CtoC型サービスって言葉はよく耳にするようになったけど
以前から、企業間の取引を「BtoB(Business to Business)」、企業と個人の取引を「BtoC(Business to Consumer)」と呼びましたが、最近になって「CtoC」という言葉を耳にすることが多くなりました。このCtoCサービスは今後のビジネスの中で大きな影響力を持つと言われている分野で、ビジネスのみならず生活に与える影響も大きいと予想されています。
分かりやすく説明するために、大学生の酒井君が経営コンサルタントのワークさんにCtoCサービスについて伺ってきてくれた架空設定で紹介していきます。わかるようでわからない、CtoCサービスについてより正確に理解しておきましょう。
そもそもCtoCとは?
――ワークさん、酒井と申します、本日はよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします。
――早速なんですが、「CtoC」というのはどういう意味なのでしょうか?
はい、「CtoC」というのは「Consumer to Consumer」という意味で、「一般消費者から一般消費者へ」という商品やサービスの流れを表しています。日本語では「個人間取引」という言葉で表されます。
――なるほど。つまり、個人の持ち物を取引するような感じでしょうか?
そうですね。そのイメージでよいと思います。ただし、今は持ち物だけでなく様々な商品やサービスが販売されていますけどね。
CtoCサービスではどのようなことができるの?
――CtoCは個人間取引ということはわかったのですが、個人で取引すると言ってもあまりビジネスになるような気がしないのですが。
そうですね、実際、今までもCtoCの取引というのはずっと昔から行われてきているんです。「オタク」「マニア」という言葉が一般化する前から、カードやシールなど、収集家たちの中ではそれらをトレードするようなことは行われています。最近になって特に注目されるようになったのは、インターネットやスマホ・パソコンの普及が大きいと言えます。
――それはつまり、CtoCはオンラインで活発に行われているということですか?
そうです。現代のCtoCは、インターネットを活用することによって、個人がオンライン上に店舗を設けたり、商品紹介・販売ページを作れるようになったことによって広まってきています。
――確かに、メルカリやヤフオクなど、簡単に個人でも自分の持ち物を販売できるサービスがありますね。
それらすら、現在のCtoCの市場の中ではほんの一部です。単純な物品販売だけでなく、Airbnbのように民泊(個人宅などの空き室への宿泊サービス)を販売できるようにしているサービスもありますし、海外ではUberのように自家用車の乗り合いを提供しているサービスもあります(※)。
(※日本では現在、法的な問題からタクシーやハイヤーを呼ぶためのサービスになっている)
――モノだけでなく、サービスも販売されているんですね。
極端なことを言えば、マッチングさえ上手くいけば、何でも取引できてしまうんですね。お手伝い的な「肩たたき」や「草むしり」、また「高齢者の見回り」だろうと商品化できる可能性があります。インターネットは空間的な距離を超えて、多くの人を結びつけることができますから、マッチングがうまくいく可能性がずっと高まったんです。
――へぇ~!個人間取引ってすごいんですね。俄然興味が湧いてきました!ワークさん、CtoCのこと、もっと詳しく教えてください。
CtoCサービスのメリットは手軽にできること
ところで、酒井君はCtoCの最大のメリットはどこにあると思いますか?
――メリットですか?…何だろう。手軽にできること?
正解です。多くの人が様々なモノやスキル・知識を持っているにも関わらず、それをビジネスにできなかったのは、販売するのが難しかったからです。
――確かに。大学生の僕でも、何かの役には立てそうな気はしますが、それでビジネスができるかというと無理って思ってしまいます。
現在のCtoCでは、個人が自分の持っている物品や時間、技能・知識を販売するためのプラットフォーム(環境)を整備することによって、販売活動を容易にすると共に、消費者が求めているものを探しやすいようにしてくれています。そのため、自分で会社を作ってビジネスするよりもずっと手軽にビジネスを始められるんですね。
――では、僕でもやろうと思えばCtoCのビジネスが始められるってことですね。
そうですね。販売するための商品やサービスが決まっていれば大丈夫です。
――じゃあ、早速帰ったら何か売れるものが無いか探してみようっと。
もうちょっと言えば、CtoCはそれで生計を立てる必要がない限り、利益にそこまでこだわる必要がないですし、撤退もすぐにできます。だから事業をするよりリスクが少ないのもメリットです。
――なるほど。ということは、それなら副業に向いているって感じがしますね。
はい、実際に副業にしている方も多いんですよ。雑貨やアクセサリー、家具などをハンドメイドで作れる人は副業で本業より稼いでいることもあります。
――すご~い!やっているうちに副業が本業に変わるかも知れないなんて夢がある!いつか好きな事を仕事にできたらいいな。
CtoCサービスには不安なところはないの?
