制度/手続き

新入社員の保険証はいつ頃発行される?病院へ行く時の対応

新入社員になれば自分の健康保険証を持つようになりますが、社会保険制度に対する理解が不足しているとトラブルが発生してしまうことも少なくありません。新入社員が保険証をもらえるのはいつ頃なのか、保険証の加入から使いどころまで知りたい情報を詳しくまとめました。

新入社員が知っておきたい保険証に関する知識

企業に入社し、新入社員として働くようになると、様々な面で親から自立して生活を始めることになります。その中でも、特に大きな変化となるのが保険証を自分の責任で持つようになることです。従来は親の扶養として発行されていた健康保険証も、自分で保険料を支払い、その適用を受けることになります。

この保険証、もらうまでにタイムラグがあったり、また状況によって様々にトラブルが起こりやすいものです。また、医療費の補助を受けるだけが保険証の役割ではありません。新入社員は保険証の仕組みをよく理解して有効に活用していきましょう。

新入社員の時期は保険証トラブルが生じやすい時期

新入社員の時期は保険証にまつわるトラブルが最も多い時期です。

その理由としては、社会保険制度への理解が不十分であることに加え、各種の手続きを正しく処理できていなかったりするためです。企業によって様々な保険の形がありますので、その形ごとに対応が必要となります。

保険証が発行されるまでの間こそ、慣れない環境であるために心身の不調を生じやすく通院が必要な場面も多いのですが、この期間に保険証が手元にないことで病院に行けなかったり、もしくは高額の医療費が必要となることがある場合もあります。

社会保険の種類について

社会人になると「社会保険」と言われる保険に加入することになります。この社会保険には様々な種類があるため、その違いを理解しておくことが大切です。

社会保険には大きく分けて医療保険、年金保険、介護保険の三種類があります。ここでは保険証が発行される医療保険について紹介します。

国民健康保険

国民健康保険は「国保」と言われる種類の医療保険です。以下の社会保険や共済組合などの医療保険制度に加入していない場合は必ず加入する必要があります。

加入や脱退の際には自分で手続きを行う必要があり、手続きを怠ると保険料を二重で請求されることがあるほか、手続きをしていなかった期間まで遡って未納分を請求される場合もあります。

社会保険

ここでいう社会保険は、社会保険制度における広い意味の社会保険とは少し違い、企業で加入する医療保険や厚生年金のことです。

一般的に「社会保険」というと、企業で加入する形の医療保険を言います。社会保険においてはその保険料の半額を企業が労働者と分担して支払ってくれます。

協会けんぽと組合健保

社会保険は、その中で「協会けんぽ」「組合健保」に分かれています。

協会けんぽは全国健康保険協会が運営しているもので、一般的な社会保険です。協会けんぽについては、離職や退職の後も最長2年の間は任意継続という形をとることも可能です。

組合健保については、常時700人以上の従業員が働いている大企業やグループ企業において、国の認可の下、自分達で健保組合を運営しています。教会けんぽよりも有利な形になっていることが多いです。

共済組合

共済組合は、公務員や私立学校の教職員における医療保険になります。国家公務員や地方公務員などの立場の違いによっても根拠となる法律が変わり、その制度や内容にも違いがあります。基本的に国保や社会保険よりも有利な保険料率となっています。

新入社員の保険証はいつ発行される?

新入社員として会社に入った後には、保険証がもらえるタイミングはすぐではありません。入社式の日よりもおおよそ数週間後に配布されるのが普通です。

健康保険証の発行手続きは、入社式後に企業が発行手続きを行います。事前に書類などを集める場合もありますが、急な辞退などがあると手続きも煩雑になりますので、ほぼ入社後です。多くの場合は2週間ほどで保険証が発行されることになります。

保険証が発行される前に通院する場合

保険証が発行されるまでの期間中に病院へ行く必要がある場合、会社側で「健康保険被保険者資格証明書」という書類をもらって配布してくれることもあります。健康保険被保険者資格証明書は保険加入の予定があり、手続き中であることを示すものですので、保険証と同様の効果を有します。

何も言わなくとも発行してくれることもありますが、持病の関係で定期的な通院が必要な場合には、あらかじめ人事や総務の労務担当の方に依頼しておくとよいでしょう。

また、全額自己負担した医療費は保険証を受け取る際に返還請求ができるようになっています。請求時に必要となる領収書は必ず保管しておきましょう。

試用期間だと保険証はもらえない?

