タイムマネジメントをビジネスでうまく活用しよう
もはやビジネス書の定番テーマとして様々に紹介されているタイムマネジメントですが、その本質は単純な手帳術やスケジューリングのことではありません。
タイムマネジメントは正しくビジネスに活かしてこそ成功するものです。今回はタイムマネジメントの本質的な意味やその具体的な方法について詳しくまとめました。
ビジネスにおけるタイムマネジメントとは?
タイムマネジメントとは、日本語に直訳すると「時間管理」という意味になります(注1)。これだけを取ると、「何を何時にする」「何時に約束がある」といったことを正確に守ることと考えてしまいがちです。確かにそういう側面もありますが、タイムマネジメントの本質は「自分の使える時間を管理し、行うべきことを確実に実践する」という、いわば「行動管理」にあります。
ですから、タイムマネジメントは単なるスケジューリングや予定のチェックで終わることではありません。自分がどのように時間を使うか計画し、それを行ったかということについて逐一チェックし、仕事を整理することでよりよい時間の使い方を研究していくことだと考えるべきでしょう。つまり、タイムマネジメントは「行動を起こし、目的を達成する」ことが目的なのです。
ビジネスでタイムマネジメントが必要とされる背景
今の日本は特にタイムマネジメントが重要になってきています。その理由としては、日本という国において、その中心が頭脳労働にシフトしてきているためです。
単純な肉体労働においては、タイムマネジメントは比較的単純で、決めた仕事を作業時間内にこなすことになります。工場などでは、その大部分は機械の生産力に委ねられますので、工夫の余地や差がつく余地は機械の性能の差に依存する部分が大きいです。
しかし、頭脳労働は違います。対人折衝や企画立案、資料作成、プログラミングやデザイン作成など、人間が考えて行う必要のある作業については、いかに時間を確保し、集中力を引き出すことができるかが課題となります。また、多くの不確定要素が仕事の中には存在しますので、その中でどのように時間を使い、自分の行うべき仕事を行うのかは、今を生きるビジネスパーソンの課題となっています。
加えて、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を考えることが企業活動におけるひとつの重要なテーマとなっていますが、非効率な仕事による残業は会社の経営にとっても、労働者の健康や人生にとっても損失が多いと言わざるを得ません(注2)。加えて、先進国の中でも一人あたりの生産性が低くなりつつある日本では、ただ労働時間を減らすだけでは海外企業との競争に勝つことはできず、同じ時間でより多くの仕事をこなす能力が求められています。
そのような社会背景において、時間と行動を管理するタイムマネジメントの必要性は高まっているのです。
タイムマネジメントが仕事にもたらすメリット
タイムマネジメントを行うことでどのようなメリットが得られるかというと、大きく分けて次の3つに集約されます。
1 時間の効率が高まる
時間や行動をうまく管理することによって、その時間あたりにできる仕事量が増えます。同じ時間でもできる仕事の量や質が良くなるため、それによって個人の評価も高まります。
2 無駄な時間が減る
仕事においては無駄な時間というのは非常に多いものです。たとえば、何かの書類を探している時間というのは企業には1円の利益にもならず、その間にも給料は発生しているのです。こういった無駄を減らしていくことで生産性の向上につながり、個人成績や企業利益の向上につながります。
3 使える時間が増える
新しいことを始めたり、また勉強をしたり余暇を楽しむためにも時間が必要です。しかし、普段の仕事に追われ、他の時間を作ることができなければその時間は取れません。良い時間の使い方は、自分の自由にできる時間を増やすことにつながります。
タイムマネジメントに縛られて仕事をすると失敗することもある
一見、非常に便利な方法に見えるタイムマネジメントですが、その概念にあまりにこだわりすぎると失敗することもあります。
タイムマネジメントのデメリットとしては以下のようなものがあります。
1 タイムマネジメントで管理することでストレスを感じるようになるから
人間は管理されるということにストレスを感じるものです。自分で自分の時間を管理することも、それなりのストレスが発生します。マジメで几帳面な人ほどこのストレスによって苦しむ場合があります。
2 融通が利かなくなることがあるから
時間管理のためにスケジュールや決め事を決めるのは良いのですが、その通りに行おうとすることによって柔軟性が無くなる場合があります。融通が利かないと、自分だけは仕事が進むものの、周囲には迷惑をかけている場合もあるので注意が必要です。
3 タイムマネジメントそのものに時間を取られるから
