日本語の美しさを再認識する3月の時候の挨拶文例集
お礼状や案内状、ビジネス文書などを書く際に、知らないと困る時候の挨拶。日本の季節の移ろいや、日本人の感性、そして日本語の美しさを再確認する大切な文化です。
なかなか普段はそうした手紙を出す機会がない方は馴染みのない方も多いかもしれませんね。ですが社会人のたしなみとして知っていると差がつくポイントなので、是非この機会に学んでみましょう。
3月の時候の挨拶に使える季語
3月はいよいよ冬も終わり、本格的に春の訪れを感じる時期ですね。ですから、暖かくなってきたことを喜ぶ季語や、冬の寒さを乗り越えて芽を出す新緑や、にぎわいだす花や虫たちについての言葉も多いのが特徴です。
そして私たちの生活において3月は別れの季節でもあります。卒業や異動、引っ越しなどに伴う手紙を出す際には、お世話になったことへの感謝、離れてしまう寂しさ、これまでと変わらぬ活躍を願う言葉を伝えるのが一般的です。
3月の時候の挨拶の際に特に気を付ける点としては、二十四節気の「啓蟄」けいちつ(3月5日~6日)は冬ごもりの虫たちが這い出るの意、「春分」(3月20日~21日)がご存知の方も多いと思いますが、昼と夜の長さがほぼ同一になる日のことで、共に春を示す季語となります。また、お彼岸は春分を中日とした前後合わせて7日間のことを指します。
一般的に3月において使える季語は以下になります。
「啓蟄」「向春」「解氷」「孟春」「春寒」「浅春」
「初春」「早春」「春暖」「春陽」「春分」「仲春」
- 寒さも緩み
- 春寒しだいに緩み
- 春暖快適の候
- 春の彼岸の頃
- 春色とみに濃く
- 春寒料峭のみぎり
- 日増しに暖かさを増し
- 小川の水もぬるみ
- つぼみも膨らむころ
- 桃の蕾もふくらみ
- 日増しに暖かくなり
- 急に春めいて
- 木々の緑日ごとに色めく季節
- 若草萌ゆる候
- 一雨ごとの暖かさ
- 日毎にのどかになり
- 菜の花は今が盛り
少し肌寒い3月上旬の時候の挨拶
3月上旬のイベントとして、雛祭り(3月3日)や二十四節気の啓蟄があります。上旬では、まだ肌寒い日もありながら、暖かさを感じる日も増えてくるので、そうしたことを盛り込むと良いですね。
- 啓蟄の候
- 向春の候
- 孟春のみぎり
- 解氷のみぎり
- 春寒の折
- 寒かったり暖かかったりの毎日ですが
- 寒さもさすがにゆるみ
- 今年も雛祭り
- 春まだ浅く、風に冷たさが感じられる今日この頃
- ひと雨ごとに春の色が濃さを増すこのごろ
- 冬の名残のまだ去りやらぬ時候
- 春眠あかつきを覚えずの快い季節
- 桃の節句も過ぎて
- 仲春のみぎり
- 日差しのうららかさに
- 芳しい沈丁花の香りに
- 春一番が吹き
- 日ごとに暖かくなり
- 風はまだ寒く
- お嬢様の桃の節句はご家族でお祝いなさったことと存じます
- 桜の開花も待ち遠しいこの頃ですが
- 店先の菜の花に春を感じるこの頃です
- 桃の蕾もふくらみ始め
卒業を迎える3月中旬の時候の挨拶
一般的に3月10日~20日ほどを3月中旬といいます。3月中旬のイベントとしては、ホワイトデーやお彼岸などがあります。また、卒業式を迎える学校も多くなります。中旬を表す季語として相応しいのは早春、浅春、初春など。
- 早春
- 季春
- 春分
- 春色
- 春暖
- 麗日
- 軽暖の候
- 早春の候
- 春暖の候
- 春色なごやかな季節
- 卒業式シーズンを迎えられ、何かと忙しい日々と存じます
- 余寒も和らぎ、外出が嬉しい季節となりました
- パステルカラーに目が留まる、心弾む季節です
- 暑さ寒さも彼岸までとはいいますが、まだ肌寒い季節です
- めっきり春めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか
- 野山の雪も解けて、ようやくこちらでも春の到来です
- 春一番が吹き、ようやく春も本番です
春らしさを感じさせる3月下旬の時候の挨拶
3月20日くらいから月末までを一般的に3月下旬といいます。ですが厳密に決まっているわけではないので、あくまでも目安として考えましょう。
3月下旬を表す季語としては、春分、春暖、春陽、仲春など。春分は3月20日~21日頃を表し、次の二十四節気である「清明」の前日、4月4日ごろまでという意味もあります。そのためこれらの季語は4月上旬でも使うことができます。
