接客業のクレーム対応レベルを上げる謝罪テクニック
接客業にクレームはつきものですが、ここでどう対応できるかは店舗やスタッフの実力をはかる物差しとなります。接客業でのクレーム対応の基本的な考え方と注意点、ポイントを整理して解説します。謝罪方法や上司・責任者を呼ぶタイミングなど、日頃の自身のお客様への対応を見直す参考にしてください。
接客業でのクレーム対応は悩みの種
接客業をしているとどうしても商品やサービス、対応などでお客様の意に添えない場面が増えてきます。その際には返品などと一緒にクレームがつけられることがありますが、そこにスマートに対応できるようになることが上手な接客の条件でもあります。
クレームは売上ノルマと並んで、接客業における最大のストレス要因のひとつですが、だからこそ、お客様からのクレームに適切に対処することは自分や従業員の心身を守るためにも必要不可欠でもあります。様々なお客様がいる中で、接客スタッフはどのようにクレームに対応するべきなのでしょうか。
接客業ではクレームをつける人の心理を知ることが対応の第一歩
接客の目的はお客様の購入をサポートすることにあります。クレーム対応をする際だけでなく、接客業というのは高級ブランドであろうと100円均一であろうと「お客様第一」でなければなりません。
クレームをつけるとき、お客様は何かに対して不満や怒りを持っている状態です。そのため、「クレームに対応する」というのは「不満や怒りを受け止め、鎮める」ということになります。
不満や怒りが生じるのは「商品・サービスに対して」「従業員や店舗の対応に対して」です。何に対してクレームをしているのかをしっかり理解してさしあげることが大切です。
接客業のクレームはまずお客様の目的を理解しよう
クレームをする人には何かしらの目的があります。返金や返品を求める人もいますし、慰謝料など金銭的を請求する人もいます。謝罪をしてほしいだけのこともありますし、憂さ晴らしにクレームをする人もいます。その目的や内容が正当なものかどうかを判断することもまた、クレーム対応で必要な要素となります。
接客業のクレーム対応で失礼のない話の聞き方
クレーム内容を全て聞いてみなければ、不満や怒りの矛先や求める対応などがわかりません。お客様からのクレームがあった場合には、しっかり話をしてもらうために失礼のない話の聞き方が求められます。
1 まずは謝罪の意を示す
クレームを受けたら、どんな内容や理由であれ、まずはしっかり謝罪をします。この時に注意してほしいのが、「謝罪することはそのクレームの内容についてではない」ということです。あくまで「気分を害してしまったことがあった」ことについて謝罪します。
2 相槌をしっかり打つ
謝罪後には、相槌をしっかり打ちながら誠意をもって話を聞くことが大切です。相槌を打つにも、「うんうん」と友達と話すようにしてはいけません。従業員はお客様に対してビジネスマナーをもって接する必要があります。これはどんなに慣れているお客様だとしても同じで、特にクレームに対応する場合には気を付けるべきポイントです。
相槌は「ええ」「はい」「ごもっともです」といった言葉も大事なのですが、時にはお客様の話した内容を復唱(オウム返し)したり、その内容を整理して言い換えるなど、しっかり聞いていることを示しましょう。これは相手にとっても自分のクレーム内容について整理するために必要であり、時には誤解があれば気づかせるきっかけにもなります。
3 お客様の話を遮らない
相手のクレームを「受け止める」ことが第一になりますので、相手の話を遮ったり、こちらの主張をするのは控えてください。ある程度たまっている気持ちを吐き出したら、少し落ち着いてきますので、その時が冷静にこちらの対応について述べる機会です。
4 話を聞く姿勢にも注意
クレームを受けているときは表情にも注意しましょう。笑顔で接客するのは接客業の基本ですが、クレーム対応については違います。無表情や、笑顔は相手の感情を逆撫でする可能性があるので気を付けてください。
神妙な顔つきで、共感を表に出すこと、そして相手の顔をしっかり見て話を聞きましょう。あまり見つめすぎると「睨んでいる」と言われることもあるため、考えている様子を出しながら適度に視線を外してください。相手に対して正面から向かい合うような位置・姿勢を取ったり、メモを取りながら聞くことも誠意を示すために大切です。
接客業のクレーム対応で注意するべきポイント
クレーム対応を行う際に注意するべきポイントを整理します。ポイントを意識してクレーム対応をすることで、トラブルに発展することが少なくなりますので、しっかり頭に入れておきましょう。
1 クレーム対応は迅速に行う
