仕事術

業務マニュアルは作成目的と手順をわかりやすくまとめよう

業務マニュアルの作成は、新入社員や中途採用の人への業務引き継ぎなどを目的に行われることも多いですが、それだけにとどまらない大きな意味を持っています。業務の手順がわかるだけでなく、全体像なども見える業務マニュアルにしていくことが大切です。

業務マニュアルを作ることになったときのために作り方を覚えておこう

企業などで様々な活動をしていけば、どこかで必ず教育の必要性を感じるようになりますし、また退職することになれば自分の仕事を引き継いでいく必要が生じます。こういった時に必要となるのが業務マニュアルの作成ですが、ポイントをしっかりついていない業務マニュアルはかえって仕事を面倒にしてしまいかねません。

業務マニュアルは新人だろうとベテランだろうと、作る機会が回ってくる可能性のある業務です。業務マニュアルを作ることになっても困らないよう、良い業務マニュアルの作り方も身に着けておきましょう。

業務マニュアルは作成する目的を意識して作るとよい

業務マニュアルというのは、大きく分けて「業務の手順書」と「業務のチェックリスト」に分けることができます。業務マニュアルと単純に言うよりも、このように分けて考えることで作成も楽になりますし、またそれぞれの目的も見えやすくなります。

「業務の手順書」を作成する目的には、

などがあります。つまり、「従業員が業務の学習や確認に使う」という観点と、顧客や関係者に対する「品質保持」の観点が必要となります。

また、「業務のチェックリスト」を作成する目的は、

ことが目的となります。

こうした観点をもって作成される業務マニュアルこそが有用なマニュアルであり、ただ業務の手順などを書き並べただけでは使いにくく、業務に慣れれば見る機会もほとんど無いために時間の流れとともに風化してしまいかねません。

業務マニュアルを作成する前に考えること、準備することは6つある

業務マニュアルを作成する際に必要な項目についても整理しておきましょう。業務の種類によってその項目は様々になりますが、一例として参考にしてください。

1.仕事の流れがイメージしやすい業務の流れと全体像

最初に一連の業務の流れと全体像がマニュアルにあると仕事の流れもイメージしやすくなり、それぞれの仕事の意義も見えてきます。経費精算の仕事なら、「経費申請の広告」「経費の集計・入力」「内容確認」「経費支払い」といった流れがあります。

2.何のマニュアルなのか、業務の目的をはっきりさせる

マニュアルには業務を行う目的を明示します。経費精算における「経費申請の広告」であれば、「広告によって経費の申請期日を伝えると共に、変更されたルールについて認知を促し、後工程における負担を減少させる」などの目的を持ちます。

3.業務が理解しやすいように具体的な手順を一つ一つピックアップする

マニュアルには業務を行う目的の他にも業務の具体的な手順を明示します。経費精算における「経費申請の広告」であれば、「広告文の作成」>「上長の確認・承認」>「広告」といった流れについて、ひとつひとつ「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように(どれくらい)」行うのか、5W1Hなどに基づいて記載していきます。特に、業務の達成基準は明確にしておかないと品質にブレが出ますので注意が必要です。

4.業務がちゃんと進んでいるか確認するためのチェックリスト

業務手順があったとしても、その通りに遂行されるかはわかりません。抜け漏れなどを防ぐために、チェックリストを作ってチェックできるようにしておきます。

5.予想されるトラブルと誰が何をどのように解決していくのかといった対応

過去の経験から、発生しうる問題とその対応手順についてもマニュアルに記載しておきます。問題の種類によっては対応速度によって被害状況が変わるため、対応方法だけでなく、上長への確認の要・不要など権限についても配慮しておくことも大切です。

6.業務マニュアルがいつ作られたのかが分かるバージョン情報(更新履歴)

全てのマニュアルに必要ではありませんが、業務のマニュアルは固定ではなく常に変わっていくものなので、「Ver.1.0」「Ver.1.1」などバージョンの管理もできれば行いたいものです。更新した場合には、どのバージョンで何を更新・改変したのかを明示したものを必ず残しておきましょう。

業務マニュアルを作成するときの手順

業務マニュアル作成の流れについても確認しておきましょう。手順を確定する時は、これでいいのか業務を実際に行う担当者に確認するようにしてください。

【1. think】まず業務マニュアルに盛り込む内容を決める

「誰に」「何を」伝えるかを明確にしたうえで、業務マニュアルに必要と思われる内容をリストアップして、上長などに確認を取るようにします。どこまで細かく内容を記載するかなどもこの時点で決めておきましょう。また、配布方法(紙か、データ資料か、オンラインで閲覧できるか等)も決めておいた方が良いでしょう。

