「兼ね合い」の意味や使い方を知ろう
社会人になると使う機会が多くなる言葉のひとつが「兼ね合い」です。「兼ね合い」とも「兼合い」とも表記され、もともとバランスや均衡などを意味する言葉です。
もちろん、日常生活においても「兼ね合い」という言葉は使われていますが、ビジネスシーンではこうした言葉が必要になることが多くなります。
ただ、あまりにも自然に使われているため、慣習的にその表現を覚えたのみで、実際にはきちんと意味を理解できていないままに使っている人も少なくありません。ビジネスにおいて言葉遣いの失敗は仕事の失敗につながりかねませんから、「兼ね合い」の意味や正しい表現方法、注意したい間違いを確認しておきましょう。
「兼ね合い」とはどういう意味?
兼ね合いの意味は、「均衡」「平均」「ふたつのものがうまく釣り合いを維持すること」などといったものです。バランスという解釈で使って問題ありません。
「兼ねる」は「合わせ持つ」という意味で、「大は小を兼ねる」など表現します。一方で「及ばない、できない」という意味を持ち、「それは対処し兼ねる」などと使います。真逆に思えるような意味を持ちますが、それが既にバランスを取っているようにも感じられるのが面白いところです。
「予算との兼ね合いを考えると」「生産ラインとの兼ね合いで」など、様々な形で使われています。また、言葉を続けて「兼ね合いを取る」や「兼ね合いを見る」といった用法もあります。どちらの場合にしても、バランスを意識するということで使われています。
「兼ね合い」と意味の似た言葉
「兼ね合い」と意味の似ている言葉は「均衡」「整合」「安定」「釣り合い(釣合)」「バランス」「平衡」など様々です。
ただ、意味が似ているからといって、そのまま類語を「兼ね合い」として代用できるわけではありません。「兼ね合いを考えて」という場合と「釣り合いを考えて」はちょっと違いますし、「整合を考えて」というのも違います。最も近いのは「バランス」ですが、英語表現でbalanceと使うケースと比較すると若干ネガティブな面があります。
「兼ね合い」は完全な均衡を求めてはいないというのが特徴で、程よいバランス、状況上仕方なく生じるバランスというニュアンスがあります。後述しますが、その曖昧さが実は使いやすさの秘訣で、ビジネスシーンで多用される理由なのです。
ビジネスシーンでの「兼ね合い」を使った例文
「兼ね合い」という言葉をどのように使うのか例文を紹介します。会話中のやりとりの参考にしてみてください。
一般的な「兼ね合い」の使い方の例
- 「予算との兼ね合いで本社移転は難しくなった」
- 「スポンサーとの兼ね合いで使えないシーンがあった」
- 「従来のメイン顧客との兼ね合いも考えた新しいデザインを提案してほしい」
- 「天候や波の高さの兼ね合いでフェリーの出港を見送ることがあります。ご注意ください」
- 「従業員の負荷との兼ね合いを考え、営業時間を短縮することにした」
- 「家庭と仕事との兼ね合いをつけることが社会人の難しいところだ」
- 「新車選びは予算と性能、そしてオプションの兼ね合いで考えるべきだ」
「兼ね合い」は、一般的には何かと何かのバランスの問題を表現する際に用います。報道などでも使われる言葉ですので、しっかりした印象を与えることからもビジネスシーン向きです。
「兼ね合い」に他の言葉がくっついた表現
「兼ね合い」には、「とる」「図る」「見る」「見つける」「つける」など、他の言葉をくっつけて使う表現がたくさんあります。
【兼ね合いをとる】
- 「品質と価格の兼ね合いを取ると、今の原価では難しいと言わざるを得ません」
- 「仕事と育児の兼ね合いを取ることを大切にしたいと思います」
「兼ね合いを取る」はバランスを取るという意味です。一般的な兼ね合いと同様に、ふたつのものの釣り合いをとりたいという思いを表現する時に使います。
【兼ね合いを図る】
- 「機能性とデザインの兼ね合いを図って新しい住環境の提案をしたい」
- 「通信速度とネットワークへのストレスの兼ね合いを図った新しいオフィス環境」
