「御社」と「貴社」の違い・メールや電話は？場面別使い分け

「御社」と「貴社」を正しく使い分けよう

社会人になれば、ビジネスの場面で会話する相手の企業や所属する組織についての話題も非常に多くなります。その中で、相手が勤めている企業の呼び方で失礼が無いようにしたいものです。

相手の企業を指す場合には「御社（おんしゃ）」「貴社（きしゃ）」といった言葉を使いますが、その違いや使い分けを正しく理解できているでしょうか。このような言葉の使い分けは就活時にビジネスマナーの基本として意識する人は多いですが、社会人になっても間違った使い方をしている場合も少なくありません。

ここでは「御社」と「貴社」の違いや使い分けなどを紹介していくので、正しい使い方を覚えてビジネスマナーをしっかり身につけましょう。

「御社」と「貴社」の意味

「御社」と「貴社」は、そもそもどのような意味を持っているでしょうか。字面を見れば、相手の会社を指す言葉であることがわかりますが、「御」も「貴」も、昔から身分の高い相手を指すために使われる言葉です。そのため、「御社」や「貴社」は「（身分の高いあなたの）会社」という意味になります。もっとも今は身分制度があるわけではありませんので、あくまでこれは昔の名残でビジネスマナーとして相手を立てるために使われる言葉、敬称です。

「御」や「貴」という字は、もともと相手を立てるために使われる言葉です。そのため、相手の属する企業や組織を指しても、自分の会社や組織を指す場合には使いません。たとえば、自分の会社の社長と話していて、自分の会社を指すことがあっても「御社」「貴社」とは表現することはしません。社長を立てるとしても、自分の属する会社を指すために「御社」「貴社」は使わないのです。「御社」「貴社」で敬意を示すのは、ビジネス相手が勤めている会社や組織そのものである点に注意してください。

「御社」と「貴社」の違いは話し言葉か書き言葉か

「御社」と「貴社」の違いを簡単に解説すると、「御社」は話し言葉で「貴社」は書き言葉になります。「御社」は、面接や打ち合わせなど直接対話をする場合、「貴社」は文書やメールなどでのやり取りで使われるのが一般的です。昔は、「御社」と「貴社」の使い分けに関して区分はほとんどありませんでしたが、現在のように使い分けられるようになったのは1990年代頃からとされています。

ビジネスシーンでは、正確な情報伝達が求められますが、話し言葉では特に誤解がないように同音異義語と取られかねない表現はなるべく避けます。「貴社」の場合は「帰社」や「記者」など、ビジネスシーンでも見られる同音異義語が多いこともあり、できるだけ対話の中で使うのは避けた方が良いということで「御社」が台頭してきました。

「御社」も「恩赦」などの同音異義語があるものの、一般的なビジネスシーンで誤解を招くことはまず無いために、話し言葉で使われるようになっています。「御社」「貴社」の例に限らず、話し言葉では特に同音異義語に注意する必要があることはビジネスマナーとして覚えておくと良いでしょう。

「御社」と「貴社」のビジネスシーンでの利用例

ビジネスマナーは、互いに気持ちよく社会生活をするために必要なものです。社会人になれば他の会社、取引先等とお付き合いをすることになります。相手や相手の会社に対しては敬意を持って接するのがビジネスを円滑に進めていく上で大切ですので、ビジネスマナーのひとつとして様々な敬語表現も身に着ける必要があります。

ここで、メールや電話、面接時などよくあるビジネスシーンごとに「御社」と「貴社」の使い分けを例文と共に確認してみましょう。

メールを送る場合は「貴社」を使う

「お世話になっております。先日、貴社での打ち合わせの際に忘れてしまった書類を明日お持ちしたいのですが、ご都合はいかがでしょうか？」

「先日は貴重なお時間をありがとうございました。弊社の田中が『御社は取引先を本当に大事にしてくださる企業ですね』と言っておりましたが、私も全く同感です。本当に刺激になる時間になりました。今後のお付き合いの中で、是非この恩に報いていきたく存じます。」

取引先などへメールを送る場合は、書き言葉になりますので１つ目の例文のように「貴社」を使います。ただし、メールでも２つ目の例文のように、他の人の言葉を引用する場合は「御社」を使っても構いません。

