています」
→ 「社長が希望されています」
「この話をお聞きになられましたか」
→ 「この話をお聞きになりましたか」もしくは「この話を聞かれましたか」
「枠内にお書きになられて下さい」
→ 「枠内にお書きになって下さい」もしくは「枠内にお書き下さい」
丁寧なのか不遜なのか判然としない「~させていただく」は二重敬語
丁寧なつもりで意外と不快感を与えてしまいがちなのが、この「~させていただく」という表現です。「~させる」ということで、話し手と言うよりは聞き手が命令したかのような表現になってしまいますので、「そんなこと頼んでいないのに」と相手に思わせるかもしれません。「~させていただく」ではなく「~する」「~いたします」というシンプルな表現を使用するようにしましょう。例としては、次のように言い換えることができます。
「御一緒させていただいてもよろしいでしょうか」
→ 「ご一緒してもよろしいでしょうか」
「ここに、書かせていただきます」
→ 「ここに、書きます」
「私から、始めさせていただいてもよろしいでしょうか」
→ 「私から、始めてもよろしいでしょうか」もしくは「私から、始めます」
お+名詞+いたすも二重敬語
「お伺いいたします」や「お願いいたします」も、すでに「お」をつけて敬語にしているのにもかかわらず、「いたす」という謙譲語をさらにつけているので、二重敬語になっています。文法的には問題がありますが、慣例的に使用されている表現ですので、特に注意をする必要はありませんが、できれば正しい表現にしましょう。
「明日、お伺いいたします」
→ 「明日、お伺いします」もしくは「明日、まいります」
「よろしくお願いいたします」
→ 「よろしくお願いします」
「こちらの方を、ご紹介いたします」
→ 「こちらの方を、ご紹介します」もしくは「こちらの方を、紹介いたします」
二重敬語にならない例とは
一つの文章の中に二つ以上敬語があればいつでも「二重敬語」ではありません。接続助詞の「て」で結ばれていれば、例え一つの文章に二つ以上の敬語があっても正しい敬語表現になるのです。例を、いくつか見て行きましょう。
「お話しになっていらっしゃる問題は、非常に難しいようです」
→「お話しになる」+「て」+「いらっしゃる」なので、正しい敬語表現です。
「お読みになっていらっしゃる本は、何と言う題名ですか」
→「お読みになる」+「て」+「いらっしゃる」なので、正しい敬語表現です。
このように「敬語」+「敬語」とつなげる表現を、「敬語連結」と呼び、文法的にも正しい表現として認められているのです。
目上の人には、あまり使わない方が良い表現とは
目上の人には、あまり使用が好ましくない表現もあります。いくつかの例をピックアップします。
「了解しました」
→ 「承知いたしました」「かしこまりました」
理由:「了解」という言葉自体に尊敬の意味はなく、目下のものが目上に使うのはふさわしくないと考えられています。
「ご苦労様です」
→ 「お疲れ様です」「お疲れさまでした」
理由:「御苦労さま」という言葉は、目上の者が目下のものに使う表現です。
「Aさんは、おられますか?」
→ 「Aさんは、いらっしゃいますか?」
理由:「おります」という表現は、元々謙譲語です。相手に尊敬の意味を込めるなら「いらっしゃいますか」を使用しましょう。
二重敬語を使わないように気をつけよう
敬語は、簡単なようで非常に深い言葉です。相手に不快感を与えないよう、正しい敬語をしっかり覚えて二重敬語にならないように気をつけましょう。