「要するに」の意味や使い方、ちゃんと理解できていますか?
「無くて七癖」という言葉もありますが、私たちはみんな口癖や体の動作の癖を持っているものです。普段の何気ない会話の中でも、無意識に口をついて出る言葉が相手に不快感を与えている場合があります。
日本語の中でもよくある口癖のひとつが「要するに」という副詞です。特に意味をもたせずに口にしている場面も多く見受けられます。「あれこれ話したけどつまり」と言うように、長い話を自分で打ち切るために使っている方も多いのですが、正しい用法ではありません。
この「要するに」は、正しい使い方をしないと相手に不快感を与える原因にもなります。「要するに」の正確な意味や使い方を確認し、間違った使い方をしていないか自己チェックしてみましょう。
「要するに」はどういう意味?
「要するに」の意味は「まとめると」「要点を話すと」「つまり」というものです。
「要するに」の「要」は「かなめ」とも読みますが、扇子の根元でまとめている部分を指します。要が壊れると扇子全体が壊れてしまうことから、大事な部分やまとめる部分を言います。つまり、「要する」は「要約する」の意味で、話の内容のまとめとして大事なところを話すときに使うべき言葉です。
「要するに」の使い方で注意すべき4つの理由
「要するに」を口癖のように使ってしまう人も多いのですが、注意しなくてはなりません。「要するに」には、注意して使わないと他の人を不快にさせてしまう要素があるのです。
1 話が見えなくなる
「要するに」の使い方で気を付けたいのが、「話を打ち切って短い言葉で伝え直す」というもの。話をする側としては頭の中に全体が入っているので「要するに」のつもりで話すのですが、聞く側にとってはまだ聞いたことのない話まで出てくることも多く、話が見えなくなります。
2 雑に聞こえる
「要するに」というのは、物事の枝葉末節は切り捨てて、大事なところを抽出することです。これをむやみやたらと連発してしまうと、多くの物事をざっくりと切り捨ててしまうことになりますので、説明が雑になることもありますし、話を聞く側にとって配慮がなく聞こえることもあります。
3 話を聞いてくれない印象を与える
他人が話をしている最中に「要するにこういうことでしょ」と話をする人がいますが、これが最も嫌われる「要するに」の使い方です。
話を最後まで聞かずに、結論や要点を先読みして話してしまうのは、話をしている人に対して失礼な印象を与えてしまいます。相手の考えを整理してあげるような対話であれば問題ないですが、誰かが説明をしたり話をしているところに、勝手にまとめたりオチをつけてはいけません。
4 アイデアを横取りされたと感じさせてしまう
会議などで「要するに」を使う人の中には、より参加者に伝わりやすいようにまとめて話してくれる場合もありますが、中には良かれと思って自分の表現や意見をくっつけて話す人もいます。さも自分がアイデアを出したかのようにまとめてしまうので、もともとの話をした人に「意見を横取りされた」と感じさせてしまいます。
「要するに」の正しい使い方
「要するに」を使う時の注意点が分かったところで、「要するに」はどのような使い方をするのが正しいのか、例文を参考に確認していきましょう。
1 話の結論をまとめて強調する「要するに」
- 「月次報告は以上となりますが、要するに目標達成のために後が無くなっている状況です」
- 「本商品の機能についてご紹介して参りましたが、要するに『ひたすら便利』ということです」
話をしてきた最後に、結論として強調をする場合にも「要するに」が用いられます。この場合、今まで話してきた内容が簡潔に伝わるようなまとめをすることが必要となります。
2 相手の意見がまとまっていない・理解できない場合に尋ねる「要するに」
- 「要するに、本件はどこに問題があったと考えているの?」
- 「要するに君は何が言いたいんだ?」
レビュー(振り返り、相談)などをしている際に、話者の話がまとまっていない、もしくは説明不足で論旨が理解できない場合に尋ねる際には「要するに」を使います。相手の立場から見ると少し厳しく聞こえることも多いので、気を遣いながら整理して話しやすい雰囲気づくりを心掛けましょう。
「要するに」を言い換えるには?
