部下を叱るのには勇気がいる!コツは?
部下の指導も上司の仕事のうちとはいえ、部下を叱ることに抵抗があるという社会人は多いものです。
- 「部下を叱ることで、部下との関係に亀裂が走ってしまうのではないか?」
- 「却って仕事へのやる気を奪ってしまうのではないか?」
日々、不安な気持ちを抱えながら指導に当たっている方に向けて、体験談をもとに部下を叱るときのコツや注意点をまとめました。お互いが働きやすい環境づくりのためにもぜひ参考にしてください。
部下の個性やスキルはそれぞれ異なる
部下の性格も能力も十人十色です。「大抵の場合、こう言えば伝わる」「入社3ヶ月ならこの業務はできて当たり前」などの考えを持っていると、部下教育はスムーズに行かなくなります。
頭ごなしに部下を叱る前に、自分の指導に問題がなかったか、「ああすればよかったかも」ということはなかったかどうか、自身を振り返ることも大切です。
ただ感情的に部下を叱るのはNG
あまりにも常識外れな行動であったり、部下本人の思慮不足でミスやトラブルが発生した場合、「ちゃんと教えたのに何をしてるんだ」とイライラしてしまうこともあるでしょう。
部下を叱ること自体は悪いことではありませんが、イライラをそのままぶつけてしまっては部下の行動に改善の余地はありません。上司として「何がダメなのか」をわかりやすく伝え、その上で「今後はどうすればよいのか」「再発防止のためになにができるのか」、改善案を一緒に考えていく必要があります。
部下にもプライドがある
部下を叱るときには、「あくまでより良い仕事をするために指導しているのであって、叱るのが目的ではない」ということを理解させることが大切です。その誠意が伝わるよう、上司側は十分に配慮する必要があります。「人前では叱らない」という気遣いは特に重要なポイントです。
たくさんの人がいる前で叱られたという経験は、負けず嫌いの人間であれば悔しさをバネにして頑張る可能性もありますが、繊細な心の持ち主であれば「恥をかかされた」と感じ、プライドを傷つけてしまう恐れがあります。
他の社員に話を聞かれないよう、個室などに呼び出して二人きりの環境で叱るようにしましょう。
部下を叱るときに気を付けていることは?15人に聞いてみた
15人の社会人から、部下を叱るときに気を付けているポイントについてお話を伺いました。
部下の性格も理解してあげることが大切
きみえ(30歳 食品製造)
仕事場で大きな機械を使うのですが、順序を間違えてしまうと古い機械なので壊れてしまうので、部下が間違えた時は叱ります。ちゃんと教えたつもりだったのですが、そのときは私の教え方も悪かったのだと思います。「一緒にやってみれば良かったな」と私も反省しました。
それ以来、一緒にやって部下が自分で間違えなくやり方通りに出来てきたら、一人でやらせて見守るようにしています。時間がない時は私も焦ってしまうので気を付けるようにしています。
また、「この順序を覚えるには私はこうやって覚えた」と伝え、その上で部下はどのような覚え方の方が覚えやすいのかを二人で考えるように心掛けます。
部下の叱り方
tomo(46歳 技術職)
上司が部下を叱ることが多いのは、部下に任せた仕事が期日までに間に合わなかった時だと思います。部下からの報告を聞いていると、どういう所でつまずいて遅れたのかがある程度わかります。この時は遅れた事自体やその原因を叱るのではなく、部下がその仕事を進めるために出来たはずのことを指摘するようにしています。
上司には聞きづらくても、周りの先輩にはある程度聞けると思います。成果物の出来栄えに対して「ここはこう考えるべきだろう」など直接指摘してしまうのではなく、作業する過程で周りの人たちにどの程度助けを求められたのか、自分ではどこまで考えられたのか、解決方法を本人に気づかせることが効果的です。
次回成果物がきちんとできているときには「成果物がちゃんとできている」という褒め方に加えて、「上手く周りの助けを借りて難しい部分をよく解決できたね」という褒め方ができます。
部下を叱るときには、成果だけではなく過程も評価してあげることが本人のやる気を高めて成長を促す良い方法だと思います。
感情的に怒らない
こーたん(32歳 事務職)
私が部下を叱った理由は、仕事を休むときに会社に電話をするのではなく、私にLINEをしてきて社長に休むと言っておいてときたからです。私の会社な小さな会社のため、休むときは会社のほうに直接電話をして社長に休むことを伝えることになっています。ですが、社長には言いにくいのか私にLINEをしてきてそれですませようとしたので叱りました。
部下に電話をし、内心は「何を考えてるんだこいつは」と思っていましたが、感情的にはならず、「ちゃんと社長に電話をして伝えた方があなたの立場が悪くならないから」と伝えました。
私が部下を叱るときに気を付けていることは、感情的にならずに、しっかりと理由を教えて優しく叱ることです。部下を叱るのは私もなかなか苦手ですが、部下のこれからのためにと思うと叱りやすくなります。
褒めながら部下を叱ることがポイント
典子(49歳 販売職)
