週休3日制のメリットとデメリット導入する企業の狙いは何だ?

週休3日制は今後の労働を考える上でひとつのキーワードですが、週休3日がどのような形で行われているのか、そして必要とされる背景について理解しておくと、仕事選びやライフスタイルを考える上で有意義です。週休3日制のメリットやデメリットについても触れていきます。

週休3日制のメリットとデメリット導入する企業の狙いは何だ?

週休3日制ってどんな制度?

最近、テレビや新聞で見かけるようになった週休3日制という文字。実際に大手企業のいくつかが導入を開始していたり、導入を検討していることから、急速に話題に上がるようになってきています(注1)。

自分のライフスタイルに合わせて労働の負荷を選択できるのであれば、それも考慮した上で働き方を決めることができます。週休3日制はまだまだ始まったばかりの制度でもあり、賛否両論入り混じる中で評価はこれからという面もありますが、社会的な背景やメリットやデメリットを理解しておくことは、仕事選びやキャリアビジョンについても新しい発想を与えてくれます。今後の働き方のひとつの形態として把握しておくべきでしょう。

週休3日制導入の社会的背景にはワークライフバランスの注目がある

現在、政府は「働き方改革」に力を入れて取り組むようになっていますが、ワークライフバランスの改善のために注目されているのが週休3日制です。

自宅で育児しながら仕事する男性

週休3日制が導入されるようになった背景としては、過労死やサービス残業などの「働きすぎ」問題への対応や、家族の介護などを理由に満足に働くことができない、もしくは逆に仕事のために介護ができないなどの問題の解決、そして休日増加による消費拡大によるデフレ脱却などを必要とする社会状況があります。

現在、いくつかの企業において週休3日制が行われていますが、実施内容については企業によって、また雇用形態や業界・業種によっても違いがあります。

例えば?

  • 総労働時間を週休3日と同レベル(週32時間程度)に調整する
  • 総労働時間(週40時間など)は変えず、稼働日の労働時間を増やして休日を増やす
  • 週休3日制度を利用するかどうかを選択させる
  • 3日目の休暇については、緊急対応のみは可能な状態で休暇を取る
  • 3日目については在宅勤務を認める

「休日」と指定している企業もあれば「休暇」としている企業もあり、対応はまちまちです。「休日」は出勤義務のない日であり、「休暇」は出勤日に休む場合として区別しますが、休暇とした場合に有給休暇扱いをするかしないかという問題もあります。

どれもメリットとデメリットがあるため、企業の事情に合わせて使い分けられている状況です。大きな問題が出たという話は今のところありませんが、まだまだ結果を判断する時期ではありません。

企業が週休3日制を導入するメリットは?

企業が週休3日制を導入するメリットはたくさんあります。次のようなものが挙げられますので、ひとつずつ見ていきましょう。

1 企業の生産性が向上する

歯車となり働く社員

週休3日になれば当然、週5日で行っていた事業活動を4日でしなければならなくなり、そのために業務の効率化が求められます。難しいと思われる状況に飛び込むことによって、業務の改善やイノベーション(技術革新)の必要性を強く実感させ、生産性の向上につなげられることが期待できます。

2 企業が人材を確保しやすくなる

人手不足と言われる中でも週休3日を導入することによって、魅力的な企業風土や労働環境を提供することができ、優秀な人材や多様な人材の確保ができる場合もあります。また、仕事をより細分化し、一人あたりの受け持ち量を減らして増員した社員に回すことができれば、企業としての総活動量には影響がない状態を作ることもできます。

3 社員のプライベートが充実することで仕事にも良い影響がある

各社員のプライベートが充実すると、その影響が仕事にも良い形で現れることが期待できます。
個人が自由に時間を使えることによって、学習に充てたり、また旅行などから何か気づきを得たりと自己啓発の種を撒く時間になり、それが平日の仕事に役立つ可能性もあるでしょう。

4 社員の家庭や社会活動に費やす時間が増えて会社に対する満足度が上がる

車椅子の老人を車に乗せる男性

社員のプライベートな時間が増えることにより、家庭における様々な問題の処理や社会活動などに充てる時間が増え、それによって社会的問題の解決が期待されます。具体的には保育・育児や介護、町内の清掃などのボランティア活動、運動による健康増進など様々なものが挙げられます。

5 社員の自分の時間が増えることで社会全体の消費が増える

なかなか個人消費が伸びない日本社会において、週休3日制はその起爆剤としても期待が持たれます。平日は仕事中心でまとまった消費活動はありませんが、余暇が増えることにより個人の消費額が増え、それが経済の活性化につながると予想されます。

企業が週休3日制を導入することで発生してしまうデメリットは?

