出向の意味は?左遷・赴任・転勤・転籍・派遣との違い

出向の意味とは?よくドラマなどで目にする出向は、出世競争に敗れた銀行員が下される命令だと思います。しかし、実際にはそれだけではありません。出向の意味から出向命令が下されたときの対処法、左遷や転勤、赴任や派遣や転籍などとの違いも紹介します。

出向の意味は?左遷・赴任・転勤・転籍・派遣との違い

それって本当に出向?出向とはどんなもの?

出向という言葉は聞いたことがあると思いますが、そもそも出向というのがどのような意味を持っているのか知っていますか。
出向と左遷、赴任の違いをしっかりと答えることが出来る人は少ないと思います。このコラムでは出向とはどのようなものか、出向の意味から出向を断ることができるかまでご紹介します。

銀行員だけではない!出向命令がでる事例とは

出向先を向かう期待の新人

出向という言葉はドラマなどで聞いたことがありますよね。そのときに使われる出向という言葉の意味は出世競争に敗れたという意味ではありませんでしたか。実際には出向には別の意味もあるのです。ここでは出向が実際に使われる事例をご紹介します。

出向は出世競争で負けた証とは限らない

よくドラマなどで出てくる出向は出世競争に敗れた時に出てきます。特に銀行を舞台にしたドラマでは、出世競争に敗れた人たちが次々に出向させられている様子が描かれています。ドラマの舞台は銀行が多いですが、出向は銀行だけの話ではありません。
主に子会社や外注先など在籍する会社でない職場に移動して、そこで業務を行うのが出向です。年齢に見合ったポストを用意出来ない場合、社外に出して表面上は重要な肩書きを得ているということもあります。

ただこの場合の出向は、一度社外に出たらもう戻ってくることはありません。そのため出世はこれ以上見込めないと言われるのです。給料も下がることがあり、出世競争に敗れたことを実感してしまうようです。確かに、こうした出向は今でも存在していますが、もっと前向きな出向もあります。

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若者に良い経験になる出向もある

先ほど出向は戻らないことを前提で行われると書きましたが、最近では若いうちに社外に出して、戻ってきた時に自社の役に立ってもらうという出向もあるようです。あえて子会社に出向させることでマネジメントを学び、成長を促すやり方です。

確かに大きな会社では若者を重要なポストにつけて、仕事を覚えさせることはできません。そういう意味では子会社に出向させるのは手段として最適でしょう。そこで経験を積み、役職付きで親会社に戻ることもあります。

また、若い人の場合、出向先で人脈を得ることもできます。親会社にいるだけでは築くことができなかった多くの人脈を得ることで、親会社に戻った後に役立つことも考えられます。
ただ子会社で能力を発揮できない人はそのまま子会社に居続けることもあります。そういう意味では能力を測る意味の出向とも言えるでしょう。

出向ってどんな意味?出向先の会社にとってもメリットあり

出向先で用意されたデスク

出向の事例については先ほどご紹介しましたが、結局出向とはどのような意味があるのでしょうか。また会社にとって出向はどのような意味があるのでしょうか。出向という意味を知らなければ、今の自分の立場が出向なのかどうか分からないでしょう。ここで改めてご説明します。

出向とは元の会社に籍を残したまま他企業に従事すること

出向というのはどういう意味なのか改めて書いてみましょう。実際には、出向とは何か定めた法律はありません。その中で出向は自分の所属している企業に在籍したまま、他の企業の業務の従事することを言います。

出向元との雇用関係は維持されているのですが、出向先の指揮命令を受けて就労するのが出向です。出向とは呼ばずに社外勤務と呼ぶ企業もあるようです。こうした出向は出向元と労働契約を結んだまま行われます。
後で説明しますが転勤や派遣とはその意味が大きく違います。また、転籍出向と呼ばれる出向元との雇用関係を解消した上で、出向先と労働契約を結ぶ場合があります。

会社が出向命令を出す意図

前述した通り、会社にとっては出向には出世競争に敗れ、その処遇に困って出向させることと、若いうちに経験を積ませるための出向というのがあります。出世競争に敗れた中高年の社員は自社ではその立場に見合った仕事がなくなってしまったので、出向先で別の仕事をさせる目的があります。

