「説得力のある話し方」はどうすれば身に着く?
ビジネスシーンでは相手の心を動かすことが必要となることがあります。その時に問われるのが説得力です。
全く同じ仕事の能力があったとしても、この説得力の有無で仕事の成果は大きく変わってきます。ある人は自分の望む状況を作って能力を十分に発揮し、ある人は自分が望まない状況で力を発揮できないままに終わってしまいます。
説得力がないばかりに悔しい思いをしてしまう人は、どのようにしたら説得力のある話し方を身に着けることができるのか考えてみましょう。
そもそも「説得力」とは?
説得力とは会話でのやりとりや文章の中で、相手を納得させるための力のことを言います。ここで気を付けたいのが、説得というのは「受け入れさせる」「納得させる」ということであって、相手を強制的に動かすことではないということです。説得は、相手が事情などを受け入れて、自発的にこちらの臨む方向に動いてくれることを言います。
説得力のある話し方を身に着けたい人が目指すべき方向としては、自分が動かしたい方向を押し付けるのではなく、相手に伝えるべきことを伝え、相手が自ら動くようにすることです。
「説得力のある話し方」をする人の特徴4つ
説得力は技術だけではなく、その人の話し方や人柄からもにじみ出てくるものです。
1 話の内容が常識的である
説得力のある人は話の内容がしっかりしていて常識的です。いくら主張が正しく聞こえるとしても、あまりにも奇抜な話が続くと論理的にはつながっていても現実感がなく、なかなか肯定しにくくなってしまいます。誰が聞いても納得できるしっかりした内容を話し、考えることができる人が説得力のある人です。
2 要点を絞って話をしている
説得力のある人は話がコンパクトにまとまっています。余計な表現や説明が少ないため、周囲もその話を理解しやすくなり、話を受け入れやすくなります。説得のために多くの論拠を並べ立てると、聞いている側にとっては負担でしかありません。要点だけに絞って話をすることで、説得力を感じさせることができるようになります。追加説明が増えすぎないように注意しましょう。
3 話す相手にしっかり目線を合わせている
説得力がある人は、目線を周囲に合わせて話します。一人が相手でも、大勢が相手でも同じです。目線がせわしなく動いていると、集中できていない、落ち着きのない印象を与えてしまい、説得の内容に自信がなかったり裏があるように思われてしまいます。顔を上げて目線を合わせて話をすることで、自信があるように見えますし、相手の反応を伺いながら話をすることもできるので、説得力が高まるのです。
4 声が大きい
説得力がある人は声が大きいです。声が大きいだけでも正しく、自信のあるように聞こえます。声が小さければ相手に伝わらず、自信がないように聞こえます。学校で何か発表をすることになった時、自信がない時ほど小さい声になったことは誰しもあるでしょう。
逆に自信がある時ほど声は大きく出るものです。説得力を高めたい人は、大事なポイントでは意識して大きな声で話しましょう。また、発音が良ければなお良いです。
「説得力がない」話になってしまうダメダメ習慣
普段、自分の話の中から説得力を損ねてしまっていないかどうかも確認しておきましょう。ここを改善するだけでも説得力のある話し方に近づくことができます。
1 話がコロコロ変わる
普段から自分の主張がなく、新しい情報を入れるたびに話の内容や主張がコロコロ変わる人がいますが、これでは相手の信用を得ることができません。説得は相手がまず受け入れることが必要になりますから、相手との信頼関係が大事です。信頼関係を作るためにも、一貫した主張ができるように心がけ、また主張が変わる時には丁寧な説明を心がけましょう。
2 言っていることとやっていることが一致しない
口では簡単に言えることでも、やってみると難しいことは多いものです。だからと言って、言ったことをやらないということが続くと信用を失ってしまいます。
言葉と行動が一致する人は、言った通りに物事が動くことが期待できるので説得力が出てきます。社会人は自分の発言と行動に責任を持つべきですので、普段から言行一致を目指して業務に励みましょう。
3 声が小さい・聞き取りにくい
相手を説得するには自信のある態度で話をすることが大切ですが、声が小さい場合はその自信が不足しているように聞こえてしまいます。もともとの声の大きさは個人差がありますが、少なくとも大事な話をするときには、普段よりは声を張って話す必要があります。
また、聞き取りにくい発音や早口なども注意が必要です。また、あまりに高音になると人は不快感を感じやすく、低音になると落ち着いて聞けますので、大事な部分ほどゆっくり低い声で話しましょう。
4 説得するように相手を言いくるめる
