「できない」の敬語表現とは?ビジネスで失敗しない断り方
「できない」の敬語表現を知らないと、相手へ意図が伝わらないだけでなく、不快な印象を与えてしまうことから、正しい敬語を使った断り方を身につけておくことが大切です。ここでは、「できない」の敬語を使った言い回しのほか、英語表現も合わせて紹介しています。
「できない」を敬語に変換するとどうなる?正しい依頼の断り方
ビジネスシーンで必ず訪れる「できない」ことを伝えなければいけない場面で、相手がどんなに偉い人だとしても気後れせずに「No!」という気持ちを伝えることができますか?すべてが順調に進んでいる時には、敬語だってスラスラと出てきますが、少々難しいシチュエーションにぶつかった時、どうしても適切な表現が見つからない場合があります。
社会人に求められるのは、さまざまなシチュエーションに対する適応力と柔軟性です。あたふたしてしまうような場面では、正しい敬語の使い方を身につけていることで、相手の方に失礼な言動をせずに大人としてスマートな対応をすることができるのです。
普通なら敬語として使うのが難しい「できない」という気持ちを上手に伝えることができると、社会人としても一人の大人としても一目置かれる存在になりますよ。ここでは、つい口走ってしまいがちな「できない」の正しい敬語変換をビジネス会話と共にご紹介します。
「できない」は敬語としてなぜNG?
仕事をしていて気持ちが重くなる瞬間、それは何かを断らなくてはいけない場面です。その相手が目上の人や取引先の方などの、敬意を示すべき対象であればあるほど、断りたくても断れない状況に陥ってしまうことも少なくありません。
もちろん、断る理由がハッキリと道理にかなったものである場合には、堂々とできないことを伝えればいいのですが、問題は内容よりもその「伝え方」にあります。
「できない」ことを理解してもらえても、伝え方を間違えてしまうとネガティブな印象だけがより色濃く残ってしまうことから、どれだけ正当な断る理由があったとしても、失礼な言動として受け取られないよう注意が必要なのです。
やってはいけない「できない」の伝え方
では、「できない」ことを伝える際には、どのような敬語を使ったらいいのでしょう?多くの人が間違って使いがちなのが、「○○はできません」という表現です。どんなに申し訳なさそうな顔をしたり、「できません…」と消え入るように語気を弱めたりしても意味がありません。
「できません」自体が敬語ではないので、言われた側は不快な気持ちになってしまうことから、「できない」が丁寧な表現だと思っている人は、すぐにでも「できない」の失礼のない言い回しを身につけていく必要があります。
「できない」の敬語変換の正解は?知っておくべき会話例
「できない」の正しい敬語表現として、最初に覚えておくと便利な言い回しが「致しかねます」です。「○○はできません」と直接的な表現で断るのではなく「致す」という謙譲語を用いてやんわりと遠まわしに伝えるような湾曲性も持ち合わせています。では、「致しかねます」を使ったビジネス会話例をチェックしてみましょう。
「致しかねます」を使った敬語の会話例
百貨店の問い合わせ電話にて
A:お電話ありがとうございます。△△百貨店、担当の田中でございます。
B:おはようございます。今月の顧客限定セール日程についてお伺いしたいのですが。
A:はい、ありがとうございます。今月の顧客さまセールは、12日から23日まででございます。
B:分かりました。いつものメンバーズカード割引も使えるんですよね?!