下旬に限らず3月の年度末には異動や引っ越しなどがありますね。
ビジネスにおいては人事異動やそれに伴う転勤、昇格などがあります。
親しい相手への手紙であれば、オリジナルの文言を添えるのも良いですが、ビジネスにおいては定型文を意識するほうが無難です。
昇進祝いなどの手紙であれば、あまり私情を挟まずにシンプルにお祝いの気持ちを伝える方が良いでしょう。転任通知などは、新しい赴任先への着任後すみやかに出します。
- 薫風の候
- 一雨ごとに春の陽気を増してまいります。
- 桜前線も次第に北上してまいりました
- 梅も散り、桜の蕾もふくらんできました
- 春めいたうららかな日が続いております
- 心地よい春風が吹く陽気となりました
- コートのいらない暖かな日が続いています
- 草木が一斉に芽吹き、ようやく本格的な春到来です
- 爽やかな風が頬をなでる、気持ちの良い気候になりました
- 新緑が風に薫る季節となりました
3月の時候の挨拶の書き出しの文例
書き出しについては、季語+挨拶文にする場合、先にお伝えした季語の後に挨拶文を加えます。以下に示した書き方などの挨拶が一般的ですね。
- 早春の候、貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
- 春分の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
- 啓蟄の候、皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
- 薫風の候、皆様風邪を召されずにお過ごしでしょうか。
3月の時候の挨拶の結びの文例
結びの挨拶については、送る相手や手紙の内容によって変わってきます。結びの挨拶の例文を見ていきましょう。
お礼状や案内状・ビジネス文書の結びの挨拶例
- まだ肌寒い日もありますので、くれぐれもお身体ご自愛ください。
- これからもご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします。
- 今後ともより一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
- ご多忙中のところ大変恐縮ですが、ご返事賜りたくお待ちしております。
- まずは略儀ながら書中をもってお祝い申し上げます。
- まずは謹んでお悔やみ申し上げます。
- 新年度迎えましても、変わらぬお付き合いの程よろしく申し上げます。
- 幸多き春の門出となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
親族・親しい友人などの手紙の結びの挨拶例
- 寒暖定まらぬ時期ですので、どうぞお身体を大切に。
- 花冷えの候、体調を崩されることのないようくれぐれもご自愛下さい
- 実り多い新生活となるよう心よりお祈りいたします。
- 何かと忙しい季節の変わり目ですが、風邪など引かれませんように
- 新しい環境で心機一転、皆様のご多幸をお祈りしております。
- 取り急ぎ書中をもってお見舞まで。
- 末筆ながら皆様に、くれぐれもよろしくお伝えください。
- 桜の便りが待ち遠しいこの頃、皆様のますますのご活躍を願っています。
- 暖かくなりましたら、是非また皆でお会いしましょう。
3月は別れと出会いが入り混じる区切りの月だからこその挨拶を心がけよう
3月は冬の寒さから一気に暖かな春へと向かう季節です。ですから上旬と下旬では使う言葉の雰囲気もがらりと変わります。上旬ではまだ残雪残るところも、日がたつにつれて野山の雪が消え、暖かな日が多くなってきます。こたつや暖房器具などをつける日も少なくなり、コートを脱いで装いも軽やかになるとともに、気持ちも弾んでくる季節です。
また、新緑が芽吹き、桃の花や菜の花もつぼみが膨らみ、開花をしていく中で、爽やかな気持ちになりますね。3月は卒業や引っ越し、異動などで別れのシーズンでもありますが、そうした色とりどりの花や緑に包まれて、また新たに頑張ろうという気持ちが湧く、言わば一年の区切りであって始まりでもある月と言えるのではないでしょうか。
時候の挨拶というと、苦手に思う方も少なくありませんが、そうした季節の移ろいを肌で感じることで、より場面に適した文章を組み立てることができるようになりますよ。