異動願いが通りやすい書き方とは
「異動願い」とは、文字どおり会社での所属部署の異動を自ら願い出ること、またその願い出る書面そのものを指します。
会社勤めをする社会人である以上、配属された部署がもともと希望していた部署ではないというのは多々起こりうる状況です。自分の思い描くキャリアビジョンに近づくために、明確な目標をもって積極的に異動を願い出ることはとても良いことです。しかしながら、そのタイミングや方法には計画性としっかりとした配慮が社会人として求められています。
社内での評価を落とさないためにも、理想的な異動のステップを踏み、異動希望がスムーズに通るよう配慮しましょう。
異動に向けて踏むべき適切なステップ
会社で働くなかで、「異動」が頭をよぎる理由は人それぞれでしょう。ポジティブな理由としては、「今の仕事よりもやってみたい仕事が他部署にあるため」「自分の専門性をより生かすことのできる部署があるから」などが考えられます。
一方、ネガティブな理由としては、「所属部署内の人間関係がうまくいかず、これ以上は耐えられない」といったものも当然あるでしょう。また、特に女性においては、出産・育児・親の介護などのライフスタイルの変化から異動を希望する方も少なくありません。
いずれにしても、思いつきで異動を願い出るべきではなく、責任ある社会人として踏むべきステップを押さえておくべきです。
1 異動が適切な選択であるかについて熟慮する
まず大前提として、会社は人材を戦略的かつ計画的に採用して各部署に配置しています。会社全体を見渡し、最も利益を生み出すことのできる体制を作っているので、社員全員の希望を聞いてその通りに配属することができないのは、誰にでも容易に理解できることでしょう。
そのうえで、なぜ自分が異動したいのか、異動を希望する理由を頭の中で整理します。キャリアビジョンを叶えたり、状況を変えたりするためには、部署の異動しか方法がないのかを熟慮し、やはり「異動」という結論に行き着いたら次のステップに進みましょう。
2 異動を願い出る気持ちが固まったら直属の上司に相談する
部署の異動を願い出る気持ちが固まったら、直属の上司に相談する必要があります。当然ながら、メールで伝えられることではなく、上司の都合のいい時間を聞き出し、直接話し合いをする場を設けてもらうべきです。
なお、直属の上司に相談する前に、仲の良い同僚や先輩社員に意見を聞きたくなることもあるでしょう。しかしながら、いくら信頼のおける人であっても、どのようなかたちで話の内容が漏れてしまうかはわかりません。万が一、自分から上司に正式に相談する前に話が漏れてしまうと、心証が悪くなり、最悪の場合通る希望も通らなくなる恐れがあります。慎重を期して、社内の人に相談するのは避けるのがベターです。
異動という会社員生活の重要な局面において、独断で動かずいろいろな人の意見を聞くのはとてもよいことなので、家族や社外の信頼できる人に相談するようにしましょう。
3 「異動願い」を提出する
直属の上司との話し合いが終わり、異動を願い出ることの了承が得られたら、書面で「異動願い」を提出することが定められている会社が多いです。会社の規定に沿って、上司や人事部に相談のうえ必要な書類を用意しましょう。
異動願いの書き方と文例
会社によっては、異動願いの書式や提出先が決まっていることがあります。提出後に「規定に沿っていないため作成し直し」といった事態に陥ることがないよう、あらかじめ上司や人事部に確認をとっておきましょう。
異動願いの書き方
- 右上部に提出日「平成〇年〇月〇日」
- 左に提出先「○○○○殿」
- 右に部署と氏名、氏名の右に捺印
- 中央部に「異動願」、その下に異動を希望する旨「この度、以下の理由にて部署の異動を希望しております。何卒ご配慮いただきたくお願い申し上げます。」
- 現在の部署名
- 現在の部署の所属期間「〇年〇月~現在に至る(▲年▲ヵ月)」
- 希望する異動先の部署名
- 希望する異動時期「〇月定期人事異動」
- 異動を希望する理由
最も重要なのは異動の希望理由の欄です。例えば、実際は現在の所属部署の人間関係が最も大きな理由であったとしても、ネガティブな内容を書くことは避けるべきです。希望する配属先で自分はどのような貢献ができると考えているのか、わかりやすく記しましょう。