クレーム対応はどんなものであっても迅速に行うべきです。ダラダラと出て行ったり、待たせるようなことが無いように気を付けてください。こうした対応は「軽視された」「無視された」と火に油を注ぐことになりかねません。
2 まずは謝罪し、話をしっかり聞く
クレーム対応は謝罪から始まります。お客様の立場で謝ることが大事ですが、最初はお客様のクレーム内容ではなく、心情を害したことを謝るようにしましょう。そして、しっかり話を聞いて問題点を抽出し、対応策を考えます。
3 クレーム対応は上司・責任者が決定する
アルバイトでも正社員でも、自分ひとりでクレームに対応して解決しようとしてはいけません。お客様の怒りの矛先が個人に向いているならまだしも、店舗に対して向いているのであれば、勝手に店舗や会社を代表して対応してはいけません。クレーム対応は前例がもとになってその後の対応が決まってきますので、経営に関する高度な判断が必要になります。その場しのぎではいけません。
「責任者を出せ」と言われていないのに、最初から「では責任者を呼びますので」という態度を取ると無責任な対応と思われるケースもあります。相手の意見をしっかり受け止めた上で、「責任者と相談の上、対応させていただきます」「今責任者を呼びますので少々お待ちください」などと伝え、上司・責任者に対応を仰ぎます。
悪質なクレーマーの中には一筆書くことを求めてくる人もいますが、その内容によっては拘束力が発生することもあるため注意しましょう。
従業員がクレーム内容への対応をする場合は、最低限、マニュアルに沿った対応までにとどめるべきです。マニュアル外になる判断や対応を求められる場合には、責任者へ相談してください。
接客業で起きたクレームがお客様の誤解である場合
クレームの中にはその内容が正当ではなく、誤解や言いがかりによる場合もありますが、その場合の対応についても注意が必要です。
クレーム対処として行うべきこと
クレームの内容が誤解であり、お客様のミスが原因になっている場合については、感情を落ち着けて誤解を解き、極力本来の目的に沿った形で対応を行います。商品のサイズを間違って購入したような場合です。元の商品に損傷等がないのであれば、返品などの対応を行うことで相手も納得するでしょう。しっかりした対応によって、そのお客様の顧客ロイヤリティが高まる可能性もあります。
クレーム対処として行うべきでないこと
クレームの内容が誤解によるものだとしても、お客様の失敗や誤解を指摘し避難するような態度や発言は絶対にするべきではありません。「返品・交換はできないルールになっております」「そちらに書いているかと思いますが」「普通はこうですよね」のようについ言ってしまいますが、それが事実だとしても言うべきではありません。「恥をかかされた」とお客様に逆上されることもあります。
「伝わりにくく申し訳ありませんでした」「説明不足があり申し訳ありませんでした」など、お客様ではなく対応上の問題があったと謝罪して、怒りを鎮め、しかるべき対応を取りましょう。理不尽な要求については、自分の権限では決定できないことを伝え、責任者に指示を仰いでください。
接客業のクレーム対応の手順は明確にしておくことが望ましい
クレーム対応ではスピードが大切であることや不当な要求などをする人もいることから、クレーム対応の手順をマニュアル化しておくのがベストです。
また、いざという時にマニュアルを見るわけにはいきませんので、普段からマニュアルには目を通し、研修などを通じてロールプレイングなどで訓練しておく必要があります。
よくあるクレームの種類や各クレームに対する基本的な対応を知っておくこと、それぞれの立場で決められる権限を明確にしておくことが大切です。また、マニュアルとは別に要注意のクレーマーについての情報や対応を共有しておくことも必要です。
ただ、マニュアルによる対応というのはあくまで「最低限の対応」にすぎません。最近は「マニュアル対応」すら批判の的になります。クレームをする人が求めているのは「血の通った対応」であり、「機械的な対応」ではありません。マニュアル通りにすることだけでなく、マニュアルが求めているものをしっかり考えて、お客様と店舗のために何をするべきかを考えましょう。
接客業におけるクレーム対応は従業員と店舗の力量が問われる
クレーム対応は接客業をしている上では避けられないことですが、上手な対応をすることができれば店舗やスタッフへの信頼を高め、良い顧客を作る機会にもなります。
上手なクレーム対応は普段からの備えによって作られます。クレーム対応をいかに迅速に、そして適切に行うことができるかは接客業スタッフの力量が問われる部分でもあり、個人だけでなく教育・訓練をし、対応を判断する店舗の力量も問われます。場当たり的な対応や個人任せの対応ではなく、しっかり平時から準備しておく必要があると肝に銘じておきましょう。