部下がよく顧客からクレームをもらいます。接客態度があまり良くないと言われることが多く、その度に部下を叱らなければいけないのは私の嫌な仕事です。
しかし、今の人達はただ怒鳴る一方では、すぐに仕事を辞めてしまいます。そのため、叱り方も非常に難しく、柔らかく静かな口調で叱ると、話をよく聞いてくれて、効果があるようです。私が部下を叱る時には、まず相手の良さを褒めて、こういう所は良いけど、という感じに決して上から目線で物事を言わず、叱るというよりも、会話をするといった感じで話をします。
そして、常に相手の表情を見ながら、加減をして叱るようにしています。
今は昔のような叱り方ではいけないと思います。叱る事はとても嫌な仕事ですが、叱る相手のことを考えて、優しく物事を伝えれば、きっと部下も分かってくれます。
頭ごなしと関係ない文句はNG
よっちゃん(43歳 医療技術職)
部下がトラブルを起こしたとき、グチャグチャと長ったらしく説教する人がいます。核心の部分以外にも材料を持ち出す人です。これでは部下は「関係ないことで長く文句を言われた」としか理解しません。
また、頭ごなしにドカーンと爆発して同じことを繰り返し言う人もいますが、本人にはさっぱり伝わらず、敵意すら持たれてしまいます。
叱るときには余計な言葉は付け加えず、あくまでも冷静かつ部下への配慮もしながら「何がよくなかったのか」を伝えるのが一番です。
冷静に叱る
ママ(39歳 技術職)
皆多忙の中、自分でやろうともせず、しかも割り込みで「コレやってください」と依頼してくる部下に対して叱ったことがあります。
本当は「いい加減にして!」と言いたかったのですが、それを言ってしまうと後々やりにくくなるなと思いました。
まず、冷静になるために深呼吸。それから個人攻撃はしないこと、自分が困ることではなく、会社や製品全体として困ることを伝えること、改善案とそれによる相手のメリットを普通の口調で伝えることを心掛けました。
具体的には「割り込みでの作業は、スケジュールが押して最終的に納期に間に合わなかったらお客に迷惑がかかる」「仕様書を読み自分でできる範囲のことはやってほしい。他の人を待たなくてもスムーズに事が進むし、自分のスキルUPになるということを部下に伝えました。
叱ることは勇気がいると思いますが、人間、自分にメリットがないことはやりたがらないものなので、「それをやると自分にとってどんないいことがあるのか」を冷静に伝えればうまくいきます。叱った部下は、今では優秀な人材となっています。
叱るときの注意点
さや(22歳 事務職)
私の部下は高卒で入ってきたのですが、まず基本的な挨拶からできないひとでした。取引先との関係やお客さんもくる中で黙ったままということが多かったり、このままではだめだなと思ったのでさすがに叱りました。
私は叱るというか、ダメなところをわかりやすく伝えることを意識しました。「挨拶はしっかりとしてね」と最初は優しくいってみて今後どのように発展していくのかを見てみるような感じです。それでも効果がなかった時は、その場で「ここの会社にいる限り、社員は会社の顔の一つである」「あなたの印象一つでここの会社の印象は変わってしまう」ということを伝えました。
私は叱るのも叱られるのも苦手なので、叱られる立場のことも考えて叱っています。頭ごなしに怒るのではなく、きちんと相手のことを考えるのが大切です。
叱るのは仕事の改善が目的
やまくじら(48歳 会社員)
誰かがミスをしないと起きないはずの不具合が生じたときに、明らかにその原因を作った社員が、自分の非を認めようとしないことがありました。
「君がやったんだろう」というようなあいまいな推測ではなく、その時の状況を周囲の社員一人一人に聞き取った上で、当該社員と冷静に客観的な視点からその不具合について話をしました。相手の非を咎めることが目的ではなく、不具合の原因を突き止め、再発を防止することが目的だと繰り返し説明することで、ようやく事実を認めて正直に話してくれました。
ミスしたことは良くないことで、自分なりにその理由をよく考えて反省するように叱りはしましたが、その際にも、叱ることが目的ではなく、あくまでもより良い仕事をするためだと何度も念押ししました。
叱る方も叱られる方も、目的はより良い仕事をするためだと納得できれば、あとに変なしこりが残ることもありません。
効果的な叱り方
うめさん(40歳 事務職)
仕事が終わっていなく、「体調が悪く熱も出ているが、迷惑をかけるので職場に出る」という部下に、そんな状態で会社に出てくる方が迷惑だと叱りました。
その部下は責任感が強いために出てきた言葉だと思うので、なぜ職場に出てくるより出てこない方が迷惑をかけずにすむのかを説明しました。部下のためとか自分のためを理由にすると甘えが出てきて、叱っても嫌われるだけで意味がありません。
そもそも叱っても効果のない人には一切叱りません。叱られた部下は自分のどんな行動が一番周りに迷惑をかけるのかを理解し、体調管理に気を付けるようになりました。叱るのはその部下に期待しているからです。存分に叱ってあげましょう。
酷い言い方をしてしまいました
ゆめこ(35歳 事務職)
