年俸制の仕組みについて詳しく知ろう
年俸制と聞いても、なかなか身近なものには感じられずにイメージが湧きにくいものでしょう。スポーツ選手などが最たる例ですが、実際に年俸制とはどういったものなのでしょうか。年俸制について詳しく知ることで、それをグッと身近に感じることができるようになります。
年俸制とはどういった仕組みで動いているのかについて、ニュースなどで報じられる度に気になっている人も多いでしょうが、月給とはどういった違いで計算されているのかについても気になるところです。
今回は、そういった誰もが一度は気になったことがある年俸制の仕組みについてご紹介していきます。年俸制について詳しくなることで、月給のシステムと比べてみてください。どちらが良いということは一概には言えませんが、それぞれ一長一短に自分の好みに合う部分があることは間違いないでしょう。
年俸制とは?
年俸制は、1年単位で企業と給与の総額を話し合った上でお互い合意し、それを毎年更新していくシステムです。年俸額は1年ごとに決められるため、毎年同じ額ではありません。
年俸制において取り入れられているのは、「成果主義」というシステムです。この成果主義とは、年俸制の対象者が該当する一年間でどれだけの成果を挙げられたかによって、次の年の給与の額が変わるという変則的なものです。年俸制を希望して入社する際には、何が評価されるのかをきちんと確認しておく必要があります。
年俸制は法律的には特に関与されないものなので、給与が上下されることに対しては特に違法だとされることはありません。ですから、成果主義に対する批判をすることはできないため、このやり方に納得がいかない場合は年俸制には合意できないと考えてください。
年俸制という名前と、そのイメージから、一年分の給与が一気に支払われるように考える方も多いかもしれませんが、実はそうではありません。年俸制での給与は、年に1回支払われるのではなく月に1回支払われるのです。
年俸制と月給とはどう違う?
年俸制でも月給制のように月に1回ずつ給料が支払われるのであれば、双方の違いはどこにあるのでしょうか。それは、1年間の給与の総額が確定しているかどうかというところにあります。
年俸制では、1年でいくら給与が支払われるかということが事前に確定されています。どのような働きをしても、また、しなかったとしても、絶対にこれだけの額の給与が支払われるという確実な約束を企業と従業員との間で結んでいるのが年俸制の特徴です。
一方で、月給制では1年間の給与の総額が確定されていません。途中で何かトラブルが起こった場合、もしかしたら給与が支払われなくなってしまう可能性があるのが月給制です。このトラブルというのは、業務上で何らかの過失があった場合や、企業そのものが経営不振に陥ってしまった場合など、様々な理由で賃金を払えなくなってしまった場合のことを指します。
年俸制でも月給制と同様に月々の支払いがなされますが、それは同様の意味を持っているわけではありません。あくまでも支払われているのは1年間に貰える給与全体を切り取った一部分にすぎないのだと考えてください。
年俸制と月給制は賃金の管理方法の見通しが大きく異なっています。もちろんそれぞれ全く違ったシステムのものですから、どちらがより優れているというわけではありません。自分の働き方や業務内容により適したものを選ぶべきでしょう。
年俸制のメリットは?
年俸制は成果主義であるため、自分の努力次第ではいくらでも結果を給与という目に見える形で評価してもらえます。したがって、仕事に対するモチベーションを維持することが月給制よりもしやすくなると言えるでしょう。仕事に取り組む意欲が湧いてくるということは、日々を過ごす中でとても大切なことであるということはもちろん言うまでもありません。
絶対に支払われる金額が変わらないというのも魅力の一つです。年俸制であればもらえる給与の額はあらかじめ保証されているので、そういった面での不安を抱える必要がなくなります。月給制には「絶対」という確証がありません。ですから、年俸制と比べて総収入にブレがあるのです。
先々のことを見越した計画を立てやすいのが年俸制の魅力のひとつです。何か目標や目的を見据えている場合、年俸という後ろだてがあればやりやすいという場合も多くあるでしょう。例えばローンを組んだりする時など、先を見越した大きな買い物をする時などには、年俸制が適している場合もあります。
年俸制のデメリットは?