「要するに」は相手に対し強い印象を与える言葉ですので、回避できる所ではできるだけ使わないようにするのがベストです。
「要するに」の類語のひとつとして「要は」がありますが、これでは「要するに」とほぼ同じようなニュアンスになってしまいます。その他に使える類義語としては以下のような言葉が挙げられます。
つまり
「つまり」は「要するに」と同じようなニュアンスがありつつも、多少やわらかい響きになります。ただし「要するに」と同様、あまりに連発すると理屈っぽく聞こえたり、理解の妨げになることがありますので注意しましょう。
結局(つまるところ)
「結局(つまるところ)」は最後にたどりつく所という意味です。「結論」と使う場合もあるため、「要するに」とは少しニュアンスが違う場合もあります。
また、「結局」が使われる場合、あまりポジティブなところに落ち着かない場合が多い傾向にあります。使用頻度が多い人は気難しい人、批判的な人、ネガティブな人と見られることもあるので注意しましょう。
「要するに」の英語表現は?
「要するに」は様々なニュアンスがありますが、本来的な「要するに」の意味に最も近い英語表現としては「in short (短く言うと)」「in a word (一言で言うと)」になります。
また、結論としての「要するに」であれば「last(つまり)」「finally(結局、最後に)」「in conclusion(まとめると)」といった英語表現ができます。
「要するに」が「言い換えると」の意を含むなら「in other words」が適当でしょう。
「要するに」という日本語を直訳するよりも、その意図から該当する表現を考える方がより英語らしい表現になっていきます。
「要するに」を多用しがちな人の特徴と対処法
「要するに」をつい不必要に使ってしまう人の特徴や心理、また、どう改善していくと良いのかをまとめました。
1 自分に自信があり周囲より優位に立ちたい
「要するに」を使う人には、リーダー的な立場の人や賢い人が多いですが、こうした人たちは自分に自信があって、特に知性において周囲より優位に立ちたいという気持ちを持っています。そのため、うまく情報を整理したい気持ちや、それを表現したい気持ちからつい「要するに」と言ってしまいます。
意見や情報をわかりやすくまとめるのは悪いことではありませんが、まずは「要するに」と口にする前に周囲をよく見回してみましょう。それで理解が不足しているようなら情報を整理してあげれば良いですし、理解できているようなら蛇足になりますので避けた方が時間の節約になります。
2 せっかちで話を最後まで聞けない
他の人の話を最後まで聞かず、長くなってくるとすぐに「要するに」と口にする、そんなせっかちで物事を早く決めたがる人も少なくありません。話者が話すよりも自分の頭の中で考える方が速いため、先読みしてその話を終わらせてしまいます。
話を途中で切りたくなっても、それは他の人も同じとは限りません。話の途中に自分の見落としているポイントがある可能性もありますので、自分の結論を検証しながら最後まで話を聞くことを心掛けましょう。
3 自分に自信がない
自分に自信がない人は、自分が話をしている最中に「要するに」を連発してしまいがちです。
「自分の話している内容が相手に伝わっている」という自信が持てず、その中で話を続けることに申し訳ない気持ちや恥ずかしい気持ちが大きくなってしまうと、早く終わらせてしまいたいために「要するに」と言って少しでも関心を引き、早々に話を終わらせようとします。
しかし、話の途中が抜けてしまうため、却って理解を難しくしてしまうことが少なくありません。普段から「要するに」に逃げないよう、整理して話す練習をしましょう。
4 理屈っぽい
「要するに」をよく口にする人は理屈っぽい人が多く、ひとつひとつのことについて結論づけてから次に進みたいという気持ちが強くあります。中身が整理されており伴っていればよいのですが、あまりに内容が複雑であったり、まとまっていない場合には却って知的に見えなくなりますので注意が必要です。また、人の話に「要するに」を加えたがると不快に感じる方も多いので気をつけましょう。
本当に知的な人は大事なことを簡潔に話すものです。全体を話して「要するに」とするのも良いですが、まずは「どこまで話すか」を先に考えて余計な情報をそぎ落とせないかを考慮すると、スッキリ話せてまとめるのも簡単になります。
「要するに」の意味を正しく理解し適切に使って評価を高めよう
大事なポイントを話すために使われる「要するに」は、聴衆に対して訴求力のある言葉です。しかしそれだけに、使い方を間違ったり内容が伴わない場合には悪い印象を与えてしまいやすい言葉でもあります。
本来の「要するに」の意味に基づき、普段から正しい用法を心がけると、その言葉に重みや信頼性が生まれ、周囲に知的で頼れるイメージを与えることができます。
日頃から「要するに」が口癖になってしまっている人は、不用意に口にしないよう注意し、正しいタイミングや用法で使うと周囲からの評価もアップするでしょう。