リストラとは?人員整理の実例や対象にされやすい社員
リストラとは?聞いたことがある方が殆どだと思いますが具体的には何をすることなのでしょうか。リストラの意味や企業が行う意味や意図、リストラ対象になりやすい社員の特徴などを紹介、実際にリストラが行われた実例、退職金などについても触れています。
企業のリストラの手法とリストラ事例
日本は長く年功序列制度の下、終身雇用が守られてきました。しかし高度経済成長期のような右肩上がりの時代であればそれで問題ありませんでしたが、バブルが崩壊し企業の収益が悪化すると、多くの企業でリストラが行われるようになりました。
そしてあの失われた20年を経て、現在日本は業界により多少の違いはあれ、長く構造不況の状態にあるといえます。
まだ記憶に新しいのは、オックスフォード大学のオズボーン准教授が「今後10~20年ほどで約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」と発表し大きな話題を呼びました。今や10年先どころか、5年先、1年先でさえ経営環境の不透明な時代。雇用が守られる保証などどこにもなく、リストラはもはや誰にとっても特別なことではなくなってしまいました。
リストラとは?
リストラとは、正式には「リストラチャクリング」といい、ロシア語のペレストロイカ(=再構築)の意を英語に略した単語です。環境の変化に伴い、企業が事業に合わせ人員整理を構築し直すことを指しています。
経営資源を見直し、採算が見込める分野や今後注力するべき成長分野に人員を厚くしたり、逆に不採算分野を廃止、あるいは人員を縮小したりします。収益立て直しのための合理化策ととられがちですが、必ずしもそれだけに限らず、まだ資金化の見込めない部門の強化や人材育成などもリストラの一つです。
リストラと解雇の違い
リストラと解雇はどちらも「企業主導の従業員の削減」という同じ意味に捉える人は多いのですが、実際は全く意味の異なるものです。
解雇とは「雇用主から労働者への一方的な雇用契約解除」であり、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇の三つに大きく分類されます。
普通解雇
労働契約を継続しがたい止むを得ない事由が発生した場合
整理解雇
企業の業績が悪化したことなどにより、止むを得ず人員整理を行うこと
懲戒解雇
企業が定める就業規則の中の服務規則という労働規範に違反した労働者に対して行う懲戒処分
このように、従業員を削減することは変わらなくても、その趣旨においてリストラと解雇は異なり、リストラはより「経営」的な側面から行う人員整理と考えて良いでしょう。
リストラされる理由とその条件
リストラ対象にまっさきに上がるのが「会社への貢献度が低く、将来に渡って成長が見込めない」かつ「45歳以上の管理職またはスタッフ職」に就く社員です。人選は主に人事がベースになりますが、部門を仕切る管理職である場合も、その上の役員や社長である場合もあります。
日本はまだ給料体系において年功制が残っているため、結果を出せない社員や、成果を上げられない社員については、それらの社員の人件費は相対的に高くなってしまうためです。
リストラの最もポピュラーなものが「希望退職制度」ですが、実際には優秀な社員は希望をしても「遺留」されることがほとんどで、企業が辞めさせたい社員については上司との面談において「退職勧奨」が行われる場合が多いです。
年齢については企業によって35歳以上である場合も、40歳以上である場合もありますが、多いのは50代手前から40代前半のバブル期入社組です。
彼らは今の世代ほど努力をしなくても入社できたので、就職氷河期や現在の入社試験を経て採用される社員とは能力やパフォーマンスにおいて劣る場合があるためです。さらに人数としても多いため、ポスト不足で昇進できない人も数多くいます。40歳を過ぎても管理職になれない人は特に狙われやすいといっても良いでしょう。
実際にリストラがあった実例
シャープ
2012年上半期の連結決算により、4,500億円の赤字の見込みであったシャープはその年、希望退職を2,000人募り、3,000人の応募がありました。希望退職と銘打っておきながら、実際には従業員を「辞めさせたい人」「本人の希望を尊重する人」「辞めさせたくない人」に分類。
辞めさせたくない人が退職を希望した場合、それは希望退職ではなく自己都合退職にし、さらに退職金の金額に差をつけることで、退職を断念させる場合もあったようです。
シャープは長く「従業員を大切にする会社」「リストラを行わない会社」であることも有名だったため、シャープ内部は相当混乱。また、2015年にも追加の希望退職が実施され、45歳から59歳の国内社員3,234人が希望退職に応じました。
パナソニック
2011年~12年度にかけ、グループ全体で10%従業員を削減したパナソニック。そのリストラ手法は、先のシャープとは異なり、能力関係なく一律50歳という年齢で区切っていたそうです。
それは多くの日本企業において、50歳から退職金の額が2倍以上に膨らむことと無関係ではありません。
