人事異動があれば転勤挨拶状を作成しよう
年末年始や年度末にかけては、業務の締めくくりや決算に向けてあわただしく過ごしていることも多いですが、一方で人事異動が行われるシーズンでもあります。
この時に異動の辞令があれば、業務の引き継ぎや挨拶周りに奔走することになるでしょう。直接挨拶に回れる件数には限りがありますから、そういった場合は手紙やメールなどで転勤挨拶状を作成して送りましょう。
挨拶が無いとしても引継ぎさえできていれば業務上は支障がほとんどありませんが、企業間や社内において人間関係を良好に保っていくためにもとても大事な行為です。これが上手にできてこそ、社会人としてのマナーができていると評価されます。
転勤挨拶状は書かないとダメなの?
転勤挨拶状は、文字通り転勤のご挨拶を行うための文書となりますが、絶対に無くてはならないものかと言われればそうではありません。しかし、今まで積み上げてきた良好な関係を維持し、引継いた人に残すためにもできるだけ書いて送った方が良いのは間違いありません。また、社内においての転勤挨拶状は、同僚との良好な関係を維持するために効果的です。
マストではありませんが、できる限り書いた方が良いものとして認識しておくと良いでしょう。自力で書くのが大変、面倒という人は、ネット上に多数公開されているテンプレートなどをそのまま使ってメールで送るだけでも構わないので、簡潔だとしても極力送るように心がけてください。
転勤挨拶状を書いた方がいいケースと送り先
転勤挨拶状はどういったケースで必要となるのかというと、基本的には転勤や出向、部署の移動が発生し、それまでと同様に行き来が少なくなりそうな場合です。状況に応じて送り先も様々です。
1 取引先への挨拶状
取引先などへの転勤の挨拶は直接訪問して挨拶と次の担当者への引継ぎを行うのがベストですが、遠方など直接訪問するのが難しい状況の関係者には転勤挨拶状で転勤があったことについて通知します。
2 社内への挨拶状
社内報などでいずれは広報される内容ではありますが、適切と思われるタイミングで特にお世話になった方々に対して転勤挨拶状を送ります。個人単位に送る場合や、部署などの組織単位で送るなど様々な方法があります。
3 家族・親戚への挨拶状
手紙やメールなどでしっかりした文書を作って行うことは少ないですが、家族や親戚などで特に仕事に関してもお世話になっている人がいれば、転勤挨拶状を出しておいた方が良いでしょう。
転勤挨拶状を送るタイミング
転勤の挨拶状を送る人が決まったら、次は送るタイミングを考えます。転勤挨拶状を送るタイミングは、大きく分けて転勤前と転勤後に分けることができます。
転勤前に挨拶状を送る場合
異動について内示がされ、本人が転勤について準備を始めるとしても、すぐに転勤挨拶状を送るべきかの判断は慎重に行う必要があります。その理由は、本人には通知されていても社内ではまだ異動について正式に発表されていない場合があったり、また正式な発表までは変更の可能性もあるからです。
ただし、かなり確定的な場合や、挨拶周りのための時間がほとんど取れない急な異動が発生する場合もあり得ます。どのタイミングで転勤の挨拶や転勤挨拶状の送付を行うかは、上司とよく相談して決めるようにしましょう。
転勤後に挨拶状を送る場合
転勤後、新しい職場に着任してからでも転勤挨拶状は送ることができます。この場合には、新しい職場に着任してからの自分の様子も合わせて伝えると良いでしょう。中には急な辞令が下されるケースもありますが、転勤後に転勤挨拶状を送る場合には、着任してから1ヶ月以内、遅くても2ヶ月以内に送るのがマナーとされています。
転勤が決まってからは引っ越しや引き継ぎ作業でバタバタしがちですが、本来は転勤が決まってからすぐに作成して送るべきものです。のんびりしても良いということではないということを心に留めておきましょう。
転勤挨拶状に書くべき内容
転勤挨拶状にはどのような内容を入れるべきか確認しておきましょう。
挨拶文
季節の挨拶や相手の近況を気遣うような挨拶は、社会人としての手紙のマナーです。
「新緑の候、●●様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?」と相手を気遣う一言があるかないかで親近感や風情がだいぶ違ってきます。
いつからどこへ転勤するのか
転勤挨拶状ですから、転勤についての内容が必ず必要です。内容では「どこから」「どこへ」「いつから」移ることになるのかについてしっかり示しましょう。今後、直接のやり取りが発生しないにしても、新任地の連絡先についてもしっかり通知しましょう。
今までの感謝と転勤先での意気込み
今までお世話になってきた方々には、その感謝を必ず述べた上で、新天地での意気込みも一言あると良いでしょう。感謝はできるだけ具体的に述べること、意気込みはポジティブに表現することが大切です。そして、今後も変わらないお付き合いができるようにお願いを添えて送ります。
