ポータブルスキルがあれば転職だって怖くない

ポータブルスキルとは、昨今の人材市場で注目されているスキルで、労働環境の変化の中で、専門スキルと合わせて人材評価の柱となりつつあります。ポータブルスキルについてインタビュー形式でわかりやすく紹介しています。

ポータブルスキルがあれば転職だって怖くない

これからは人材を評価するポータブルスキルが欠かせない要素になる

人材市場では、現在「ポータブルスキル」が重要になると注目されていて、実際、すでに採用や人事考課の場面でポータブルスキルに着目している企業も増えているところです。ポータブル(持ち運べる)スキル(技術)は、会社や位置を問わず活躍できる人材を評価する上では欠かせないものとなっています。今回は人材エージェントとして活躍している須来留さんに、大学生の酒井君がポータブルスキルについてインタビューを敢行しました。

持ち運びができるポータブルスキルはたくさんある

―須来留さん、酒井です、本日はどうぞよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

―「ポータブルスキル」についてお伺いしたいのですが、まずポータブルスキルの意味から教えていただいてよろしいでしょうか。

はい。「ポータブルスキル」というのは「ポータブル」つまり「持ち運べる」、スキルのことを言います。スキルは技術とか知識とかですね。

―「持ち運べるスキル」、と言われてもパッと浮かばないのですが、どういうことですか?

普通、「スキル」っていうのは特定の環境や状況において発揮されるんですよね。野球をするならボールやバットを扱うのがスキルになります。でも、そうじゃないものもある。「走る」ということはマラソンやラグビー、サッカーでも使える。このように特定の環境によらず使えるスキルを「ポータブルスキル」と言うわけです。

―なるほど。でも、ビジネスの場だとどういうものがポータブルスキルになるんですか?

詳細に分けるとキリがないのですが、たとえば「問題解決能力」や「対人スキル」、「計算力」「プレゼンテーション能力」「リーダーシップ」などがそれにあたりますね。

―あ、それならイメージ沸きます。確かに、どれもどんな会社に行っても使えそうな能力ですものね。こういうものが今は求められているということなんですね。

ポータブルスキルが必要になってきた理由は転職が普通になって人の出入りが増えたから

外の景色を見る女性社員

―それにしても、昔からそういう能力って必要だったんじゃないかって気がするんですが、どうして最近になってポータブルスキルが注目されてきたんでしょうか?

いい質問ですね。ポータブルスキルが注目されてきた最大の理由は、「日本の雇用環境が昔と大きく違ってきた」という点にあります。

―「雇用環境が違ってきた」というと、つまりは年功序列や終身雇用がなくなってきたとか、非正規雇用が増えたとかそういうことですか?

ええ、酒井君、よくわかってますね。ニュースなどでもよく見かけるフレーズだと思いますが、これが人事評価の形も大きく変えてきているんです。

―イヤ、全然わかってないんですけどね。それらしいことを適当に言ってみたら当たってたみたいです(笑)。詳しくお聞かせ願えますか?

はい。昔は年功序列や終身雇用というシステムがありましたが、次第にこれが崩壊し、転職をするということが普通になってきました。すると企業側も中途採用を受け入れることが当然になります。また景気変動への対応から、雇用期間の短い非正規雇用が増えました。簡単に言えば、企業への人の出入りが昔と比べてずっと増えているんです。

―企業への人の出入りが増えた…。わかった!だから、持ち運びができるポータブルスキルなんですね!

そうです。以前、企業は人材を採用する際に、職業上の専門的なスキルを評価していましたが、結局その会社に合わなかったり、スキル以外の要因から思ったほどの成果を得られないこともありました。もうちょっと言うと、専門的なアウトソーシング(外部委託)サービスが増えてきたことで、自身の専門性を発揮する場が社内になくなった人も増えたんです。

―なるほど。専門的なスキルを持っていても活かす場がない、専門的なスキルがあるだけでは難しい状況がどんどん増えたんですね。

はい。そのため、より正確に個人を評価するための方法として、専門的なスキルと共に評価する基準として、業務内容や企業などの環境によらず発揮される「ポータブルスキル」が注目されるようになったのです。

他の人の意見に耳を傾けられる「素直さ」だってポータブルスキルのひとつ

白い椅子

―ポータブルスキルが注目されるようになった背景はわかってきました。では、ポータブルスキルがどういうもので、どういう形で評価されるのか教えていただけますか?

わかりました。とは言え、まだまだ難しいところというのが正直なところです。ポータブルスキルって切り口の分だけ評価基準が増えるようなところがありますから。大雑把に言えば、「対人能力」や「ビジネススキル」と言われるものです。

―「対人能力」や「ビジネススキル」と言われると少しはわかる気がするのですが、こういうものってどうやって評価するんですか?