「兼ね合いを図る」というのは、バランスを取ろうとするという意味です。計画的にバランスを取ろうという積極的な意味になります。普段使われる「兼ね合い」は受動的・ネガティブなニュアンスがありますが、こちらは前向きな表現です。
【兼ね合いを見る】
- 「天気や気温の兼ね合いを見て、バイクのツーリングに行くか判断する」
- 「双方の兼ね合いを見てから決定したい」
「兼ね合いを見る」というのは、バランスが取れるように見る、チェックするというような意味です。
【兼ね合いを見つける】
- 「話し合った結果、兼ね合いを見つけることができた」
兼ね合いが取れる条件や内容を見つけることを「兼ね合いを見つける」と言います。妥協点を見つけるような場合にも使います。
【兼ね合いをつける】
- 「両者の兼ね合いをつける方法を探しています」
- 「兼ね合いがつくなら、この条件で進めたいと思います」
「兼ね合い」が取れる状態にすることを「兼ね合いをつける」と表現します。「折り合いをつける」と意味は近いですが、折り合いと比較した場合、「折り合いをつける」は相反する(対立する)状況が発生している場合に用い、「兼ね合いをつける」はこれから何かをすることで生じる状況のバランスをとるような場合に使うのが一般的です。
【兼ね合いが難しい】
- 「品質とコストの兼ね合いが難しい」
- 「人件費との兼ね合いが難しいのでスタッフの増員は厳しい」
兼ね合いを取ること、バランスを取ることが難しいという意味になります。ビジネスシーンでよく使われている表現です。
【兼ね合いがある】
- 「検討するべき兼ね合いがありますので、今すぐの返答は難しいです」
- 「メーカー側との兼ね合いがありまして、生産が間に合いません」
「兼ね合いがある状態」が本来の意味ですが、使われる場合には「兼ね合いを考慮する必要がある」意で使われます。
「兼ね合い」はバランスに配慮するというニュアンスで使うといい
「兼ね合い」と言う言葉がビジネスシーンで使われることが多いのは、ビジネスマナーとしては相手を立てるということを考えて発言することが求められるからです。
しかし、ビジネスシーンでは「あちらを立てればこちらが立たず」という状況が多く存在します。相手の顔を立てるのであれば、何でも希望通りにしてあげたいものですが、それをするには厳しい状況があるものです。そういう場合に「兼ね合い」を使います。
「兼ね合い」があることによって、相手の希望する条件そのままでは難しく、こちら側のバランスに配慮してもらいたいというニュアンスを示すことができます。
また、「兼ね合い」は「仕方なく」というニュアンスとセットになることが多く、ネガティブな表現が続くことも特徴です。バッサリと「無理です」と言えないのが社会人というもので、「兼ね合い」を盾にして断ったり、その場を逃れるためにも使われています。
必ずしも「兼ね合い」がネガティブな言葉であるということではありませんが、多くの場合は難しい事情が実際にあるものです。相手が兼ね合いを口にした際には、そのまま押し通すことは難しいと考えましょう。
「兼ね合い」を自分が口にするような状況というのは、それなりに板挟みになったストレスがある状況になっていると予想されます。
「兼ね合い」は仕事上のやりとりでも便利な言葉
「兼ね合い」という言葉がビジネスシーンで多く使われるのは、相手を立てようというビジネスマナー上の必要性によるところが大きいためです。相手を否定することなく断ったり、可能な範囲に物事のバランスを調整することが目的とされています。
便利な言葉ではありますが、そういったニュアンスや使い方をするものだと意識せず、「兼ね合い」をことあるごとに連発するようだと、相手からは物事を積極的に動かそうという意欲のない人だと思われてしまうこともあります。使うタイミングには十分気を付けてください。
本当に難しい時、自分の一存で判断できないような場合に使うべき言葉ですので、安易に使わないように注意が必要です。