時短勤務制度はいつまで?利用時のメリット・デメリット
時短勤務の利用を産休から戻ってくるタイミングで検討する女性は多いですが、「時短勤務っていつまで取れるの?」「誰が対象になるの?」などの疑問もあります。短時間勤務制度を賢く利用するためには正しい知識が必要です。時短勤務に関する基礎知識とメリット・デメリットをまとめました。
働くママの味方!時短勤務制度を覚えよう
子育てをしながら働くワーママが年々増えてきていますが、育児と仕事の両立は想像以上に大変です。
朝から朝食の準備、子どもを起こし、やっとの思いで朝食を食べさせ保育園へ送り、出社したと思ったらあっという間に夕方になり、保育園のお迎え、夕食の準備、お風呂、寝かしつけ、明日の準備…。こんなハードスケジュール、「産休や育休から戻ってもちゃんとこなせるかな…」と不安になってしまう女性も多いでしょう。
育児と仕事の両立をサポートする子育て支援制度はいろいろありますが、その中でも時短勤務について解説していきます。いつまで利用可能か、適用対象者の条件、利用する場合に知っておきたいメリットやデメリットを把握しておきましょう。
時短勤務とはどんな制度?
時短勤務は正式には短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)と言います。子どもが3歳の誕生日を迎えるまでの間、1日原則6時間の短時間勤務をすることができる制度で、厚生労働省が管轄する育児・介護休業法の中で定められています。
以前は従業員101名以上の会社に対してのみ義務付けられていましたが、平成21年6月の育児・介護休業法改正により、100名以下の会社を含む全事業主にも適用が義務付けられています(注1)。
時短勤務制度はいつまで利用できるの?
法律で時短勤務の適用が義務付けられているのは、3歳の誕生日を迎える前日までです。
3歳以上の子どもを持つ親に対して時短勤務と同じ措置を講ずることは努力義務とされていますが、中には「子供が小学3年生になるまで」「小学校を卒業するまで」と、時短勤務の延長を可能としている企業もあります。
時短勤務制度の対象者は?
時短勤務の制度を利用するためには、男女は問いませんが、法律で定められた要件を満たす必要があります(注2)。
- 3歳未満の子どもを育てている
- 1日の所定労働時間が6時間以下でない
- 日々雇用される者ではない
- 短時間勤務制度が適用される期間に育児休業をしていない
- 労使協定による適用除外者ではない
契約社員やパートタイマーであっても、雇用期間が1年以上、所定労働時間が6時間を超えており、かつ週3日以上勤務していれば適用の対象になります。
時短勤務制度の適用対象外となるケース
以下に該当する従業員に対しては、会社は労使協定により時短勤務の対象外とすることができます。自分が適用対象に該当するかどうかをチェックしてみましょう(注3)。
- 継続雇用期間が1年未満である
- 週の所定労働日数が2日以下である
- 業務の性質又は実施体制から、制度の適用が困難な業務に就いている
時短勤務制度を受けるための手続き
時短勤務の適用を受けるための手続きは、基本的に各社が就業規則などで独自に定めることができます。会社は従業員に対し過度な負担をかけることのないよう、育児・介護休業法を参考にして適切に就業規則を作成するよう義務付けられています。具体的な手続きは会社の人事担当に相談し、確認しましょう。
時短勤務制度のメリット
時短勤務の利用によって得られるメリットとは、具体的にどういったものが挙げられるのでしょうか。
1 メリハリのついた働き方ができる
時短勤務ではこれまでより短い時間で同じ質の仕事が求められるため、短時間で集中して成果を上げるスキルを身につけることができます。
もちろん、短時間で同じ業務量なんて負担だと感じる方もいるでしょうが、工夫次第で徐々にコツを掴んでくるもの。「ほかの人より短い時間で同じことできてる!私すごい!」と心の中で自分を褒めてあげましょう。
2 子どもと過ごす時間が増える
時短勤務によりいつもより少し早く退社することで、子どもと過ごす時間が増えます。保育園のお迎えや、ゆっくり一緒にお風呂に入ったりすることもできます。
子育てと仕事の両立は大変ですが、子どもが小さい時の時間は二度と戻ってこないかけがえのないものです。時短勤務で得られた時間を使って、子どもの声にゆっくりと耳を傾けてあげましょう。
