朝礼に意味はない?実施目的と組織や個人にもたらす効果
朝礼の意味を見出せないという社会人も多いと言いますが、朝礼が持つ意味や目的、メリットを考慮すると朝礼は大事なものです。しかし、社会環境の変化から達成手段としての朝礼は一考の余地がある状況になっています。朝礼の意味をどのように考えるべきでしょうか。
会社の朝礼の意味・目的は?何のため誰のために行われる?
何かしらの形で朝礼が行われている企業がある一方で、若い社員を中心に朝礼は意味を見出せないものになっていることも否定できません。
朝礼には決まった形がないゆえに、その目的が明確でない場合もありますし、業務の内容や位置によっては朝礼での話や連絡事項に意味を見出すことができずに、どうして企業は朝礼をわざわざするのかと訝る人もいます。
こうした中で朝礼が形式的で中身が無いと言われることも増えています。本来の朝礼は誰のために、何の目的で行うものなのか確認し、朝礼の意味や必要性を考えてみましょう。
今、朝礼が減っているのは働き方が多様になっている社会背景があるから
昔は「朝礼」と言うと毎日行うという会社も多かったのですが、最近は頻度が減っており、一週間に一度が最も多く、隔週や月に一回という会社も多いです。中には廃止を検討している会社も増えてきています。
こうした背景には、働き方の変化などの社会的要因が理由として挙げられます。携帯電話やインターネットの普及によって、情報共有のために必ずしも会社を経由する必要がなくなり、今やどこにいても必要な情報にアクセスできる環境が整いつつあります。
また、シフト体制での勤務時間や、勤務時間を自分の裁量で決定できるフレックスタイム制、職場以外の場所で業務を行うテレワークを導入する企業が増え、ますます全社員が一同に揃う機会がなくなってきています。
社会的な状況の変化によって、朝礼を実施すること自体が難しくなっている状況があることは確かであり、朝礼の意味や必要性の見直しが求められる要因のひとつとなっています。
「朝礼は意味がない」と思われてしまう5つの理由
朝礼は様々な効果を期待できる時間ではありますが、一方で嫌われものにもなりやすい傾向にあります。朝礼に意味を見出せない人が増えている理由は具体的に何なのでしょうか。
1 朝礼が形式的で中身がないから
お題目は良くとも、実際の中身が非常に薄く、形式的にプログラムが進行している朝礼は多いものです。運営側も参加者もともにやる気が無く、朝礼をすること自体が目的になるなら、何のために朝礼をしているのかわからなくなるのも無理はありません。意欲的に朝礼を作っていく工夫や意識の変化が必要です。
2 お説教のような内容の朝礼が多いから
営業目標に届いていない、不祥事が起こった、社内で目についたちょっとしたトラブルなど、役職者からのスピーチの内容が連日のようにお説教のような内容の場合もあります。全社員の前で名前を挙げて吊るし挙げるようなケースもあり、役職者の権威を誇示したりお説教のための時間になっている朝礼は嫌われるしかありません。
3 朝礼が業務時間とは別扱いだから
毎日の朝礼の時間が業務時間外の扱いになっていたり、時々行われる朝礼の日だけは1時間ほど早く出勤を義務付けられるなど、業務時間そのものは変わらず、朝礼の分だけ負担が増えるような運営は従業員のモチベーションを下げてしまいます。教育や情報共有でも、研修や会議が業務時間に入るのに朝礼は入らないのは違和感があります。
4 社員にスピーチを求めるなど朝礼のプログラムに負担があるから
社員にもスピーチを求めたり、朝から大声で経営理念や接客用語などを斉唱するという朝礼のプログラムに負担感を感じる人も多いです。参加型の朝礼も多くなっていますが、上手に運営しないとやらされ感が強くなってしまいます。
5 そもそも朝礼をすることが非効率だから
朝の時間帯にあまり社員が集まれないスタイルの会社であったり、始業時間直後の問い合わせなどが多い職場には向いていません。朝礼の日時を決めるために時間がかかったり、各種のスケジュール調整が必要になるようなら、ただただ非効率であり業務の妨げとなってしまいます。
朝礼を行う4つの意味
朝礼を多くの企業が行っているのは「仕事の効率やモチベーションを高めるため」ですが、そのための方法や毎回の朝礼の目標は様々です。
朝礼の意味付けについても企業によって違うのが普通で、個人がイメージしているものとは違っている場合もあります。朝礼の意味をいくつか紹介しますので、自社の朝礼のタイプと照らし合わせて考えてみてください。
1 必用な情報を全員で共有することができる