基本的には実際に会って話してみたり、実際に課題を与えてみてどのようにそれを解決していくかという方法で確認します。社内の人事考課なら、普段の仕事ぶりから見えますが、採用の場面では面接やエントリーシートなどが重要になりますね。

―ポータブルスキルは面接やエントリーシートだけで評価できるものなんですか?

もちろん、十分な把握ができるとは言い難いです。しかし、小説家や画家にスタイルがあるように、人が作ったものにはその人の考えや性質が反映されます。発言ひとつ、文章ひとつだとしても注目して見てみると重要な情報がいっぱい手に入るものなんです。

―もしよろしければ、例を挙げてもらえますか?

たとえばですね、新卒者のエントリーシートに「私は大学生の時に、小学校の頃から高校までずっと続けていた野球をやめてアメフトを始め、全国大会で優勝しました」という内容があったとします。

―確かに、そういう人いますよね。大学から始めて全国って、よほど才能があったんでしょうね。

それだけ聞けば、普通はそう思いますよね。しかし、続く内容をよく読んでみると「最初の1年は練習の大半が体作りで、上下関係も厳しく、辞めたいと何度も思った。しかし、良くしてくれた先輩がいつも『最初はつらいが、絶対に報われる。信じろ!』と声をかけてくれたので、その言葉通りに頑張り続けた」とあったりするんですね。

―おお、こういう話を聞くと、やはり持ち前の才能だけでなく努力もしたんだと思いますね。

このエピソードからは、「忍耐力」や周囲の助言に耳を傾けられる「素直さ」などがあったということがわかります。こういうのもポータブルスキルですね。また、文章の書き方でも、内容が整理されていることや、結論が先に来るというビジネス文書の書き方などのビジネススキルがあることがわかります。

―確かに、どれも職場が変わっても使うものばかりです。特に新卒者だと、仕事に関する専門的なスキルなんてほとんどありませんから、ポータブルスキルが大切になりそうですね。

ポータブルスキルのアピールは具体的に状況を表現するのがいい

資料を持ち上げる人の手

―でも、ポータブルスキルってアピールの仕方が難しいと思うんですけど。就活などの際にどのようにアピールしたらいいんですか?

確かに難しく思えるかもしれませんね。ポータブルスキルというのは自然に出てくる個人の性質という面がありますから、「リーダーシップがあります」みたいなアピールは普通しませんし。

―じゃあ、やっぱり意識してアピールにつなげるのは不可能ということですか?

いいえ、そういうことはありません。ポータブルスキルがあることをアピールするなら、方法のひとつはエピソードの中でできるだけ具体的に状況を描写することです。

―描写とは具体的にどういうことですか?

小説を書くように風景などを描写する必要はないですが、先のアメフトの例のように大変だったことや抜け出すまでの過程などをちゃんと表現するということです。「問題を解決しました」と言わずに「メンバーひとりひとりと真摯に対話し、問題点を分析して解決に結びつけました」と言えば、「この人はしっかり人の意見を聞ける傾聴力のある人だ」、「情報から解決方法を見つける分析力のある人だ」と評価ができます。

―なるほど。「私は傾聴力があります」「私は分析力があります」とか言わなくていいんですね。

はい。そう言われてもどの程度かわかりませんので、言われた側も困ります。むしろハードル上げるようなものですので避けた方が無難です。あとは、対人スキルなどは面接の様子でだいぶ見えてしまいますから、姿勢や声の出し方、話の聞き方などは注意した方がいいですね。

ポータブルスキルは訓練で伸ばすことができる

線路

―ポータブルスキルって成長するものなんですか?それともひとつの才能なんですか?

ポータブルスキル自体は個人に属する面があるので、才能みたいなものと考えられがちですが、たいていの人は訓練によって伸びます。さすがにカリスマと呼ばれるような人だと、訓練や意識することもなくポータブルスキルが発揮されていることもありますが。

―へぇ~!でも、訓練して伸びるなら希望的ですね。どういう訓練をしたらいいんでしょうか?

ポータブルスキルの有無を見分ける際には、コトに着目したヒアリングをし、その中で「ビジネススキル」と「対人能力」に着目します。逆に言えば、普段からビジネススキルや対人能力を意識して高めることが大事です。対話や資料によるコミュニケーションの質に気を遣い、情報の分析や問題解決などに逃げずに取り組む中でこうしたスキルは身についていきます。

―なるほど。ありがとうございます!ちなみに、「コトに着目したヒアリング」とは?