3 キャリアを諦めなくていい
育児に専念するために一旦会社を辞めるという選択もありますが、せっかくここまで積み重ねてきたキャリアを諦めてしまうのはもったいないもの。また、一度退職してしまうと、同じ条件での転職は難しいのが現実です。
時短勤務制度をうまく活用すれば、子育てしながらキャリアを継続することができます。子どもが大きくなって手がかからなくなれば、フルタイム勤務に戻ることも可能です。
4 年金受給額が減らない
通常、勤務時間が短くなると、厚生年金保険料の低下に伴って将来の年金受給額が減ってしまいます。時短勤務によって収入が下がった場合でも、時短勤務の申請をしていれば、特例によりフルタイム勤務時に収めていた保険料と同額を支払ったことと見なされるため、将来に受け取る厚生年金受給額が減額されません。
時短勤務制度のデメリット
時短勤務制度には多くのメリットがありますが、時短勤務のデメリットをきちんと把握しておくことも重要です。
1 周囲からの目が気になる
上司や同僚よりも早めに帰宅するのは、いくら子育て中だからとはいえ気が引けてしまうものですが、場面によってはどうしても周囲にフォローをお願いしなければならないこともあります。
また、時短勤務を当然の権利として振舞ってしまうと、周囲からの協力を得るのは難しいでしょう。周りの人々への感謝を忘れずに、また、「自分がやってもらった分、ゆくゆくは自分がフォローしてあげよう」という気持ちを持つことが大切です。
2 収入が減る
時短勤務の場合は勤務時間の減少に伴い、当然ですが収入も減ってしまいます。残念ながら、育児・介護休業法では短縮された分の給料は保証されていません。時短勤務における給料の取り扱いは各企業に委ねられており、多くの企業で、月給のみならずボーナスも減額されるケースがほとんどです。
また、仮に時短勤務で定められている退社時間を超えて残業した場合も、所定労働時間(1日8時間又は週40時間)を超えない限りにおいては、25%の割増賃金は発生しません。
3 キャリアアップが難しくなる傾向がある
時短勤務になると、これまでと比べて時間の自由が効かなくなるために、重要プロジェクトへの参加が難しくなったり、責任のある仕事を引き受けられなくなってしまいます。
「量より質」とはいえど、上司による評価もフルタイム勤務の時代よりも上がることはなかなか考えにくいです。どうしても昇進・昇格を受けるのが難しくなってしまう傾向にあります。
時短勤務制度は働くママに優しい
残念ながらまだまだ働くママへの理解が不足している企業も国内においては少なくありません。時短勤務の制度はあっても実際には活用できていないケースもあります。
子育ては喜ばしいことのはずなのに、なぜか負担に感じてしまうのは悲しいことです。時短勤務に限った話ではありませんが、子育て支援の制度のスムーズな運用には理解ある職場づくりが不可欠となります。
短時間勤務制度の取得が当然になり、周囲のフォロー体制も構築されるような職場環境にしていくには、働く女性たちが未来に続く後輩たちのために「自分がロールモデルになってみせるぞ」という気持ちを持つことも必要です。
時短勤務制度はパパにもぜひ活用してもらいたい
女性だけが時短勤務を利用すると、女性側の育児負担が重くなり、夫婦間の育児負担に不公平が生じがちです。女性のイメージが強い時短勤務制度ですが、もちろん男性にも取得する権利があります。
厚生労働省が実施した調査によれば、平成28年度の短時間正社員制度のある企業での利用者男女比は女性85.3%、男性14.7%と、まだまだ少ない数値ではありますが、意外にも男性の利用者がいることがわかります(注1)。
また、中には子育てしながら時短勤務の苦労を理解してもらうために、男性社員に時短勤務トライアルを促す会社もあります。
時短勤務制度が利用しやすい職場環境を作っていこう
今後、間違いなく少子高齢化が進む日本においては、日本の未来を背負う子どもたちを健やかに育てていくことも大切な仕事です。
より多くの人が積極的に時短勤務の制度を認知し利用することで、世間における子育てと育児の両立への理解が広がり、後ろめたい気持ちを持つことなく時短勤務を利用できる職場環境を作っていきたいものです。
参考文献
- 注1・2・3:厚生労働省「改正育児・介護休業法が全面施行されます!」
- 注4:厚生労働省「事業所調査 結果概要」