説得するために相手を言いくるめようとする人、論破しようとする人がいます。これは、自分の主張の正当性を説明するよりも、相手の主張の欠点を指摘したり、相手の弱みにつけこんだ話をすることによって物事を動かそうとすることです。人間は感情がありますから、一度言いくるめられてしまうと、その後は心理的に警戒するようになり正当なことも受け入れにくくなります。
「説得力のある話し方」になるポイント6つ
説得力というと自分の主張が通ることだと誤解しやすいですが、強く主張をするだけでは説得力はありません。街宣活動やデモをしている団体のように主張を強く繰り返すだけでは、反発を招く可能性もあります。説得力を高めるには次のようなポイントを意識しましょう。
1 具体的に状況をイメージさせる話し方をする
自分の主張を相手に受け入れてもらうためには、相手に同じ状況やイメージを共有してもらう必要があります。そこから生まれる主張だからこそ、相手に共感や納得感を与えることができます。
そのためには、ピクチャートークという技術を活用しましょう。ピクチャートークとは、相手の頭の中で具体的にイメージが描けるように話す手法です。色や手触りなど五感に訴えたり、また小説のように描写をして具体的にイメージさせます。
残業をなくしたいという話(失敗例)
毎日みんな遅くまで残って仕事をしていますが、体を壊している人も多いです。残業をなくすために業務改善を行いましょう。
残業をなくしたいという話(ピクチャートーク)
毎日、みんな遅くまで残って仕事をしています。窓の外の空は赤くなり、どんどん暗くなっていきますが、みんな目をこすりながらコーヒーを片手に仕事をしています。目にクマができている人や、明らかに顔色の悪い人も出てきており、不健康を自慢し合うようになっています。この状況が続いては事業そのものが回りませんので、残業をなくすために業務改善を行いましょう。
2 結論を先に述べる
説得力のある人は結論を先にして話す傾向があります。
先に結論を話すと、何も伝わらないのではないかと思いますが、結論を先に示すことで話の方向性が見えやすくなります。話が理解できないために受け入れられないことは多いので、結論を先にして話す習慣をつけると良いでしょう。プレゼンなどで話が長くなりやすい人に特に有効です。
3 喩えを使って話す
喩えを上手に使って話すことも、説得力を出すためのコツです。難しい話や言いにくい話をするときなど、うまく比喩を使って話すことができると相手に伝わりやすくなります。相手に伝わりやすい表現を考えましょう。
社内の風通しが悪い
なかなか上に対して下からの意見が通っていないように感じます。まるで江戸時代のようです。
4 論理的に話す
説得する側は相手に動いてほしいと願うためついつい感情的になってしまいがちです。強い感情を向けると相手も反発してしまいやすいので、できるだけそういった説得の仕方は避けた方がよいでしょう。
相手が自然に受け入れられるように、理解させるように論理的に話すことを心がけます。主張だけでなく、その根拠や前提となる状況をしっかり伝えるようにしましょう。
5 数字を使う
説得力のある話というのは、往々にして数字が入っていることが多いです。数字は理解を助けるだけでなく、物事の大きさや動きを具体的にイメージさせる力を持っています。
例えば、「売上が前月よりもずっと上がりました。画期的です!」ではどのくらいのものかわかりませんが、「売上が前月比で250%になりました。画期的です!」となると本当に画期的だと共感できます。
数字を入れることは比較的簡単ですので、即効性のあるテクニックとして覚えておくと良いでしょう。
6 「部長もOKだよ」と権威を利用する
自分の主張だけではなかなか相手が動かないのではと感じる時や、もう少し強い論拠が欲しいと思うときは他者の権威の力を利用するとよいでしょう。
最もありがちな表現としては、社内なら「部長もOK出してたよ」のようなものです。上司など権威ある他の人も考えが同じだということを伝えることで、相手も「それなら」と考えやすくなります。
権威のある人の言葉を引用するというのも、自分の話に耳を傾けてもらう上で有効です。知識のある人は説得力のある人が多いですが、それは偉人や有名人などの言葉から上手に言葉を引き出してくるからです。
自分の話し方スタイルを見直して「説得力のある話し方」を目指そう
説得力は様々な要素が関係して現れてくる力ですが、説得力を高めるためには、説得の際の話し方や振る舞いはもちろん、普段から自分の立ち位置や態度なども関係しています。
前提条件となる自分の位置や態度などをよく考えた上で、自分の説得のスタイルを見直してみることが大切です。言いくるめたり強制になっていたり、相手に不快感を与えたり信頼感を損ねるような説得の仕方をしているのなら今すぐ改め、ひとつひとつ改善していくことで説得力のある話し方が身に着いていきます。