気付の意味と使い方・宛先のマナーを身に着けよう
「気付」の意味をご存知でしょうか。郵便物の宛名で見たことがあっても、意味や使い方を正しく理解している人は多くありません。社会の常識やマナーに慣れていない就活生はもちろん、社会人でも曖昧な人もいます。「今さら人に聞けない」「知っているつもり」宛名マナーについて解説します。
宛名に書かれた気付の意味は?
「気付(きづけ)」には大きく分けて2種類の意味があり、1つは「注意を促すこと」、もう1つは「書簡を直接相手の住所に送らず、その人の立ち寄り先などに宛てて送るとき、宛先の下に書き記す語」です。宛名に書かれている気付という表記は、二つ目の意味で使われています。つまり、荷物や手紙を受けとってほしい相手が本来所属していない場所に送る場合です。
宛名に書かれている気付は、本人ではなく送り先の誰かを通し、郵送物や手紙を渡してもらうことになります。「確実に目的の相手に届けてほしいので、どうかお取り計らいください」という意図を含んだ、便利な表現ともいえます。
宛名で気付を使うべき場面
宛名に気付を書くのにふさわしい場面について、具体的な例を挙げて説明します。まず注意したいのは、気付は個人の家に郵送する場合は使わないということです。あくまで企業や団体、ホテルなどへ郵送するときに使用します。
1 ホテルなどの一時滞在場所で使う「気付」
自分が宿泊する予定のホテルに自分の荷物を郵送するときや、長期出張などでホテルに滞在中の同僚や取引先の人宛てに荷物や手紙を郵送するときに、気付と書き記します。ホテル宛てに送る場合は、本当に届けたい相手の手に渡るか(もしくは自分宛てにきちんと届くか)不安になりがちですが、気付の表記ルールを正しく理解していれば安心です。
たとえば、自分の名前を〇〇とすると、下記のような宛名の表記となります。
表記文例
△△ホテル フロント係 気付 〇〇行
2 病院で使う「気付」
入院している人へ手紙やお見舞い品を郵送する場合にも、宛名に気付を使用します。また、長期入院している会社の同僚や上司から「仕事の資料を病院宛てに送ってほしい」といわれた場合にも使います。
たくさんの入院患者や医療従事者がいる病院において、郵送物が埋もれて行方不明になってしまわないよう、宛名には正しく気付と表記して確実に相手に届けられるようにしましょう。
表記文例
△△病院 ▲▲科 ●号室 気付 〇〇様
3 会社で使う「気付」
企業の中の子会社に勤めている人宛てに郵送する場合も、宛名に気付を使用します。たとえば、△△株式会社の子会社である▽▽株式会社の〇〇様宛てに郵送するときは、下記のような宛名を記すとよいでしょう。
表記文例
△△株式会社 気付 ▽▽株式会社 ●●部 ○○様
4 祝電や弔電で使う「気付」
祝電や弔電を送るときにも、気付はよく使用されます。なぜなら、電報を受けとる相手の住所ではなく、結婚式会場や葬祭場に送ることが多いためです。いざというときに慌てることがないよう、よく覚えておきましょう。
表記文例
祝電:▲▲ウエディング 気付 ○○様
弔電:▲▲葬祭場 気付 ○○様
誤りやすい宛名のマナー
宛名書きにおいて、気付と混同しやすい言葉があります。郵送物の宛名書きは受け取る側によく見られているので、誤った表記をすると、面と向かって指摘はしないものの「一般常識がない」と思われてしまう事もあります。
せっかく仕事が出来て取引先といい関係を結べていても、郵便物の宛名書きのような些細なところで信用を落としてしまうのはもったいないことです。ビジネスシーンでは宛名一つで企業のイメージダウンにつながる事も少なくありません。
1 御中
「御中」は個人宛てではない郵便物を出すとき、その宛名の下に添える語を意味しています。ビジネスに限らず、日常生活においても使用する頻度が高い宛名書きの1つです。しかし、使用法について勘違いしている方が多い宛名でもあります。就職活動中の学生は特に御中に対する誤解が多いですが、社会人でも企業宛てに送る場合の宛名書きはすべて「御中」で済ませばいいと思い込んでいる人もいます。
企業や団体における個人宛てではなく、部署や所属グループ宛てに郵送する際に「御中」と使用します。つまり受け取ってほしい相手の氏名がわかっていて宛名に表記する際は、御中は使用しません。就活生が企業の人事部に書類を送る際であれば、採用担当者宛てにするなら氏名がわからなくても「様」と表記しても問題ありません。
表記文例
- ▲▲株式会社 ●●部 御中
- ▲▲株式会社 人事部 採用ご担当者様
2 「様方」と「様」
気付とは反対に「様」「様方」は個人宅へ郵送する場合のみに使用します。病院などの施設や企業宛てに送る場合は使用しないので、注意してください。ここでもうひとつ注意したいのは「様」と「様方」の違いです。「様」は、郵送先の世帯主と同じ苗字の人宛ての際に使用するので、世帯主と送り相手の苗字が同じか否かで2つを使い分けるように心がけるとよいでしょう。
ひと昔前においては、大学生が個人宅を間借りして下宿していることがよくありました。「様方」は、そのような下宿生宛てに親や友人が荷物や手紙を郵送する場合に、使用されていました。昨今では、親が子ども夫婦の家で同居している場合などで使用されることが多いでしょう。
表記文例
住所
田中様方
本田○○様
「様方」を使う際のポイントが3つあるので、紹介します。以下のポイントを心に留めながら「様方」を使いましょう。
ポイント
- 「様方」は住所から改行して1字下げる。
- 文字の大きさは、住所<~様方<~様にする。
- 「様方」は苗字だけでもフルネームでもどちらでも可。
気付は英語ではどのように表現する?
気付を英語で表現すると「care of」になり、短縮する場合は「c/o」となります。海外における住所・宛名の表記は日本での書き方とは反対に、宛名、住所(建物および部屋番号、番地、町、市、県、郵便番号、国)の順になります。気付を表す「c/o」は、宛名と住所の間に記します。
つまり、海外の○○ホテルに滞在している本田様宛てに郵送物を届けたい場合、下記のとおりの宛名・住所表記になります。
表記文例
Mr. Honda(宛名)
c/o(気付) ○○hotel(ホテルの住所)
送る側と受け取る側の双方が気付の意味を知っておこう
意外と知られていない気付の意味・使い方を解説しましたが、社会人の一般常識として正しい意味と表記するルールを理解しておくことは重要です。受け取る側も同様で、意味を理解していれば、意図を汲み取って本人へ返信も可能です。
宛名書きひとつでビジネスシーンでは混乱・誤解を招いてしまう事もあります。一般常識として「気付」の意味を正しく理解しマスターしましょう。