育児休業を正しく使えていますか?
大変な出産を乗り越えて迎えた新しい家族を、親として責任をもって育てていきたいと改めて決心したママさんもいるでしょう。しかし、自ら働いて家計を支えているママさんの場合は、産休後の即復帰も検討する方もいます。
産後の慣れない育児をサポートする制度として育児休業が法律で定められています。出産前はバリバリ働いていた女性はもちろん、奥さんと一緒に子育てをしたい男性も、仕事や金銭面の心配をせずに子育てに専念することができる、育児休業制度を確認しておきましょう。
育児休業とは?
育児休業とは、「育児休業法」で定められた、1歳未満の子どもをもつ労働者が、子どもを養育するために取得することができる休業期間のことを指します。休業は母親だけに限らず、父親も取得可能であるところが産休とは大きく異なる点で、そのほか育児休業給付金を申請できたり、事情によっては休業期間を延長できるなどのサポートシステムが整っています。
育児休業取得対象者
- 労働者であること(日雇い労働者を除く)
- 入社後1年以上が経過していること
- 1週間の所定労働日数が2日以上あること
- 育児休業申請の日から1年以内に雇用期間が終了する予定のないこと
- 有期契約労働者のうち、入社1年以上が経過していること
- 有期契約労働者のうち、育児休業終了後に契約更新しないことが確定的でないこと
対象者を見ると、雇用形態は正社員でなくても取得できることがわかります。フルタイムで1年以上雇用されていれば、ほぼ確実に取得は可能ということになります。ただ、この情報はまだまだパートや非正規社員の間に浸透していなく、育児休業を利用して職場復帰した人の割合は正社員の2/3程度しかありません。
育児休業はいつから?いつまで?取得期間
育児休業は原則として、子どもが1歳になるまでの連続した期間です。男性の場合は1年間となりますが、女性の場合は産後休業と育児休業期間を足した1年間となります。
ただし、父親と母親がそれぞれ育児休業を取得する場合は、出産日から子供が1歳2か月になるまでの期間まで延長可能でパパ・ママ育休プラス特例とされます。
1歳2ヶ月まで延長されるといっても、奥さんと旦那さんの育児休業期間は1年間であり、二人の休業期間をずらして組み合わせることによる1歳2ヶ月までの延長となります。
育児休業の延長期間
子どもが1歳になる日に、父親か母親のどちらかが育児休業中で、かつ保育園入園ができていない場合、および配偶者に子育てのできない事情が発生した場合は、1歳6ヶ月になるまで延長ができ、それでも保育園が決まらない場合は最大2歳まで延長できるようになっています。2017年9月30日までは、1歳6ヶ月までしか延長することができませんでしたが、改正され2歳まで延長期間が伸びました。
なお、育児休業の延長申請の対象となる保育園は、認可保育園と規定されています。無認可保育園のみに入園申請をした状態で、保育園が決まらなかったために延長申請しても、育児休業は延長されないので注意しましょう。
育児休業の取得可能回数
原則は一人の子どもにつき1回と定められています。ただし、配偶者が死亡や病気により子育てのできない状況に陥る、離婚して同居していない場合、保育園への入所ができない、子どもが病気やケガで2週間以上看病が必要となる場合など、再度申請が可能となります。
申請手続の方法
申請は休業開始の1か月前までに、会社に届け出る必要があります。ただし、出産予定日より前に出産した場合は、休業開始日の1週間前までに対応すれば認められます。1歳6か月までの育児休業申請の際も会社経由で申請を行う必要があります。
延長の申請日は、育児休業開始期間から算出される2ヶ月毎の支給対象期間と、子供が1歳になる日によって変わるので、早めに会社に連絡・相談するようにしましょう。
育児休業は男性も取ることができます
育児休業取得対象者の条件を満たしていれば、男性も育児休業をとることができます。出産する奥さんが専業主婦だとしても同じ様に制度を利用できます。
