エレベーターピッチを身に着けてプレゼン上手になろう!
ビジネスパーソンの実力を大きく左右する要素のひとつがプレゼンテーションです。技術や知識がどんなにあっても、それを上手く伝えるプレゼン能力がなければ、残念ながら評価してもらうのは難しくなります。
大事だとはわかっていても、プレゼンテーションに自信のない人は多いもの。具体的な手法や練習方法を知らない人も少なくありません。プレゼンテーションは回数をこなせば「ある程度」は上達できます。しかし「ある程度」のレベルを超えるには、より高度なプレゼンテーションのロジックや仕組みを導入することが必要です。
エレベーターピッチはビジネスパーソンが行うプレゼン手法のひとつで、あらゆるビジネスシーンで活用が可能です。エレベーターピッチのスキルを身に着けて、プレゼン能力を大幅アップさせましょう。
エレベーターピッチとは何か?
エレベーターピッチとは、15~30秒ほどの短時間でのプレゼンテーションを行うための手法です。不思議なネーミングですが、その語源は「エレベーター内にいるわずかな時間に、ターゲットに対して自分や企画・商品・サービスなどのプレゼンをして売り込む」というところにあります。
起業家やスタートアップ企業などが多いアメリカのシリコンバレーで発祥し、多忙な相手に対して短時間で売り込み、ビジネスチャンスにつなげる文化や習慣の中で生まれました。
エレベーターピッチは自己紹介から文章作成などあらゆるビジネスシーンで活用可能で、様々な場面での表現力・説明力の向上に役立ちます。
エレベーターピッチを使うことで得られる効果
エレベーターピッチはその定義を聞けば「話が短く簡潔に終わる」と解釈できますが、これを使うことで多くのメリットが生まれます。
1 考えが整理される
考えの整理なしには、短く要点をついた話をすることができません。エレベーターピッチを意識することで考えが整理されるようになります。
2 話の内容や目的がブレない
エレベーターピッチをしていると、余計な話をする時間ないため、話の内容や目的にブレがなくなります。そのため、伝わりやすいだけでなく、話の内容や考えに一貫性のある人という印象を与えることができます。
3 言葉選びが上手くなる
伝える内容を圧縮するためには、上手に言葉を選ぶ必要があります。そのため、エレベーターピッチを意識し、短く伝えようと推敲を重ねる中で言葉選びが上手になります。
4 話が伝わりチャンスを活かせる
エレベーターピッチは簡潔明瞭なプレゼンテーションです。相手に話がしっかり伝わり、多くのチャンスをつかむことができるようになります。
5 時間ができる
会議などでは冗長なプレゼンによって時間を奪われがちです。エレベーターピッチができる社員が多いほど会議などのムダがなくなり、全体の時間ができて生産性がアップします。
エレベーターピッチの作り方
エレベーターピッチは「GTC」を意識することによって作られます。GTCというのは以下の頭文字です。
「G」: goal (自分の目的)
「T」: target (相手や相手へのメリット)
「C」: connect(GとTをつなぐための手段)
エレベーターピッチでは、端的に言えばこれ以外は必要ありません。この構造を中心に話の筋を考えることで話が脱線したり抜けてしまうことを防げます。
G:goal
Gは「自分の目的」を意味しますが、相手に対してしっかり自分の要求を示すことが大切です。「~を売りたい」「~を知ってほしい」「~を紹介してほしい」など、会話の意図をしっかり伝えることです。
T:target
Gだけでは相手にはメリットがあるかわかりません。相手にとってもよい話であってこそ相手も動いてくれます。Tは相手や相手の得たいと考えているものを分析し、そこに訴えかける内容を検討します。
C:connect
Cでは自分の目的と相手へのメリットがどう関係しているのかを示すための方法を示します。Cがしっかりしていないと信用性のない話になりますので、しっかり説明する必要があります。
エレベーターピッチを構成する3要素
GTCの構造に沿っていても、それだけだとただの簡潔な説明に終始してしまいがちです。エレベーターピッチでプレゼンテーションをする場合、相手に強い印象を与えるようにしていきます。あくまでも目的は「自分の目的を達成する」ことであり「説明をすることではない」ことに注意しましょう。
そのための3要素として、フック、ポイント、クロージングがあります。
フック
