退職したら確定申告の手続きをしよう
退職したら確定申告が必要な場合があります。会社の年末調整で行われていた所得税の還付を受けるためには自分で確定申告をしなければいけません。確定申告が必要な人の条件、必要な書類、手続きの期間や方法をおさえておきましょう。
退職後の確定申告の手続きのこと、知っていますか?
今の仕事がどうしても自分に合わず、やむなく私事都合で退職するのはやむを得ません。既に転職先が決まっている人は問題無いのですが、年内に再就職出来なく失業状態の場合は確定申告しないと損をする可能性があります。退職後の確定申告の必要性、手続き方法を確認しておきましょう。
確定申告とは?
税金には、「消費税」「所得税」等があり、所得税の申告は毎年1月1日から12月31日までのご自分の全ての所得を計算し合計して、申告し納税するのが義務です。この手続きの事を「確定申告」と言います。
通常この手続きは、該当年の翌年の2月16日~3月15日の間に行う必要があります。
年度末に会社で年末調整している人は確定申告をする必要はない
会社にお勤めの皆さんは、毎年11月頃になると会社の方から「年末調整」の書類を渡されます。そのためサラリーマンの方でしたら「年末調整」と言う言葉は耳慣れているでしょう。
年末調整は、お勤めの会社における給与所得者が、毎月の給与から天引きされている所得税を年末に精算する事を言います。所得税はその年1年間の給与の合計で決まりますから、年末に所得額合計を確定し、過不足が出れば精算します。
会社からもらった年末調整の書類に必要事項を書き、必要な書類を添付して会社に提出する事によって会社側で年末調整が行われますので、年度末に会社に所属されている場合は確定申告を自分でする必要が無くなります。
退職後に確定申告が必要になるのはどんな人?
何らかの理由で会社を退職し、退職した年中に再就職されなかった人は確定申告が必要となります。退職して失業状態のまま年末を迎えた人、または内定をもらっていても入社日が年明けの人です。
確定申告しないと、働いていた間に支払われていた給与から天引きされていた所得税の内、払い過ぎていた分の還付を受けられないので必ず自分で確定申告をするようにしましょう。
退職後に年をまたがずに再就職するなら確定申告の必要はない
年をまたがす再就職した人の場合、前職の会社から「源泉徴収票」をもらい再就職した会社に提出すれば、再就職した会社側で前職の所得分も含めて年末調整してもらえます。前職の会社から「源泉徴収票」をもらえない、または紛失した人は催促するか再発行してもらいましょう。もしそれが出来なかった場合は、現職の会社から源泉徴収票を発行してもらい自分で確定申告する必要があります。
確定申告ができるのは2月16日~3月15日の間
通常の確定申告(自営業の方などが対象)の申告期限は、該当年の翌年の2月16日~3月15日の間です。
しかし、「退職して再就職せず(出来ず)年をまたいでしまった人」は通常の所得税の申告とは異なり「還付申告」となります。
還付申告が出来る期限は該当年の翌年の1月1日からで、原則申告期限はありません。
退職後の確定申告は税務署またはインターネットで手続きする
お住いの地域を管轄する「税務署」で手続きができます。郵送やインターネットでも手続きできます。初めて確定申告をする人の場合、確定申告書を受け取ったとしても、どこに何を書けば良いか分からないでしょう。税務署には必ず相談窓口があり、必要な書類などがすべて揃っていれば、その場での申告、e-Taxの操作方法まで教えてもらうことができます。
退職後の確定申告に必要な書類・物
退職した後に行う確定申告(「還付申告」)に必要な書類はたくさんありますので、一つ一つ見ていきましょう。
確定申告書A
「源泉徴収票」は、退職された会社から退社時に受け取る書類です。もし、受け取っていない、または紛失してしまった場合は、退社した会社に再発行をお願いしましょう。
源泉徴収票
「源泉徴収票」は、退職された会社から退社時に受け取る書類です。もし、受け取っていない、または紛失してしまった場合は、退社した会社に再発行をお願いしましょう。
社会保険料の控除証明書
「社会保険料の控除証明書」が必要となる「社会保険料控除」とは、納税者本人やその本人と生計を共にする配偶者、その他の親族の社会保険料を支払ったときに受けることが出来る所得控除の事です。
「国民健康保険料」「国民年金保険料」の控除証明書はそれぞれ、「お住まいの市・村の役場」「日本年金機構」からご自宅に郵送されてきます。
生命保険料控除証明書など
「生命保険料控除証明書」は保険に加入されている方なら、保険会社から郵送でご自宅に送られてきます。住宅ローンのある方は、「住宅ローン控除」を受けることも出来ますが様々な基準があります。新築・中古に関わらず住宅ローンを組んだ年には、住宅ローン控除を受けることが可能か、確定申告相談窓口で確認するようにしましょう。
医療費の領収書(医療費控除の申告に必要なので必須ではない)
「医療費の領収書」は病院にかかれば医療費精算の時に必ずもらえます。医療費控除は年間で医療費が10万円以上かかった場合に、申告することで控除を受けることができます。年間所得額が200万円未満の人の場合は、所得の5%以上となるので、大きな病気や入院した場合には、領収書は捨てずに大事に保管しておきましょう。
マイナンバー
確定申告書にはマイナンバーを記載する必要があります。もしマイナンバーが分からない・通知カードを紛失してしまった場合は、役所にてマイナンバー通知カードの再発行、マイナンバーカードの再発行、マイナンバーが記載されている住民票を発行してもらうことで確認することができます。カードの発行は日数がかかるので手続きは余裕を持って行いましょう。
女性の退職後の確定申告はどうなる?
