ワークシェアリングは失業率改善の秘策
ワークシェアリングは正規雇用を促し、失業率を改善する大きな可能性を秘めています。 議論が始まって日が浅くまだまだ現実的ではないですが、新しい働き方として着実に定着し始めています。もう一度ワークシェアリングを確認しどのような活用方法があるのか考えてみましょう。
ここでは、導入企業も徐々に増えているワークシェアリングのメリットやデメリットを紹介します。
ワークシェアリングは雇用改善を促す新しい働き方
ワークシェアリングは仕事を分配して一人当たりの労働時間を短縮する新しい働き方として注目されています(注1)。
これは雇用を増やす目的で提案された働き方で一人の人が抱える仕事を分配してさらに多くの雇用を促す目的で提案されました。
例えば今までやっていた1人分の仕事を3つに分割し、それぞれ別の2人に分配すると言うものです。その為、企業は3人雇う必要がでてきます。これによって雇用が3人分生まれる事になるので失業者対策にも大きな効果があると話題を集めました。 また女性や非正規労働者の賃金の格差も是正されるとして支援されている働き方です。
海外では成功事例があるのですが、導入のメリットはあるものの、現在の日本を取り巻く労働環境では実現は難しいという意見が大半を占めています。
ワークシェアリングはストレス軽減に役立ち、経済効果も大きい
勤務時間もシェアした人数分だけ短くなります。例えば8時間勤務の方が4人に仕事を分割した場合、一人当たりの勤務時間が2時間となります。その為、労働者は過労などによるストレスにさらされ難くなります。これはワークシェアリングのメリットと言えるでしょう。
またワークシェアリングで勤務時間が少なくなる事により余暇時間が増えるので、趣味などに費やす時間が増えます。その結果、個人消費を促す効果や少子化対策にも効果があります。個人消費を促されるのでデフレ時の経済にも効果があると言われています。
ただし問題点も多く、いかに解決するかによりワークシェアリングの成功が左右される事になるでしょう。
給料もシェアする事になる
ワークシェアリングの最大の問題点として給料の問題があります。 労働時間の短縮に伴い給料も働いた時間分の給料になってしまうのです。
これには現在、正規雇用で働いている方からの反発は避けられません。 さらに正規雇用者と非正規雇用者の賃金の格差も大きいので、賃金の支払いについても大きな課題が残されています。
この問題は解決する動きはあるのですが、議論が進んでいない状況になっているので今後も時間が必要でしょう。
ワークシェアリングの導入で生産性の低下に繋がる恐れも
また作業を分割する為、業務の引継ぎの問題も発生してきます。引継ぎが上手くいかない場合、業務の生産性が著しく低下する可能性があります。これも、ワークシェアリングのデメリットと言えます。
これは単純労働の場合は問題がないのですが専門性の強い業務になればなるほど顕著になってきます。個人の能力にもよるので解決するのが難しい問題となっています。
また営業などの場合担当者が変わる事は印象が良くありません。 導入する企業、担当する業務によりワークシェアリングのあり方を考える必要もあります。
ワークシェアリングは企業側の大きな負担になる場合もある
ワークシェアリングは企業側にも大きな負担になるケースがあります。 基本的な人件費は変わらないのですが、雇用者を単純に1人から3人に増やした場合会社の経費の部分である、交通費や住宅手当など3倍の経費がかかってくる事になります。
とくに労災保険や雇用保険の経費が高いので企業も相当の額を負担する事になるでしょう。 大きな企業などは対応できる可能性もあるのですが中小企業では大変難しい問題となっています。
ワークシェアリングの成功事例を作るには労働環境の改善が必須
日本においてワークシェアリングは成功するのでしょうか。 日本の現在の労働環境で企業がワークシェアリングを導入し、企業と労働者の双方がワークシェアリングによるメリットを感じるには多くのハードルを越える必要があります。
それは日本の労働環境に問題があります。問題の1つとしてサービス残業の常態化です。勤務時間が短くなる事で逆に業務に追われるのではないか、このような状態でワークシェアリングを導入しても、さらに労働者に負担をかける可能性があるのではないか、と懸念されています。
このような日本独自の労働環境を一つ一つ解決して行く事が日本でのワークシェアリングを成功させるカギとなるでしょう。
ワークシェアリングに最適な分野
農業の分野でワークシェアリングが活かせないだろうか、という事が言われています。 農業は閑散期や繁忙期がわかりやすいためワークシェアリングに最適な分野です。 雨が降ったら仕事がなくなり、収穫時には多くの人手が必要になります。
常に雇用を維持するのが難しい職業なのでワークシェアリングと相性の良い働き方と言えるでしょう。
ワークシェアリングは高齢者の新しい働き方の1つになる
高齢者の働き方にもワークシェアリングを取り入れようという動きが出てきています。
高齢者の場合、労働意欲があっても体力的な問題が出てくるのでワークシェアリングでそこをカバーするという試みです。 強みでもあり、弱点でもある労働時間の短さが高齢者にマッチし、知識や技術の共有という部分でも非常に合理的な働き方となっています。
今後の日本では高齢者が増える一方なのでこの働き方は大きく広がる可能性がありと言えます。
参考文献