年俸制が成果主義であるということは前述の通りですが、これは良いことばかりではありません。確かに成果を挙げれば貰える賃金は上がりますが、成果を挙げられなければ貰える賃金はどんどん減額されてしまうのです。年俸制は確実に毎年一定水準の給与が貰えるわけではありません。成果主義に賛成していて、自分がそのステージで働きたいという人以外にはおすすめできない仕組みです。
一度下がってしまった給与を再び元の位まで戻し、更にそこから上へアップさせていくというのは並大抵の努力ではかなわないことです。もちろん不可能ではありませんが、精神的な負荷の大きさを鑑みればかなりの労力が必要だと考えられます。年俸制は確かに約束された賃金の中で働くことができますが、そういったデメリットの大きさも考えられます。
成果主義であるとはいえ、その成果を相応に評価されるかどうかということを疑問視することになる可能性も避けられません。自分は成果を出しているつもりなのに、会社側がそれを評価してくれないために給与が上がらないといったケースが避けられないということです。
何を持って成果を挙げたとするかは、年俸制として契約をして入社する際に話し合っておくべきですが、それでも評価はなかなか納得できる形でなされるものではない可能性があります。そういった場合に仕事へのモチベーションを保つことが難しいと考える人も多いでしょう。
このように、成果主義となる年俸制の中で働くには、年俸の上下だけではなくメンタルダメージとの闘いという問題もつきまとってきます。単に貰える給与が確定しているから、というだけの理由から選ぶことはできません。
年俸制にボーナスは出る?
年俸制で働いている人にも、もちろんボーナスは支払われます。まず、均等に12ケ月分に分割されて支払われる方法です。これは毎月の給与に上乗せされる形になります。こういったボーナスの支払われ方は、月給制で働いている人たちにとっては馴染みのないものでしょうから、もし月給制から年俸制の働き方に転職した場合は、初めのうちはなかなかボーナスをもらったという実感がわかないかもしれません。
次に、ボーナス払いという支払われ方です。これは、年俸額を会社規定の割り数で半分にしたもの(例えば17なら17分の2)ずつ年に2回、ボーナスの月に支給するものです。これが年に2回のボーナスなので、月給制で働く人たちにとっての年に2回のボーナスにあたるものだと言えます。
この支払われ方が一番馴染み深いものでしょう。ボーナスはひとつの区切りのようなものですから、月給で働く人たちにとっては大きな意味を持っています。年俸制は最初からどれだけの給与が払われるか決まっているわけですが、それでもボーナス月は待ち望んでしまうものでしょう。
そして、業績に応じて決められたボーナス額を、年俸額とは別立てで支給する方法があります。これは、こと年俸制で働く人たちにとっては自分たちの評価を意味する重要な指標のひとつにもなります。
年俸制に残業代は出る?
年俸制で働く人たちにも、もちろん残業代は支払われなければなりません。年俸制で働いているから、もう既に全ての賃金が定まっているからいくら働いても残業代が出されない、などといったことは決してありません。
ただし、例外があることには注意しておく必要があります。まず、年俸制として契約する際にどれだけの残業時間を契約内容に含んでいるかということです。契約内の時間なら、当然ですがいくら残業をしても残業時間にならないと判断されてしまうからです。いわゆるサービス残業にならないように、まずは契約内容の確認をしておきましょう。ただし、一定の時間を越えている場合は残業代を請求することができる場合もあります。
また、年俸制で働く管理職の人たちは残業代を請求することができません。この場合の「管理職」とは、普通の「部長」や「課長」のことを指すのではなく、「管理監督者」という特殊な管理職のことを指します。これは、特別な権限を与えられており、労働基準法によって定められている立場の人たちで、一般的な労働者とは異なる扱い方をされています(注1)。
年俸制と月給制のどちらが良いかは人それぞれ
年俸制はまだ少数派の働き方ですが、月給制とどちらが自分の働き方に合っているかについては人それぞれです。もし成果主義が自分の仕事に向いていると感じているのであれば、年俸制で働くことができる企業を探してみてください。
年俸制はメリットもデメリットも持ち合わせていますが、それは月給制も同じことです。どちらが主流になるか、あるいは半々になるのか、これから先どうなるのかは誰にもわかりません。今の時代、たまたま月給制が主流になっているだけかもしれないのです。
年俸制と月給制の良さをそれぞれ比較してみて、こういった働き方があるのだということを改めてじっくりと考える良い機会にしてみてください。働き方は常に変化し、流動していくものです。年俸制を取り入れている企業がこれからもっと増えていくことは、間違いないでしょう。
参考文献
- 注1:厚生労働省「年俸制導入時の割増賃金の取り扱いについて」