アクチュアリーとは数理や分析のプロフェッショナル
アクチュアリーとは保険業界を中心に活躍する職業です。しかし2014年のアンケート調査で人気職として1位になりましたが、あまり一般的に業務内容が知られてはいません。日本国内では数理のプロフェッショナルであるアクチュアリーに就いている人は少ないため、年収や待遇に恵まれています。
アクチュアリーを知ろう
世の中に理解されにくい職業の1つであるアクチュアリーとは、専門協会である日本アクチュアリー協会で「確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロフェッショナル」として紹介されています。確立や統計はExcelが普及した今でこそ身近なものとなりましたが、それらを扱うアクチュアリーという仕事を正確に理解している方はとても少ないでしょう。
複雑な確率や統計データを扱うアクチュアリーは、仕事内容の専門性の高さから年収が1,000万円をこえる方も珍しくありません。保険や年金の掛け金等を算出する専門職・アクチュアリーについて紹介します。
アクチュアリーの仕事内容とは
アクチュアリーの仕事は非常に多岐に渡っていますが、内容を大きく分けると4つに分類されます。過去のデータ分析、適正な保険料率や掛金の算出、準備金や配当金の算定、経営リスクの管理の4つです。
保険に関する過去のデータを分析する
アクチュアリーは保険に関係する資料を集めることで死亡率や自殺率、各病気の罹患率、伝染病、事故率、天候、業界や国の景気サイクル、災害確率と損害規模、経済・政治的情勢などさまざまなデータ分析を行います。過去に起きた事象のデータをもとに予測するので、今後同様の事象が起きる可能性がいくらあるかが分かります。
過去に起こったことが未来でも起こるとは限りませんが、起きたことが再度発生するかどうかの確立は立てられます。人びとが合理的に行動したり、妥当性や納得性を求めるときにはすでに起こってしまったことの事実確認をしてからこれから起こるあるいは起こそうとしていることを比較して決めるものです。
例えば、これからAという商品を売ると大儲けできるというのは過去データが無ければ説得はできません。Aの類似製品がどのようなもので、どれくらいの購買力があったのかという事実確認が無ければ単なる未知の商品となり発売にはならないでしょう。アクチュアリーの行う過去データの分析は合理性や妥当性といった意思決定に必要な要素を補完する仕事です。
過去のデータから将来を予測して保険料を割り出す
保険の運用で特に重要なのは保険料や掛金をどの程度にするかということです。保険は何かが起きた際に保証してもらう為に払うお金ですので、自分や家などに対する適切な保険料や掛け金がいくらぐらいなのかを知っておく必要があります。仮に保険料よりも保険金の方が多いのであれば保険会社は保険金の支払いができず破綻してしまいますし、逆に保険料が保険金よりも高くなれば商品の魅力は薄れてしまいます。
アクチュアリーは過去のデータから適切な保険料を割り出すので、保険運営における重要な役割を担います。数学的手法を使うことで将来をシミュレーションし、適性だと思われる保険料や掛金の割合を決定します。時代の流れや景気の変動なども関係してくるため、非常にバランスが問われる仕事でもあります。
どのくらいの利益を出していくのかを決める
保険料や積立金の利率、代理店のマージン、掛け金を総合的に考慮して、責任準備金・支払準備金・配当金を算定します。いわば、どのくらいの利益を出していくのかを決める仕事といえるでしょう。
もし、人為的には起こりようもない天災などによって大規模な損害を被った場合はその再建のための戦略のために改めて戦略的意思決定の判断材料を用意しなければなりません。アクチュアリーは意思決定の判断材料を数学的に整理することが求められています。
持っている情報を提供する
アクチュアリーは保険会社だけではなくシンクタンク、証券会社、監査法人、弁護士事務所等から情報を求められることがあります。アクチュアリーの提供する情報には企業価値評価、リスクマネジメント、デリバティブ商品の価格決定、市場リスクの予測に役立つためのものがあります。アクチュアリーの提供する情報には大きな魅力があるとともに多方面で活躍できる汎用性があります。
アクチュアリーの収入と待遇
