ビジネスメールで使うべきは「表題の件」か「標題の件」のどちらが正しい?
現代のビジネスに電子メールやSNS風のチャットツールは欠かせないものになりつつあります。文字情報でのやり取りと言えば、昔から文書や手紙がありますが、その中で作られた様々な言葉が今のメール社会でも使われています。
しかし、元々の使い道を適用するのが難しい面もあります。たとえば、ビジネスメールにおいて「表題の件ですが、進捗はいかがでしょうか?」と使う場合もありますが、「表題の件」ではなく「標題の件」と表現する人もいます。
間違いではないですが、スッキリしなかったり、また言われてみるとどちらが正しいか不安になる人もいるでしょう。この「表題の件」について、正しい知識や考え方を覚えておきましょう。
「表題の件」の元々の意味は本のタイトルのこと
今は手紙のやり取りは少なくなっており、電子メールやチャットツールを利用したやり取りがビジネスでもプライベートでも多くなっています。
「表題」というのは、元々は「本などのタイトル」を意味するもので、文字通りに表面から見える題目を意味していました。そのため、電子メールやチャットツールでは事情が合わない部分があります。
ちなみに、「標題」という場合には「標(しるべ)」になる題ということで、大きなテーマ(題目、タイトル)がある中での1つの題目という意味で、本で言えば章ですし、講演会などでは会のテーマの中で話す一つの演目の題目などの意味です。
時には「表題」イコール「標題」となりますが、表題の方が大きく、その中に標題があるという認識が一般的なニュアンスとなります。
ビジネスメールでは「表題の件」でも「標題の件」でも問題はない
結論からビジネスメールのやり取りでは「表題の件」でも「標題の件」でもどちらでも構いませんし、実際同じように使われています。多少違和感を覚えることがあっても、大きな問題が出ることはまずありません。使いやすい方を使うと良いでしょう。
ビジネスメールにおけるタイトルが、「表題」にあたるのか「標題」に当たるかは意見の分かれるところで、前提にしているものが本とメールと全然違うため、まったく同じように考えるのがナンセンスです。
覚えておきたい「表題の件」使用上の注意ポイント4つ
「表題の件」は便利な表現ではありますが、使う際には注意も必要です。使用上の注意ポイントを紹介していきます。
1.できれば「表題の件」ではなくちゃんと内容を明記した方が良い場合もある
「表題の件」と書いてしまえば文章もスッキリしますので、ビジネスメールを書く側も読む側も楽になります。しかし、多くのビジネスメールを受信する立場にある人であったり、何度も同じトピックでのビジネスメールのやり取りが続いている中で突然「表題の件」と出てくると何の話だったか見えなくなることがあります。この場合は表題の内容を明記した方が良いでしょう。慣習的に「表題の件」とはせず、メールの読み手のことを考えて使う必要があります。
2.メールのやり取りが続いた時は表題と用件が合っているか確認する
「表題の件」や「標題の件」を「メールのタイトルの件」ではなく、「このメールのやり取りで話題にしている件」と理解している人が時々見受けられます。
メールのタイトルは「来季計画に向けた予算作成について」であるのに、計画について話をしているうちに営業戦略の話が増えてきて「表題の件ですがAエリアにおいて営業人員の教育のために●●君を配属してはいかがでしょうか?」と「表題」と違った内容を話してしまうような具合です。
表題と用件が合っていない場合には、読みにくくなりますし、特に逐一細かく目を通している主な担当者以外は読解が大変になり、表題と用件が合致しているかよく確認しましょう。表題と用件が変わってしまう場合は、きちんと何の件なのかを別途明記するようにしましょう。
3.チャットツールには表題がないので相手からの見え方に配慮が必要
チャットツールの場合は表題が基本的にないため、「表題の件ですが」と言われても何の件だかわからないことがあります。過去のやり取りから当然わかるだろうと考えてしまいがちですが、特にビジネスではしっかり相手と通じるように「B社の新規案件の件ですが」などと配慮して記載することが大切です。決して使ってはいけないわけではありませんが、相手からの見え方への配慮が大切です。
4.「表記の件」はわかりにくいので使わないようにする
「表題の件」と似たような表現には「表記の件」という言葉もありますが、「表記の件」は「書いてあること」を意味するものです。便利に思って使っている場合でも、同じビジネスメールの中に「表題の件」と「表記の件」が混在していたりすると読み手にはわかりにくくなるので注意しましょう。また、内容が多くなると「表記の件」が示すものがわかりにくくなり、できるだけ使用を避けた方が無難です。
