オープンスペーステクノロジーは新しい発想に気づくための頭の整理方法
仕事に役立つのは何でしょうか?スキル、経験、決断力……様々ありますが、特に新しい考え方・発想は非常に大切なものです。現代社会に生きる企業や各組織が求めるのは「新」を手に入れるための考え方で、身につけることはそう難しいことではありません。なぜなら「考える」という行為は古代から行ってきており、今の生活や生き方は全て「考える」に端を発しています。
どんなことにも当たり前だから、常識だからと疑問を持たずにいるのは、思考停止であり進化が止まることになります。仕事においても、業績がいいからといってやり方を変えずにいると、そのまま時代に取り残されてしまいます。オープンスペーステクノロジーは、新しい発想に気付くための1つの手法です。
オープンスペーステクノロジーとは
ハリソン・オーウェン氏が提唱したオープンスペーステクノロジー(OST)は、世界各国で幾度となく繰り返されてきた思考整理の手法です。ある会議の中で参加者が一番充実していたと感じた時間がコーヒーブレイク、つまり休憩時間だったという調査結果から、ハリソン・オーウェン氏がオープンスペーステクノロジーを提唱し始めました。
「会議」という形をとらずに、特定のテーマに関心のある者が集まり各々の意見を提示し一種の混沌とした状況を生み出すことで、誰もが自由に上下関係や常識などに囚われずに参加できます。混沌とした場での意見のぶつかり合いが、新たなアイディアやユニークな発想を生み出す種となるのです。
オープンスペーステクノロジーは多くの企業で取り入れられている
オープンスペーステクノロジーはP&GやIBM、イケアといった有名企業をはじめ、行政や官公庁、非営利組織など、多くの組織で活用されています。
企業や部門における中長期的なビジョンを策定したり、行き詰った仕事の問題を解決したりと、様々な場面で役立ちます。中長期的なビジョンは経営陣だけで決めるのではなく、組織に関わるステークホルダー全体で決めるのが理想的です。しかし各々が利益を求めたり、目標が違ってしまう為に普通の会議では整理が困難になりますが、OSTを利用すればそのような難点も克服できるのです。
オープンスペーステクノロジーでは「問い」が重要
オープンスペーステクノロジーでは「問うこと」が重要です。どんなに当たり前のことでも見る人が違えば異なった見え方、意味を持ちます。多様性を受け入れることとはまた別の話で、OSTでは「当たり前」や「常識」を疑います。見方の違う人の考え方も柔軟に取り入れて新しくユニークな発想を提供することが、オープンスペーステクノロジーの大きな役割です。
また「問い」を投げかけて言語化していくことは、自分の頭の中を整理していくことになります。改めて整理をすることで使っていなかった知識を引き出すことになり、悩みや問題の解決に繋がることもあります。「問い」というのは1種の刺激剤であり、常識や型にとらわれない為の重要な行為です。
オープンスペーステクノロジーのやり方
オープンスペーステクノロジーは5人から1,000人まで参加可能で、参加条件も「取り上げるテーマに関心のある人」のみです。工夫次第でどのような「問い」でもテーマとなりますが、今回はごく簡単なオープンスペーステクノロジーの実践方法をご紹介します。
用意するもの
- 筆記用具
- 付箋
- ホワイトボード
- 模造紙
以上の4つを用意したら、進行手順に従って使っていきます。時間については以下の( )内の時間を目安に、参加人数や議題によって調整するといいでしょう。
参加者は提示されたどのテーマに参加するのも自由で、自分が話し合いに役立てないと感じた場合は他のテーマへと移っていくことも可能です。場において役立つ方法は、話を盛り上げたり考えを述べたりするだけでなく、相手の意見を聞いて引き出したり次々にテーマを変えて情報を多くの人に話したりすることなど、人によって様々です。自分やテーマに合った方法を模索していきましょう。
- マーケットプレイス(20~30分)
オープンスペーステクノロジーの参加者の中から、テーマの提案者を募集します。複数個のテーマが出た場合は共通点の多いものをまとめて同時にセッションすることも可能ですが、その場合は最低でも1テーマに3人いなければできません。決まったテーマに関してはホワイトボードにテーマごと書いておきます。 - セッション(30~50分)
テーマに対する考えを付箋に書きホワイトボードに貼っていき、意見やイメージ、考えを眺めつつ自分の考え方をまとめます。このとき他の相手と話したり、他のテーマに移動もできます。 - ハーベスト(15~20分)
セッションで行った会話の中で気付いたことをまとめていきます。貼られた付箋を移動させたり、絵をかいたりして想像力を膨らませます。線で繋げて共通項を見出したり文字を書いて補足説明したりもできます。 - まとめ(10分)
今回のセッションで感じたことを素直に表現して終了となります。
オープンスペーステクノロジーと似ているワールドカフェとは
オープンスペーステクノロジーとよく似ている手法として「ワールドカフェ」があります。「カフェ」とある通り、カフェにいるときのような気軽さで話し合いをするので、オープンスペーステクノロジーとは違って4~6人のグループで行うのが一般的です。
ワールドカフェは結論を出さないという縛りをすることでより自由な発想を導くことができる
ワールドカフェは「参加者とテーマを共有する」という点ではオープンスペーステクノロジーと一緒ですが、「結論を出さない」という点で異なります。結論を出さない話し合いに意味を感じないでしょうが、実は「結論を出さない」という縛りを入れることでかえって自由な発想を導き出すことになるのです。
何かしらの結論を出さなければならないとき、普通は論理性や実現可能かどうかについて考えようとします。しかし妥当な結論は、えてして使い古されたテンプレート通りだったりするもので、より良い判断は他にもある可能性があります。ワールドカフェでは情報を共有するよりも考え方を共有、あるいは発掘することを目的としていますので、視野狭窄の状態を脱することが可能です。
ワールドカフェはオープンスペーステクノロジーよりも視野を広く持てる
オープンスペーステクノロジーの欠点は「発想できる」ことが前提にあることです。つまり、型に囚われたままであったり、視野狭窄の状態にあったりするとOSTによる効果が薄くなってしまいます。そのため自由に発想できる脳の状態にしておくことが重要になります。
ワールドカフェは視野を広く持てるのでオープンスペーステクノロジーとの相性が良く、いきなりOSTを活用するのではなくワールドカフェで種々の考え方を入手してからテーマを選定するということもできます。いきなり新しい発想をしてまとめ上げるのは簡単ではありませんのでOSTの前段階としてワールドカフェを行い、どんな考え方ができるのかということを知り、準備をしておくことも重要です。
オープンスペーステクノロジーで「新しい」を見つけていこう
オープンスペーステクノロジーではリラックスした雰囲気を演出して参加者の上下関係や立場を無くすことで、議題に関する解決策や対応策に対する本音を引き出そうという手法です。本音を共有することで新たに見えてくる問題点や解決法もあるでしょう。生産性を上げ、創造的な意見を生み出すオープンスペーステクノロジーを使って「新しさ」を見つけていきましょう。