接客業の基本を知ることはメリットが多い
様々なお店において行われる接客ですが、スタッフの接客対応によってお客様の印象も店舗の売り上げも大きく変わってきます。
フレンドリーに対応するなど、個性ある対応をするお店も増えていますが、そういったお店であっても接客業の基本はしっかり守っているものです。
接客の基本を知っておくことは、接客業に従事する人はもちろん、接客に触れる機会のあるすべての人にとってメリットがあります。お店や従業員のレベルを推し量ることで、継続してそのお店に通うべきかの判断材料にもできるからです。
より良い接客を考えるために接客業の基本について確認しましょう。
接客を行う目的
「接客」は「客に接する」と書き、お客様への接触、コミュニケーションを意味します。お客様に対して接触するべき理由は様々にありますが、最大の目的は商品やサービスの販売と、お客様が購入に関する意思決定をすることをサポートすることにあります。
しかし、最近は接客を行う理由には販売だけではなく、ニーズの発掘やお客様との関係づくりを考えて接客をしている店舗も増えてきています。
逆に、目的なく接客をされるのは、お客様にとって監視されているようでストレスでしかありません。接客を行うなら、目的をもって接するべきであり、目的によって接し方も違ってくるはずです。
まず接客業の基本である身だしなみをチェックしよう
接客業で良い印象を与えるためには身だしなみをしっかり整える必要があります。身だしなみを考える上でのポイントを確認しましょう。
清潔感を大事にする
汚いお店には誰も入りたくないものですが、お店の清潔感だけでなく、従業員の清潔感も大切なポイントになります。男性であれば髪型やヒゲ、服装など、女性であれば髪型やアクセサリー、メイク、服装などに注意する必要があります。
基本的にはしっかり顔が見えること、そして髪型や爪は綺麗に整えることです。香水なども強い香りのものは避けましょう。靴など足元は機能性も大事ですが、できるだけ清潔さを保ちましょう。急な雨の日のために備えて替えがあると便利です。
服装はTPOに合わせる
制服やユニフォームのあるお店もあれば自由なお店もありますが、どちらの場合でも身だしなみはTPOに合わせて整える必要があります。飲食業なら髪が落ちたり料理にかからないように束ねたり、帽子をかぶるなど配慮したり、アパレルであれば販売している服からコーディネートして着ることで自ら看板になります。美容師であればボサボサ頭ではなく技術力やセンスを感じさせるように整えることが大切です。
接客業の基本ルール5つ
接客で大切な身だしなみを整えたら、接客をする上で必ず押さえておくべき接客業の基本を覚えましょう。
1 接客スタッフであることの心構えを持つ
スタッフがいるのは、店舗を維持し、お客様に対して販売行為を行うためです。しかし、中にはお客様を無視して私語で盛り上がったり、スタッフか他のお客様か見分けがつかないような人もいます。従業員としては、ある時は空気のように存在感が薄く、それでいて必要な時にはスタッフとしての存在感が求められます。中途半端にならないように常に気を付けましょう。
2 接客は笑顔で愛想良くが基本
接客の印象を決める大きな要素が「笑顔」です。どんなに知識があり、仕事が丁寧だとしても、無表情で接客をされると感じが悪く感じてしまいます。笑顔で愛想良く接客をされると、多少手際が悪くても許せたりするものです。
接客は相手にとって負担がないことが大事ですので、表情や声のトーンなどに気を付けて、愛想よく接客しましょう。もちろん、クレームなどに対応する際はこの限りではありません。
3 お客様には挨拶をしっかりとする
「いらっしゃいませ」などの挨拶は、お客様を迎える上でも重要ですし、店員であることをハッキリと示すためにも有効です。挨拶というのは負担感なく、それでいて会話のキッカケになるとても大事な行為です。声掛けのタイミングで悩む人も多いですが、基本的には適度に店舗を巡回しながらきちんと挨拶をしていけば、必要な人はそのタイミングで声をかけてくれるのです。お店のスタイルにもよりますが、作業中でも手を止めて挨拶するのが基本です。わざわざ足を止めるとお客様も恐縮しますので、必要なら移動はしつつ、目を合わせて挨拶すると良いでしょう。
4 言葉遣いはお店の方針を基本に敬語で話す
