情報リテラシーは生涯学習が必要な全世代の重要スキル
情報リテラシーという言葉は定義が広範囲に渡るため、正確に理解して伸ばしていく必要があります。言葉の意味するところや、情報リテラシーの伸ばし方についてインタビュー形式のコラムでわかりやすく紹介します。
今は情報を扱う能力である情報リテラシーが求められる時代
現代は高度に情報化された社会になってきており、その情報をうまく扱う能力が年齢に関係なく求められるようになっています。その能力を評価するために様々な概念が考え出されているのですが、その中のひとつが「情報リテラシー」で、生涯学習が必要とも言われています。
大学生の酒井君も、情報リテラシーという言葉は何となく聞いたことがあるものの、正確な意味はわかっていないという一人。酒井君は情報リテラシーについて経営コンサルタントのK・エーイ氏に尋ねてみることにしました。
最近の若者は情報リテラシーが高い?低い?
―エーイさん、今日もお時間を取っていただいてありがとうございます。今日は、情報リテラシーについて教えてほしいと思っています。
情報リテラシーですか。情報リテラシーで何が困っているんですか?
―はい。先日、「最近の若者は情報リテラシーが低い」という内容の新聞記事を見たのですが、一方で「最近の若者は情報リテラシーが高い」という話も聞きまして。一体どっちなんだろうかと思ったんです。就活のために自己分析するにしても、間違った認識だといけない気がしますし。
そうですね。情報リテラシーはかなり幅が広い概念ですから、そういう真逆の話が聞こえてくるのは無理もないかもしれません。でも、両方とも当たっている意見ですし、就活を意識するなら情報リテラシーを高くしておいて間違いはないですね。
―情報リテラシーが高いとも低いとも言われているのに、両方とも当たっているとはどういうことなんですか?高いか低いかじゃないんですか?
はい、情報リテラシーは高いか低いかで間違いないですよ。最近の若者にいたっては、情報リテラシーのバランスが悪いとでも言いましょうか、そこが問題なんです。
情報リテラシーは「ITリテラシー」と「メディアリテラシー」の二つに分けられる
情報リテラシーというのは、大雑把に言えば「情報通信技術を活用して、情報やデータを管理、活用する能力」と言うことができます。この定義をちゃんと理解できていれば、何となく見えてくると思います。
―「情報通信技術を活用」して、「情報やデータを管理、活用する」能力。あ!ふたつの能力があるってことですね!
正解!情報リテラシーという言葉は、その言葉の意味するところがどんどん広まってきているため、様々な定義をすることができますが、大きく二つに分けることができます。ひとつが、「情報通信技術を活用する能力」です。これはコンピュータリテラシーとかネットワークリテラシーとかいろんな言われ方をしますが、「ITリテラシー」が日本人には一番イメージしやすいでしょう。
―ITっぽいものを使えるってことですね。
まさにそうです。パソコンとかスマホとか、WiFiとかそういうものですね。そこには、カメラみたいな正確にはITとはちょっと違うんだけどなというものも含め、「ITっぽいもの」が正確でしょうね(笑)。そして、「情報やデータを管理、活用する能力」は「メディアリテラシー」などと表現されることもあります。メディアリテラシーよりも、より情報の活用に本来は焦点が当たっている概念ですが、同じようなものと考えておいて良いでしょう。
―つまり、情報リテラシーは「ITリテラシー」と「メディアリテラシー」ってことなんですね。じゃあ、先ほどの矛盾した話が両方当たってると言うのは…
最近の若い人は、「ITリテラシーは以前の世代よりも高い」けど「メディアリテラシーは以前の世代と比較して低い」と言うことが言われているんです。
情報リテラシー(ITリテラシー)が低い人は仕事ができない?
今、情報リテラシーが求められているのですが、まずITリテラシーがある程度あるということが仕事をする上では基礎になりつつあり、学校教育でも力を入れるようになっています。特にホワイトカラーでは必須とも言えるでしょう。
―確かに、パソコンを使って仕事をするとか、メールやSNSなどで連絡を送り合うことができないと、どう仕事をしていいかわからなくなりそうですね。
ですから、今はITリテラシーが低いと仕事ができないんです。上の世代の人などはやっぱりITリテラシーが低い人も多いですから、「タブレット」と言っても本気でお薬のことだと思っていたりしますよ(笑)。ブラインドタッチができず、パソコンの前で両手の人差し指を伸ばして構えている方もいらっしゃいます。
―それは仕事できなさそうですね…。でも、上の人がそれだと困るんじゃ…。
そのため、できるだけ書類づくりなどの入力作業はそういう方には回さないようにして、若い人に回している企業も多いんじゃないかと思います。一方で、こういう上の方々って、まとめられた情報から何かを考えたりする能力がとても高いんですね。
―なるほど。それなら仕事の上でもちゃんと尊敬できますね!
はい、「パソコンくらいもできないで」とか思わないで尊敬してくださいね。実際に社会に出てみるとわかるんですけど、そういう人たちの方が売上や経営に大きなインパクトのある仕事をできますからね。一方で、若い人でITリテラシーも低いとどうなりますか?
