ビジネスでよく聞く「何卒」の意味と使い方
「何卒(なにとぞ)」という言葉は家族や友人との会話やメールではほとんど使われることはありませんが、上司や取引先の相手などビジネスシーンにおいてはよく登場します。社会に出て働いているのであれば、仕事の相手や関係部署、目上の方などに対してメールや文書を作成する際に一度ならずも使ったことがあるでしょう。
しかしよく使う言葉ではあるものの、何卒の意味や使い方のルールをきちんと理解している人は多くはありません。ビジネスにおいて、言葉遣いは相手に与える自分の印象を大きく左右する重要なものです。この機会に「何卒」の正しい意味や使い方などを知って、相手に良い印象を与えましょう。
「何卒」の意味
ビジネス文書や手紙にたびたび登場する「何卒(なにとぞ)」という言葉の読みや意味を何となく掴んでいる方は多いでしょうし、使い方を大きく誤ってしまう方も少ないでしょう。この際になんとなくしか分からなかった「何卒」の意味をしっかり理解しましょう。
「何卒」の意味を調べてみると「どうか、どうぞ」と相手に強く願う(依頼する)気持ちを表したり、「なんとか、ぜひとも」という手段を尽くして懇願する意味があると分かります。つまり「何卒」は基本的に単体で用いられることはなく、相手に何かを依頼する場合の副詞として使われる言葉という事になります。
「何卒」の使い方
ここからはビジネス文書において、どのように「何卒」という言葉が用いられているかを例文とともに紹介します。
使い方1・「何卒」でお願いをするケース
相手に何かを依頼・お願いするときの文章に「何卒」が登場することが多いです。イメージしやすいのは「これからもご指導、ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます」という文章でしょうか。この定型文は、会社のパーティや結婚式などで主催者や新郎といった人が来てくれた方々に対して、締めの挨拶として使われます。
もちろん「何卒」を使わなかったり「どうぞ」に言い換えたとしても意味は伝わりますし、丁寧な印象を与えます。しかしあえて「何卒」を使うことで、来賓に対してこちらがへりくだった印象を与え、より丁寧さが強調されると考えられます。同じように強くお願いしたい相手が目上の方であったり、大切な得意先の場合は効果的な表現となります。ただし、親しい相手であれば逆に壁を作られているように感じさせてしまうので、相手との距離感が大事です。
使い方2・「何卒」で謝罪をするケース
日々のビジネスシーンでは、相手に対して謝罪の手紙やメールを送らなければならない場面があるため、先方に対する謝意をさらに強調する意味で「何卒」を使う場合もあります。特に、こちらの非が明らかな場合には有効な使い方といえます。例としては「何卒ご容赦くださいますよう、お願い申し上げます」という使い方です。
使い方3・「何卒」で理解を得たいケース
ビジネスにおいて、明確にやむを得ない理由があって相手との約束・予定をキャンセルしたり、相手の希望に添えない事態が起こることがあります。理由や事情を理解してもらい、相手の意に沿えないことを納得してもらうための文章に「何卒」を用いるケースがあります。
この場合は「こちらとしてはなんとか対応したいと思い頑張ったのですが」といった、こちらとしても出来る限りの手を尽くしたことを強調する意味で「何卒」が使われます。「何卒」という言葉を書き添えるだけではなく、相手の意に添えない理由や事情を分かりやすく簡潔な文章にすることが大切です。
使い方の例を挙げるなら「以上のような事情により、当日はお伺いすることができなくなりました。何卒ご理解いただきますよう、お願い申しあげます」や「以上の理由により、今回はご希望に添えそうもありません。何卒ご理解いただけますよう、お願い申しあげます」となります。
使い方4・「何卒」で敬意を込めるケース