週休3日制を導入するのが難しいのはデメリットがあるからで、これをどのように考えるかが導入においてとても大事になります。

1 仕事が回らない

会社のデスクでプリントアウトされる書類の山

最も危惧される問題のひとつが、企業として、また個人として仕事のための時間が不足し、仕事が回らない状態になってしまうことです。休日を増やそうとした結果、休日出勤や長時間労働、サービス残業をすることになるのではと危惧する声が付きません。

2 給料が下がる

週休3日制を導入することによる問題のひとつが給与の問題です。1日分の労働時間が減った場合、それに伴って給料が下がってしまうと生活に支障が出てしまう人もいます。単純には月給の2割程度が減額になる可能性が高いでしょう。

3 1日にの労働時間が長くなりゆとりがなくなる

勤務時間や仕事量の帳尻を合わせるために長時間労働になってしまうと、それだけ勤務日の生活にゆとりがなく、健康を害したり生活の質を下げる原因になる可能性があります。特に都市部では通勤に1時間以上かけるケースも多く、その場合は長時間労働が加わると1日の半分以上の時間を仕事に関することに費やすことになります。

4 連絡がつかないなどのトラブルが起こりやすくなる

取引先と休日が合わない場合には、大事なときに連絡がつかないなどのトラブルが生じることがあります。また、同じ会社でも選択制になっている場合は、休暇中の社員がいるために確認事項などがタイムリーにできないことが生じ、そのために業務が非効率になるリスクも考えられます。週休3日制によって取引先の選択等を考慮するとなると、コスト面でよりメリットがあるところが選べないなど、様々な面で非効率が生じる可能性は否めません。

週休3日制だと副業が増えることが予想される

自宅のパソコンで副業する女性

週休三日制になり給与が減少した場合、同程度の収入を何かの方法で補う必要のある人が増えるため、副業が増えることが予想されます。しかしその一方で、「せっかく得た休みを副業に使い、結局仕事をするのであれば意味がない」という意見もあります。

休暇によって得た時間を利用して自己啓発に励み、その結果何か収入を得る手段を身に着ける人が増えるということも、副業が増えると言われる理由のひとつです。副業に取り組み、一定の収入を期待できる状態にするためには事前準備と時間への投資が必要ですが、そのための時間が増えることで興味のあった人が実行に移すことは十分に考えられます。

副業は年間20万円以上の所得がある状態で副業とされますが、具体的に副業に関する定めが細かく決まっているわけではありません。本業との区別の仕方など、今後は法整備が必要になる可能性もあります。

週休3日制は本当に必要か?

忙しくてお手上げの女性社員

そもそも、週休3日制は本当に必要なのかという議論があります。

もちろん、休みが多ければさまざまなメリットが期待できるのですが、日本は国際的に見ても非常に祝日が多い国であり、ハッピーマンデー制度の導入以来、カレンダー上は3連休の日も非常に多くなっています。

しかし、休みを設定していても社会全体で休むことはできないため、実際には祝日や土日などの休日も働いている人が多いです。完全週休2日を徹底させる方が優先だという見解も少なくありません。

育児・介護休業と同じく、有給休暇の消化率もまだまだ低い状態が続いています。法律上設定されている休暇を上手く使えば週休3日に近い状況を作ることも可能である中、あえて週休3日制を導入することはありません。それよりも様々な休暇制度が使える環境づくりを進めた方が良いという意見もあります。

日本はGDPこそ世界でもまだまだ上位ですが、一人当たりの生産性についてはどんどん順位が落ちてきており、「稼ぐ力」が低下してきています。今後さらに少子高齢化の影響が強く出てくることを考えると、さらに働く時間まで減るのは国際競争力の低下の原因にもなることが予想されます。

週休3日制はまだまだこれからの制度

個人の嗜好は別として、週休3日制は制度としてはひとつの労働契約形態として今後も増加が予想されています。収入と仕事量、プライベートの時間のバランスをよく考えた上で活用できれば、生活の質を高めるために効果的な制度であることは間違いありません。

しかし、導入している企業があるとは言え、社会全体ではまだまだ議論の段階です。この制度を良いと思える人は活用したライフプランを考え、制度の利用にポジティブになれない人は週休2日を基本としたワークライフバランスを考えていくと良いでしょう。