問題発見や解決を助けるロジックツリー
ビジネスの世界では、様々に社会の中に存在する問題を発見し、解決することが望まれます。その問題は自社内の問題であったり、顧客の問題の場合もあります。いずれにしてもそれを解決することによって企業活動は活性化し、また報酬をもらうこともできます。
しかし、簡単にその問題を発見することや解決方法を見つけることは難しいものです。そのために様々な考え方が検討されてきましたが、有名な方法のひとつがロジックツリーと呼ばれる方法です。
ロジックツリーとは?
ロジックツリーとは日本語で「論理の木」となりますが、「木構造」によって表される論理です。上位のテーマに関して切り口を決めて分解・分類し、具体的な問題発見や解決につなげていきます。
ロジックツリーでは大きく分けて「Why」「How」「What」の観点からツリーを作っていきます。
Whyツリー
Whyツリーは問題の原因を探すために使うもので、テーマに対して「なぜ?」を繰り返しながら本質的な問題の解決方法を探すことができます。ツリーの中で問題が解決されていない、あいまいな部分があれば、そこに問題が内在している可能性があります。
Howツリー
Howツリーは問題を解決するために使われるツリーで、「どのように?」を繰り返すことに特徴があります。何をするべきかを繰り返し問うことによって、明確で具体的な行動に落とし込んでいきます。
Whatツリー
テーマになっている事柄の構成要素を明確にするために使われるのがWhatツリーです。顧客ターゲットの選定などの場面で特に効果を発揮します。プレゼンの材料を検討する際にも多く使われています。
ロジックツリーの特徴
ロジックツリーを作って問題を解決に導くには、ロジックツリーがどのように組み立てられているのかを知る必要があります。ロジックツリーの特徴を確認しておきましょう。
1 論理の抜け漏れを防ぎやすい
ロジックツリーの特徴のひとつが、論理における抜け漏れが防ぎやすいことです。そのため、ロジックツリーでは「MECE(ミーシー)」という状態を意識します。これは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive(相互に重複がなく、そして全体に抜け漏れがない)」という状態を指す言葉です。
ロジックツリーは抜け漏れや重複がわかりやすいため、MECEを達成しやすく、前提条件からひっくり返されるリスクが少なくなります。
2 問題の切り口が明確になる
ツリーの種類や用途が明確に分かれていますが、その問いを繰り返すことで問題の切り口がより細分化されて明確になっていくため、問題解決への方法が明確になっていきます。
3 議論の流れが追いやすく共有しやすい
通常の議論だと、どのような議論の流れで今の議論になっているのかがわかりにくいものです。しかし、ロジックツリーを作っていると、現在どのような議論になっているのかが見える化されます。そのため、議論の見返しやメンバー同士の情報共有、途中参加などもしやすくなります。
ロジックツリーの作り方
実際にロジックツリーを使いながら作り方を考えてみましょう。ここでは、「従業員のモチベーションを高めるにはどうするべきか?」というテーマを仮に設定します。
1 テーマ設定
最初に議論するべきテーマを決定します。このテーマがぼんやりしているほど、後程考えて作っていくべき階層が深くなるため、できる範囲では絞った方が良い場合が多いです。
2 ツリーを作成する
まず、従業員のモチベーションが高まっていない原因・理由について考える必要がありますので、「Whyツリー」を作ってみます。「従業員のモチベーションが高くなっていない」状態がありますので、これに「なぜ?」と問います。
この時にMECEを意識しやすくなるように、「A」と「非A」で回答していくといいでしょう。たとえば「会社に起因する問題があるから」「会社に起因しない問題があるから」と分けられます。
3 検討する
「なぜ?」の問いの答えとして出てきたものを、より深く検討していきます。
もう一度「なぜ?」で考えてみると、「会社に起因する問題がある」理由には「労働環境が良くない」または「労働環境以外に理由がある」と分けることができます。
さらに「労働環境が良くない」には「給与に問題がある」「業務時間に問題がある」「設備に問題がある」「業務内容が良くない」などに分けていき、ひとつひとつに対して適切な問いか、もっと深く「なぜ?」で議論をしていきます。
中には問題だけれども本質的な問題ではない場合もありますが、議論をしていくことでより重要度の高い問題が見えてきます。
4 HOWツリーの作成
