ビジネスメールで使う「幸いです」の意味や使い方を紹介
ビジネスにおいて、書面やメールでよく使われるのが「幸いです」という言い回しです。しかし、意味はよくわからないけれど、何となく語尾として使っているという人もいるのではないでしょうか。
かしこまったメールでは、時にはくどい言い回しが必要である事もあり得ます。その中で正しく「幸いです」という言葉を使うには、どのような注意が必要とされるのかについて解説していきます。
「幸いです」の意味は?
「幸いです」という言い回しは、ビジネスシーンでよく使われます。メールの文面で見かけた事がある普段何気なく使っている「幸いです」の意味とはどのようなものなのでしょうか。
「幸いです」は相手への依頼、つまりこちらからのお願いの念を込めて使われます。相手が実行してくれたらこちらが嬉しい、助かる、といった意味合いです。自分本位ではなく、相手ありきの喜びの表現です。
また、「幸せです」は、相手に贈り物をする場合にも使われます。喜んでいただければこちらも嬉しいです、といった意味で使います。相手が喜んでくれる事、相手の役に立てることを期待する気持ちを伝える事が目的です。自分の都合で勝手ながら喜んでくれればありがたい、といった気持ちを込める事ができます。
「幸いです」は上の立場の人や目上の人へのメールで使う
「幸いです」は立場が上の人や職場の先輩、親しい間柄の会社関係の人にあてて使われます。また、より一層相手に敬意を払い、確実に尊敬の意を示したい場合は、「思います」の敬語である「存じます」を用いて、「幸いと存じます」や「幸いに存じます」という言い回しを使った方が良いとされています。
相手との距離が近く、親しい同僚や会社関係の人には「助かります」を使う事もできますが、上司にあてて使うのは失礼なのでやめておきましょう。「幸いです」を形式だけのものだと捉えて好ましくないと考える人もいますが、ビジネスにおけるメールなどの文面で多用されているので、その点に関してはそれほど気にかける必要はないでしょう。
「幸いです」を使用する際に気を付けておきたいのは、あくまでも相手への期待よりも自分の希望を伝えるに留まる言い方であるという事です。この言い方は、お願いの優先順位が低くなってしまいます。そのため、相手には「しなくてもいいのか」「後回しにしてもいいのか」といったように受け取られてしまいがちです。
よって、「してほしい」という強い気持ちよりも、「してくれれば良い」というくらいの気持ちしか伝わらないため本当に急ぎの用事や、どうしてもやってもらわなくては困るという場合は使わない方が良いでしょう。
「幸いです」を他の言葉で言い換えたい場合は?
「幸いです」を言い換える言い回しはいくつかあります。「~して頂ければ幸いです」「~して頂けますでしょうか」「~して頂きたくお願い申し上げます」などが挙げられ、形を変えて自分の希望や要望を伝える事ができます。
「~して頂ければ助かります」「都合が良いです」などといった言い回しも可能ですが、これは目上の人に対して使うと失礼にあたる事もあるので、注意が必要です。
なお、「幸いに存じます」という言い回しを使いたい時は、相手の立場に気を付けましょう。「存じます」は謙譲語です。謙譲語は動作の対象となる人に対して自分がへりくだり、相手に直接敬意を表すためのものです。そのため「存じます」を使う時は、謙譲語を使うべき相手かどうかを見極める必要があります。
「幸いです」の類語は?
類語としては「不幸中の幸い」や「幸いにも~できる」など、運の良さや都合の良さ、幸福を表す言葉があります。「感謝感激です」「何よりの朗報です」「ありがたく存じます」など、「幸いです」以外にも、こちらから相手に喜びの念を伝えるための言い方がある事を覚えておくと、ビジネスにおけるメールのやり取りに役立つでしょう。
「幸いです」と「幸甚です」の使い方の違いは?