保険証の切り替えや配布について、特に会社側から案内がない場合もあります。そういった場合には、基本的には自分で国民健康保険に加入する必要があります。

国民健康保険は加入したタイミングから保険料が発生するのではなく、扶養を外れ、無保険状態となったところから保険料が発生するため注意しましょう。

また、試用期間中など立場が不安定な状態で新入社員への保険証の作成手続きを見送っている会社もありますが、法律的には、加入用件を満たした条件で雇用している場合、会社側に入社当初(5日以内)から加入させる義務があります。違反時には罰則もあるため、このような事実があれば労働者側から請求することができます。なお、日雇いの場合や2カ月以内の短期の雇用契約ではその限りではありません。

保険証はこんな時にも使える!

保険証を提示すると、病院や薬局を利用する際に「医療費を3割の負担で済ませることができる」ということはよく知られていますが、保険証の使いどころはそれだけではありません。
保険証を持っていると様々な形で助けを受けることができるのです。

1 入院に関する医療費

怪我や疾病によって入院した際の食費や生活費、看護費にも補助が受けられます。また、緊急で搬送された場合における搬送代も補助が出ます。

2 妊娠・出産に関する費用

出産時に本人、もしくは配偶者に出産手当金出産育児一時金といった補助が受けられます。

出産手当金は出産のために働けない期間の生活費を補助するもので、産休中に支払われるべき給与額の約2/3が支給されるものです。

出産育児一時金は出産にかかる費用のうち42万円が補助として支給され、施設にもよりますが出産手術や産前産後の入院費用をほぼ賄えます。

3 児童手当の受け取り

2017年現在、日本国内に住む0歳から中学卒業までの児童を養育している保護者に対して、児童1人あたり月額5000~15000円の範囲で手当てが支給されます。この支給の条件として保険制度加入(=保険証保持)を挙げている自治体も多いです。

4 死亡時の埋葬費用

被保険者が亡くなった場合、埋葬を行う方に「埋葬費」「埋葬料」が支払われます。被扶養者が亡くなった場合についても、被保険者に5万円が「家族埋葬料」として支給されます。

上記の他にも、保険証があることによって受けることのできる特典は多いです。日本の健康保険制度は非常に優秀ですので、労務の方や社労士、ファイナンシャルプランナーなどに相談してみると、思わぬところで様々な費用負担の軽減につながる知恵や情報を得ることができるでしょう。

新入社員が知っておきたい保険料の仕組み

新入社員の方々にもぜひ知っておいてもらいたいのが保険料の仕組みです。

保険料については、協会けんぽで保険料率というものが定められています。これは全国の都道府県の医療費の違いを考慮し、地域別に多少違いがありますが、平均が10.0%に抑えられるようになっています。

つまり、給料から天引きされる基本的な保険料というのは、この10%から企業が負担してくれる半分を差し引いた5%程度が目安となります。そこに他の雇用保険や年金などが付加されたものが、最終的に社会保険料として給与から引かれています。

給与額の計算タイミング

ここで注意したいのが、算定の根拠となる給与額の計算タイミングです。

年に一度見直される場合には、4月5月6月の給与額を元に9月分から保険料が改定されるようになります。9月分の保険料は10月に引き落としとなるため、新入社員のほとんどの人は10月から天引きされる額が大きく増え、手元に残る給与額は少なくなります。

給与の固定額が大きく変わる場合にはこれを待たずに変わる場合もあります。もし、急に大きく変わった場合には人事に確認するとよいでしょう。

新入社員は保険証と社会保険制度についても学ぶべし

新入社員ともなれば、自分の名前で社会保険制度に加入し、保険料も支払うようになります。しかしそれをまるで経費のように思っているなら負担感しかありません。

保険証はあなたが社会保険制度を利用できるという資格証です。自分がどのような権利を持っているのかを理解しておくことが非常に重要です。そして、その発行や手続き、保険料についても理解しておくことで、より意識を高くもって社会保険制度に参加し、利用することができるようになります。

人事や総務の労務担当は、こうした保険の手続きや使い方についてのプロであり窓口となってくれます。困った場合には相談・質問してみるとよいでしょう。