男性が育児休業を取れる期間は、出産する女生と同様に原則一人の子供につき1年です。女性の場合は、育児休業は連続した期間1回ですが、女性が産後休業期間中に男性が育児休業を取得いた場合は、その後間を開けて再度育児休業を取得することができるため、2回に分けて取得することもできます。
育児休業中の給料は基本的にもらえません
育児に専念するために休業するとしても、やはり気になってしまうのが、休んでいる期間中の収入ですね。とくに、夫婦そろって育休をとることが有効とされている状態ですので、最大限制度を活かすためには夫婦がそれぞれに取得するべきなのですが、その間家計はどうやって支えていったらいいのでしょうか。その不安が原因で育児そっちのけで夫婦喧嘩が絶えないなんて本末転倒です。そこで、育休期間中の給与の考え方と、生活を支える支援制度を理解しておきましょう。
まずは、育児休業中の給料が無給か有給かは会社によりますが、基本的には給与はないでしょう。給料の代わりに収入となるのが雇用保険から支給される育児休業給付金です。
給料の代わりに雇用保険から支払われるのが育児休業給付金
育児休業の際の家計を支える給付金制度を育児休業給付金と言います。前述したとおり、雇用保険のシステムから賄われるもので、賃金月額の67%を6か月間受け取ることができ、それ以降は1歳を迎えるまで50%で計算されます。なお、夫婦がそれぞれに育児休業を取得する(パパママ育休プラス制度)場合で、それぞれ半年間ずらして育児休業を取得することで、子どもが1歳2か月になるときまでそれぞれ賃金の67%を受給可能です。
- 休業開始時賃金日額×日数×67%(はじめの180日)
- 休業開始時賃金日額×日数×50%(180日以降)
「休業開始時賃金日額」とは、育休開始前の6ヶ月の給料を180日で割った金額となります。パートなら、11日以上働いた月の給料が6ヶ月分で計算します。
賃金日額には上限および下限が設けられていて、上限が424,500円、下限が68,700円となります。なお、育児休業給付金の支給は育児休業がはじまってから2~3ヶ月後に2ヶ月分をまとめて振り込まれます。つまり休業開始時賃金日額×日数×67%で計算される金額が3回、休業開始時賃金日額×日数×50%(180日以降)で計算される金額がそれ以降2か月ごとにそれぞれ振り込まれることになります。
育児休業給付金制度は、振り込まれるたびに次回の申請をすることが求められますが、申請は会社が行うので基本的にはご自身がハローワークで何か手続きをしなけばいけないというとはありません。
育児休業給付金受給の条件
- 育児休業休開始日より2年以内に12ヶ月以上、雇用保険に加入している
- 育児休業期間中に休業開始前の1ヶ月当たりの賃金の80%以上が支払われない
- 育児休業期間中に働いた日数が1ヶ月に10日(10日を超える場合は80時間)以下
このように、雇用保険加入者であれば正社員だけでなく、雇用形態によらず受給の権利は発生するということです。ただし、1週間に2日しか勤務しない、妊娠中に育児休業を取得せずに退職してしまう、育児休業開始の際に1年以内に退職することが確定的という場合は、対象外となりますので、注意が必要です。
育児休業給付金と給料を一緒に貰う
多くの会社では育児休業中は無給となります。育児休業給付金で給料の67%を貰ったとしても、人によっては足りないという場合もあるでしょう。その場合は、育児休業期間中に働かせてもらえないか相談してみましょう。
育児休業期間中は働いては駄目ということはなく、給料と育児休業給付金の総額が、休業開始前賃金の80%を超える場合は、育児休業給付金が減額されて支給されます。そのため、会社と相談することで週に1、2回や、月間80時間を超えない範囲で働き、育児休業給付金と給料の総額が80%を超えないようにすることで、育児休業期間に以前の給料の8割も貰うことが可能となります。