異動願いの希望理由文例
私は入社以来▲年間、営業部にて〇〇の販路拡大のため業務に邁進してまいりました。現場でクライアントと直接対話し、〇〇に関する意見や希望をうかがう経験を積む中で、データに基づいて販売戦略を練る業務への意欲が強くなった次第です。
市場調査については大学で専攻していたこともあり、入社後も営業部に所属しながら独自に学びつづけてまいりました。営業現場での経験をマーケティング部で生かしたいと考え、このたび異動を希望いたしました。
異動を願い出るタイミングは人事異動の時期がベスト
繁忙期がある業種や職種は多いものですが、そのような時期に上司に相談するのは、まず避けたほうが無難です。定期的に個人面談を実施している場合は、その機会に話をするのもよいでしょう。
実際に異動する時期については会社から打診があることが多いですが、定期的な人事異動の時期を希望するのがスムーズでしょう。その人事異動時期から逆算して、会社全体の人事決定に間に合うように直属の上司に相談をもちかけましょう。
また、自身が異動した場合、現在の所属部署が欠員を補充するのに十分な時間が確保されるよう、配慮することも大切です。
もちろん、親の介護などのやむを得ない理由がある場合はこの限りではありません。しかしながら、自身にとってやむを得ない理由であっても、会社側からすると自己都合であることに変わりはありません。その自覚をもって、会社が納得できるように希望を伝えましょう。
もしも異動の希望が通らなくても頑張って働く
「適切なステップを踏んで進めたものの、結局異動の希望が通らなかった」という事態も、もちろんあり得ます。がっかりしてしまうのは仕方がないですが、ここで落ち込む必要は全くありません。上司からも会社の意図は説明されるでしょうが、異動が認められない理由としては、今いる部署においてあなた自身が必要不可欠な存在であるということが多々あります。これまでの自身のパフォーマンスが評価されており、今後も求められていると理解しましょう。
異動願いを一度提出したことで、あなた自身のキャリアビジョンは会社に伝わっています。一層業務に邁進する姿勢を見せることで、来るべきタイミングで、部署異動の打診が会社側からくることも十分考えられます。
異動が決定したら、社内でのふるまいに気をつけよう
無事に異動願いが受理され、希望する部署への異動が決定したら、とても晴れやかな気持ちになることでしょう。ここで気を抜いてはいけません。新しいキャリアへのスタートラインに立ち、これまで以上に自身のふるまいを会社に見られていることを自覚して行動しましょう。
元の部署では確実に引き継ぎをする
新しい部署に異動が決まったからといって、異動するまでの期間の現在の部署での業務の手を抜いてはいけません。通常の業務に加えて、次の担当者への引継ぎもこなす必要があります。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、元の部署の同僚が困ることがないよう、担当業務を整理して情報共有をしましょう。
新しく配属された部署では早く戦力になれるように努める
新入社員ではないので、新しい部署で手取り足取り仕事を教えてもらえるとは考えないほうが無難です。要点をまとめて自分から質問をして仕事を覚え、一日も早く戦力となれるように努めましょう。
また、元の部署で積んだ経験を新しい部署にもたらして貢献することも求められます。これまでに構築した人間関係は貴重な宝となりますので、元の部署と新しい部署の橋渡し役として活躍できるような人材を目指しましょう。
異動願いをステップに希望のキャリアビジョンに近づこう
現在の業務内容に不満が出てきたり、新しい業務への興味が出てきたりしたときに、まず「転職」を考える人は多いです。そのような中で、会社内で活躍できるポジションを探し、異動することでキャリアチェンジやキャリアアップを図る意欲をもった社員は、会社にとっても有難い存在と言っても過言ではありません。必要以上に遠慮や恐縮することなく、前向きに上司と相談して動くとよいでしょう。
異動の希望を通してもらったからには、今まで以上に会社に貢献する働きを発揮しなければなりません。人生設計やキャリアビジョンを叶えながら、最大限のパフォーマンスを発揮できると、会社もあなたもwin-winの関係となるでしょう。