女性の場合、結婚すると同時に「寿退社」する方もいます。専業主婦になったり、仕事をパートに変える方も多いでしょう。パートをされる場合は、旦那さんの扶養に入れるか否かで確定申告が必要か変わってきます。
退職後に旦那さんの扶養に入れる人は確定申告の必要はない
旦那さんの会社の年末調整で処理出来ますので、確定申告の必要はありません。
もちろん、旦那さんが奥さんの配偶者控除や配偶者特別控除の申告を年末調整の際しなかった場合は奥さん自身が確定申告しなければなりません。
用意する書類としては、以下の通りです。旦那さんが会社からもらってくる年末調整の書類の申告方法に沿って処理して下さい。
- 年内に勤めていた(また勤めている)会社から発行される源泉徴収票
- 生命保険料控除証明書
退職後に旦那さんの扶養に入れない人は確定申告をする
奥さん自身が確定申告する必要があります。
結婚後の確定申告における注意点として、新姓で行わなければいけません。そのため、還付金を振り込んでもらう銀行口座の名義も、新姓のものを用意しておく事が必要です。源泉徴収票の名前が旧姓の場合は、各税務署によっては住民票などが必要になる場合がありますので、事前に所轄の税務署に確認しましょう。
退職後に旦那さんの扶養に入れる?入れない?扶養控除の条件
旦那さん(親でも同じ)の扶養に入る条件として、自分の「今年の年収が123万円未満」と言うのがあります。しかし「今年の年収が123万円未満」でも扶養に入れない場合もありますからご用心。(2017年までは年収103万円未満)
扶養に入れる条件としては、年収の他に次の2つの条件があります。
-
夫や親に生計を維持されている人
夫や親の直系親族、配偶者(戸籍上、婚姻届が無くても事実上婚姻関係と同様の人も含みます)、子、孫、兄弟姉妹で、夫や親に生計を維持されている必要があります。 -
夫や親と同居していて、自分の年収が夫や親の半分未満の人
読んで字のごとくです。また、扶養に入る方の年収には「失業保険」「公的年金」「傷病手当金」「出産祝い金」なども含まれますので注意が必要です。
なお、年収が123万円を超える場合でも、配偶者特別控除を受けられる場合があります。旦那さんの年収に応じて段階的に控除を受けることができるので、諦めないで旦那さんに会社に確認してもらうようにしましょう。
確定申告をすると医療費控除を受けられる可能性があります
1月1日~12月31日までの間、自分または自分と生計を共にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、申告すれば一定の金額の所得控除を受けられます。これを「医療費控除」と言います。世間的に意外と忘れがちな控除申告ですが、病院に通う家族がいる方は絶対申告した方が良いです。
- 自分または自分と生計を共にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
- 確定申告する年の前年の1月1日~12月31日までの間に支払った医療費であること。
上記に当てはまる人は確定申告時に医療費控除申告もしましょう。医療費控除の金額は、次の式で計算した金額です。ただし、医療費控除額は最高200万円までです。
医療費控除金額の計算式
実際に支払った医療費の合計額-(医療保険などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などの金額の合計)-100,000円
なお、対象の年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等5%未満の場合に医療費控除を受けることができます。仮に年間の医療費合計が10万円未満(例えば99,800円)の人でも、年収が180万円の人で、保険などから支給されたお金が0円なら上記の式に当てはめると、以下のようになり、9,800円が還付されます。
医療費控除額:99,800円-(保険などから支給されたお金が0円)-(180万円×0.05)=9,800円
確定申告で医療費控除を受けるための手続
医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を所轄税務署に提出する必要があります。
「医療機関で会計時のもらう領収書」を確定申告書と一緒に提出する必要があるので、医療費の領収書は1年間捨てずに保管しておきましょう。
また、該当年に収入のあった方はこの他に源泉徴収票(原本)も必要になります。
退職後は確定申告の手続きを忘れずに!
退職後の人のみならず、納税を伴う確定申告というものは自営業・フリーランスの方もしなければならない国民の義務です。
「確定申告なんて難しそう。やらなくて良いんじゃないの?」と思われている方もおりますが、納税は国民の義務ですから、国税庁の調査がもし入って未納税が発覚したら通常納める税金以上の金額を納めなければならなくなります。
それに、確定申告をちゃんとすることによって、「還付金」が戻ってくる可能性が高いのでやらないと損です。最悪、制度の詳細を知らないとしても、必要な書類を持って相談窓口に行けば手続きの方法を全て教えてもらえます。自分が確定申告をしなければいけないのかを調べたり家族と相談したりして、必要な場合は必ず確定申告をするようにしましょう。