仕事は段取りで決まる
ビジネスの生産性を高めたいと思ってビジネス本などで勉強していると、「仕事の8割は段取りで決まる」など、段取りの重要性を強調するような情報が多く見られます。
実際、段取りをしっかりすることによって仕事はずっとしやすくなり、また抜け漏れも減り、何より時間の無駄がなくなります。
特別段取りに時間を割かないように見えている人は、経験上、段取りをすることが自然に身に着いている人であり、実際にはひとつひとつの仕事について段取りが頭の中で行われているのです。最初からその段階を目指すのは難しいので、まずは地道に仕事での段取りの方法を基礎から身に着けていきましょう。
仕事における「段取り」とは何を指すのか
段取りというのは「ある目的や目標に向けた行動計画」のことを言います。段取りと言うと「何かの準備をすること」のように思われがちですが、物品を揃えるだけでなく、実際にどのような行動をするのかを綿密に準備することを言います。
例えば旅行に行くなら、目的地を決め、そのための交通手段を決定し、旅行先でどこを巡り、何を買い、どこに泊まり、どのくらいの費用が必要なのかなど、事前に諸々のことをしっかり考えて、旅行先で考えたり迷ったりせず楽しむことに集中できるようにすることが段取りです。
仕事で段取り上手になることによる効果
段取り上手になると、多くのメリットが生まれます。仕事の段取り上手になることによる効果は、思いのほか高いことが分かります。
1 仕事が早くなる
段取りが上手にできれば、仕事にとりかかった際に考えたり立ち止まったりすることが少なくなりますので、仕事をこなすスピードも速くなります。
2 仕事の進捗状況がわかるようになる
段取りができることは、仕事の全体像が見えることでもあります。その仕事について全体のどこまで進んでいるかがわかりやすく、モチベーションも管理しやすくなります。
3 仕事のミスが減る
段取りが上手くできていると、仕事における抜け漏れが少なくなってイージーミスが減るようになります。そのため、手戻りのない確実な仕事ができ、効率が良くなります。
4 仕事で信頼を得られる
段取り上手のビジネスパーソンは能力の高さによらず、信頼を得られるようになります。仕事ぶりが計算できることや、しっかりと仕事について考えていることがわかるからです。
仕事の段取りを良くする8つのポイント
仕事の段取りを上手くできるようになると、いいことがたくさんあることが分かりました。仕事の段取りを良くするためのポイントを8つ挙げて紹介します。
1 仕事をする目的や目標を明確にしておく
まず、仕事の目的・目標を明確にすることから段取りは始まります。
目的は業務ごとの「最終的に達成するべき成果」であり、目標は「目的達成までの中間地点」を指します。これをしっかりしておくことで、業務の進捗管理もしやすく、また無駄な仕事を減らすことができます。
2 仕事の目的や目標の納期を決める
目標は設定しただけでは意味がありません。その設定した目標に納期を入れることによって、達成するための具体的なスピードが見えるようになり、スピードを意識したスケジューリングをすることができるようになります。
納期設定については発注元が依頼した納期がありますが、その納期よりは余裕を持たせることが大切です。他の急な仕事が入る可能性がありますし、全体の進捗の遅れや思わぬミスが生じることもあるからです。いずれにせよ、この納期設定で仕事のスピードは決まるのでしっかり管理しましょう。
3 目標達成に必要なアクションを考える
目的の達成のための目標ですが、その目標の達成のためにはひとつひとつのアクションが必要となります。アクションは具体的に設定するものですが、細かく定めすぎると段取りの時間が多くかかりすぎてしまいます。
自分が行動できれば充分ですので、そのレベルを目途に必要なアクションを考えていきましょう。記録として残しておくと、次に似たような業務をする際に使いまわすことができて便利です。
4 するべき仕事のアクションをどこでどのように行うか検討する
目標達成のための行動は、いつでもどこでもできるのではありません。いつ、どこでそのアクションを行うことができるのかを考えてこそ現実感のある計画になります。
リストアップしたアクションを、適切なタイミングと場所で行うことができるようにスケジューラーに組み込んでいきましょう。複数の業務を抱えていると、思ったよりも時間を効率よく使えないということもあります。できるだけ納期を変えることなく、時間内にアクションを詰め込むことができないか色々と検討してみてください。
また、その過程で優先順位をつけていきましょう。全ての仕事が充分にできれば良いのですが、時間が不足している時はより優先度の高いもの、また他の業務への影響の大きなものから優先的に処理して、全体の業務がスムーズに流れていくようにします。