「幸いです」という言葉の代わりに、「幸甚(こうじん)です」という言い方が使われる場合も少なくありません。では、「幸甚です」とは、どのような時に使うべきなのでしょうか。
「幸いです」よりも丁寧に伝えたい時に使う
通常「幸甚です」は、目上の人に対して「幸いです」よりも更に丁寧な言い方として使われます。相手が上司や役員、大事なクライアントなどである場合は「幸いです」よりも「幸甚です」を使うべきだと考えて問題ないでしょう。
「幸甚に存じます」という言い方でメールなどの文面では硬さを加える事ができ、主にこちらを使う事が多いです。「幸甚です」は、それよりも少し硬さをやわらげた言い方と言えます。
「幸甚」の由来は「甚だ(はなはだ)幸せ」
「幸甚」という言葉は、「甚だ(はなはだ)幸せ」という言葉に由来するものです。「甚だ」とは、程度が激しく大きい事を指し、非常に、酷く、などというように状態や物事を強調することを意味します。ですので、「幸甚」は非常にありがたく、この上なく幸せであるといった最大限、最上の幸福の表現の仕方であると言えます。
「幸甚」を使った文例
実際に「幸甚」という言葉を使った例文としては、「ご連絡頂ければ幸甚です」や「当方までご一報頂ければ幸甚に存じます」、「お会いできまして幸甚の至りでございます」といったものが挙げられます。どれも重要な取引先などを相手にした時に、間違いなく使えるようにしておきたいところです。
「幸いです」は口語でも使える?
メールを送ったり、書面に記したりする場合、「幸いです」という言い方はとても重宝されますが、口頭では使われる事はありません。「幸いです」はあくまでも書面の上でのやり取りにのみ使われる言い回しで、会話の中では使われません。「幸いに存じます」など、文に起こす事で相手に気持ちを伝える事ができる言い方でも、口に出すと違和感を与えてしまいます。
では、「幸いです」という気持ちを口頭で伝えるには、どのような言い方をすれば良いのでしょうか。例はいくつか挙げられます。基本的には口語としても使う事ができる「です」や「ます」、「ございます」といった、従来よく使う語尾をつけても失礼にあたる事はありません。
他にも「ありがたいのですが」といったように、語尾を曖昧にしてぼやかすような言い回しもできます。また、「ありがとうございます」や「本当に助かります」、「恐縮です」なども口語として使っても問題ありません。
普段口にしている何気ない言葉が相手にとって失礼にならないかどうか考えてみると、意外と「幸いです」という言葉を使って気持ちを伝える事に支障がないという事がわかります。無理に難しい言葉を使おうとしたり、改まった言い回しを考えると会話がぎこちなくなり、かえって自分の気持ちを相手にわかってもらう事が難しくなってしまいます。あくまでも失礼のない程度に敬語を使えれば問題ないという事を忘れないでください。
「幸いです」を英語変換すると?
「幸いです」という気持ちを英語で表すには、どのような言い回しをすれば良いのでしょうか。一般的には、以下のような文を使います。
「I would appreciate if you could 動詞.」
動詞の部分に相手にお願いしたい行為を当てはめて、「(動詞)して頂ければ幸いです。」という文を作ります。
また、「could」を使うという事に注意してください。「もし~してくれたら」という仮定を表すために必要な分詞として使用する事を忘れないようにしましょう。
文末に「as soon as」を加えて、「できるだけ早く」「早急に」という意味を付け足す事もできます。ただし、英文であっても日本語と意味は変わりありませんので、この場合も優先度が高いお願いではない表現であると捉えられる可能性が高いという事を充分考慮してください。
「幸いです」はメールで使いすぎないようにしよう
「幸いです」という言い回しを正しく使うためには使いすぎてはいけないという事も頭に入れておきたいところです。いくら丁寧で相手に敬意を払っているからといって、敬語を乱発しては逆効果です。
また、「~いたします」や「~してもらう」といった言葉を使う時は、ひらがなを使う方が良いでしょう。これらの言葉は謙譲語ではなく補助動詞なので、漢字に変換する必要はありません。「幸いです」という言葉を使う時に一緒に使う事が多い言葉なので、覚えておくと役に立ちます。
「幸いです」という言葉は敬語を使う事があまりない英文にも言い換えることができるように、相手にこのようにしてくれたら自分も幸せであるという気持ちを伝える事ができる数少ないものです。用法を間違えずに使うようにしましょう。