ビジネスに限らず、プライベートなことも含めて目上の方や得意先の方にお礼状などの手紙やメールを送ることがあります。その際の結びの文章に「何卒」を入れることにより、さらに丁寧な印象を相手に持ってもらえます。
よく見る例文として「何卒ご自愛ください」という結びの一文があげられ、さらに丁寧で優しい文体で書くならば「何卒ご自愛くださいませ」となります。意味は「どうか身体を大事にしてください」です。
「何卒」の類義語・同義語
「何卒」にはいくつかの同義語も存在します。「どうか」「どうぞ」もその一つですが、意味は同じでも丁寧さは「何卒」のほうが上です。使い分けとしては、関係の近い人には「どうか」「どうぞ」、目上の人や丁寧な表現を使うべき場面では「何卒」を使うように心がけます。
また、「切に」「是非とも」「くれぐれも」も意味合い的には「何卒」と同じですが、これらはかなり切羽詰まった感じを与え、主張が強い表現になります。あくまで最終的な表現ととらえ、スマートな表現にしたい場合は「何卒」を使うようにします。
「何卒」を使うときの注意点
「何卒」という表現は相手に対して丁寧な印象を与えるとともに、へりくだった表現であることから相手にも「なんとか力になってあげよう」という気になって貰いやすくもあります。しかし「何卒」という言葉を使うにあたっては、注意しなければいけない点もいくつかあります。
注意点1・「何卒」を使いすぎてしまっている
もっとも注意を要する点は「使いすぎ」です。1つの文章の中に何度もこの表現が出てくると押し付けがましくくどい印象を与えてしまいますし、「何卒と使えばいいと思っているのでは?」と思われる可能性もあります。頻繁には使わず、どうしてもお願いしたい事柄にのみ使用するようにします。
注意点2・「何卒」がマニュアル敬語になってしまっている
ビジネス文書のやり取りが多くなった時に見られる傾向ですが、毎回マニュアル的に使われているケースが見受けられます。受け取る側もそれに慣れてしまうと、どれほどの要望度なのか分からず「普通にお願いしているのね」と重要度が低いままにされてしまうことも考えられます。特にメールの場合はコピー&ペーストとも取られかねませんのでしっかり意識しておきましょう。
注意点3・「何卒」の重ね使いをしてしまっている
重ね使いというのは読んで字のごとく「何卒、何卒」といった使い方です。口頭での表現であれば必死さが伝わることも考えられますが、文章にしてしまうと押し付けがましい感じが強くなってしましますので注意が必要です。
「何卒」を使ったありがちなミス
ビジネス文書や目上の人への手紙などに使われる「何卒」ですが、使い方を間違えてしまっているケースも見かけます。「何卒」のありがちな使い方のミスについて説明します。
一番多いミスは「何卒よろしくお願いします」という使い方です。一見すると何も問題は無いように思えますが、尊敬語も謙譲語も無いため目上の方に使うのは違和感を覚えます。「何卒」は「どうぞ、どうか」を丁寧にさせただけであり、「~します」も「する」の丁寧語ですので、ビジネスシーンであれば謙譲語を使いましょう。
正しい「何卒よろしくお願いします」
- 謙譲語
「何卒よろしくお願いいたします」 - 更に丁寧な言い方
「何卒よろしくお願い申し上げます」
また、「何卒」というのはあくまで、目上の相手や重要な取引先に対して使う表現になります。ある程度人間関係を良好に進めている相手に使うと、距離感を感じてしまうことも考えられますので注意してください。
「何卒」の意味を知ってデキる人を目指そう
「何卒」という言葉は普段の生活ではあまり使う機会はありませんが、ビジネスの場面ではよく使われます。丁寧さ・真摯さが伝わることから、仕事上の相手や目上の人に何かをお願いするときや謝罪をしなければならない場面などでよく使われている言葉です。様々なビジネスシーンで使える言葉ではありますが、使う場面や使い方をしっかり考える事も言葉を効果的に使ううえでは重要となります。
「何卒」本来の意味や使い方、類義語や同義語との使い分けを知ることでデキる人を目指しましょう。