せっかく子供が生まれたタイミングでの休みですから、働くのは勿体無いという意見もありますが、お金のこととなると67%よりも80%の方が良いに決まっています。働く時間が限られるため、どんな会社でも調整して働かせてくれるとは言えませんが、復帰後のことなどを考えると休業中の仕事を把握できるのでオススメです。
育児休業給付金を延長するには
保育園に入所できなかった等の事情で育児休業を延長する際には、会社への復帰が遅れてしまう分育児休業給付金の受給も延長することになります。延長申請のタイミングは子どもが10ヶ月~1歳になるときおよび、1歳を迎えて最初の支給のときです。保育園への入所申請の書類や、入所認められなかったことを証明する書類、育児休業延長申請書を会社に提出して延長手続きお願いしましょう。
育児休業期間中の社会保険は免除されます
会社の給料から天引きされていた社会保険の健康保険料や厚生年金保険料は、育児休業期間中は免除されます。保険料が免除になるだけですから、病院で保険証を使うことができますし、年金も保険料を納付した期間して計算されます。
育児休業から復帰した後は時短勤務が利用できます
育児・介護休業法にて、3歳未満の子供を育てる女性・男性に対して、会社は短時間勤務やフレックスタイム制の適用、所定外労働の禁止と、育児休業復帰後にも子育ての時間をとるために利用できる制度があります。
女性のみが利用できると思われがちですが、専業主婦をもつ旦那さんも利用できる制度ですので、積極的に子育てのサポートをしたい、どうしても保育園のお迎えに早く帰らなければいけないという人は、会社と相談して時短勤務やフレックスを利用できないか確認するようにしましょう。
時短勤務中の厚生年金は減らない
時短勤務となれば給料はもちろん減るでしょう。給与によって決まる厚生年金の支払額が減ると、将来貰える年金額も減ってしまいますが、育児・介護休業法による時短勤務の場合は、支払い金額は減っても、将来受け取る年金額は時短勤務をする前の金額を支払ったのと同等となる特例制度があります。
育児休業よりも利用者数が少ないとされる時短勤務ですから、総務に厚生年金のことを事前に確認しておく方が良いかもしれません。
育児休業と育児休暇は違います
育児休業と似た表現で、「育児休暇」というものがあります。人によっては混同している場合もあるのですが、全く違うものです。
育児休業は明確な法律(育児・介護休業法)がもととなって定められている労働者の権利です。子育てをする労働者が仕事と育児を両立できるように支援する制度であり、利用するにはさまざまな条件や申請が必要にはなるものの、たとえば就業規則に規定がない場合でも取得が妨げられることはありません。
また、育児・介護休業法にて、育児休業を理由に解雇を含む降格や減給など、労働者に不利益となることを禁止しておりますから、育児休業を認めてもらえない場合や、退職を求められたりしたら、労働局へ相談することで会社に指導してもらうことができます。
育児休暇は、休暇中に育児をするという考え方に概念的な呼称がついたものです。根拠となる法律はないので、労働者を守る制度とはいいがたいです。会社独自に育児休暇として、特別な休暇制度を用意している場合もありますが、基本的には通常の休暇と同じ扱いになります。
育児休業を活用して余裕を持って子育てをしよう
育児休業は法律のもと、女性はもちろん男性も利用できる制度です。しかし男性の育児休業取得率は現状3%未満と発表されており、男性が育児休業を取得した中小企業に対しては助成金を出してまで、国は育児休業の取得を推奨しています。
人生において、数えるほどしか無い赤ちゃんを育てるタイミング。出産後の奥さんの身体をいたわるためにも、会社に育児休業取得について相談してみてはいかがでしょうか。
育児休業制度は、父親にも母親にも手厚い制度となっています。この制度を正しく理解した上で夫婦で協力することがお互いの気持ちの余裕と健全な育児につながることは間違いありません。子育ては女性がするものという考え方は国の方針に沿わないものとなっているのが現状です。ぜひ家族として自分たちの大切な子どもを素敵な将来に導くため、育児休業をうまく活用しましょう!