仕事の引き継ぎは仕事に対する価値観が問われる場面
仕事の引き継ぎは、人事異動や転職、退職などの際にどうしても発生するものですが、いざそれが行われる時には、自分の仕事に対する価値観が問われます。新しい仕事や生活が目の前にあり、そしてその準備にも追われる中、確実に後任の担当者に業務を引き継ぐというのは当然のようでも簡単なことではなく、「有休を消化したい」「もう主体的にかかわる仕事ではないので時間を使いたくない」などの気持ちが沸いてきてしまいます。
だからこそ、しっかりとバトンを渡すことで周囲の評価も上がりますし、自分の仕事に対する意識も落ちることなく、心配なく次に向かうことができます。「立つ鳥跡を濁さず」となるよう、しっかり引き継ぎを行いましょう。
仕事の引き継ぎって何をしたらよいの?
仕事の引き継ぎというのは、多くの場合は具体化されていないため、何をしたらいいのかわからないという人が多いものです。社内の書類にはフォーマットもあるのに、引き継ぎ資料に関しては完全にフリーになってしまいがちです。
仕事の引き継ぎでは、大きくは「資料作成」「後任の担当者とのミーティング」「取引先などへの紹介」があるのが基本となります。このいずれかが抜けてしまっただけでも、引き継ぎされる人はかなりやりにくさを感じてしまいますので、この三つが欠けることがないようにしたいものです。
その上で、自分が感じていることや、取引先の印象、自分がやってきてうまくいった方法や失敗したときのことなどを詳しく話すことができればベストです。引き継ぎでは後任になる人がどれだけ理解できたかが大事なので、「私は引き継ぎをした」という事実にこだわるのは良くありません。
日ごろその業務に取り組んでいる人にとっては当然のことも、新しく引き継ぐ担当者にとっては初耳ということもたくさんありますので、大雑把にならないように、細かいところまで気を遣って引き継ぎをしていくことが肝心です。
後任者への仕事の引き継ぎでの資料作成
仕事の引き継ぎでは、作成した資料に不備や抜け漏れがあることも多いため、しっかり確認しながら作る必要があります。
業務をタスクとしてリスト化する
事務職でも営業職でも、まず行うべきは自分の行っている業務についてタスクに分け、それをリスト化することです。その上で、何を誰に引き継ぐのかを上司と相談しておきます。
業務手順をマニュアル化する
引き継ぎをする業務のリスト化ができたら、ひとつひとつの業務について手順をマニュアルにしていきます。社内にすでにマニュアルがあるようなら、それに多少自分のノウハウを付け加えていくだけで良いので楽になります。「どうせわかっているだろう」という考えが一番危険なので、できるだけ初心者に伝えるつもりで作成します。
業務に必要な情報をまとめる
業務の手順に関する資料が完成したら、次はその手順に従って実際の仕事を行いつつ、必要な情報だけを整理して別にまとめておきます。たとえマニュアルに書いてあっても、必要な情報を得たいために何度もマニュアルを見るのは面倒なので、後のことを考え、必要な情報だけをまとめた資料を作っておくと便利です。
何でも資料にしない
後任の担当者が決まっていない場合はどうしようもないですが、引き継ぎをする業務を何でも目に見える資料にすればいいというわけではありません。特に、「あの取引先の担当者は割と品質管理が甘いので検品が通りやすい」など自分の持っているノウハウや印象に関する部分は、あまり文書化するのが好ましくない場合があります。そういった情報はミーティングなど口頭で伝えるようにしてください。
後任者との引き継ぎのミーティングで行うべきこと
後任者との引き継ぎミーティングにおいては、とにかく「自分の仕事をわからせる」ような態度を取るのはよくありません。引き継ぎをする業務のポイントを整理して伝え、その上で考えやイメージを共有する作業が必要です。
業務範囲、手順を確認する
引き継ぎのミーティングではまず行うことは、新しい担当者に業務の範囲や手順についての確認です。新しい担当になって、範囲などが変わってくる場合もありますが、その場合は「私の場合は」と断った上で伝え、上司と相談の上でどこまで対応するかを決めてもらうようにしてください。そして、手順や方法についてひとつひとつ確認していきます。
