自分は「打たれ弱い」とむやみに使っていませんか?
「今時の若いモンは打たれ弱い」というようなことを上司や先輩から言われたり、テレビなどで見聞きしたりしたことがある人も多いでしょう。打たれ弱いという言葉は誰かを褒めている言葉ではなく、そのようなレッテルを他人に貼られたことで実際に「自分は打たれ弱い」と思い込んでしまっている人も少なくはなく、成長の妨げとなっています。
「打たれ弱い」という言葉の意味するところは人によって多少違いがありますが、おおむね「苦境や逆境に弱く、くじけやすい」人を指して使われることが多いです。しかし、むやみに使うことは人格批判となり、パワハラだと言われてしまう場合もあります。打たれ弱い人をどう捉えるかで、その人の評価や管理の仕方、成長の方向性が違ってきますので、きちんと特徴を理解することが大切です。
「打たれ弱い」とはどういうこと?
「打たれ弱い」という言葉はボクシングなどでもよく使われる言葉で、ダメージを受けたときにすぐにパフォーマンスが落ちてしまったり、ノックアウトされてしまったりする人のことを指します。転じて、何かの苦境や失敗があったときに落ち込んだり、なかなか立ち直れなかったりといった性質を指す言葉になっています。
しかし肉体への痛みやダメージに対して「慣れ」があるように、精神的なストレスに対しても「慣れ」がありますので、自分の主観でむやみに「打たれ弱い」といってしまうのは注意が必要です。
打たれ弱い人の特徴
打たれ弱い人はどんな特徴を持っているのか、「プライドが高い」など典型的なタイプをいくつか紹介します。
1.自分は優秀であると思い込んでいる
自己評価の高いプライドの高い人は打たれ弱い傾向があります。自分は優秀であるという思い込みがあるため、批判されたり失敗するという考えをあまり持っていないからです。ボクシングにおいてノーガードでパンチをもらうように、批判や失敗に対する備えがないためにすぐに傷ついてしまい、なかなか立ち直れません。
2.打たれ弱い自分が好き
「打たれ弱い」と言われて嬉しい人はいませんが、「繊細」「敏感」と言われて嫌な気持ちになる人はあまりいないでしょう。「打たれ弱い」人は、同じストレスを受けたとしても打たれ強い人に比べて、敏感に反応し、強いショックを受けてしまう人ともいえます。豊かな感受性がある自分を大事にしたいという人は、打たれ弱いままいることも多いのです。
3.責任感が強くマジメである
責任感のある人ほど、失敗があると自分に問題があったと考えてしまいます。「すべてが自分のせいだ」と考えてしまうと逃げ場がないため、受けるストレスも強くなります。また、責任感が強い人に見られる傾向として、物事をすべて重大なことと捉えてしまいがちで成功した時には良いのですが、失敗してしまったり周囲に迷惑をかけたりした場合には、より強いストレスを受けることになってしまいます。
4.他人に対して攻撃的な一面を持っている
打たれ弱い性格の人には、他人に対して攻撃的な人も多いものです。虚勢を張ったり、自分が少しでも精神的に優位に立ちたいがために相手を攻撃したりして、相手を少しでも落そうとします。感情的な批判であることが多く、ほとんどが根拠のある評価ではありません。
攻撃的な態度や言動を表に出しやすい人で、自分が責められたくないがために他の誰かを責めてその場を乗り切ろうとします。しかし、自分に非があることを認めると落ち込みが強く、なかなか回復しません。
5.小さいころから叱られ慣れていない
小さい頃から親や先生などに叱られた経験が少ない人の中に打たれ弱い人は多いです。いわゆる「いい子」「優等生」で育ってきたため、自分が否定される状況に慣れておらず強いストレスを感じてしまいます。
6.他人の評価を必要以上に気にする
他人の評価を過度に気にしてしまう人も打たれ弱い人の特徴です。失敗そのものよりも周囲からの視線が気になってしまい、失望や悪い評価に繋がるのを恐れるあまり自分の失敗に対するストレスを増幅させてしまいます。誰かに嫌われることに臆病なため、誰かの評価を失うことに強い不安を覚え、動揺が隠せなくなります。
7.「どうせ」が口癖でネガティブ思考が強い
物事を悪い方悪い方へ考えがちな人で、「どうせ」が口癖のように出てきます。ネガティブになるのは、自分が失敗したくないという気持ちの裏返しで、失敗した時に「ほらね」と自己弁護をする材料を準備しておきたいからです。失敗を恐れる、傷つきやすい人といえるでしょう。そのため、逃げ場がなく責められた場合には深く傷ついてしまいます。
8.自分の意見を言えない
