QCサークルとは?その意味と活動のやり方

「QCサークル」という言葉は、製造物の品質管理のために、実は多くの企業に存在している集団を指します。日本独自の手法が確立され、その方式が諸外国にも広まったQCサークルについて、その概念と存在の目的、活動内容について具体的に解説します。

QCサークルとは?その意味と活動のやり方

QCサークルとは

働いている企業の業種や職種によっては、「QCサークルという言葉を聞いたことがない」という人もいるのではないでしょうか。まずはQCサークルとは何を意味しているのかについて、解説します。

QCサークルの意味

QCとは、「品質管理」を意味する英語“quality control”の略語です。日本科学技術連盟によって、QCサークルについては「第一線の職場で働く人々が継続的に製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行う小グループ」のことであると定義されています。

品質管理の問題を話しあう社員グループ

このQCサークルの定義で示されている「第一線の職場で働く人々」とは、現場で実際に作業をするメンバーのことを指しています。QCサークルとは、現場で作業をするメンバー同士が、生産する製品の品質管理の方法や、作業効率をいかに改善するかについて、アイデアを出し合って議論するグループであると言えます。

QCサークルの発展の経緯

品質管理の手法自体は、戦後にアメリカから日本の産業界へ導入され、日本のQCサークルは1962年に正式に誕生しました。アメリカでは、品質管理担当者による職務としての品質管理でしたが、日本においてはグループでの活動として独自の発展を遂げてきました。

1970年代以降になると、日本におけるQCサークル活動が海外にも紹介され、現在では欧米・南米・東南アジアなど約80ヵ国に広まっています。

QCサークルが導入されている職場

話し合う営業職

品質管理を目的として誕生したという特性から、QCサークル活動は主に製品メーカーの製造部門において実施されていました。しかしながら、QCサークルの手法は製品の品質管理や品質向上だけではなく、サービス向上やあらゆる業務の効率改善などに活用できることから、しだいに製造部門にも活動が広がるようになりました。

製品メーカーの事務部門、技術部門、営業部門などでもQCサークル活動は導入され、現在では製品メーカーに限らず、サービス業や医療・福祉施設などをはじめ、あらゆる業種や職種において実施されています。日本の大半の企業においてQCサークルは存在していると言っても過言ではありません。

QCサークルの目的

QCサークルの目的は、第一に製品の品質管理・向上ならびに作業効率をアップさせることです。生産する製品の品質を一定以上に保ちながら、作業効率を高めるために何を改善すべきかを、実際に作業するメンバーによって話し合い、そのアイデアを実行していきます。

職場の問題解決にグループで積極的に取り組むことで職場を活性化すること、さらに加えて職場のメンバー一人一人の自己啓発を促進することも、QCサークル活動の重大な目的の一つとされています。

QCサークル活動のやり方

QCサークル活動のやり方

QCサークル活動のやり方については、「運営を自主的に行い、QCの考え方・手法などを活用し、創造性を発揮し、自己啓発・相互啓発をはかり活動を進める。」と定義されています。

注目すべきなのは、QCサークルはあくまで現場(第一線)で働く社員による自主的な活動である点です。つまり、企業の上層部やマネジメント職からの指示に従って行うものではなく、製品の品質向上や業務効率改善を目的にした、いわばボトムアップの活動であるということです。

それでは、QCサークル活動はどのようなやり方で実施されているのでしょうか。その手順と手法を具体的に見ていきましょう。

1.テーマの決定

QCサークル活動の初めのステップは、テーマの決定です。職場において、現在最優先にて改善すべき事項や問題を明確化し、テーマとして掲げます。

2.現状の把握

医療現場で看護師の意見を聞く

QCサークルで取り組むべきテーマが決定したら、そのテーマについての現状をしっかりと把握します。この現状把握は、QCサークル活動の効果を確実なものにするために最も大切な手順であると言われています。

現状や問題点の認識に誤りやずれがあると、問題を根本的に解決することが難しくなってしまうので、慎重に取り組むようにしてください。現状の把握のために不足しているデータがある場合は、この時点でデータ収集をする必要が出てくる場合もあります。

重要なのは、QCサークルメンバーの誰かの話を聞いただけで判断するのではなく、必ずメンバー全員で現場や現物を確認するということです。現場や現物を確認せずに、現状を正しく把握することはできません。