不満・不便のあるところやビジョンも伝える
引き継ぎをする業務についての説明が終わったら、自分が現状考えている不満や不便を感じているところ、また業務に関する今後のビジョンなどもあれば共有しておきましょう。引き継いだばかりだと、仕事をこなすために精一杯で発展性がなくなることがありますが、視点がもらえることで後任者は仕事を考えやすくなります。
できれば後任者と一緒に作業できる時間を取る
資料や口頭の引き継ぎだけでは不十分で、やってみると色々と問題が出てくる場合もあります。特に資料作成や文書・デザイン・プログラムなどの作成物は、個人の価値観や技術が反映される部分がありますので、極力一緒に作業する時間を取れるようにして、作業の中でノウハウを伝えていきましょう。こうした作業を後任者と一緒にしておくと、引き継ぎが終わった後も質問しやすい間柄が作れます。
取引先への後任者の紹介について
仕事の引き継ぎだけなら社内で完結しますが、営業職などでは社外の取引先に、後任となる新しい担当者を前任者が引き連れていって紹介できるのがベストです。
対面での紹介
対面で後任者を紹介する際には、「新しい担当になる〇〇です」と紹介し、その後に今まで取引の経緯や共有しておくべきことがあれば共有するようにします。直接顔と名前を憶えてもらえますし、名刺交換できますので一番良い引き継ぎ方法です。
電話・メールでの紹介
直接対面して紹介することが難しい場合は、電話でまず担当者が交代する旨を伝え、その上でメールを送るのが良いでしょう。その際には、メールのccに後任である新しい担当者を入れ、メールの文面に新しい担当者についての紹介文を入れます。そして、後からccに入っている新しい担当者から挨拶のメールを送ってもらうと良いでしょう。
名刺の取り扱い
業務の引き継ぎの際、営業先などの取引先の名刺は、個人がもらったものだとしても基本的には会社でもらったものと考えます。そのため、後任となる新しい担当者には名刺も引き継いでおくべきです。
後任者が決まらないときにはどうする?
自分がその先、業務を続けることができない状況にある時でも、社内で引き継ぎをする後任者が決まっていないということがあります。急な退職などで人員補充が間に合わない場合や、繁忙期で決定したスケジュールを調整したりする余裕がないという場合です。
基本的に後任者が決まっていない場合には、業務の引き継ぎについては上司預かりとなります。残っている有休などを社内の事情などによって差し止めるということはほとんどの場合はできません。
ただし、社会人としてスッキリ退職するためにも、必要最低限の引き継ぎ資料は作成しておき、その後のための自分の連絡先については上司にしっかり伝えておきましょう。
仕事の引き継ぎはスケジュールが大切
仕事の引き継ぎというのは、たいてい忙しい中で発生するものです。定年退職のように、先が見えているような事情であれば前もってスケジューリングしていくこともできますが、人事異動や健康上の問題が出た場合など、1~2か月程度しか引き継ぎの時間が取れないケースも多いものです。
その場合、とりあえず簡単な仕事からどんどん引き継いでいこうという軽い考えで引き継ぎを始めると、時間のないときに重量感のある業務の引き継ぎを行うことになり、資料作りも質が低くなり、口頭説明も駆け足で進んでしまい、不十分な引き継ぎになってしまいます。特に、取引先への紹介などは先方の都合もありますので早めに連絡し、日程を定めていくことが肝心です。
いつ、何を、誰に引き継ぐのか、そしてそのフォローをする時間が取れるか、そこまでしっかり考えてスケジューリングしていきましょう。消化したい有休が多く残っている人は、それを踏まえた上で余裕あるスケジューリングをしていく必要があります。
仕事の引き継ぎは手を抜くと失敗する
仕事の引き継ぎは手を抜かず、重要な仕事だと思って取り組むことが大切です。後任者が気持ちよく安心して仕事ができるように、きちっと引き継ぎのバトンを渡してください。ポイントを整理してしっかり引き継ぎができると気分もよく、周囲からも評価が高まることでしょう。