―うーん…任せられる仕事が、あんまりないかもしれないですね。
そういうことです。上の方だとそうでもないんですが、若い人でITリテラシーが低いと仕事ができないと見られかねません。「リテラシー」というのは、本来は「読み書きができる」というような意味なのですが、つまりは社会生活をしていく上での基礎的な能力なので、これが無いことは結構まずいんです。ですから、基本的なITリテラシーは高めておいた方が良いのです。
情報リテラシー(メディアリテラシー)が低い人は失敗しやすい
―では、メディアリテラシーが低い場合はどうなるんでしょう?
情報を入手し、活用する能力が低い人ということになるのですが、そういう人は大きな失敗をする可能性が高いです。間違った情報をもとに判断したりしてしまうわけですから。
―なるほど。
たとえば、昔は良い食事というのはカロリーをしっかり満たしていることだったんです。しかし、それは今では否定されてきています。しかし、メディアリテラシーが低い人がある時栄養はカロリーが大事だという情報に触れて「カロリーが大事なんだ!」と高カロリー商品を開発したりカロリー摂取を中心にした食事法の普及に回ったりしたらどうでしょうか?
―間違いなく失敗するでしょうね。もしかしたら批判もされるかも。
そうですね。「いつ」「どこで」語られた情報なのかを確認していれば、おそらくはそんなことにならないはずなんです。他にも「誰が」「何を」「なぜ」言っているのかも重要な要素です。そうやって情報をよく考えることがメディアリテラシーですね。論文を読む人なら常識なんでしょうけど、大学でもそういう機会が減ってることもあり、気にしない人は増えましたね。
―こういう能力って、今の若い人は低いんですか?このくらいは意識している人は少なくないと思うんですけど。
みんながみんな低いとは思いませんが、低くなっているとは思います。その理由のひとつはインターネット世代だからということですね。デジタルネイティブと言われる世代は、検索したら簡単に必要な情報が出てくるのが当然で、そのためにネット上の有象無象の情報に対しても過度の信頼があります。中には古い情報や、誰が言ったかわからない情報もあるのに、精査することなく信じちゃうんですね。
―うーん、耳が痛いですね。確かに、普段何かを検索して、いつ誰が書いた内容かなどは気にしたことはほとんどないですね。
もちろん、上の世代がそういうことをいつも気にするわけではないのですが、情報に対する慎重さが違ったり、上の世代は常識や倫理で情報の内容について考えるのに対し、若い世代は情報が常識や倫理となっていきやすいため、ちょっと危ない面があるんですね。経験の違いがありますので仕方ない部分はあると思うのですが。
情報リテラシーを高めるためには「知識や経験」で考える習慣をつけること
―では、エーイさん、情報リテラシーを高めるにはどうしたらいいんですか?
まず、ITリテラシーとメディアリテラシーをしっかり区別してトレーニングすることですね。ITリテラシーなら、技術的な話なのでツールごとに教材もたくさんありますから、そういったものを見ながら地道に練習しましょう。
―では、メディアリテラシーは?こちらの方が難しそうな気がしますが。
まずは様々な情報を鵜呑みにするのではなく、「知識や経験で」考えるようにする習慣をつけましょう。メディアリテラシーにも様々ありますので、詳細はまた今度お話できればと思いますが、まずは考えることが大事だと言っておきたいです。
―どうして知識や経験が大事なんでしょう?色々ネットで調べたらいいんじゃないんですか?
ネットはいつでも繋がるわけではなく、都度調べるのも面倒ですし、客観性のある情報は意外と少ないものです。知識と言っても、義務教育レベルでも多くのことを判断できますから、自分の知っていることと当てはめてみるということですね。経験についても同じです。知識や経験はいつでも取り出せる判断の道具です。
―なるほど~。知識や経験で考えるってそういうことなんですね。まだまだ知識も経験も未熟なので大丈夫かなと不安でしたが、義務教育レベルでも大丈夫なら何とかなりそうです。
日本人の情報リテラシー低下を防ぐカギは世代間コミュニケーション
もうちょっと言えば、日本人は情報リテラシーが下がっているという話もありますが、世代間のコミュニケーションを取ることが情報リテラシーを高めるために有効です。
―え?ちょっとよくわかりません。どういうことでしょう?
つまり、世代によって情報リテラシーの中に得意不得意があるんです。それをコミュニケーションの中で互いに補いあったり、教えあったりして高めることが大事だってことです。
―なるほど。最近は世代が違うとコミュニケーションが苦手って人も多いですが、やっぱり大事なんですね。
はい。ただ、最近は若い人もスマホやタブレットが主で、パソコンはほとんどできないという人や、ソーシャルメディアはよく使うけどEメールはほとんど使ったことがないなど、事情も変わりつつあります。いろんな世代が上手に交わってスキルを継承できるのが理想的ですね。
―情報リテラシーについて考えると、日本の職場の雰囲気も何となく見えてくるんですね。若い私たちも、情報リテラシーを高めておくことで活躍の場が増えそうな気がします。よし、早速サークルのみんなに伝えてきます!ありがとうございました!
情報リテラシーは読み書きのように大事なスキルと心得よう
情報リテラシーは情報技術を扱えるITリテラシーと、情報をうまく活用するメディアリテラシーによって構成されます。現代においては、読み書きのように社会生活で必要不可欠なスキルとなっていますので、普段から高めるように意識して生活するのが良いでしょう。