打たれ弱いとは結びつきにくいかもしれませんが、自分の意見を主張できない人は打たれ弱い人も多いです。主張には賛同だけでなく反対意見も出てくるのは当たり前ですが、打たれ弱い人は異議を恐れて自分の意見を言えません。自分に自信がないために言えない場合もありますが、反対されることによるストレスを強く受けてしまう性質を自分でわかっているために言えなくなるのです。
打たれ弱い人でも社会人失格ではない
打たれ弱い人はその特徴から、簡単に言えば精神的なストレスに弱い人であることがわかります。しかし、だからと言って社会でやっていけないかと言えばそうでもありません。打たれ弱さもあくまで個人の性質であるので、特徴を理解したうえで配置したり仕事を任せたりして、教育することが大事です。
誰でも落ち込むことはありますので、打たれ弱いから社会人失格のように言うのは褒められた行動ではありません。周囲のことを敏感に感じ取る性質が良い方向に働くことはありますし、打たれ弱いという性格だからこそ、同じような性格の人のケアやフォローが出来る場合もあります。
また、打たれ弱いというのは「考えのクセ」から生じている性質だといえるので、考え方を変えられると打たれ強くなれるでしょう。物の見方を変えることで、打たれ弱いという弱点を克服することが可能になります。
打たれ弱い人が打たれ強くなるにはどうすればいいの?
打たれ弱いと自覚していたり周囲から言われていたりする人でも、以下のことに気を付けることでストレスに負けない精神的打たれ強さを手に入れることは可能です。
自分の芯を持つ
自分の生き方や考え方、言動に芯を持ちましょう。打たれ弱い人は、何かの失敗でこの芯が簡単に揺らぎ、再び立ち上がれなかったり立ち直るのに多くの時間を必要としたりする人です。自分の考えに固執しすぎるのも良くありませんので、他人の話も聞いて受け入れるくらいの余裕は持ちましょう。
物事を良い方に考える
物事をネガティブに考えず、前向きに考えるようにしましょう。たとえ上司に怒られたとしても「失敗をしてもクビになるわけでもなく、ちゃんと叱ってもらえた。かわいがられている証拠だ」と前向きに考えられるくらいになれれば十分に打たれ強くなっています。
周囲の評価を気にしない
周囲の評価を気にすると、ストレスが増幅するばかりです。周囲がどう自分を見ているかより、自分が思う自分への評価を考えたり、何をするべきか見極めたりすることの方が大事です。周囲ではなく自分に目を向けて、早めに自分の葛藤や落ち込みを処理するようにしましょう。
言い訳をしない
人間は言い訳をするときには頭が非常によく回りますが、責任逃れで頭がいっぱいになると、失敗などにおける本当の問題が見えなくなります。言い訳せずに事実を認め、次に行動を起こすときの判断材料にしましょう。言い訳を考えている間は動けませんが、次の行動が見えているなら動き出すことは難しくありません。不本意でも、動いているうちに気持ちも晴れてきます。
「きいていない」フリをする
「聞いていない」「効いていない」フリです。もちろん、聞こえていますし堪えているのですが、表に出さないようにします。繰り返しているうちに、メンタルブロックやスルースキルが上手になって打たれ強くなっていきます。
打たれ弱いのは悪いことばかりではない
打たれ弱い人は悪い方向でばかり捉えられがちですが、打たれ弱いことによって深刻な問題が生じないという側面もあります。
打たれ強い人だとしても打たれ続ければダメージもストレスも蓄積していき、ある日突然心が折れて心の病気になってしまうことはあるものです。固い木の枝は折れますが、軟らかい草は折れません。打たれ弱さのゆえに長く働ける場合もありますので、悪いことだとばかり考えることもありません。
打たれ弱いのは自分にとって強いストレスから逃れるための防御反応ですから、無視するのはメンタルヘルス上は良いこととは言えません。大事なことは打たれ強さではなく、ストレスの処理の仕方を覚えることです。
打たれ弱くても大丈夫と思うべし
「打たれ弱い」は批判的に使われることが多いですが、社会人として最低限の打たれ強さを身につけられれば問題はありません。打たれ強さも打たれ弱さも考えのクセから生じるものですから、打たれ強い考え方や見方を身に着けていくことで打たれ弱さは解消されていきます。
過度に気にすることなく、失敗などから生じるストレスを、自分なりに処理する方法を身に着けることが大切です。打たれ弱いことも、原因や特性によっては有利に使えますので、前向きに考えて自分の個性を発揮しましょう。