その部下は仕事中にいつまでもニヤニヤしていて携帯を見ていました。あまりにも携帯ばかりを気にして仕事をしているので「携帯ばかりをみないように」言いました。怒るときには、気を付けていたつもりですが、後から同僚に「怖い怒りかただった」と言われました。
やはり人間ですから、ただ怒られるとおもしろくありませんし腹が立ちます。誉めながら怒るようにしたほうが良かったと思いました。それ以来はゆっくり柔らかな口調で怒るよう気を付けています。
自分も完璧な人間ではないので他人を叱るのは抵抗がありますが、人として社会人の常識的範囲を超えていたらちゃんと怒るべきです。
部下を叱るとき
やすこ(40歳 会社員)
子ども相手の事業展開をしている会社員です。うちの職場では女性が多く働いています。数人でチームを組んでプロジェクトを進めることが多いのですが、一回り以上年下の部下と仕事をすることがあります。
やはり、お客様相手ですので、言葉遣いに関しては叱ることが多いです。友達同士の感覚のままの言葉づかいで商談に臨んだり、電話にでたりすることを注意します。ただし、誰もいないところで具体的に指摘をし、それがクリアできていたら褒めてあげるように心がけています。
相手の人を信用しているという気持ちを持って叱れば伝わる気がします。関係がまずくなることが怖くて叱れない方もいると思いますが、それで会社が窮地に立つかもしれないことを考えれば、信念を持って叱ったほうがお互いのためだと思います。
叱る時には人格を否定しないことが大切
トントン(45歳 事務職)
資料の作成をお願いしたのにもかかわらず、締め切りを過ぎても何も言ってこなかった部下を叱ったことがあります。
部下を叱る時には人格を否定しないように気を付けています。あくまでも失敗してしまった原因について、部下と一緒に考えていくというスタンスを大切にしています。先程の資料作成の件では、部下と原因を探っているうちに、メモをしておらず頼まれたこと自体を忘れていたことが一番の原因であることがわかったので、メモをとるように伝えました。
叱る時には、その部下に期待しているからこそ叱っているという気持ちが伝わるよう、表現を工夫した方がよいと思います。
叱ったその後
アンセリウム(35歳 アパレル販売)
レジでのミス、金銭授受の間違いを起こした際に部下を叱りました。
私が叱るときに気を付けていることは大きく3点です。ひとつは他のスタッフやお客様の前で叱らないこと。お客様の前でというのは当然だと思いますが、お店のイメージやその人のプライドを尊重してあげるべきだと思うからです。
二つ目は、改善方法について自分で考えさせることです。もちろんその後でこれまでの経験からくるアドバイスを教えますがまずどうして起こったかどうすればよいかを考えてもらいます。
三つ目は、必ずその後、でもこういう部分は伸ばしていって欲しいと良い所を伝えることです。そうしてモチベーションを落とさないようにします。
自分は人を叱るのが苦手なのですが、部下を叱る立場になってみて叱るってすごく気力を使うということを知りました。叱ってくれたことに感謝できたので、私の部下もきっといつか分かってくれると思い、これまでの叱ってくれた人への感謝の気持ちを返すよう叱るようにしています。
若い部下を叱る時に意識していること
tom(52歳 エンジニア)
その部下を叱ったのは、社外へのメールに秘匿すべき情報を書いてしまったときです。まだ経験の浅い若手だったので、事前に相談するように言ってあったのですが、自らの勝手な判断で相談無く送信してしまいました。原因は本人の思慮の不足で、業務の意義を理解していない点にあったと思います。
この際に気を付けたのは、なぜいけなかったのかを理詰めで説明することです。理解ができれば自ら改善のためにどうすればよいか考えます。このように自ら反省するように促すと成長のために効果的なようです。
頭ごなしに言うと反発されるか無視されます。最近の若い人たちは頭が良い優秀な人が多いので、理詰めできちんと説明すると理解が早いです。
なぜ失敗したのかを考えさせる
水道屋さん(32歳 建設業)
私が部下を叱る時に心がけていることは、なぜ失敗したのか、その理由を本人から直接聞いてから考えることです。
もし、本人の怠慢、不注意であるならば2度と同じ間違いを繰り返さぬよう叱られる原因と今後の対策を確認させながら叱ります。迷惑をかけた方達には同席させて謝りに回ります。ただ本人に非がなく想定外の事で失敗し、会社に何十万の損害が発生したとしても私は絶対に叱りません。謝りに行く時も私だけで行きます。結果、部下に考える力がついたと思います。
部下を叱るのが苦手な方は、叱る原因が発生しないよう納得いくまで指導してから仕事をさせてください。ですが叱るという行為は自分と相手の今後の成長のためにも私は必要なことだと思います。
上手に部下を叱るスキルを身に着けよう
部下を叱るのが得意という方はなかなかいないでしょう。しかし、上司として上手く叱ることができればその業務改善が促され、ひいては会社の成長にもつながります。
もちろん、ビジネスライクな態度も時には必要ではありますが、その中でも部下に対する思いやりや誠意を持って指導していくことが重要です。