お客様に対する言葉遣いは、基本はビジネスマナーにのっとって敬語を使います。お客様との関係によってはフレンドリーな対応を取る場合もありますが、こうした基準は個人の判断ではなくお店や会社の判断にゆだねるべきです。自分が良かれと思って行った対応により、後々クレームが入る場合もあるため注意しましょう。
言葉遣いなどもお店のカラーを決めていくものになりますので、わからない場合は先輩や上司に確認してください。ただし、「少々お待ちください」「いらっしゃいませ」「お待たせいたしました」「かしこまりました」「申し訳ございません」「恐れ入ります」「ありがとうございます」の接客7大用語についてはどんなお店でも変わりません。しっかり覚えて使いこなしましょう。
5 接客中はお客様との距離感に注意する
接客業で大事なのがお客様との物理的な距離感です。人間には「パーソナルスペース」と呼ばれる空間があります。お互いの関係によっては、パーソナルスペースに踏み入れられることに不快に感じたり怖いと感じることがあります。あまり距離感が遠すぎるのもNGですが、お客様に不用意に近づきすぎないように注意しましょう。
外見や雰囲気の良い人であれば、あえて近づいて相手に良い意味で緊張を与え、一気に心理的な距離を縮めるというテクニックもあります。
接客業でありがちなミスや失敗
接客業では、知らず知らずに行っていてお客様を不快にさせてしまうミスがあります。普段から基本的なルールを意識していないとミスが起こりやすくなるので気をつけてください。
1 仕事に追われて接客が二の次になる
品出しを急ぐべき事務作業などがあると、ついつい接客が二の次になってしまうことがあります。お客様が来店しても気づかなかったり、店内のお客様がスタッフを探しているのに気づかないということも珍しくありませんので注意しましょう。
また、お店のフロアに出たら接客モードでいる必要があります。休憩時の気の抜けた顔や、事務作業で悩ましい顔を持ち込まないよう注意しましょう。
2 雑な立ち居振る舞いをする
商品などを紹介する場合に、「あちらの商品です」と言って指を指したりすることがないように注意してください。また、人を指で差すのは失礼になりますので気を付けましょう。何かを示す際には基本的には指を揃え、手のひらを上にして示します。よほど小さく特定して示す必要がない限りは指で差すことがないよう気を付けましょう。
また、置き看板などを足で動かしたりしていると、それがお客様に見られてしまうことがあります。商品の片付け等をする際も、乱雑に箱に放り込んでいる様子が少しでも見えてしまうと、商品の質や状態に疑問を持たれてしまいます。商品や棚などを雑に扱ってしまうことがないようにしましょう。
3 否定語を使ってしまう
接客においては、ポジティブワードでの対話を心がけることが大事です。「できません」「ありません」などの否定語(ネガティブワード)はできるだけ使わないようにします。「サイズが合いませんね」ではなく「こちらのサイズの方がお似合いになると思いますよ」など、ポジティブに聞こえる表現を常に心がけるようにしましょう。
マニュアルに沿った接客とマニュアル通りの接客は違う
接客業ではスタッフの多いお店ほど接客用のマニュアルがありますがが、マニュアルの目的は、お店のサービスにおける「最低限の」基準を揃えることです。マニュアルを守るだけで満足しないように注意が必要です。
マニュアルを守れば良いと思っていると、その通りに行いながら、気持ちの入っていない「マニュアル対応」としてクレームが入ることもあります。マニュアルに沿った対応とマニュアル通りの対応は違います。マニュアルに沿った対応は、マニュアルで示そうとしている接客の方向性や基準を理解し、その上でより良い接客を行おうという努力から出てくるものです。そのため、マニュアル通りに各自がプラスアルファをつけていく対応のことなのです。
接客業は基本を覚えると楽しくなる
接客業は覚えるべきことも非常に多く、お店によってはなかなか接客に集中できないほど他の仕事もありますが、接客の基本が身に着いてくると接客そのものが楽しくなります。何より、お客様と直接にコミュニケーションができることで感謝される機会もあり、それがモチベーションになってもっと頑張ろうという気持ちになります。
暗記するというよりも、ポイントに気を付けて接客をしていくうちに自然と身になっていくものですので、定期的に接客業の基本のマナーや振る舞い、心構えをチェックしてみると良いでしょう。