これは「左遷」と言えるでしょう。それに対して若い人の出向は経験を積ませる意味があります。子会社で経営の知識を積んで、自社でその経験を生かしてもらうという意味があるようです。

出向は出向先にとってもメリットがある

働き手を確保することはどの会社でも大変です。募集のチラシを出したり、人材紹介の会社を使うなどしたりすると、それだけで費用がかかります。それでいて良い人材が確保できるかどうか分かりません。

そんな大変な状況の中で、親会社から働き手が来ればとても助かりますよね。出向元にとってもメリットがありますが、出向先にもメリットがある制度が出向です。

出向、左遷、赴任、転勤、派遣の違いを説明できますか?

出向や派遣の意味を調べるOL

出向はどういう意味なのかについてご説明しましたが、出向と似た意味の言葉に「左遷」、「赴任」、「転勤」、「派遣」という言葉もあります。これらの言葉と出向の違いは分かりますか。それともほぼ同じ意味で使っているのでしょうか。ここではそれぞれの言葉と出向の関係についてご説明します。

出向と左遷の違いは?出向は昇進のチャンスにもなる

前述したように出向には左遷の意味が含まれているものがあります。左遷とは低い地位に下がることを言います。出向そのものが左遷を意味する言葉ではありませんが、左遷させるために出向させることがあります。

ただ出向にも栄転もあるわけで、左遷との区別では容易ではありません。判断材料のひとつとしては本社に戻ってこられるかどうかになってきます。本社に戻ってこられないとしても役職が上がった場合は栄転と考えることもできます。いずれにせよ、出向=左遷ではないのは確かでしょう。

また実際には左遷ではないのに、出向を左遷だと思い込むあまり、出向先で不満ばかりを言う人もいます。自分は左遷させられたと思うあまり、今の仕事に身が入らず、前の会社と比較ばかりしてしまいます。そんな状態では出向先の社員との関係はうまくいきませんよね。出向はひとつのチャンスとして仕事に専念していく必要があるでしょう。

出向と赴任・転勤の違いは?

転勤は同じ会社内で別の場所に勤務して働くことです。赴任はその転勤先に赴くことを言います。よく単身赴任という言葉を聞くと思いますが、転勤先にひとりで行くという意味ですよね。出向は前述した通り、籍は本社にあるのですが、別会社に勤務するという意味ですので、出向と赴任・転勤は違う意味になります。
先ほど書いた左遷ですが、転勤にも左遷も栄転もあります。転勤の方が出向よりも経験する人が多いですよね。

例えば地方転勤であっても左遷の場合もあれば栄転の場合もあるのです。出向と転勤は違うのですが、出向も転勤も左遷か栄転か考えるという共通の悩みがあるのですね。

出向と派遣は使用者の権利が違う

出向の場合は出向先と労働契約を結ぶなどして、使用者としての権利・義務の一部が出向先に移ります。それに対して派遣の場合、労働契約はあくまでも派遣元のみと結んでいるため、使用者としての権利・義務は派遣元に残ります。

指揮命令権は両者とも出向先、派遣先にあるのですが、使用者としての権利・義務を出向元(派遣元)と出向先のどちらが持つかに大きな違いになります。その違いによって何が変わるかというと、派遣の場合は給与の支払いが派遣のもとから支払われるということです。そういう意味では出向と派遣は意味が違うのが分かりますよね。

出向が多い職種は?出向は断ることができるの?

社員に出向命令を言い渡す人事部

最近の出向には若者に経験を積ませるという積極的な意味も出てきましたが、まだまだマイナスのイメージが強い言葉です。できることならひとつの職場で働きたいと思うのは当然ですし、出向=左遷という意味がまだまだ強いでしょう。では出向が多い職種とはどのようなものなのでしょうか。また、出向は断ることができるのでしょうか。

出向は銀行に多い

出向が多い職種と言えば真っ先に銀行が浮かびます。これは近年のドラマの影響かもしれませんが、実際に多いようです。ただし銀行以外でも出向はあります。そういう意味では会社に勤めている以上は出向があると思っておいた方がよいかも知れませんね。

