社宅に入居する場合のメリットとデメリットを知ろう
就職活動中や転職活動中には「社宅有り」という企業の募集要項を目にすることが多くありますが、大学生や新卒者であれば社宅とはどういったものかをイマイチ把握できていないという方も多いでしょう。果たして社宅がある会社とない会社ではどちらの会社に就職する方が良いのでしょうか?
社宅とは何か、社宅に入る場合と住宅手当を支給してもらう場合は何が違うのかなど、企業選びの基準のひとつとして社宅に関する正しい知識を身に着けましょう。
社宅とは?社員寮の違い
社宅も社員寮も、会社が用意した賃貸物件を従業員に対して安い費用で貸し出す制度であるという点は共通しています。社宅はファミリータイプ(配偶者や子供がいる)、社員寮は独身タイプという認識が一般的な認識になっていますが、入居する人が独身であっても社宅として貸し出す場合もあり、社宅と社員寮の間に明確な違いはありません。
社宅の場合はファミリータイプという認識が強いため、一人あるいは家族数人で社宅に入居するケースが多いですが、社員寮の場合はルームシェアのように複数人で一つの部屋をシェアする場合もあります。
また、社員寮の場合は食事が寮の中で用意されているというケースもあったりと、会社の考え方や制度の作り方によって様々なパターンがあります。
なぜ企業は社宅を準備してくれるのか?
企業側が社宅を維持する経費や人を住まわせる家賃を負担してまでも社宅を準備する理由には、主に2つの意味があります。
1 社員への福利厚生制度の充実をはかりたいから
企業にとって従業員はとても大切な人材です。働く従業員が次々と退職してしまってはビジネスとして成り立たなくなってしまうため、少しでも長く、より良い環境で従業員に働いてもらうために福利厚生制度やサービスとして社宅制度を取り入れている企業は少なくありません。
2 課税額を安く抑えられるから
会社が住宅手当を従業員に支給した場合、支給した住宅手当は「給与」という扱いになるため課税対象となります。課税の対象となるということは、会社側も従業員側も納付する社会保険料等の金額が増えるということになります。
一方で、社宅を従業員に貸し出しており、その社宅にかかる費用の一定以上(法律で定められている割合以上)を従業員が負担している場合は課税の対象にならないため、課税額を安く抑えることができるのです。
社宅制度はどんな会社に多い?
会社の考え方や方針によって社宅があるかないかは変わりますが、以下のような会社には社宅制度を導入しているところが多い傾向にあります。
- 全国的に事業所がある会社
- 転勤が多い企業
全国的に事業が多くあったり転勤が多い会社の場合、転勤する度にかかってしまう住宅費用の負担を軽減させることを目的として社宅制度を取り入れているところが少なくありません。
社宅に入るメリット
企業が提供する社宅に入る場合、労働者には様々なメリットがあります。労働者が受けることができる5つのメリットを見ていきましょう。
1 家賃代が安く済む
社宅の場合、その社宅に本来かかるはずの家賃は会社が負担してくれ、安く住むことができます。
例えば、本来であれば10万円の家賃の賃貸物件だった場合、5万円は会社負担、残りの5万円を自己負担だった場合は、従業員としては毎月5万円分の費用がかからないということになります。
新卒で企業に就職したばかりの頃は特にお金があまりないことが一般的なので、家賃の一部を会社が負担してくれるというのは金銭的に大きなメリットになります。
2 家を自分で探す必要がない
遠方から引っ越して就職する場合や、社内で転勤する場合等は、社宅がない会社であれば自分で住む家を探すことになります。自分で家を探すとなれば、不動産会社に行き、物件の内覧をいくつかして、契約書を書いたりお金を振り込んだりと、かなりの労力が必要となります。
また、遠方からの引っ越しや転勤等の場合は、家を探すまでの時間がほとんどないケースが多くあります。例えば、急に内定が出て半月後に入社して欲しいと言われたケースや、急に転勤を告げられて数週間後には転勤しなければならないというケースです。現地に行って物件を探している余裕がない場合もありますし、遠方という慣れない土地で土地勘がない素人が物件を探すのはなかなか困難です。
しかし社宅であれば家を自分で探す必要がないため、このような労力や心配は無用となります。
3 入居するのに初期コストがかからない
転勤等の場合は会社都合での転勤となるため会社側から何かしらの手当(転勤手当や引っ越し手当等)が会社側から支給されるケースが多くありますが、そういった手当が転勤のための引っ越しにかかった費用の全額を賄ってくれる保証はありません。
また、入社前に遠方から引っ越すケース等はそもそも自己都合とみなされるため、会社側から引っ越しにかかる費用(住宅の敷金・礼金等)を賄ってくれるケースはほとんどありません。
