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「真摯に受け止める」のよくある誤用と正しい使い方例文

「真摯に受け止める」という表現はテレビなどの謝罪会見でよく耳にしますが、ビジネスの世界では時折必要になる表現です。表現の意味を正しく意味をわかって使わないと印象を著しく悪くしてしまう可能性があるため、正しい意味や用法の理解が必要です。

「真摯に受け止める」を正しく使おう

テレビのニュースなどでは、事件や事故に関して責任者が謝罪をしている映像が流れることがあります。謝罪会見ではお決まりのフレーズとなっているのが「●●を真摯に受け止めて…」という表現ですが、あまりにも耳にしすぎて意味をきちんと考えたこともない人も多いでしょう。

正しく意味が理解できていないと、言わんとしていることがわからないばかりか、自分がいざ使おうと思っても使えません。「真摯に受け止める」の意味や用法、また使うべき場面などについて確認してみましょう。

「真摯に受け止める」の意味

「真摯に受け止める」で耳慣れないのは「真摯」の部分ですが、これは「しんし」と読みます。「誠実で熱心であること」「ひたむきに努力すること」といった意味を持っており、「真摯に受け止める」というのは「真面目に受け止める」という意味になります。

真摯という言葉はあの人は「真摯な取り組みを見せている」「真摯な態度で評価が高い」など、ポジティブな要素を持った言葉です。

しかし、「真摯に受け止める」という表現はネガティブな状況において使われる表現で、いわば批判などに対して「真面目に聞いて反省する」という意味合いとなっています。

真摯は態度などが真面目で誠実なものであることですから、受け止め方を真面目なものにすることによって「反省」していることを示しているのです。

また、「受け止める」は「受ける」だけでなく「止める」がついていることからも、「常に意識しておく」という意味になります。真摯に受け止めるというのは、ただその場でしっかり聞くだけでなく、それを頭に入れて様々な対応をするというニュアンスになります。

社会人は「真摯に受け止める」ことが必要な場面が多い

社会人になると「真摯に受け止める」ことが必要な場面が多くなります。

こうしたシチュエーションにおいて、社会人として様々な批判にも誠実に対応し、社会に貢献していく必要があります。

社会人は未就学児や学生と違い、社会を作り、貢献していくことを求められており、社会生活においては、自分の常識が社会的な常識と合わない場合や、自分の言動において周囲に迷惑や損害を与えてしまった場合には、批判を受けてしまうこともあります。

そういった批判に対して真面目に向き合い、改善していくことこそが「真摯に受け止める」ことであり、批判をされたからと無視したり、また逆に批判をしていくことは「真摯に受け止める」ことではありません。

「真摯に受け止める」の類義語

「真摯に受け止める」を別の言葉で表現したい場合、最も簡単な表現は「反省する」「しっかり聞いて意識する」が近いでしょう。

ただし、何を表現しようとしているのか考えて使わないと、意味が合わなくなることもあるので気を付ける必要があります。

他の類語としては「厳粛に受け止める」というものがあります。こちらはより受け止め方が深刻となり、基本的にトラブルなどで痛烈な批判を受けている場合に使えます。「真剣に受け止める」「重く受け止める」というのも、問題や改善への期待の声に真面目に向かい合っている様子がうかがえます。

「真摯に受け止める」は、その意味するところが「誠実に取り組む」に近い場合も多いです。「責任感をもって取り組む」も同様の意味となり、問題や改善点に対してきちんとした仕事をすることを表明しています。

「真摯に受け止める」を使った例文

社会人になると俄然増える「真摯に受け止める」シーン。シーン別に「真摯に受け止める」を使った例文を見てみます。

トラブルや問題が発生してしまった場合の「真摯に受け止める」

大きなシステムトラブルの謝罪において

今回は、弊社の基幹システムにおいて長時間のシステム停止が生じ、ユーザーの方々に並々ならぬご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