出向は断れるケースもある

出向を断ることができるかは、労働契約書(雇用契約書)や就業規則に出向に関する事項がしっかりと規定されているかどうかに関係しています。

出向に関する規定がなければ、出向が労働者にとって不利益になるのであれば拒否することができます。また、出向させることができる程度の規定でも出向は拒否できます。では、労働契約書(雇用契約書)や就業規則に出向に関する事項がしっかりと規定されていたとしたら、拒否することができないのかというとそうではありません。

その出向の命令が権利の乱用である場合は拒否することができます。実際に裁判でも権利の乱用として認定される場合があります。

転勤は拒否できる?解雇や降格の可能性・拒否できる理由

出向命令には異議申し立てができる

出向命令を受けた際に拒否することも可能です。実際にどのような手段が考えられるのかというと、会社に対して出向命令に対して異議を通知する方法があります。つまり出向命令に同意しないという意志を書面で明確に示しておくということです。出向命令に従わないという意志を示しておかないと、出向命令に同意したと思われてしまいます。また、裁判になった時のことも想定して、書面で提出しておくことも必要です。

次に労働局に紛争解決の援助の申し立てを行う方法があります。会社と話し合いをしても出向命令が取り消されない場合には、相談するのもひとつの手でしょう。労働局では、無料で相談にのってもらえますので活用してみましょう。
それでも解決に至らない場合は弁護士に相談してみましょう。弁護士と相談することでよりよい解決策が導き出せるかもしれません。また、弁護士などの法律の専門家が紛争の仲裁をする「裁判外紛争解決手続」というものもあります。

当事者だけでの話し合いではうまくいかないものも、間に誰かが入るだけで問題が解決することがあります。費用も割安ですし、裁判を行うよりも安く済みますし、出向を拒否した後も同じ会社で働きたいと考えた場合、裁判にまで発展するのは避けたいものです。こうした理由から、このような手段も考えてみても良いでしょう。

あなたの出向、それ転籍ではない?

出向先の工場で打ち合わせをする社員

出向の定義についてはよく分かったかと思うのですが、出向に関係する言葉として転籍というのがあります。転籍という言葉はあまり馴染みがないのではないでしょうか。ここでは転籍とはどのようなものなのか、また転籍と出向の違いについて説明します。

転籍とは別の企業と労働契約を結ぶこと

転籍とは現在の企業との労働契約を終了させて、新たに別の企業と労働契約を結ぶことです。ただの再就職と違うのは、元の会社の退職と新たな会社の就職が法的な関連性を持っており、それが同時に実行されることです。転籍の場合は元の会社を退職するわけですから、本人の同意が必要になります。ただし入社時に子会社などへの転籍に関して同意していた場合、改めて本人の同意を得なくても転籍させることができる場合があります。

当然ではありますが、給与は転籍先から支払われるようになりますので、給与そのものがどのようになるのかも確認すべきです。入社時から労働契約がどのようになっているのか確認しておく方が良いでしょう。転籍をさせることで親会社は人件費を払う必要がなくなりますので、人件費節約につながるというメリットが親会社にはあります。

転籍と出向の違いは労働契約継続の有無

では転籍と出向の違いは何なのでしょうか。出向は出向元との雇用関係は維持されるのですが、転籍の場合は出向元との労働契約は終了しています。出向の場合、出向先から給与をもらっているのですから、退職した際の退職金も出向元が負担すべきですが、中には出向から数年後に転籍させることが明記されている場合があります。
こうした一文が入っている場合もありますので、出向の際にはしっかりと確認しておきましょう。また、前述したとおり、出向と転籍を分けずに転籍出向、在籍出向という場合もあることは覚えておきましょう。

出向の意味は今の会社に在籍したまま、他の会社で働くこと

出向の意味はすでに述べたように、今現在所属している会社に籍を置いた状態で、他の会社の業務に従事することです。出向は自分には関係ないと思っている人もいるかもしれませんが、企業で働く以上、どんな職種でも少なからず出向の可能性はあります。ですから、もし出向命令が出た際に備えて、出向の意味をよく理解し確認すべきことなどを把握しておかなければいけません。

「出向だと思ったら転籍に同意してしまっていた」では取り返しがつかないことになってしまいます。出向命令が出た際には、よく書類を確認しましょう。また出向命令に同意できない場合は、弁護士などに相談するようにしましょう。