ビジネス知識

ヒューマンエラーとは?間違いを防止する5つの対策

ヒューマンエラーという言葉の意味や定義をご存じでしょうか。人である以上、職場でどうしても発生してしまうのがヒューマンエラーです。間違いを起こさないための対策、ヒューマンエラーの種類、ヒューマンエラーが起こってしまう原因について解説します。

ヒューマンエラーとは何か?

ヒューマンエラー(human error)とは、人為的過誤や失敗、つまり人によるミスを意味する言葉です。ある人間や組織が達成したいと考えていた目的に対して、意図しない結果に至ってしまった行為を指します。

誰でも起こしがちなヒューマンエラーを防ぐ5つの対策

さまざまな発生要因が考えられるヒューマンエラーですが、防止するためにはどのような対策が必要になるのでしょうか。具体的に5つ挙げていきます。

1.知識不足からくるヒューマンエラーが多い新入社員は地道な教育を行う

新入社員に対しては、入社時や随時の研修の機会を設けることが重要です。最近は、新入社員であっても即戦力として数えて、OJT(On-The-Job Training)をする企業が増えています。OJTは実地で体験しながら業務を身に付けて行くよい方法ではありますが、知識不足からくるヒューマンエラーを引き起こすリスクが大変高いです。

取り返しのつかないヒューマンエラーを発生させてからでは遅いので、必要以上に即戦力としてのスキルを追求するのではなく、地道な教育により社員を育てる企業努力が不可欠です。

2.不特定多数の人のヒューマンエラーが続いている場合は作業工程を見直す

数ある作業工程のなかの特定の作業で、不特定多数の人がさまざまなタイミングでヒューマンエラーを起こしている場合は、作業工程自体を見直すべきです。なぜなら、ミスを誘引する何らかの要素が、その作業工程の中に入っている可能性が高いからです。

ヒューマンエラーの出やすい作業工程をなくしてしまったり、簡略化してわかりやすい作業に変更したりするなど、工夫が必要です。

3.ヒューマンエラーの危険性を感じ取る危険予知のトレーニングを取り入れる

慣れからくる危険軽視もあれば、そもそも危険性を察知することができていないこともあります。危険に対する知識や予知能力がなければ、ヒューマンエラーを防ぐことはできません。

組織全体で、危険予知のトレーニングを取り入れることが今後重要になってくると言えるでしょう。個人のトレーニングもあれば、グループワークで危険性について話し合う機会を設けるのも効果的です。他者の意見を聞くと、自分ではまったく予知できていなかった危険性に気が付くことが多々あります。

4.休息時間を設けたり交代要員を増やすなど労働環境を改善する

疲労や不注意によるヒューマンエラーの防止に必須となるのが、労働環境や作業環境の改善です。ソフト面、ハード面の両面から対策が不可欠です。たとえば、単純作業の合間に強制的に休息時間を設けたり、交代人員を増やしたりする対策です。

5.組織やチーム内のコミュニケーション、連携を強化する

連絡の未達や、情報の共有ができていないことで起きるヒューマンエラーは、特に防ぐことができた事態であることがほとんどです。

誰かがミスをしても、他の誰かがミスに気付いてカバーできる幾重ものチェック体制を整えたり、連絡の体系化、チーム内でのコミュニケーションを強化したりすることによって、連絡不足によるヒューマンエラーを確実に防いでいきます。

仕事におけるチームワークの重要性と向上させるポイント

ヒューマンエラーは段階別に分けると3つの種類がある

ヒューマンエラーは、段階別に大きく分けて3つの種類に分類できると言われています。

正しい行いをしなかったために起きてしまうスリップ

スリップ(slip)とは、正しい目的や計画に基づいたものの、行為が誤っていたがために発生したヒューマンエラーのことを指します。

たとえば、コンビニの駐車場から車をバックで発進させようとしたところ、間違えてアクセルを踏んでしまい、コンビニの建物に突っ込んで入口のガラスを破損させる事故を起こしてしまった場合、ヒューマンエラーのなかのスリップを発生させたことになります。

うっかり忘れてしまうような物忘れのために起きてしまうラプス

ラプス(lapse)とは、短期的・一時的な記憶違いや物忘れによって発生したヒューマンエラーのことを指します。いわゆる「うっかりミス」、「うっかり忘れ」のことです。

たとえば、電話で伝言を頼まれメモに要件を書いたのに、突然横から頼まれた仕事の対応をしている間に伝言メモを渡すのを忘れてしまったといったヒューマンエラーがラプスにあたります。

そもそも間違いであったのに正しいと思い込んで起こしてしまうミステイク

ミステイク(mistake)とは、意図的に間違った行為をした結果起きてしまったヒューマンエラーのことを指します。つまり、計画段階ですでに失敗していたり、知識不足や経験不足によって、そもそもの前提が間違っていたりすることにより起きるエラーということです。