会社としては、50歳以降は入ってくる新人のために席を明け渡してもらいたいのでしょう。対象となる社員は上司より、先のことを考えておくように助言を受けるそうですが、大抵の人は次の身の振り方が決まらないまま、辞めていったようです。
また、部門別のリストラにおいても温度差があったようで、赤字の大元となった部門においては新入社員にも希望退職を募るメールが届いたとのこと。
ルネサス・エレクトロニクス
2012年、5,000人の希望退職の応募に対し、7,500人近い応募。ターゲットは中高年、50歳を境目に退職勧奨が行われました。
まず対象者を「絶対に退職させない人」「退職させない人」「本人の選択に任せる人」「退職させたい人」の4グループに分けられます。
部門別には、生産本部が一番多く、次いでスタッフ部門、品質保証部門、営業部門。銀行からの融資必須条件であった五千数百人という目標のために、予めグループ内の会社ごとに目標人数が決められていました。その後も度重なるリストラの嵐が吹き荒れ、社員の士気も低下。
2014年には、基本給を7.5%減額することが決定。会社側の言い分として、これまで相対的に高かった給料を半導体業界に即したものに変更すること。下がった給与の代わりに賞与は個人の評価や業績に応じて再分配されること。
また、それに伴い新人事評価制度も発足。しかしこれは事実上の退職勧告の制度化にすぎないと見る向きもありました。
評価は事業部ごとの相対評価であるため、頑張った者も部内の社員の状況により評価が下がる場合がありました。しかし評価が0か1の社員は、キャリア相談室などの「新セカンドライフプラン制度」の適用対象になるとの説明を上司から受けた人もいるようです。
昨年発足初の黒字化にこぎつけたルネサス、しかし2016年度も5,200人の追加募集を行ったことからも「果てなきリストラの嵐」はとどまりそうにもありません。
リストラは免れることはできるのか?
例に上げたように、会社全体、あるいは銀行やコンサルタント会社が間に入り大がかりに経営再建を行う場合においては、年齢や評価などの対象に入ってしまえばリストラを免れることは厳しいものがあるかもしれません。
一方で、リストラが会社全体のものではなく、人事などに委ねられているような場合においては、個人で気をつけられるポイントはあるでしょう。
こんな人はリストラされやすい
- 住宅を購入した
- 大人しく、社内でも孤立している
- 病気などで会社を欠勤しがち
- 一度退職して出戻ってきた
人事や管理職など、リストラにおいてある程度の裁量権が与えられている人間は、誰をどう辞めさせれば会社として穏便に済ませられるかということを考えます。誰かを辞めさせなければならないなら、まずは辞めさせやすい理由をもった人に白羽の矢があたるのは当たり前だと言えるでしょう。
そのため、人事にそうした追及されやすいネタを提供しないことが大切です。
住宅を購入したばかりの社員には、転居を伴う転勤を命じることによって、退職の揺さぶりをかけることができます。そのためできるなら人事に知られない方が得策だと考えます。住宅ローン減税などの税金関係は面倒でも、自分で確定申告をすることをお勧めします。
このようにリストラされることを防ぐためには、普段から突っ込まれるような弱みを持たない、そして上司や後輩、同僚など会社関係の付き合いを積極的に持ち、存在感をアピールすることが大切です。
リストラに応じるか希望退職制度に応じるかはよく考えて決断する
希望退職制度に応じた場合は、通常の退職金より上乗せして退職金が支払われます。上乗せ分に関しては月収の〇ヶ月分などというように算出されますので、リストラに応じるかどうか決める前にお金のことはきちんと考えておく必要があります。
東芝の場合は、勤続25年、役職付きの社員の場合、上乗せ分も含めた退職金総額が4000万から5000万円に上ったとも言われています。
リストラされた人の送別会は「食事会」で済ますのが良い
リストラされた人の送別会は多くの場合、会社側の負担で行われることがほとんどのようですが、もしそうしたものがないようであれば、送別会と銘打たずに「みんなで食事でもしませんか?」と伝えて有志の会を開くのも良いかもしれません。
その際に、みんなでお金を出し合った餞別を渡してもいいでしょうし、それは有志で集まった人たちで決めましょう。
こうしなければならないというものはないですし、むしろ儀礼的にされればされるほど、リストラされた社員も気まずいでしょうから、必要以上に気を遣うことなく、これまでお世話になった感謝と次の場所へ行っても頑張って下さいという気持ちを伝えましょう。
「もしかしてリストラかも」と感じたときには早めに手を打つ
世間ではリストラについて話題に上がることはあっても、リストラされた人のその後についてはあまり話題に上がることはありません。
リストラされてしまった人たちがどのように再就職し、生計を立てているのか想像することしかできませんが、年齢が上にいけばいくほど厳しいものがあることは間違いないでしょう。産業構造の変化により、業界によって好調と不調がはっきりと分かれてしまっている昨今。自分が属する業界の現状を感じ取り、怪しいと感じれば早め早めに次の一手を考えておく必要があるでしょう。