【2. create】業務マニュアルを作成する

必要な内容について業務マニュアルをいったん作成します。次に、作成したマニュアル通りに行うことで実際に業務ができるかどうか確認します。必要な情報に抜け漏れがないかどうかチェックしましょう。

【3. list】作成した業務マニュアルの手順に沿ってチェックリストを作成する

業務の中で大事な点や、抜け漏れが発生しやすい点についてチェックリストを作ります。業務に慣れてくると、チェックリストは簡易なマニュアルの機能も果たしてくれます。

【4. distribute】完成した業務マニュアルを配布する

必要な人が利用することができるように業務マニュアルを配布します。情報にアクセスできる範囲をしっかり決めておかないと、大きな問題の種になりますので注意しましょう。

【5. reform】業務マニュアルが正しく運用されているか管理し、必要に応じて更新する

業務マニュアルは実際に業務の中で使われてこそ意味がありますし、必要な時にはいつでも更新作業もできなくてはなりません。何度もゼロから業務マニュアルを作らなくてはならない状況にならないように、資料の管理もしっかり行いましょう。定期的に内容の更新が必要ないかチェックするように決めておくと良いでしょう。

業務マニュアルの作成で生じうる問題

業務マニュアルを作っている際には、様々な問題が生じますので、必要に応じて適切な対応を取ることが大切です。

以前の業務マニュアルがあるが、内容が大きく違っていて使えない問題

古い業務マニュアルが残っているが、実際の業務内容が大きく変わっていて使えないことがあります。その場合には、上司の許可をもらって業務マニュアル自体を作り直した方が良いでしょう。

専門用語だらけでわかりにくい言葉が多い問題

専門的な用語や社内でしか使われていない特殊な用語については必ず注釈を入れておくようにしましょう。特に新人向けのマニュアルでは理解を進める上で大切です。

業務マニュアルにログインパスワードが記載されている問題

システム利用などが発生する業務では、ログインパスワードの入力が必要になることもあります。そのためのパスワードをマニュアルに記載しておくべきかという問題が生じますが、ケースバイケースです。情報管理の上ではパスワードなどは別途にした方が安全ですが、非効率になる場合もありますので、業務マニュアルの公開範囲やパスワードの変更頻度などを考慮して、上司に決定してもらった方が良いでしょう。

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業務マニュアルの情報セキュリティを考えなければならない問題

業務マニュアルについては企業内の機密事項にあたりますので、外部への持ち出しができないようにすることが求められます。印刷する場合にも、持ち帰ることがないように十分に注意して管理する必要があります。オンラインで見ることができるような場合でも、アクセス権を正しく設定したり、コピーなどが容易にできないよう配慮が必要です。

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業務マニュアルがもたらすものは企業価値の高まりと覚えておこう

業務マニュアルによって、作業が標準化することで品質管理ができることや、新人教育などが効率化するのですが、実は業務マニュアルのもたらす効果はこれだけではありません。

業務マニュアルというのは企業のノウハウとも言うべきもので、業務マニュアルの整備が進んでいる企業ほど安定した事業活動ができるようになっていきます。事業内容によっては、買収などが発生した際の企業の価値評価にも影響することもあります。

さらに、業務を標準化することによって業務改善のポイントを明確にすることができますし、業務内容によっては標準化した内容をプログラミングし、機械に行わせることで「自動化」に結びつけることができる場合もあります。

業務マニュアルを作ることによって、企業価値が高まったり、業務の効率化が大きく進むケースもあることを覚えておきましょう。良いマニュアルを作れる社員がいる会社は、それだけ成長の可能性もあると言えるのです。

業務マニュアルの作成は大きな意味を持つ

業務マニュアルの作成は、企業が行う事業活動の継続性や安定性、成長を考えた時に大きな意味を持っています。業務マニュアルの作成についてただの引継ぎ仕事だと思っていると面倒ですが、企業を成長させるために重要ですので誠実に真摯に取り組みましょう。

業務マニュアルはある程度フォーマットが決まっているのが望ましいですが、整備が追い付かない企業も多いです。上司などとよく相談しながら、使いやすいフォーマットや項目、配布方法などを検討していくようにしましょう。大事な業務だからこそ、うまく上司を巻き込むことも大切です。