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労務管理士は働く環境を整える専門家!受験資格や主な仕事内容

労務管理士は、よく社会保険労務士と混同されますが、労務のスペシャリストを示す全く別の資格です。民間の資格であることや、社内で活かされる資格であることなどに注意しましょう。働き方改革の中で労務管理がクローズアップされる中注目されている資格です。

今後の労務管理での活躍が期待される労務管理士

働き方改革が2019年4月から本格的に施行されることになり、企業の労務管理は従来以上にしっかり行われる必要が出てきています。その中で存在感が強まっているのが「労務管理士」という民間資格です。

労務管理士は、労働基準法など労務に関する知識やスキルを一定以上有していることを証明する資格で、企業内の労務管理士は労務管理のエキスパートであることを表します。労務管理士の資格保持者が労務を担当するなら、コンプライアンスに基づいた労務運営がされていることと期待できます。労務管理士がどのような資格で、どのように仕事で役立つのかなどをチェックしておきましょう。

労務管理士は企業内の労務管理のスペシャリスト

「労務管理士」は、企業活動の中でも大事な労務に関する知識やスキルを身につけていることを証明する資格です。この資格は過去に複数の団体がそれぞれ同名の資格を認定していましたが、現在は日本人材協会という民間団体が認定を行っています。いわゆる民間資格であり、所定の講習と試験を受けることで取得することが可能となっています。

労務管理の基礎になる労働基準法の知識や実践的な専門知識が要求され、企業内の労務管理のスペシャリストとされるのが労務管理士です。企業が社内での能力評価基準で用いることを想定したもので、企業の労務管理がコンプライアンスに基づく適正なものとして運営されるために、労務管理士の専門知識やスキルが求められます。

労務管理士は民間資格

労務管理士の資格は、講習の受講と認定試験の合格によって得られる2級労務管理士と、2級労務管理士が昇級試験を受験し合格することで得られる1級労務管理士に分かれます。

労務管理士の資格は、民間資格になりますので、国家資格のように独占的に業務を行うことができるものではありません。人事部門の労務管理に携わる人であれば、スキルアップのためにも身に着けておきたい資格ですし、転職などの際にも有利に働く可能性があります。また、労務管理士になると、労務管理士にふさわしい技術やスキルを持った人を労務管理士として推薦することができるようになります。

労務管理士の仕事内容は「労務」に関すること

労務管理士は、主に企業の人事部(人事部がない場合は総務部)の中でそのスキルを発揮します。人事部の仕事には大きく分けて「人事」と「労務」があり、労務管理士は労務を担当することになります。

労務管理士の専門性が発揮されるのは労務の仕事に携わる場合です。労務管理士だからと、労務における仕事で特別なものがあるわけではありませんが、それぞれの業務における信頼性や発言力に大きな差が出てきます。判断が求められるケースでは、一般的な事例や法律などを知識として有している分、より正確な判断ができると期待されるでしょう。

ちなみに人事は、「人材採用」「人事考課」「人員配置、人事異動」「従業員教育」など、人の採用・配置に関することが主な仕事内容となります。

労務管理士の主な仕事は従業員の労働環境を整えること

企業における労務の仕事は、主に「給与や賞与の計算」「従業員の勤怠管理」「雇用契約や就業規則の管理、書類作成」などになります。従業員の労働環境を整える仕事と考えるとわかりやすいでしょう。

それだけかと思うかもしれませんが、給与計算や勤怠管理の仕事は毎月・毎日行われますし、従業員が一人増えるごとに雇用契約の説明や従業員の登録作業などが必要となります。また、法律が変わったり、企業内の就業体系に関して労使の話し合いから変更が生じたりした場合にも都度対応が必要となります。

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労務管理士と社会保険労務士にはいくつかの違いがある

労務管理における資格は、労務管理士だけではありません。労務管理士は民間資格になりますが、国家資格として労務管理の能力を示す資格に社会保険労務士があります。名称は似ていますが、全く別の資格です。この二つの資格の違いについて、しっかり理解しておきましょう。