アクチュアリーの年収は幅が広く、700万円から3,000万円といわれています。国内企業の場合では1,000万円が上限というのが現状ですが、需要の割にアクチュアリーが足りませんので外資系の会社も考えると、希少という付加価値もついて3,000万円までが年収の上限であると考えられています。
アクチュアリーという仕事はその人の能力や力量により出来が左右されるため、収入は年俸制である場合が多いようです。1種技術職のような立場にあるアクチュアリーは、その人の力量次第で年収が伸びる仕事といえます。また、勤務先の規模や地位、あるいは勤続年数からも収入は変わり、会社から特別手当が出されることもあります。
アクチュアリーになるには
アクチュアリーになるには特別な学歴は必要とはされませんが、理数系大学の出身者がそのほとんどを占めています。理由としては、アクチュアリーになるには数学試験に合格しなければならないからです。
試験に年齢制限はありませんが、保険会社や信託銀行で年金や保険業務を経験した後に2年間のアクチュアリー講座を受講し、受験するのが一般的です。受験資格として大学3年生以上の者という条件がありますので、基本的には大学に進学していることが必須となります。
アクチュアリーに必要な資格
日本でアクチュアリーといわれる場合は日本アクチュアリー会の「正会員」を意味し、この正会員の資格を取得するためには同会が毎年実施する資格試験の全科目合格とプロフェッショナリズム研修の受講が必須の要件となります。
現在の試験科目では基礎科目をみる1次試験と、専門科目をみる2次試験の両方を合格する必要があります。これらの科目をすべて合格するには最低でも2年かかります。過去の履歴としてアクチュアリーの準会員になるには5年、正会員になるには8年かかるのが平均的となっています。
アクチュアリーの試験概要
基礎科目を見る一次試験には次の5科目に合格する必要があります。
一次試験内容
- 数学
- 生保数理
- 損保数理
- 年金数理
- 会計・経済・投資理論
専門科目を見る二次試験では実務を行うために必要な専門知識と問題解決能力を持っているのかを見るため、3つのコースの内1つの専門分野における試験に合格しなければなりません。
二次試験内容
- 生保コース:生保1、生保2
- 損保コース:損保1、損保2
- 年金コース:年金1、年金2
アクチュアリーの魅力
アクチュアリーという仕事の魅力は、給与が高く設定されている他にも「仕事のやりがい」に現れてきます。アクチュアリーの仕事には会社全体のリスクを洗い出し、そのための計測手法やモデルを考案・提案しなければならないこともあります。計測手法やモデルに沿ってリスクを定性的かつ定量的に評価することが主な業務になることもあります。
単にデータを整理すればよいというわけではなく、集めれられたその時点では何の意味も持たない数値やデータに対して意味づけをしていくことで今までは見ることの出来なかったリスクの発見に繋がります。新たに発見した危険因子を会社に報告することで、企業が窮地に陥ることを防げます。いわば、アクチュアリーは企業のヒーローになり得る仕事なのです。
アクチュアリーにはなかなかなれない
アクチュアリーの難点というと「時間」です。アクチュアリーとなるには時間がかかり、試験を受け続けていつの間にか10年以上経ってしまったという方も少なくはありません。長い期間、保険業務や年金業務に携わりながらも中々合格できないという試験ですので、かなり難しい試験といってよいでしょう。
実際に現時点でアクチュアリー協会の正会員は2,000人に満たないのですから、仕事に求められる能力は相当高いと思った方が良いでしょう。しかし、その分だけ重要な仕事が任されると考えれば合格した後の待遇に期待出来ます。
アクチュアリーとは数理・リスク管理のプロである
日本ではまだなじみのない職業ですが保険の運営のみならず幅広い分野での活躍が期待できるアクチュアリーは今後も必要とされることでしょう。アクチュアリーは数学的に物事を整理し、現れたデータに対して意味づけをする仕事ですので、そうして作り出されたデータというものには自然と価値がつくものです。
価値のついたデータを渡すということには責務も伴います。アクチュアリーはそうしたことも含めて数理とリスク管理両方のプロであるといえます。