「表題の件」の使い方と例文で意識しておきたいポイントを確認しよう
「表題の件」の使い方を例文で確認してみましょう。件名(メールではtitle、subject、subと表記されることが多い)をしっかり確認するようにしてください。
「表題の件」の一般的な使い方の例文
件名:新入社員の歓迎会のお知らせ
おつかれさまです。
表題の件ですが、先日皆さまのスケジュールをお伺いした結果、7月7日に行うことにさせていただきます。詳細は下記にまとめてありますのでご確認ください。
取り急ぎ、出欠のご連絡を今週中に私までご連絡お願い申し上げます。
(以下略)
「表題の件」は、メールの件名を再度表記せず、スッキリとさせたい場合に使うのが一般的です。意識しておきたいポイントは、メールを受け取る関係者がそのことをしっかり認識できることです。伝えたい内容についてのやり取りが以前に行われていたり、日常的に行われている時ほどスッキリ伝わります。逆に言えば、初見の内容についてはできるだけ使わない方がベターです。
「表題の件」のあまり良くない使い方の例文
件名:Re:>RE:>FW:>RE:>RE:新入社員の歓迎会のお知らせ
おつかれさまです。
表題の件ですが、先日皆さまのスケジュールをお伺いした結果、7月7日に行うことにさせていただきます。詳細は下記にまとめてありますのでご確認ください。
取り急ぎ、出欠のご連絡を今週中に私までご連絡お願い申し上げます。
(以下略)
上の例と本文の内容は全く同じですが、件名に返信を表す「Re:」や転送を表す「FW:」がたくさんついている点が違います。何度もこの件名でやり取りをしていると、このようなメールになっていきます。
意味や内容は同じですので通じるには通じるのですが、こうなってくるとメールの件名が、メールを開く前には「Re:>RE:>FW:>R」など途中で切れて表示されている場合もあります。
この場合、メールの表題(の大事な部分)が見えていないため、「表題の件」が唐突に感じられてしまうことがあります。やり取りが長くなっている場合は、なるべく「表題の件」と省略せずに「新入社員の歓迎会の件ですが」と表記した方が良いでしょう。
「表題の件」正しい使い方は時代の流れで変わることもあるので注意
現在のところ、「表題の件」でも「標題の件」でも「掲題の件」でもどれでも意味が伝われば問題はありません。しかし、こうした言葉の使い方については、時代と共にある表現が廃れていき、自然と正しい使い方が決まっていくことがあります。
少なくとも、一般常識という点でいくつかの用語が使えるという認識を持ちつつ、社内常識として社内で使われていることが多い言葉を使った方がコミュニケーション上はスムーズです。
会社が変わったり、時代が変われば、正しい使い方は変わってきます。特に「表題の件」のように、元の出所(本など)と現在の使われ方(メールのやり取り)が違う場合にはその可能性も高くなりますので、あまりこだわりすぎず、柔軟に対応しましょう。
「表題の件」の類義語は標題の件の他にもたくさんある
「表題の件」に似た言葉は「標題の件」以外にもたくさんあります。それぞれニュアンスに若干違いがありますので覚えておくと良いでしょう。
「表題の件」の類義語:掲題の件
「題としてかかげた件」という意味を持ちます。辞書によっては掲載されていないこともありますが、ビジネスメールに使うには最も適当な表現とする人も多いです。
「表題の件」の類義語:首記の件
首記は、「冒頭に記してある内容」という意味です。学校で保護者向けに配布されるプリントなら、宛名や差出人の他に、「運動会のお知らせ」など冒頭に書かれている内容があると思います。これが首記に当たります。ビジネスメールのタイトルが首記にあたるかというとピンとこない人も多いため、あまり使う人は多くありません。
「表題の件」の類義語:首題の件
首記の件と同様に、手紙や通達所などの冒頭に書かれている題目です。首記と比較すると、題目らしくまとまっている印象を受けますので、首記よりも首題の方がビジネスメールの件名では適切です。
「表題の件」を使うのは「相手のため」なのを忘れないで
ビジネスシーンのやり取りで便利に使うことができる「表題の件」ですが、使う際には自分の便利さのためではなく、読み手にとってわかりやすいかをよく考えましょう。「表題の件」には類似の表現もたくさんありますが、相手が使う表現に合わせることができれば一番無難です。
相手に配慮したコミュニケーションができると、やりとりもスムーズになり、周囲からも良い印象をもってもらえます。自分のためにではなく、相手のために「表題の件」を活用しましょう。