労務管理士は保険関連の手続き、書類作成などの代行作業ができない

健康保険や労災保険、雇用保険などに加入する際には、様々な手続きや書類作成が必要となります。本人に代わって保険関連の手続きや書類作成ができるのは、国家資格である社会保険労務士だけです。労務管理士は代行作業を行うことはできませんので注意してください。

保険に関する業務は、社員の増減のたびに発生する作業ですが、この作業を行う社会保険労務士は企業内にほぼおらず、独立して事務所を構えていることが多いです。

労務管理士は賃金台帳や労働者名簿、労使協会の書類を利用できない

社会保険労務士は、企業の賃金台帳や労働者名簿、労使協会の書類を利用することが業務上可能となっています。一方、労務管理士にはそれらの書類を利用する権限はありません。

労務管理士も社会保険労務士も企業内教育やコンサルティングなどをできる

労務における企業内教育やコンサルティングについては、労務管理士も社会保険労務士も行うことができます。ただし、労務管理士の場合、社会保険労務士と混同を招くような表現での集客や講師のブランディングをすると、問題になる場合もあります。独立開業できるのは国家資格である社会保険労務士ですので、労務管理士をアピールする場合は、その点を誤解されないよう注意しなくてはなりません。

労務管理士になるには

ここで、労務管理士になる方法を紹介します。労務管理士になるには、受験資格を満たした上で講習を受講し、試験を受ける必要があります。日本人材育成協会では、複数の資格取得方法を提供しています。受験資格も併せて見てみましょう。

労務管理士の受験資格

労務管理士の認定団体である日本人材育成協会では、労務管理士の受験資格を20歳以上と定めています。性別、学歴、職業、経験は不問となっていますので、大学生などが就職活動を行う前に取得することも可能です。

10代でも資格の勉強はできますが、受講・受験資格はありませんので、労務管理士の資格取得に関しては20歳を迎えてからということになります。また、外国国籍の人でも20歳以上であれば受験することはできますが、日本に居住していることが条件になります。

日本人材育成協会では、まず講習の受講や試験によって2級労務管理士を認定しています。2級労務管理士が、資格者研修を経て一定の成績を修めた場合、昇級審査試験に合格すると1級労務管理士となります。つまり1級労務管理士の場合は、2級労務管理士であること、資格者研修を受けることが受験資格にあたります。

労務管理士の資格を取る方法

労務管理士の受験資格を満たしている人は、以下に紹介するいくつかの方法で講習を受け資格を取得することができます。4つの方法のうち、最後に紹介する方法のみ、講座や試験を受けなくても労務管理士の資格を持つことが可能です。

基本的には法律を理解することができる能力があれば、学力などが問われることはありません。ただし、講習の中で行われる試験に合格できなかった場合には再度受講をし直したり、試験を受け直したりする必要があります。その場合の受講料は免除されますので、再挑戦はさほどハードルが高くなく、じっくりと取り組むことができます。

公開認定講座を受けて資格取得する

全国の主要都市で行われている公開認定講座を受講し、講座の最後に資格認定試験が行われます。この試験に合格すれば資格を取得することが出来ます。講師から直に最新の法律知識や事例を学ぶことができます。講習は3時間程度で、受講料(受験料込)は2019年2月現在、10,000円(税込)となっています。

通信講座と到達度試験を受けて資格取得する

公開認定講座への参加が難しい場合は、通信講座も用意されています。通信講座でも、受講後に同じく通信形式で到達度試験ができるようになっており、その試験に合格することで資格認定を受けて労務管理士の登録手続きが可能です。通信講座では、受講料(受験料込)は2019年2月現在、20,000円(税込)となっています。

ウェブ資格認定講座を受けて資格取得する

紙面による通信講座ではなく、インターネットを使ったeラーニング形式での認定講座の受講によっても資格取得できます。所定の科目を履修するとインターネット上で資格認定試験を受けることができ、合格すると労務管理士の登録手続きが可能です。受講料(受験料込)は2019年2月現在、8,000円(税込)と最も安くなっています。

