親会社と子会社の定義とは?それぞれのメリットデメリット

親会社と子会社の具体的な違いや関係性、定義とは?どちらに就職した方が有利かなどはその人がどう働きたいかや価値観によって異なります。これから社会人になる大学生の方や転職する方は、自身の働き方を決める上で親会社や子会社のメリットやデメリットをしっかりと把握しておきましょう。

親会社と子会社の定義とは?それぞれのメリットデメリット

親会社と子会社は具体的に何が違う?

親会社と子会社は、待遇や仕事内容が全く同じというわけではありません。親会社には親会社の良さや大変さがありますし、子会社には子会社の良さや大変さがあります。就職しようとしている会社に親会社や子会社といった関係がなかったとしても、就職した後に分社化・合併・買収で親会社と子会社の関係になる可能性もあります。

企業に新卒で就職する場合にも転職する場合にも、親会社と子会社の具体的な違いについてしっかり理解しておくことが大切です。

親会社と子会社の定義と関係性

企業ビルのイラストと親会社と子会社の定義を解説

親会社と子会社の定義は会社法において定められています(注1)。株主総会における議決権をひとつの会社に過半数以上握られている会社を子会社、議決権を握っている会社を親会社と言います。つまり、ひとつの会社の財務や会社の方針や経営の判断をしている場合は、支配やコントロールをしている側が親会社、支配やコントロールされている側が子会社ということになります。

親会社と子会社の関係性は、どういったケースで親会社と子会社の関係になっているかによって関係性が大きく違います。

1 ひとつの会社から分社化して親会社・子会社になった場合の関係性

例えば、1000人の従業員が所属する企業の中で300人が所属する大きな部署があった場合、その300人の部署が独立してひとつの会社になったようなケースです。株式の半分以上はもとの会社が持っていたり、経営方針を決めているのはもとの会社であるケースがほとんどなので、親会社と子会社の関係になります。

子会社になってしまえばひとつの会社になりますので、何かの取り組みを始めたり、クライアントに何かを提案しようとするのもある程度自由に活動することが可能になります。

また、もともと同じひとつの会社なわけですから、親会社と子会社の間で頻繁に出向などによる人の出入りがあったり、親会社と給与の待遇がほとんど変わらないなど、親会社と子会社で大きな差がないという場合もあり得ます。

2 他の会社に買収されて親会社・子会社の関係になった場合の関係性

他の会社に買収されて子会社になった場合、待遇なども含め親会社と子会社は全くの別会社であり、株式のみ過半数以上を親会社が持っているなどの関係性になります。
こういったケースでは、親会社・子会社になる時に社名が変わるといった変化はあったとしても、親会社と子会社の関係性は現場ではあまり感じられないほど別会社のような関係性のままとなるケースもあります。

親会社で働くメリット

親会社で働くメリットには、子会社より給料が良かったり、人員削減のリスクが低かったりなど、次のようなことが挙げられます。

1 給与などの待遇が良い

お金と給料袋を持って嬉しそうなサラリーマンのイラスト

必ずというわけではありませんが、親会社の給料が低く子会社の方ははるかに給料が良いということは滅多になく、一般的には親会社の方が子会社よりも待遇が良いケースが多い傾向にあります。

2 人員削減のリスクが子会社よりも低い

経営利益が低い、あるいは大きな赤字が続くようなケースでは、グループ内のどこかの子会社にて行っている事業のひとつを廃止・撤退をすることに伴い人員削減を行うことがあります。

人員削減となると、子会社という組織がなくなったり、子会社から大幅にリストラを行ったりすることはあっても、親会社からリストラを行うことはあまりありません。従って、人員削減などのリスクは親会社の方が低いのです。

3 親会社から子会社に転籍しやすい

親会社の仕事についていけない、あるいはやりたいことや得意分野が親会社の仕事領域に即していなかったり、戦力外通告を受けてしまうような場合、子会社では「会社を辞めて転職する」などの選択肢になる場合であっても、親会社の場合は子会社に転籍させてもらうという手があります。

子会社から親会社に転籍することもできなくはありませんが、一般的には親会社から子会社の方が転籍しやすいです。これは、子会社から親会社に社員を転籍させる場合は親会社にお願いするような立場になりますが、親会社から子会社であれば経営を握っているのは親会社なわけですから、「転籍を受け入れなさい」という指示や命令に近いような形で転籍させることができるためです。