簡単に言えば、「何ができますか?」ではなく「何をしてきましたか?」と、「ヒトに属する答えを引き出すヒアリング」から「してきたコト(事)を引き出すヒアリング」をすることです。その中で自然とポータブルスキルの有無が見える回答が引き出せるんですね。ちなみに、体育会系と言われる人ってこのポータブルスキルが高い傾向があるんです。だから就活市場で好かれるんでしょうね。

―ちょっと見方を変えるだけなんですね。こうして聞いてみると、ポータブルスキルって難しい感じもしてましたが、特別なことでもないんですね。普段からビジネススキルや対人能力を磨けるよう頑張りたいと思います!須来留さん、ありがとうございました。

ポータブルスキルがあれば転職だってお手の物

ビジネスシーンを取り巻く環境の変化から、職場や職種、業務内容にとらわれず発揮できるポータブルスキルの重要性はますます高まっています。普段の訓練によっても伸ばすことができる能力ですので、日々の問題を解決していく中で、ビジネススキルや対人能力を磨いていく意識が大切です。また、解決した問題をきちんと描写できるように準備しておくのも効果的です。

今、30代を迎えて転職を考える方が、男性、女性を問わず多くなっています。人生において、特に、社会人として30代という年齢はどういった意味を持つのでしょうか。就職をして社会人となって、10年から20年前後という立ち位置において、人生の転機と考える方が多い中、円満退職、そして転職について知っておくことが必要でしょう。

30代の転職・就職は有利か不利か

30代の転職

30代の方の転職理由の多くは、仕事内容の転換や自分自身のさらなる成長、あるいは今よりも高い給料や待遇を求めるなどといった、積極的な理由が多く見られます。その一方で、多くの方が30代は転職するには遅いと考えていることも事実のようです。しかしながら、必ずしもそうとは言い切れません。意外にも実際に転職活動を行なった人からは、半年もかからない短期間で1社から数社の内定をもらえたという話のほうが多いのです。重要なことは個人の気力と、明確な目的を持って臨むことです。

未経験者への転職

未経験者

30代の転職で、今までの業種とは違う、未経験の分野へと挑戦する方も少なくありません。実は今の業務は本当にやりたかったこととは別で、蓄えの出来たこと、また、今後の人生を考えた時に、一度きりの人生と考えチャレンジしたいという理由からです。30代での未経験職への転職は確かに困難です。企業が30代へ求めるのは業務の経験と知識であり、マッチングにおいて不利となることもあります。しかし無理なことではありません。長い社会人経験は必ず強みとなりますし、熱意とやる気をもってすれば困難にも打ち勝てるでしょう。

資格取得とスキルアップ

資格を取得することは、転職において大きな強みとなります。自身のキャリアプランにあった資格を取得すれば、就職活動の際に有利となるほか、自分の市場価値への自信にも繋がります。また、特に出産とともに退職をした30代の女性にとって、育児もひと段落して再度、就職をしようかと考えている人には有利な条件となるでしょう。

転職サイトを活用

30代の就職活動において、新卒との大きな違いはやはり働きながらの活動となるため、十分な時間が割けないという点が大きいです。これにより諦めてしまう方も多いでしょう。このようなとき、民間の転職サイトに登録することは実に有効なアプローチです。各種処理の時間が短縮でき、平日の日勤時間外でも求人が確認でき、また、そのようなサイトだけが独自にもっている非公開求人というものもあります。さらに、自分の市場価値を適確に知ることもできるでしょう。

30代で転職を考える理由

転職理由

30代は社会人として節目の年であり、転職を考える人にとっては大きな転機となるでしょう。例えば、10代、20代の頃は成長も早く、体力や将来への気力にも満ちていますが、技術や経験は少なく、先の見通しもまだ上手に立てられない時期です。一方、40代、50代となると、技術や能力、経験も十分に積み、社内価値・社外価値も高い存在ではありますが、体力や新しいことへの適応能力が幾分鈍ってしまうことも仕方なく、また、社内での役職・地位ともに高く、先が十二分に見通せるからこそ腰を落ち着けたいと考える方がほとんどです。

このように考えたとき、30代という年齢は社会人として体力や挑戦意欲もあり、技術・経験も十分に積んだ年齢としてちょうどバランスの良いピークであると言えます。いうなれば山頂に立った状態といえるでしょう。そこからは今まで上ってきた山道が見え、これから下っていく道もある程度見えてきます。その場所に立ったとき、今よりもさらに高い山の山頂、あるいは、以前から進みたかった道へとつま先を変えるべきかと悩む年齢が30代なのです。