転勤挨拶状の作成において注意すべきマナー
転勤挨拶状はお世話になった人に送る大切な挨拶状です。転勤挨拶状の作成に際して、マナー上の注意も確認しておきます。
1 宛て名は「様」「御中」を使う
手紙やメールなどの宛名においては「殿」「様」などが使えますが、「殿」は個人を相手として使い、基本的には公式の場や目下の人に対して使う言葉です。相手によっては失礼になる場合もあり、個人に対しては基本的には「様」を宛名で使います。会社や部署などの組織単位になる場合には「様」「宛」ではなく、「御中」を使うのが基本的なマナーです。
2 返信は求めない
転勤の挨拶状については、基本的にこちらからの一方的な通知という性質を持ちます。返信があれば嬉しいものではありますが、返信が無いからと言って相手のマナーや態度に腹を立てたり、寂しく感じてしまわないように気を付けてください。
3 送るべき相手にも気を遣う
誰宛てに転勤の挨拶状を送るべきかは非常に大事な問題です。基本的にはお世話になった人を中心に送るべきですが、個人的な関係だけでなく社会的な立場からも妥当と思われる相手・範囲に送るべきです。良くしてもらった先輩や同僚には送り、部長にも送って、直属の上司だった課長には送らなかったでは課長に対して失礼となります。会社規模や組織形態によってどの程度まで送るべきかは判断が異なりますので、よく考え、困るようなら上司にも相談してみましょう。
4 できるだけ個別に送る
社内、社外のどちらのケースでも、転勤の挨拶状は、できるだけ宛先を分けて送る方がマナーとして良いです。こうした挨拶というのは、一対一の関係の中で送られていると考えた方が嬉しいものだからです。たとえ時間が取れずに、内容は同じになっても、せめて個別に送信するようにしましょう。
5 誤字・脱字に注意する
基本的なことになりますが、誤字脱字には注意が必要です。マナーとして行っている挨拶状で誤字や脱字があることによって気を害してしまったら意味がありません。特に会社名や人名には注意を払いましょう。誤字や脱字がこうした挨拶状の中で見られると、新任地での活躍にも不安がよぎります。必ず送るまえに一度は誤字・脱字を確認してください。
転勤挨拶状の文例
転勤挨拶状を送る際の参考例文をいくつか紹介します。
転勤のご挨拶1
謹啓
新緑の候 A様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
○月○日より△△支社勤務を命ぜられ、過日着任いたしました。
××本社在勤中は公私にわたり格別のご懇情を賜り厚く御礼申し上げます。
まだまだ右も左も分からず、日々奮闘しておりますが、日ごとに新しい環境にも慣れつつあり、意欲的に職務に取り組んでおります。
引き続き、変わらぬご指導とご鞭撻をいただけましたら幸いです。
まずは略儀ながら、書面にてご挨拶申し上げます。
謹白
平成○年○月
▼▼▼株式会社
△△支社□□部
○○○○(名前)
〒XXX-XXXX
○○県○○市○○町X丁目XX-XX
電話 XXX-XXXX-XXXX
転勤のご挨拶2
拝啓
陽春の候、皆様には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
私事ではございますが、このたび○月○日付をもちまして▼▼▼株式会社××本社より、△△支社勤務に異動となりました。
本社在勤中には大変お世話になり、誠にありがとうございました。
新任地におきましても、精一杯精進していきたく存じます。
今後につきましても、変わらないご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
こちらにお越しの節や御用の際には、ぜひお声がけください。
敬具
転勤のご挨拶3
謹啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
このたび、○○株式会社への出向を命ぜられ過日着任致しました。
▼▼▼社在勤中は公私ともに格別のご指導ご懇情を賜り厚くお礼申し上げます。
新任務におきましても、一層のご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
末筆ではございますが皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもちましてお礼かたがたご挨拶を申し上げます。
謹白
転勤挨拶状を送って周囲と変わらぬ関係を保とう
転勤挨拶状というと難しく考えてしまいがちですが、ほとんどは定型文で構わないため、送る際のマナーにさえ注意しておけば難しいことはありません。
異動が発生した場合には引継ぎ事項も多く、プライベートでも住居の移動を伴う可能性もあります。しっかり作成したいと思ってもゆっくり時間を取ることも難しい場合も多いもの。大事なことはしっかり転勤した旨と新任地での連絡先を伝え、大切な人たちとの関係を保つことと心得ましょう。