フックというのはいわば話の「つかみ」です。相手が興味を持ってくれるような一言を話の冒頭に持ってきます。「最新のパソコンがあるのですが」ではなく、「電源を入れて2秒で立ち上がる最新のパソコンがあるのですが」というように興味をつかむ一言で話に引き込みます。
ポイント
ポイントというのは、Tを考えつつ相手に訴求するためのポイントです。フックと同様、ポイントも多くなりすぎないよう多くても5個、普通は3個程度にとどめるのが妥当です。「パソコンの立ち上げやシャットダウンに、毎日最低2分以上かかりますが、一年では10時間になります」のように、相手に訴求する材料を提案します。
クロージング
クロージングは相手に行動を起こしてもらうための話の締めくくりです。「このパソコンをご利用ください」というよりも、「今なら普及段階なのでサービス価格でご提案ができます」と、行動を促す一言を入れていくのがポイントです。
エレベーターピッチの時間と文字数
エレベーターピッチでは15~30秒程度をひとつの基準として話しますが、これは文字数に換算すると100~250文字程度になります。
ひとつの参考として、標準的なアナウンサーは1分(60秒)あたり400字程度の文字を読み上げます。早口な人で500~600字程度です。特殊なトレーニングを受けていない一般人が30秒で話すなら、その半分も話せないと思っておいた方が良いでしょう。いかに要点をまとめるか、原稿を作成する段階から文字数は常に意識しておくことが大切です。
エレベーターピッチの例文
実際に、エレベーターピッチの構造や要素に則って作成した例文を見てみましょう。
新車販売
燃費が40km/ℓの新しいエコカーができました。
「燃料価格の高騰」や「環境負荷の削減」、そして「静かな乗り心地」を実現し、かつ「軽自動車でもありません」。
販売前から受注予約が相次ぎ、生産が追い付かない可能性がありますので、お早めにご検討・ご注文ください。
エコカーの販売の例になりますが、フックに燃費の話をしています。ここで「40km/ℓ」と具体的な数字が出ていますが、数字を出すことによって具体性とインパクトが出るようにしています。この程度の量のテキストであれば15秒程度のCM感覚でのプレゼンテーションが可能です。
不動産投資案内
当店がマンション投資を案内しているA地域に、「大手ショッピングモールの新規開発計画」が立ち上がりました。
将来的に「5000人の地域人口増」につながり、また「交通機関の整備」計画が検討され、「経済効果は年間10億円」と評価されています。「5年後には地価が10~15%アップ」が見込めます。
計画段階ということもあり、お付き合いのあるお客様にしかまだご提供していない情報です。正式発表後は申込が相次ぎますので、「事前にご検討いただければ」と存じます。
投資の成功につながりそうな有益な情報がフックになっている例です。この例では、ポイントの部分はターゲットが想像しやすい「利益の出そうな情報」が並んでいて、投資家心理をくすぐるようになっています。
クロージングは「買ってください」ではなく「ご検討ください」ということになっていますが、不動産投資の場合は大きな金額が動くため、銀行に融資を依頼するなど投資準備に準備が必要ですので、そうした前提でマイルドに「先に検討して準備しておくといいですよ」と伝えています。ある程度相手との取引があり、互いに理解があるからこそ省略することができる内容もあります。相手をよく理解していると、内容の省略が可能な場合もあります。
エレベーターピッチの注意点
エレベーターピッチを上手にまとめあげたとしても、その内容や説明にユニークさが欠けているなら、相手の興味を引くことはできません。提案の失敗が続くと、相手からの評価を下げてしまいますので、ただ伝えるだけではなく、聞く側が面白いと思えるような提案ができるように考える必要があります。
また、日本とアメリカでは文化の違いがあることは意識しておくべきです。日本で急に本題から話し始めると嫌がられるケースもあるので注意しましょう。
エレベーターピッチは様々なシーンで活用できる
プレゼン能力の向上や成果アップが期待できるエレベーターピッチですが、この手法は様々なシーンで活用することが可能です。名刺交換やキーパーソンに何かを売り込む際はもちろん、何気ない普段の会話やメールなどのメッセージのやり取りなどでも、エレベーターピッチを意識すると大きく印象が違ってきます。ワンランク上のビジネスパーソンを目指す人は、ぜひ普段から意識してみてください。