住宅を探すという労力も大変なことですが、かかる費用もかなりの金額になります。
もし、家賃が10万円の物件で敷金・礼金が2ヶ月ずつ必要ということであれば、初期費用で40万円以上かかるということです。また、仲介業者を経由した場合は仲介業者にも家賃1ヶ月分等の費用を支払う必要があったりと、住居の決定には多くの費用がかかるものです。
社宅であれば、こういった初期費用(敷金や礼金等)は会社側が既に負担してくれているケースが大半ですので費用的に安く済みます。
4 住宅費のランニングコストがかからない
自分で住宅を借りている場合、2年に1回程度の頻度で更新料がかかります。更新料は多くの住宅が家賃の1~2ヶ月分かかるのが一般的です。更新料が2年に1回、1ヶ月分かかる家賃10万円の物件に10年以上住み続けた場合(更新を5回行う場合)、50万円の更新料がかかるということになります。
一方、社宅の場合、こういったランニングコストについて、全額あるいは一部を負担してくれるケースもあります。
5 職場に近くて通勤に便利だから
中には例外もありますが、社宅や社員寮がある場合、基本的には職場から近い通勤に便利な場所にあるケースがほとんどです。
朝と夜の通勤時間を短縮することでプライベートに当てる時間をより多く確保できますし、電車通勤であれば通勤ラッシュ、車通勤であれば渋滞などに巻き込まれたりといったストレスも軽減することが可能です。
社宅に入るデメリット
社宅に入るメリットがたくさんあって就職するなら絶対に社宅がある企業だと思うかもしれませんが、もちろん、社宅に入ることにはメリットだけではなくデメリットも挙げられます。
1 希望の物件ではない場合がある
会社が社宅としての住宅を探す場合、「従業員が住みやすい」といった基準として物件を探すよりも「従業場所から近い」「賃料が安い」という基準で探すことが一般的です。
そのため、社宅に住む側の従業員としては「家賃を会社に負担してもらっているから文句は言えないけど、本当はもっと広い物件が良かった」「もっと築年数が新しい綺麗な物件に住みたかった」などの不満が出ることもしばしばです。
社宅である以上、就業場所から通勤できないような物件を社宅とすることはありえませんが、自分が希望するような物件ではない可能性があることを視野に入れておく必要があるでしょう。
2 同じ社宅や近所の社宅に職場の人がいる
社宅の場合、会社側がマンションをまるごと借り上げて社宅としている場合や、同じような地域(就業場所から徒歩10分以内等)に社宅を借り上げているというケースが多くあります。こういった場合、その社宅に入ると隣に住んでいる人、あるいは同じマンションや近所に住んでいる人が同じ職場の人であることもありえます。
例えば、スーパーに買い物に行く度に近所の社宅に住んでいる上司と会う、というようなこともありえるかもしれませんし、金曜日の夜に上司に怒られて、休みである土曜日の朝に近くのコンビニでバッタリその上司と会う、というようなシチュエーションがあるかもしれません。
また、社宅から就業場所まで電車やバスに乗るというケースもありますが、そういった場合も毎朝同じ職場の人と同じ電車やバスに乗るという可能性もあります。
同じ職場の人との交流が持てるというのはひとつのメリットとして捉えることもできる一方、「仕事がない休みの日にまで会社の人と会いたくない」と考える人にとっては、社宅に住むことはデメリットと感じるでしょう。
3 一人部屋ではないケースもある
家族で入居する社宅ではなく、独身や単身赴任等の場合、ひとつの部屋を複数人でルームシェアするというようなケースもありえます。
できれば一人で住みたい、あるいは家の中は自分だけの空間であって欲しいと考える人にとっては、同じ職場の人達とルームシェアを行うということは大きなデメリットになります。
こういったケースは独身寮といったような呼び方をしている会社が多いのですが、社宅と寮の間に明確な差があるわけではないため、ルームシェアの独身寮も含めて全てを社宅と呼んでいる会社もあります。ルームシェアがNGな人はその点について企業にしっかり確認しておきましょう。
経済的に余裕がない人は社宅制度を活用してみよう
社宅に入る場合、デメリットももちろんありますが、会社が家賃を負担してくれるというのは金銭的には非常に大きなメリットです。会社に負担してもらっている金額が1ヶ月で3万円程度だったとしても、3年間社宅に住み続ければ会社に負担してもらっている金額の合計は100万円以上になります。
経済的に余裕がない新入社員の方は、可能なら社宅制度の利用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。