電話で話す場合は「御社」を使う

「お世話になります。●●株式会社の田中です。先日の御社の新サービスの発表会に参加いたしまして、非常に興味深いサービスだと感じました。一度詳しいお話を伺いたいのですが、来週、ご都合いかがでしょうか？」

電話で取引先の人と話す場合は、この例文のように「御社」を使います。電話なのにもかかわらず、「貴社」と言ってしまうことの無いよう気をつけましょう。

面接で話す場合は「御社」を使う

「私が御社を志望する理由は、『顧客の幸せを共に喜ぶ』という企業理念に強く共感したからです。」

面接では、面接官に対して話すことになりますので「御社」を使います。就活生の中には、時々「貴社」を使う人も見られますが、面接の際に「御社」という言葉がスムーズに出てくるように練習しておきましょう。

書類に書く場合は「貴社」を使う

「私が貴社を志望する理由は、『顧客の幸せを共に喜ぶ』という企業理念に強く共感したからです。」

「貴社の所有する●●株式会社の株式参千株を△△株式会社に委譲するものとする」

就活の際に書く履歴書やエントリーシートだけでなく、仕事で必要な取引先などに向けた様々な書類を書く場合は、書き言葉の「貴社」を使います。

大勢の人の前でスピーチする場合は「御社」を使う

例：「厳冬の折、長時間に及ぶ野外での作業は非常に厳しかったかと存じますが、御社の社員の皆様のご尽力を賜りまして、この度、新店舗の開店の運びとなりました。当社の関係者一同を代表し、厚く御礼申し上げます。」

公的なスピーチや挨拶などの場面では、「御社」を使います。スピーチする中で、書き言葉の定型文が使われることもありますが、正しい敬語表現としては話し言葉を使うのが一般的です。

御社と貴社の使い方はできるだけ間違わないようにしよう

「御社」や「貴社」に限らず、相手先の企業に対する敬称を間違ってしまうと、とても恥ずかしい気持ちになってしまいます。もちろん、間違いがないのが一番良いことではありますが、もし間違ってしまったからと言ってそれほど気にする必要はありません。

たとえ「御社」と「貴社」の使い方を間違っても、通常のやり取りの中ではその間違いによってコミュニケーションに支障をきたすようなことは考えられないからです。

ただし、間違いが続いてしまうと、周囲に与える印象が悪くなる場合もありますので注意はしておくにこしたことはありません。もしも、就活の面接などで言い間違ってしまった場合は、間違いに気づいた時点で慌てずに言い直すのが良いでしょう。間違いは誰でもありますので、そこで減点されることはまずありません。間違っても訂正せずに話し続けてしまうと、「間違えた」のではなく「知らなかった」と思われてしまい、減点されることもありますので気をつけましょう。

文書では間違っても修正が可能ですので、提出前に必ず表現の間違いがないか確認しましょう。手書きの場合、修正や書き直しが面倒に感じるかもしれませんが、それも礼儀の一環として、しっかりと訂正した方が良いでしょう。

「御社」や「貴社」に「様」はつけない

「御社」や「貴社」の使い方の間違いとして良く見られるものに、「御社様」「貴社様」という使い方があります。「御」や「貴」はそれだけで尊敬を示し、相手を立てる表現になりますので、「様」をつける必要はありません。また、組織の敬称として「様」をつける場合は「株式会社●●様」など、相手の会社名に対して「様」をつけるのが一般的です。

「御社」「貴社」にあたる他の言い方

一般企業であれば「御社」「貴社」を使いますが、いわゆる会社ではない組織の場合には、それに対応した言い方があります。主なものを紹介するので覚えておきましょう。

銀行の場合は「御行」「貴行」

銀行の場合は株式会社ではありますが、「御行」「貴行」と言います。信用金庫の場合は、「恩金庫」「貴金庫」と呼ぶこともあります。使い方としては「私が御行を志望するのは、地域の発展のために小口の融資に力を入れているからです。」というようになります。

学校の場合は「御校」「貴校」

学校の場合は、「御校」「貴校」を使います。ただし、学校法人として複数の学校を運営している組織を指す場合は「御法人」「貴法人」、学校の名称で「学園」が使われている場合は「御学園」「貴学園」と表現する場合もあります。使い方としては「御校は文武両道で、生徒たちも課外活動にも活発に参加しており大変活力のある学校だと伺っております。」というようになります。