――話を聞くにつれ、今の時代ならCtoCはいいこと尽くめな感じがしてきたのですが、何かデメリットや問題は無いんですか?
当然、CtoCにも問題はあります。たとえば、ひとつは「取引上のトラブル」です。個人間で取引が成立しても、商品代金の支払いがされなかったり、逆に入金されても商品が届かなかったり、紹介されていた商品と違うケースもあります。
――それは詐欺じゃないですか!警察に通報したらいいんじゃないですか?
普通の取引であればそうなのですが、プラットフォームによっては互いの個人情報が最低限しか公開されておらず、訴えるために必要な情報すら不足することがあります。また、アカウントを削除することで完全に足がつかなくなることもあるんです。
――それはひどい!
こうしたトラブルを防ぐために運営元はエスクロー方式(運営元がいったん支払い代金を扱い、取引が無事に終了してから支払う形式)の導入や、アカウントごとの評価システムなど安全な個人間取引のためのシステム整備に力を入れています。
――なるほど!サービス運営元の努力があってこそのCtoCなんですね。
また、どうしてもサービス運営元ではなく、取引をする個人に依存する問題が大きい点があることは理解しておく必要があります。法的に販売が禁じられている商品の販売や、特定の資格がなければ商取引ができない商品の販売が行われていることもあります。また、「空売り」と呼ばれる取引が決定してから商品を仕入れて発送する方法はトラブルも多いです。
――う~ん、素人が自由に取引をしていると、知らない間に法を犯してしまう可能性もありそうですね。
そうなんです。また、法律の改正などがあった場合、企業などでは対応も早く、厳しく法令を遵守するものですが、個人の場合は知らないまま取引を続けてしまうこともあります。
――購入する側も、ちゃんと知識がないとリスクがありそうですね。
たとえば、個人情報保護法などは現在は保有する個人情報の数によらず、また事業者か個人かを問いませんので、CtoCで商品発送のための個人情報だったとしても、取得するならしっかり管理する必要があります。他にも売上金額によっては税金などにも理解が必要です。
――何だか難しくなってきました…。手軽とは言っても、考えることは多いんですね。CtoCをするならもっと勉強する必要がありそうですね。
これからのCtoCサービスはどうなっていく?
――最後に、今後のCtoCの展開について教えていただけますか?
はい。今後、CtoCの市場規模はより大きくなっていくことが予想されています。経済産業省が2018年4月にまとめた「電子商取引に関する市場調査」では、CtoCの牽引役とも言えるフリマアプリの推定市場規模は4835億円(2017年)となっており、この数年、急激な成長が続いています。
――すごい金額ですね。個人間取引って言うから、もっと小さい市場だと思っていました。
CtoCの雄であるメルカリが東証に上場するなど、この分野への注目度や認知度は高まってきていますし、CtoCのサービスはAirbnbのように国を超えたサービスなどもあります。解決するべき問題は多いとはいえ、今後もCtoC市場からの上場やグローバルなCtoCサービスの登場が続くと予想されます。
――CtoCが増えるのは良いのですが、BtoCをしてきた企業などは困らないんですか?
一部では影響はあると思われますが、今は様々な企業においてCtoCの仕組みを活用したビジネスも模索されるようになってきていますので、うまく棲み分けされていくでしょう。国としても社会問題の解決や経済発展のために積極的に活用していく方針ですので、法整備も進んでいくと予想されます。
――CtoCとBtoCで衝突する、というよりは共存すると考えたほうが良さそうですね。
そうですね。スキルや知識も含めた遊休資産をより積極的に活用していこうというシェアリングエコノミーの考え方が広まっていく中で、CtoCの仕組みは非常に大切です。新しい働き方や自己実現の方法のひとつとしてもCtoCは期待されていますし、取引の形として定着していくことでしょう。
――CtoCを早いうちに理解しておいて、有効に活用していきたいですね。ワークさん、本日はどうもありがとうございました!
CtoCサービスは今後が期待される新しい取引の形
CtoCは個人間取引を意味し、特にオンライン上での取引が急拡大しています。市場規模も年々拡大しており、CtoCのプラットフォームを提供する企業でも、利用者が安全かつ便利に取引できるように様々に工夫をしています。今後、CtoCは取引のひとつの形として、その市場規模はますます拡大を見せていくことでしょう。