解決するべき問題に対して同様の方法で「HOWツリー」を作っていきます。
例えば、最終的に「業務内容上、スキルアップなどの目標や刺激がない」がモチベーションの上がらない理由なのであれば、それに対して「定期的な研修を行う」「資格取得を助成したり資格手当を拡充する」「会社としてより高度な事業に挑戦する」など解決のための方策を考え、実施の可否や方法を検討してくことになります。
どこかでMECEが崩れてしまうこともありますが、完全なMECEを作ることが目的ではなく、議論するテーマを具体的に抽出していくことがロジックツリーの目的です。適度なところでしっかりとした議論ができれば、さほど問題はありません。具体的な行動に落とし込めたら、どの行動をするべきか意思決定し、行動に移します。
ロジックツリーを作るときに気を付けたいポイント
ロジックツリーが上手く機能しなければ作った意味がありません。ロジックツリーを作る際には、いくつかの注意事項があります。
1 目的達成のための切り口を考える
ロジックツリーでは、目的を達成するための切り口を正しく設定しなければ、延々とツリーばかりが広がり、解決には結びついてはいきません。切り口によってはかえって問題が分散してしまい、議論がまとまらなくなっていきます。切り口は目的達成に向けて収束していくものを考えましょう。
家庭教師が「学校のテストで生徒の成績を上げたい」場合に、「苦手な教科を洗い出す」という解決策を考えると、「国語も数学も社会も英語も苦手」となり、問題がかえって拡散してしまいます。
本質的な原因を考える際には「生徒に学習意欲がある/ない」「学習のための時間が充分取れている/いない」などの観点から切り分けていくと、より問題解決への思考の流れが収束しやすくなります。
2 具体的な表現を心がける
ロジックツリーを作成する際には、その要素をできるだけ具体的に表現します。できる限り主語・述語までしっかり記載しましょう。特に下の階層に行くほど抽象度を排除していく必要があります。
ダイエットで「食事が問題」なのであれば、「本人の」食事が問題の場合もありますし、「家庭で」出される食事に問題がある場合もあり、それぞれ解決策が違ってくるはずです。そのため、誰の食事の問題なのかも明確に考えて、それぞれツリーを作っていく必要があります。
3 上位要素とのつながりを意識する
議論を進めていくうちに、もともと始めていた議論とは別の議論になることが少なくありません。そのため、上位要素をしっかり確認しつつ、解決するべき問題についての切り口を探すことが大切です。
たとえば、「売上に関する問題解決」について話し合っていて「組織風土の問題」が議論となり、そこで盛り上がってしまったりします。「売上が上がらない問題」で「組織風土が問題」の場合に「給与が低い」「残業が多い」は事実かもしれませんが、議論している問題解決の切り口としては不適切です。「営業情報やノウハウの共有がされていない」などの切り口が妥当で、上位の問題に沿ったものとなります。
4 具体的な解決策が出てきたらやめる
ロジックツリーはやろうと思えば延々とどこまでも続けることができます。しかし、ロジックツリーを作る目的は行うべきことを具体的に決定することです。その目的に十分と思われるものが出てきたならそこで止めて構いません。
ロジックツリーは論理的思考を鍛えるのに有効
ロジックツリーの作り方には「これが正解」というようなものはほとんどありません。各人がそれぞれの切り口からロジックツリーを作っていくことができます。
ロジックツリーを作っていく中で、自分の論理的思考も鍛えられますし、また考えている内容が理論的に正しいかどうか確認できるため、結果的にアウトプットにも自信を持てるようになります。
日頃からちょっとした問題にロジックツリーを組むようにすると、ロジカルシンキングに慣れて、より速く正確にロジックツリーを組めるようになっていきます。ダブりや抜け漏れのないツリーを上手に作れる人がいると、チームで議論する際に非常に効率的な議論ができ、全体の論理的思考のレベルが上がっていきます。
ロジックツリーは「議論して満足」にならないよう注意
ロジックツリーは論理的な思考によって様々な意見をまとめ、効果的なアウトプットを出すために有効なフレームワークです。しかし、議論が白熱していくと際限なく議論が続いたり、議論で結果が出たことに満足して終わってしまうこともあります。
ロジックツリーはあくまで明確な結論を導き出し、行動や意思決定を助けるための方法です。そのため、行動や意思決定を「実際に行う」ことが大切ですので、議論して満足して終わらないように気を付けてください。