A:大変申し訳ありません。顧客さまセール期間中には、メンバーズカードのご利用を致しかねます。
取引先との商談の場面で
A:山田さん、先日のプロジェクト会議では大変お世話になりました。
B:鈴木さん、こちらこそ数々の新しい提案をお伺いすることができて大変勉強させて頂きました。
A:何をおっしゃいますか。ところで、新しい店舗を渋谷に増やす計画なのですが…。
B:そちらのご提案なのですが、只今地方への店舗進出に向けて動いておりまして、こちらとしても大変残念ではありますが、今回のご提案はお受け致しかねます。
「致しかねます」を使う際に注意することは、受け取る人によっては完全に断られたと感じずに「まだ望みがあるかも!」という期待をさせてしまう可能性があるということです。したがって、ただ「お受け致しかねます」と言うだけではなく、「大変申し訳ありませんが」や「今回は」など、できないことを明確に表す表現やフレーズも加えることがポイントです。
ビジネスシーンで使える「できない」の類語表現
いつも同じフレーズばかり使っていると「馬鹿の一つ覚え」みたいでなんだか物足りないですよね?!「致しかねます」に他にも「できない」ことを丁寧に伝える敬語変換がいくつかあることから、いくつかの断るパターンを憶えておくことで、ビジネスシーンや伝える相手に合わせて敬語表現を使い分けることができます。ここでは、3つの類語表現をご紹介します。
類語表現1「できかねる」
・「未就学児のお子さまのご入場はできかねます」
・「来週までに資料を揃えるお約束はできかねます」
・「審査前の問い合わせ電話やメールをお受けすることはできかねます」
類語表現2「見送る」
・「今回の件は、大変申し訳ございませんが見送らせていただきます」
・「部長、○○商社との会議に出席する件ですが、明日の午後は△△会社とのミーティングが入っているため見送らせてください」
類語表現3「お断りせざるを得ない」
・「海外出張の件は大変光栄なことではありますが、家族の事情もありましてお断りせざるを得ません」
・「今回のプロジェクトですが、残念ながらお断りせざるを得ません」
ビジネスメールで「できない」を敬語表現にする際のポイント
ビジネス文書で「できない」旨を伝える際にも、書面だからといって「申し訳ありませんが、できません」では、受け取る相手の方にも失礼になってしまいます。ここでは、ビジネスメールでお断りしなければいけない場合の書き方のポイントをご紹介します。
ポイント1.全体的にフォーマルな表現を心がける
普段顔を合わせている相手であっても、やはりお断りのメールをする際には嫌な印象を与えないためにもフォーマルな文章表現になるように注意しましょう。「致しかねます」という敬語を使いながらも、全体的に丁寧かつ正しい敬語を使ったメール文にすることが、社会人としてのルールであります。
ポイント2.誤解を招かぬよう、あらゆるフレーズを用いてフォローする
フォーマルなビジネスメールであっても、「致しかねます」という伝えたい内容だけを記すと冷たい印象を与えてしまうので、こちらの意思を伝えつつ誤解も招かないように、「大変申し訳ございませんが」などのような、内容をフォローするフレーズを加えることも大切です。
2つのポイントを踏まえた具体例は次の通りです。
・「今回はお断りせざるを得ません。何卒ご容赦のほどお願い致します」
・「内定の件、この度は大変残念ではありますが、謹んでご辞退させて頂きます」
・「大変恐れ入りますが、お問い合わせの内容に関しましてはお返事を致しかねます」
英語で「○○はできかねます」ってどう言うのが正解?
日本語は少々使い方が難しい「できない」の敬語変換ですが、次のように英語の方が意外と簡単に気持ちを伝えることができるので、この機会にぜひ覚えてビジネスシーンで使ってみましょう。
申し訳ありませんが~できません
We’re sorry to say that we cannot accept your proposal
(訳:大変申し訳ありませんが、あなたのご提案をお受けすることはできません。)
会社としてお断るする際は、「I’m sorry」ではなく「We’re sorry」。
残念ながら~することはできません
Regrettably, it would be difficult to respond to you in the current situation
(訳:残念ですが、今の状況ではお答えすることができかねます。)
「できません」は、「~することが難しい」「~することが厳しい」というニュアンスに置き換えが可能です。
難しいシチュエーションこそ、「できない」の正しい敬語で乗り切ろう!
誰でも「No!」と伝える時こそ、相手に気を遣ってしまいかえって言いにくくなってしまうものです。しかし、そんな難しい状況でこそ、正しい「できない」の敬語を使うことで相手の方にも失礼のない表現で分かって頂きたいものです。
ついつい言葉足らずで周囲の人を不快にしてしまうという人は、「できない」の正しい敬語表現を身につけて社会人として欠かすことのできない交渉術を身につけていきましょう。