親会社で働くデメリット

親会社は子会社より給料がいいから親会社にいて良かったとばかりも言っていられません。親会社で働くことには、メリットだけではなくデメリットもあるのです。

1 出世競争が激しい

競争しているサラリーマン達のイラスト

基本的には、親会社の中で優秀な人だけを残し、そうではない人を子会社に転籍させる、あるいは優秀な人を子会社から親会社に転籍させるなどの対応により、多くの子会社を束ねて市場競争を勝ち抜いていくという企業が一般的です。そのため、必然的に親会社の中では優秀な従業員同士で出世競争が激しくなる傾向があります。

2 複数の子会社を束ね利益を出すための施策を求められる

親会社の場合、どの事業で利益を伸ばすか、あるいは不採算をどうやって解決するかなど、自分の会社のみならず子会社も含めて方針を決定する必要があります。責任が重くなったり求められる仕事の能力や質が高くなりがちですので、能力が高くないと親会社の中では生き残っていけません。

子会社で働くメリット

親会社とは反対に、子会社で働くメリットをみていきましょう。親会社が安定していれば子会社も大丈夫的な、安心感が感じられます。

1 親会社が安定していれば子会社も安定している

バンザイしている会社員達と企業ビルのイラスト

子会社の場合、親会社という大きな看板があるので、親会社が安定していれば子会社の経営が急に傾く心配はありません。親会社が有名企業であったり、多くの利益を出している会社であればあるほど子会社も安定しています。

2 親会社の看板を利用して働ける

親会社が有名企業であればあるほど、親会社の名前や看板をアピールして仕事を行うことができます。例えば営業先に営業に行ったときも、普通であれば「どんな会社ですか?」とクライアントに質問されるような場面でも、親会社の看板があればクライアントに受け入れてもらいやすくなるなどの効果が期待できます。

3 親会社ほど出世競争が激しくない

親会社には優秀な人が各子会社から集まってきたり、優秀な人以外を子会社に転籍させたりしている分、優秀な人同士で熾烈な出世競争が繰り広げられていることがありますが、子会社には親会社ほどの激しい出世競争は多くありません。

子会社で働くデメリット

子会社で働く上でのデメリットとしては以下の通りです。親会社が安定しているから子会社だって大丈夫とは言い切れないことが分かります。

1 親会社よりも給与の待遇が悪い

給料の格差があるサラリーマン達のイラストとビルが立ち並ぶ風景

親会社と子会社の仕事内容が明確に違い、さらに親会社の仕事内容が子会社と比べハイレベルなのであれば、親会社の方が給料や待遇が良くても当たり前と言えますが、親会社とほとんど同じ仕事内容にもかかわらず子会社の方が待遇が悪いというケースも考えられます。

2 親会社の方針に左右される

子会社としては大きな痛手となる決定や方針であったとしても、親会社が決めたことであれば従わざるを得ないということは、子会社で働く上でのデメリットのひとつです。

経営が傾いたときに限らず、親会社が「Aという事業は今後撤退する」などの方針を決めた場合、子会社としては逆らうことができません。もし、その子会社がAという事業を行っている会社であれば、子会社ごとなくなったり、場合によっては人員削減やリストラを行うケースもあります。

3 優秀ではない人材が親会社から転籍して上司になることがある

親会社から戦力外通告を受けた人や親会社の中で生き残れなかった人、あるいは問題があった人が子会社に転籍してくるというケースがあります。能力が低いにもかかわらず、もともと親会社の人であるという理由で、子会社の中では良い待遇や役職を与えられ、自分の上司になる可能性も否定できません。

親会社・子会社という関係性がなければ、その人を上司の座から引きずりおろしたりその人の立場を追い抜くようなことも可能ですが、もともと親会社の人である場合、追い抜くことはなかなかハードルが高いというのが現状です。

4 親会社が海外にある場合は海外の価値観が適用されることも

外資系企業では、親会社が海外にあり子会社が日本にあるという場合が珍しくありません。こういったケースの場合、海外の考え方や価値観が適用されます。
例えば、海外の親会社が「完全成果主義、成果を出せない人はクビ」という方針であれば、日本の中でどれだけ一生懸命働いて周りから評価されても、結果が出せていなければ海外の親会社の方針通りクビになることもあり得ます。

親会社と子会社にはそれぞれの良さと大変さがある

考え方や目指すべきものは人それぞれです。親会社と子会社のどちらが良いかという疑問に明確な答えはありません。就職する前には待遇や働き方、会社から求められる能力を総合的に考えた上で、自分が親会社と子会社のどちらに向いている人間なのかをよく見極めることが大切です。

また、会社によっては親会社から子会社、あるいは子会社から親会社への転籍も可能です。就職した後も常に親会社と子会社の関係性に目配りしましょう。