ここで注意してほしいのが、ミステイクは決して「意図的に発生させたヒューマンエラー」ではないということです。破綻している計画や、間違った前提に基づいて、意図的におこなった行為によって発生したヒューマンエラーがミステイクということになります。

たとえば、指導されたマニュアルのなかの一つの工程に対して、自身の経験から不要な工程と判断して、その工程を一つ飛ばして作業をしたがために、発生したヒューマンエラーがミステイクに当たります。

ヒューマンエラーを意図的に発生させたわけではなく、マニュアルから一つの工程を外すことが正しいと勝手に信じて行った作業の結果がヒューマンエラーの発生につながったということです。

企業や組織にヒューマンエラーが発生してしまう原因

企業や組織において、また個人であっても、ヒューマンエラーに悩まされた経験がある人は多いことでしょう。人間は必ず間違えるものであり、人間が介在する状況において、ヒューマンエラーは必ず起こりうるものであると言われています。

しかしながら、ヒューマンエラーはときに取り返しのつかない大災害を引き起こすことがあります。ヒューマンエラーが原因で起きた航空機の事故などは、その最たる例と言えるでしょう。企業や組織は、担っている業務の範囲において、できるかぎりヒューマンエラーを発生させないよう、最大限の努力をする義務があります。

ヒューマンエラーを引き超す主な原因を以下にピックアップしました。これらのうち一つが原因となって発生するヒューマンエラーもあれば、複数の要因が複雑に重なり合って発生するヒューマンエラーもあります。

いずれにせよ、ヒューマンエラーの発生を防ぐためには、まずヒューマンエラーを引き起こす要素を知っておくことが重要です。

1.あいまいなままで作業をしてしまう知識不足や経験不足、思い込み

企業の新入社員によく見られるのが、知識不足や経験不足、思い込みからくるヒューマンエラーです。上司や先輩社員からの指示を十分に理解しないまま作業に着手してしまったり、あいまいな知識のまま誰にも質問せずに独自の解釈で作業をしてしまったりすることで発生します。

経験を積んで、業務に習熟してくればこのヒューマンエラーは減ってはきますが、知識の絶対的な不足が根底にあるので、ただ気を付けてとりかかれば解決する問題ではありません。周囲のサポートも不可欠になってくるでしょう。

新入社員教育の苦労話15本・新人をデキる部下にする教え方のコツ

2.仕事の慣れやおごりの気持ちから起こる危険の軽視

「知識不足や経験不足、思い込み」から発生するヒューマンエラーとは反対に、ベテランの社員や仕事に慣れてきた中堅社員に多いのが、危険の軽視や慣れからくるヒューマンエラーです。

新入社員の頃は慎重に行っていた作業も、慣れてしまえば注意散漫になったり、自分の能力に対するおごりの気持ちが出てきたりして、雑に取り組むようになることでヒューマンエラーを引き起こします。

3.どんな人・どんな場面でも起こる不注意

「危険の軽視、慣れ」も大いに絡んでくるのが、不注意からくるヒューマンエラーです。しかしながら、この不注意からくるヒューマンエラーは、新入社員でもベテラン社員でも、危険を軽視していなくても、あらゆる人・場面において発生するおそれがあります。

4.ヒューマンエラーのリスクをあげるのが疲労や加齢による機能の低下

近年、時間外労働による過労が大きな問題となっていますが、肉体的・精神的疲労はヒューマンエラーを引き起こすリスクを上昇させます。判断を誤る場合もあれば、肉体の疲労からくるいわば手元の狂いによるヒューマンエラーも起こり得ます。

疲労だけではなく、加齢による肉体的・精神的機能の低下も同様です。疲労や加齢による機能低下は、「不注意」によるヒューマンエラーの要因ともなります。

5.予期しないことに突然直面した時に起こるパニック

何らかの非常事態に直面し、パニックを起こしてしまった人間は、正常な判断をすることが困難になります。通常であれば問題なく判断できることが、パニックによってできなくなり、誤った判断に基づいて行動することでヒューマンエラーは発生します。

6.一人だけの責任ではないコミュニケーションやチームワークの不足

連絡不足、コミュニケーションやチームワークの不足により、ヒューマンエラーが発生します。多くの場合、個人に責任があるのではなく、複数の人間が関わっており、組織やチーム全体の問題であると言えます。

ヒューマンエラーの防止対策には一人一人の自覚が必須

ヒューマンエラーは、一人が気を付けてがんばっても防げません。関わる人全員が自覚と責任をもって作業をすること、また日々ヒューマンエラーを招く要素がないか、マニュアルと工程を確認しながら意見を出し合い、アップデートしていく姿勢が不可欠です。

人間の行いには誤りがつきものですが、ヒューマンエラーはときに取り返しのつかない事態を招くということを一人一人が深く理解して業務に取り組んでいきましょう。