書類審査を受けて資格取得する

3年以上の労務管理に関する実務経験があり、労務管理士からの推薦があれば講習や試験を受けることなく、資格登録ができる場合もあります。書類審査を受けるためには、履歴書や事業所からの職務証明、労務管理士からの推薦書類が必要です。必要書類提出後、所定の手続きを受けて協会からOKが出たら、資格登録ができるようになります。この場合の審査料は、2019年2月現在、20,000円(税込)となっています。

労務管理士の資格試験に合格したら資格の登録をしよう

労務管理士の資格試験に合格したら、必要書類を揃えて登録料と共に日本人材育成協会に資格の登録申請を行います。登録に必要な登録料は20,000円で、月会費として1,000円/月(年払いなら10,000円/年)が必要です。

労務管理士の資格を取得するメリット

労務管理士は基本的に社内業務を行う上で活かすことができる資格ですが、資格を取得することで具体的にどのようなメリットがあるのかを理解しておきましょう。

労働法規に強くなる

労務管理士の資格取得のための学習によって、労働法規についての知識が深まります。労務の仕事は、就業規則や勤怠管理など、労働基準法などの法律に基づいて行わなければならないので労働法規に強くなることは仕事のスムーズさ、かつ正確性につながります。

また、協会が行っている労務管理士実力養成研修などのより専門性の高い研修を受講することで、スペシャリティを高めることができます。

外部の事例を知ることができる

労務の仕事は基本的に社内で扱うものですので、仕事のやり方ななどはガラパゴス化と言ってその企業なりの風習になりがちです。しかし、労務管理士の講座や研修を通して、外部の事例などを学べるため、客観的な視点から社内の労務管理のあるべき姿を考えることができるようになります。

資格手当が支給される場合がある

労務管理士は労務のエキスパートとしての能力があることを示す資格ですので、企業から資格手当が支給される場合もあります。今後は労務管理のあり方が重要視され、適切に管理されていなければ企業として大きなペナルティを受けることになりかねません。このことから企業の安定経営のためにも、労務管理士資格取得の支援や資格手当の支給が認められるケースも多くなると予想されます。

就職や転職で有利になる

労務管理のエキスパートとして労務管理士の資格を持っていると、人事や総務部門への就職・転職を考えている人であれば、企業に対して専門的な知識やスキルに関してのアピール材料となります。そのため、労務管理士の資格を持っていることは、就職や転職において有利になると考えることができます。

労務管理士に良くないイメージを持っている人も少なからずいる

過去に「労務管理士」を名乗った人が起こした詐欺にあたる事件があったため、労務管理士について良くないイメージを持っている人もいます。「ニセ社労士」などと呼ぶ人もいるほどです。

その事件が発生したのは10年以上も前で、まだ労務管理士という資格は十分に認知されていない状況でした。当時、労働法の改正などを契機に、労務管理士が社会保険労務士のような国家資格に類するものだと謳ったり、個人運営しているにも関わらず、全国規模の大きな団体で認定しているかのように全国で触れ回ったりして、受講生や資格登録者を集めるといったことが行われていました。事件を起こした人は労務経験が全くなく、セミナーも専門的な内容ではなかったと言います。

これは、労務管理士という資格そのものが問題なのではなく、社会保険労務士の独占業務として定められている仕事を無許可で行うことや誤解のある宣伝方法が問題なのです。労務管理士が違法な資格であるかのように過敏な反応をするのは、情報リテラシーが低い人だという印象を与えかねないので注意してください。

情報リテラシーは生涯学習が必要な全世代の重要スキル

現在は認定する団体も整理され、しっかりしたカリキュラムに基づいて資格認定・登録が行われています。多くの企業で労務担当者の人事考課などでも考慮される、信頼される資格となっているので安心してください。

労務管理士は労務管理の専門家として注目されている

労務管理士は、働き方改革で注目される企業の労務管理のスペシャリストと言うことができ、民間資格でありながらもその存在感が高まっています。保険手続きなどを行う社会保険労務士とは、根本的にその仕事内容が違いますので誤解のないようにしてください。

ここで紹介したことを参考に、労務管理士は基本的には企業の中で、労務管理の仕事を行うエキスパートという位置づけだということを理解しておきましょう。