朝礼の時間は朝一番であり、全社員とは言えないまでも、多くの社員が集まることができる一番良い機会と言えます。そのため、全社に必要とされる情報を共有する時間として使うところが多くなっています。朝礼の場で話されたことは、全社で共通認識を持つべき事項であるという認識で、全社員が耳を傾けるのが本来の在り方です。
2 朝礼をすることで仕事モードへ切り替えることができる
毎日決まった時間に朝礼を実施する会社に見られるタイプです。出社したからと言って、すぐに気持ちが仕事モードに切り替わるわけではありません。そのため、連絡事項や仕事に関する話を通し、気持ちを仕事モードにセットしていく場として朝礼を活用している会社は多いものです。
3 スピーチをしたり話を聞くことで朝礼が社員教育になる
社員にスピーチをさせたり、また経営者や役員が話をしたりするという会社では、社員教育の時間として朝礼が使われています。
企業風土は同じ場所で仕事をするからといって望ましく作られるのではありません。しっかりと日々方向づけていく必要があります。朝礼の時間は、望ましい企業風土を作るための教育の時間でもあります。「実務と関係ない話が多い」という批判もありますが、関係のない話をしているというより、企業風土や企業文化を作るための話をしているのです。
4 社員間のコミュニケーションの場になる
大きな会社になると自分の部署の社員以外は顔と名前が一致しないということもあります。朝礼のひとつの目的として、多くの社員を前に立たせることによって互いに顔と名前を認知してもらうということがあります。スピーチやプログラムによって、社員間のコミュニケーションを活発にする材料にしてほしいという願いがあります。
朝礼の実施により期待される5つの効果
企業が朝礼を実施することで、以下のようなことが期待されます。決して無意味な事ではないことが分かります。
1 気持ちが仕事に向かうようになる
朝礼をすることにより、気持ちをプライベートモードから仕事モードに切り替えるようにします。習慣として行っていくことが大事で、朝礼でスイッチが入るようになれば成功です。毎日朝礼をしている会社の社員は、早めに出勤しても朝礼の前はゆったりと時間を過ごし、朝礼後から本腰を入れて仕事を始めます。
2 業務上のコミュニケーションが円滑になる
互いのスケジュールや売上目標を確認したり、有益な情報の共有をすることによって業務の円滑化に貢献します。
また、顧客情報やトレンド、業界動向、社内の様々な情報について共通の情報を得ることでコミュニケーションも円滑になります。
3 経営理念や経営目標が全体に浸透する
会社は集まって仕事をするための場というだけではなく、互いに同じ方向を向いてその実現に向かっていく組織です。実現するべき目標は営業数字や商品開発だけではなく、組織としてのあり方や雰囲気など様々なものがありますが、その中で軸になるのが経営理念です。朝礼で繰り返し経営理念に触れることによって、理念は全社員に浸透していきます。
4 健康づくり・仕事の事故防止が図られる
工場や店舗などの朝礼においては、体操が行われることも多いです。日々行っている会社と行っていない会社では、社員の体型や健康診断の結果に違いが生じます。体をほぐすことによって、血流を良くし、身体や頭がしっかり働くようにする効果が期待できます。
作業現場ではケガの防止も大事ですし、デスクワークの多い会社では血行不良が生じやすくなります。こうした従業員の安全や健康に配慮して、朝礼で体操を行う企業も増えています。
5 会社と従業員の相互理解が深まる
普段、自分の持ち場の仕事だけをしていると、会社として何をしようとしているのか、大きな会社になるほどわからなくなります。また、多くの社員がいる中で、各社員の個性や考えを聞くことはなかなかできません。朝礼の場を通して、会社と従業員がそれぞれの立場から話をすることで、相互理解が深まるようになります。
朝礼のやり方やあり方を考えて工夫すれば「朝礼に意味がある」になる
朝礼を実施している企業は多いものの、その運営方法や目的、また頻度などは様々で、社会環境の変化の中で徐々に運営が難しくなっています。その意味については十分に理解していても、実際に朝礼を活発にしていくということは簡単ではありません。
朝礼を通して得られるメリットとデメリットをしっかり考え、どのような意味を持たせるのかを明確にしないままでは、意味のある朝礼の時間にはなりません。
朝礼の是非を問うような議論も多くありますが、朝礼の意味や必要性は職場によって異なります。毎朝行われる朝礼を無駄なものにしないためにも、画一的な見解で意味を考えるのではなく、自社にとっての朝礼の意味を、個別によく考えるべきです。