3.目標の設定

現状が正しく把握できたら、目標を設定します。何をどのくらい改善した時点をゴールとするのか、具体的に設定します。最終的な目標ではなく、段階的に細かく区切った目標設定にすることも効果的です。「すみやかに作業する」といったふんわりとした言葉や概念ではなく、「●●の作業工程を〇分以内におさめる」といったように、具体的な数値を入れるのは必須です。

4.原因の分析

解決したい問題がなぜ出現したのか、またどこから出てきた問題であるのかを明確化し、原因をしっかりと分析します。導き出した原因が、本当にその問題の根底にある原因であるのか、科学的・客観的根拠を示す必要がある場合もあります。

5.対策の立案・実行

分析の結果、導き出された問題の原因について、どのような対策をとるべきであるか、そのアイデアをQCサークルメンバーで出し合います。

対策案を出し切ったら、どの案を実行するかを話し合います。採用する対策案を決定する材料は、①その対策をとるのにかかるコスト、②対策案の実現が可能であるかどうか、③目標に対して期待できる効果の3点です。この3点から評価して、優先して取り組むべき対策案が決定したら、早速実行に移します。

6.効果の確認

対策の結果を確認するメンバー

対策を実行したら、効果を確認します。一発で効果が得られることはほとんどありません。効果が得られていない、または効果が想定より薄いことが確認されたら、対策の立案の手順に戻り、案の練り直しに取組みます。目標を達成するまでこのサイクルを繰り返します。

7.歯止めと標準化

歯止めとは、QCサークル活動によって得られた効果や達成した目標が後戻りしてしまうことがないように対策をとることを指します。効果が得られた対策案を作業工程のなかで標準化し、常に安定して改善後の状態を保つことができるようにします。歯止めと標準化まで完了することが、一つのテーマに対するQCサークル活動の流れです。

これからのQCサークルに期待されていること

昨今、ビジネスがグローバル化し、市場競争が激しくなってきています。同時に、長時間労働の問題が深刻化し、ワークライフバランスの重視が叫ばれるようになった今、企業におけるQCサークルの活動に時間を割くことが難しい状況に陥りつつあります。このような状況のなかで、これからのQCサークルに期待されていることとは何でしょうか。

第一線の現場の活性化

第一線の現場の業務効率の向上や活性化は、企業の経営戦略の成功のための重大な要素となります。競争の激しい市場で、企業として勝ち抜いていくために必須である第一線の現場の活性化が、QCサークル活動に期待されています。

問題解決への取り組みを日常化する

PCで情報を分析する社員

QCサークル活動が円滑にまわるようになると、現場において、日々浮き上がってくる問題点をその都度議題に挙げて解決していく姿勢が根付きます。問題を現場で提起して解決していくというサイクルができれば、製品の品質と業務効率の改善レベルは常に更新されていくことが期待できるでしょう。

トップへの問題提起

QCサークル活動を進めていくなかで、設定したテーマや目標がとても難解であり、現場のメンバーだけでは達成するのが不可能であるということが判明した場合には、すみやかに現場の責任者を通してトップに協力を求めることになります。

このようなボトムアップの問題提起は、企業の発展を支える宝となります。ボトムアップの提言ができる職場環境であるということ、それを受け入れて企業が一丸となって解決に乗り出す実行力があるということは、すなわちその企業の強さを示しています。

問題の発生を未然に防ぐ

QCサークル活動はすでに現場で起きている問題を解決したり、改善の余地のある業務フローを見直したりして効率化を図ることを目的としています。

問題解決のためのQCサークル活動を継続していくうちに、起こり得る問題が現場のメンバーに事前にわかるようになってきます。結果として、QCサークル活動には、これから起こり得る問題を未然に防ぐという効果も期待できると言えます。

QCサークル活動は企業と社員の双方を強くする

笑顔の役員と報告する社員

QCサークル活動は、第一線の現場を活性化させ、現場の活性化が企業のビジネス本体にもよい影響を与えてくれます。現場のメンバーとトップが適切なタイミングで情報を共有し、コミュニケーションを取り合い、企業と社員の双方がより強靭化していくことが、これからのQCサークルに求められている役割と言えるでしょう。