タイムマネジメントの目的は「行動を起こし、目的を達成する」ところにあるのですが、タイムマネジメントを細かく考えたり意識したりすることに没頭してしまい、肝心の行動がおろそかになる場合があります。これでは本末転倒です。タイムマネジメントは空いた時間の中で行うべきです。
タイムマネジメントをビジネスに活かす具体的な方法4つ
では、実際にタイムマネジメントにおける具体的な4つのテクニックについて詳しくチェックしてみましょう。
1 PDCAサイクルに沿って行動する
マネジメントの分野では王道となっているPDCAは、タイムマネジメントにおいても有効です(注3)。
P:Plan (計画)
D:Do (行動)
C:Check (評価)
A:Action (改善行動)
の頭文字を取ってPDCAと呼ばれ、これを繰り返すPDCAは様々なマネジメント手法の基本と言われています。タイムマネジメントにおいては、どのように時間を使いたいか計画を立て(Plan)、それを実際に実行し(Do)、予定通りに行ったかを分析・評価し(Check)、次によりよく実行できるような改善をしていきます(Action)。
PDCAは一回で完結するものではなく、繰り返す中でその目的に向かい、より洗練された行動を可能にしてくれます。
2 タイムマネジメントを可視化(見える化)する
手帳術などでよく紹介される「可視化(見える化)」とは、物事を図示するなどしてパッと見てわかる状態にしておくことです。
タイムマネジメントにおける見える化では、とある予定に必要となる時間をひとつの枠や塊として記録し、所要時間や予定ごとの間の時間などを直感的に理解できるようにします。
また、もうひとつ大事なことは、その「見える化したもの」を見える位置に置いておくことです。せっかく見える化をしても、見ることが無ければ用を成しません。すぐに見て内容を意識したり理解できることはもちろん、見ることへの負担を少なくすることも見える化の目的なのです。
3 雑用は「すぐやる」ルールで無駄をなくす
ちょっと頭に浮かんでも、すぐにできることだからと後回しにするということは誰にでもあります。しかし、そういったちょっとしたことが積もってくると時間を奪われる元となりますし、また自分の持ち仕事が非常に煩雑に見えてしまうことがあります。コピーを取ったり文具を注文したり経費の処理をしたりとその種類は様々ですが、こういった雑用に関してすぐに行うように自分でルールを作ってしまうと、仕事の順番を考えたりやるやらないで迷う無駄な時間を無くすことができます。もしくは、そういった雑用をまとめて行うための時間を作る方法もあります。
4 予定と時間は大小の「枠」で管理する
予定と所要時間は「枠」を作って管理します。「13時から会議」という予定の管理ではなく、スケジュール帳などに13時スタートで15時までの枠を作り、そこに「会議」と書き込みます。時間はあくまで見積りになりますが、このように枠で考えると、重要度や優先順位を考えながら、自分の持ち時間の中でパズルのように組み替えていくことができます。
これを習慣づけることで所要時間の見積りも正確になり、自分の持ち時間の中でできる仕事とできない仕事も分別できるようになってきますし、必要に応じて応援を求めることもできるようになります。
タイムマネジメントは人生の質や満足度も高めてくれる
今回はビジネスシーンでのタイムマネジメントに注目してご紹介してきましたが、タイムマネジメントの考え方や方法論は、ビジネス以外の場においても大変有用です。プライベートの予定を立てるところから資格勉強や趣味の時間の確保など、幅広い用途で使うこともできます。
無駄な時間を減らし、使える時間が多くなれば、それだけ多くのことができるようになります。また、自分の時間をどこに使うとより有用なのかが見えてくるようになります。
タイムマネジメントをする際には、「自分が何を大事にしたいのか」を考えて、そこに時間を使えるようにすることです。目先の予定や仕事などを先に予定に入れて時間を使おうとすると、自分の大事にしたいことが後回しになってしまいがちです。
価値観をしっかり持って行うタイムマネジメントは、人生の質や満足度を高めてくれます。ぜひプライベートでも使ってみてください。
ビジネスにおけるタイムマネジメントは「行動管理」のこと
タイムマネジメントは直訳すると「時間管理」ですが、その目的は時間を管理することによって、自分の行動を管理することにあります。
タイムマネジメントを行った結果、時間の効率性が高まり、無駄な時間は減り自由に使える時間が増えるようになります。すると業務効率だけでなく、プライベートにおいても満足度が高まります。
現代のビジネスパーソンは多くの不確定要素の中で、時間当たりの生産性を高めることが社会的にも求められていますし、それがプライベートにも大きく影響するようになっています。このような時だからこそ、よりタイムマネジメントの重要性が高まっているのです。
参考文献