5 仕事の難しい部分を事前に考え周囲に協力を仰ぐ
例え時間的に厳しいと感じても、簡単に納期を変えてはいけません。「時間が厳しいことがわかった」ことが段取りによる収穫ですから、これをしっかり活用しましょう。
時間が厳しいなら、誰かに協力してもらうことを考えてみましょう。よりある業務にスキルを発揮する同僚がいるかもしれませんし、上司に相談することで受け持ちからなくせる仕事もあるかもしれません。事前に相談しておくことで、周囲の協力も得やすくなります。
6 仕事のスケジュールには余裕を持たせておく
予定を組む際によくある失敗が「スケジュールをタイトにしすぎて上手く行かない」というものです。
ビジネスの世界は日々変化し、新しい仕事が生まれています。いつ雑用が増えたり、同僚のヘルプを頼まれたり、新規案件を担当することになるかわかりません。そのため、手持ちの仕事については余裕を持たせてスケジューリングしておき、また日々の時間にも少し余裕を作っておくべきです。
その上で、新しい仕事やヘルプについては「請け負うべきか否か」をきちんと判断しましょう。無計画に引き受けることは、自分や関係者にとって良いことではありません。
7 仕事の段取りは毎日見直す
一度決めた段取りだとしても、それにこだわらず毎日見直すようにしてください。毎日、進捗をしっかりと管理して、必要な仕事を補填したり、また時間を調整したりしましょう。新規に入ってきた仕事などがあれば、追加した段取りに修正する必要があります。
段取りは基本的に毎日見直すもので、それなりに時間を取りますが、最初にしっかり段取りができていれば修正分だけならさほど時間はかかりません。一日の始めや営業の隙間時間などは段取りを見直すベストタイミングです。
8 仕事の修正点を探して次回以降につなげる
ひとつの目的を達成し、業務が終了しても終わりではありません。手元には段取りと、それを行った結果が残ります。それをしっかりと見直して修正点があれば修正し、次回以降の業務のための参考資料として残しておきましょう。
同様の仕事があればそれを元にして効率的に段取りができるようになりますし、もし後輩がいれば教育のための資料にもなります。
仕事の段取り上手はツールを上手に使う
仕事での段取りが上手な人はツールを上手に使っているものです。何となく知っているだけでなく、ツールを使いこなせるレベルを目指しましょう。
TODOリスト
行うべきアクションが明確に決まり、それをリストにまとめたのがTODOリストです。
毎日TODOリストは更新されていくべきもので、これを作るだけでなくこまめに確認し、仕事の進捗をチェックすることが大切です。できれば、納期のアラート機能などがあるとさらに良いでしょう。
ガントチャート
横軸に日付、縦軸に目的や目標とタスクを書いて、そのタスクを進めるべき期間を矢印などでグラフィカルに示した表のことをガントチャートと言います。
ガントチャートがあると、仕事の順番や、それぞれの仕事の前提になる仕事が一目瞭然でわかるため、仕事全体がよくわかります。また、ボトルネックがわかりやすいため、進捗のために影響の大きい仕事も明快です。
スケジューラー
スケジュールを管理するだけでなく、TODOリストと連携したスケジューラーは予定と仕事の進捗管理が両方できてとても便利です。
最近のスケジューラーはメールやSNSの本文からすぐにコピーできるようになっていたりと記入の手間ができるだけ省けるようになっています。「スケジュールを入れるためのスケジューリングが必要」なところからはだいぶ変わっていますので、上手に使いこなしましょう。
また、グループウェアなどではチームメンバーのスケジューリングが共有されていることも少なくありません。メンバーのスケジュールを知っていると、相談や会議などが行いやすくなります。
CRM
CRMは「顧客管理システム」と呼ばれることが多いですが、顧客との接触履歴をまとめたデータベースのことを言います。
CRMには顧客とどのような案件でどのような内容の対話をしたか、売上の数値情報など、過去のデータがまとまっています。これを活用することで、段取り上のアクションを考える上で参考にすることができます。最近はスケジューラーやTODOリストと連携できるものも増えてきています。
段取り上手になって仕事がデキる人になろう
段取りができるようになるだけで、仕事の効率は段違いに変わってきますし、仕事に対して感じる負担感もまるで違うものです。
段取りが習慣になっている人はやはり仕事がデキる人と見られるようになります。「頑張っているつもりだけど思ったほど仕事が進まない」と感じている人は、仕事そのものを意識するのでなく、ぜひ段取りを意識してみてください。