ビジネス文章では拝啓をよく使う
「拝啓」や「敬具」などの言葉は、改まった手紙を書く時に使うと知っていても意味までは分からないという方も多いのではないでしょうか。形式的に使うことの多い挨拶ですが、もしかしたら勘違いして覚えているかもしれません。
就活の添え状にも使うことがあり、就職後はビジネス文章でもよく使う言葉ですので再確認しておきましょう。今回は拝啓などの言葉の意味や使い方について例文を交えてご紹介します。
拝啓の意味や使い方について
拝啓は手紙の最初に書く頭語のひとつです。文章の書きだしに書く「拝啓」にはどのような意味があるのか、正しい使い方などについてご説明します。
拝啓とは「拝啓仕候」が縮まって書かれた言葉
拝啓には「つつしんで申し上げる」「へりくだって申し上げる」という意味があります。漢字を見ると分かりやすいです。「拝」は目上の人に話すときなど自分をへりくだって言うときに付ける言葉、「啓」には申し上げるという意味があります。元々は「拝啓仕候(はいけいつかつりそうろう)」と書かれていました。この言葉が縮まって「拝啓」と書かれだしたのは明治時代の中ごろと言われています。
拝啓は敬具とセットで使うのがルール
拝啓を使う時に大事なのは最後に「敬具」を付けることです。拝啓は頭語、敬具は結語と呼ばれ必ずセットで使うルールがあります。ワードなどの文章作成ツールでは「拝啓」と打つと自動的に「敬具」も付け足されるので便利です。
拝啓は次に続く挨拶で季節を表す
拝啓は一年中使いますが、次に続く時候の挨拶は季節によって変えます。「拝啓 ○○の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」というように書きます。
時候の挨拶には決まりがあって、1月なら「厳寒の候」、5月なら「新緑の候」と言ったように時期に合わせた言葉を使います。ビジネス文章では「拝啓 時下ますます…」のように季節を問わず使える「時下」を使うことも多いです。
季節ごとの時候の挨拶について簡単にまとめましたので、こちらも参考にしてください。
- 【春】 3月 早春の候 4月 陽春の候 5月 新緑の候
- 【夏】 6月 初夏の候 7月 盛夏の候 8月 残暑の候
- 【秋】 9月 初秋の候 10月 秋冷の候 11月 晩秋の候
- 【冬】 12月 寒冷の候 1月 厳寒の候 2月 春寒の候
拝啓を書く位置は縦書きと横書きで変わる
縦書きと横書きによって変わります。ビジネス文章に多いメールや横書きの手紙なら送付日や相手の部署名、自分の署名の後に拝啓と時候の挨拶を書きます。本文を書き終わったら次の行の右側に敬具と書きます。
縦書きなら一番初めの行から拝啓と時候の挨拶を書き、敬具で結んだ後に送付日や自分の署名を書きます。拝啓は行の上に、敬具は下に寄せて書きましょう。
拝啓以外の頭語と結語について
ビジネス文章では拝啓と敬具の組み合わせを使うことが多いですが、拝啓の他にも文章の初めに付ける頭語があります。その中からビジネスでも使いやすい頭語と結語のセットをご紹介します。
一般的な手紙の場合拝啓と同じようによく使われる頭語と結語の組み合わせです。
- 拝呈+敬具
より丁寧に書きたい場合の拝啓
目上の人に送る場合や改まった文章の場合など、拝啓より丁寧に書きたい場合には次の組み合わせを使います。
- 謹啓、謹呈、恭啓+敬白、謹言
返信する場合の拝啓
相手からもらった文章に返信する場合は次のような組み合わせを使うこともできます。
- 拝復、復啓+敬具、謹答
急ぎの手紙の場合の拝啓
急いで連絡したいことがある時に使う組み合わせの例です。
- 急啓、急呈+早々、草々
初めて手紙を出す場合の拝啓
初対面の相手に手紙を出す時は次のように書くと丁寧になります。
- 初めてお手紙を差し上げます+敬具
- 突然お手紙を差し上げる無礼をお許しください+敬具
女性の場合の拝啓
女性専用の頭語と結語もあります。拝啓よりもやわらかい印象にしたい場合はこちらを使うのも良いでしょう。なお「かしこ」は頭語や時候の挨拶を入れずに使うことも可能ですが、入れたほうが丁寧な印象を与えます。
- 謹んで申し上げます+かしこ
- 一筆申し上げます+かしこ
- お手紙ありがとうございます+かしこ
時候の挨拶を飛ばしたい場合の拝啓
- 前略+草々
いきなり本題に入りたい場合は「前略」を使います。「前略 ○○の件についてですが…」のように時候の挨拶などを飛ばして書く場合に使い「草々」で結びます。時候の挨拶を書くのが面倒な時使えそうですよね。ただし、よっぽど親しい間柄でなければ使わない方がよいでしょう。
特に目上の人に対しての文章やお詫びやお断りの文章では失礼な印象を与えてしまうので絶対使ってはいけません。多少面倒でもきちんと挨拶文を入れた方が良いでしょう。
ビジネス文章なら基本の「拝啓+敬具」だけで間に合う
参考になったでしょうか?仕事で使う文章なら拝啓と敬具だけで十分間に合いますが、時と場合によっては使い分けをしてみるのも良いですね。改まった文章や相手に良い印象を残したい時などに頭語を使い分けたり時候の挨拶を工夫してみたりすると丁寧な印象を与えることができます。