状況報告ならびに対応の遅れが目立ち、また復旧作業に時間を要したことなど数々のご指摘をいただきました。

いただきましたご指摘につきまして真摯に受け止め、今後はシステムの動作確認や復旧について手順書を整備したり、関連部署の人員増などの改善策を実行し、安定したサービスを提供できるよう努めていく所存でございます。

「真摯に受け止める」を使う場合には、「何に対して」真摯に受け止めるのかを明確にしておく必要があります。批判は様々ありますが、ただの悪口に対して真摯に受け止める必要があるのではありません。批判の裏には様々な期待事項があり、それを正確に理解した上で真摯に受け止める必要があります。

また、トラブルや問題があったケースにおいては、問題の後にそのままではいけません。明確な改善案が無く、ただ「真摯に受け止める」と口頭で言ってしまわないように気を付ける必要があります。謝罪をするその前にも、どれだけ準備や検討を重ねてきたかも、また「真摯に受け止めているか」の尺度なのです。

社会通念上正しいとされるものから逸脱してしまった場合の「真摯に受け止める」

始末書(備品の紛失について)

この度は私の不注意により、社内で貸与されているパソコンならびにUSBメモリを紛失してしまい、誠に申し訳ございません。

貸与備品の管理について、関連部署から度々広報もある中、意識が低く、度々紛失事件を起こしてしまっていることを深く反省いたします。普段からの備品の扱いや管理の仕方など、ご指導いただいていることを真摯に受け止め、定期的にチェックをしながら改善にあたりたく存じます。

社会の様々な単位で法やルールが存在していますが、法やルールは遵守することを目的に作られているものですので、そこから外れてしまうと誰かに迷惑がかかります。

また、法やルールは守ることが当然期待されており、それが守れない場合には指摘や批判を受けることになります。

こういった指摘や批判について、「しっかりと聞いて反省している」ことを表すために、「真摯に受け止め」という表現を使っています。

当然ながら、その後の行動において真摯に受け止めていることが伝わらなければ意味がありません。「オオカミ少年」のように言葉を信じてもらえなくなりますので気を付けましょう。

職務や立場において期待されているものに応えられなかった場合の「真摯に受け止める」

事前の期待に沿えなかった選手団

今回の大会におきましては、事前の期待の大きさに比して、満足のいく結果が残せなかったことを選手一同、大変残念に感じております。

大会前のスケジューリングや戦術面の問題など、様々にいただいている声を真摯に受け止め、より強いチームを作っていくことができるように、またゼロベースで考え直してスタートしていきたいと思います。

芸能人やスポーツ選手、また大企業など、様々な立場の中で人には期待されている働きがあります。期待を満たすことができなければ、頑張ったとしても批判の声を浴びることもあります。

しかし、それらは期待の声でもあります。しっかり聞いて改善につなげていくことが大切です。社会的な立場がある人ほど、こうした声に耳を貸して、より良い活動をしていく必要があることを覚えておきましょう。

ある期待を受けて意気込みを語る時の「真摯に受け止める」

株主総会で来期の意気込みを語る

今期でできなかった課題につきましては、来期においても継続的に取り組んでいく所存です。

弊社商品に対して消費者の方々が期待していらっしゃる「使いやすいデザイン」「コンパクトで高機能」といった声を真摯に受け止め、さらにクオリティの高いものとして他社との差別化につなげていきたく存じます。

批判ばかりでなく、求められている期待についても真摯に受け止めることがより良い価値の創造のためには大切です。批判も期待も本質的には同じもので、より良い価値を生み出して欲しいからこそ出てくるものです。こうした声に耳を傾けることが社会人や組織において大切です。

仕事では「真摯に受け止める」姿勢をいつも持とう

社会人は社会活動の中で「真摯に受け止める」ことを必要とする機会が多くなります。

社会は上手く行かなければ批判もされる厳しい世界ではありますが、批判や期待の中に眠っている様々なニーズやシーズを見つけ出すことができれば、そこから事業活動を拡大したり、また個人の成長を促す材料を見つけ出すことができます。

口先だけで謝ったり批判に反論をするのではなく、常に「真摯に受け止める」姿勢をもって社会生活に取り組みましょう。