退職勧奨を受けたら応じる前にとってみるべき3つの行動
退職勧奨とは様々な形で労働者に退職を勧める行為を言いますが、知らず知らずに自分に不利な状況で退職手続きを取っていることがあります。退職勧奨は強制力を持たないので、きちんと仕組みをわかって次に移りやすい状況を作ることが大切です。
自分の身は自分で守る!自己防衛のために退職勧奨について知っておこう
ビジネス環境は常に変化が起こるもの。その中で、企業が様々な理由をもって人員整理を続けることがあることは説明する必要がないでしょう。しかし、その矛先が自分に向いた時、どうしたらよいのかを予め学んで備えている人は少ないものです。
会社側から退職を勧めてくる方法を「退職勧奨」や「退職勧告」と言いますが、自己防衛のためにもこの退職勧奨の仕組みや対処方法について理解を深めておきましょう。
退職勧奨とは
「退職勧奨」を簡単に説明すると、「会社が従業員を退職させるために退職を勧めること」です。いわゆる「クビ」は労務用語では「解雇」にあたり、退職勧奨はあくまで「自己都合の退職を促す」ものであると考えられています。
解雇と違い、強制力があるものではありませんので、最終的に退職するか否かの判断は、従業員が決定することができます。しかしながら、精神的なショックやその後の居心地の悪さから、遅かれ早かれ退職する可能性が高くなります。
会社が従業員を解雇するには、社会道徳的に見ても妥当と見られる正当な理由がない限りはできないルールとなっています。それにあたらない解雇は不当解雇となり、裁判になれば従業員側が確実に勝つようになっていますから、会社側は無理な解雇はできないし、行いたくないのです。
自己都合退職は特に制限する法律がないため、会社にとってはリスクの少ないものとなりますので、その自己都合退職の形で人員を調整したりコスト削減を行いたいのです。
似たものに「諭旨解雇」がありますが、これは懲戒解雇相当の不祥事を起こした従業員に対して、自己都合退職を認める措置であり、経歴等に傷をつけないようにと行う会社側の温情処置です。
退職勧奨されたらどうしたら良い?応じる前にまずとってみるべき3つの行動
退職勧奨された場合には、当然理由はあると思いますが、素直に承諾する必要はありません。ただし、退職勧奨が生じるケースでは、遅かれ早かれ、退職はしておいた方が双方にとって良いことが多いのも事実です。だとしても何の準備もなく転職市場に出るのは考え物ですので、まずは時間稼ぎや条件交渉ができるように対応しましょう。
1.「退職はしません」と退職勧奨を拒む
退職勧奨は強制力を持ちませんので、従業員側には拒む権利がちゃんとあります。しかし、悪質な会社は拒んだとしても、それを理由に解雇に踏み切ったり、パワハラなどが始まる可能性があります。
こうした場合は後々、第三者機関に訴えることも可能になりますので、客観的な証拠となるようなものを残しておきましょう。音声を録音したものやメールなどのコピー、タイムカードの記録などがあればベストです。最悪手書きのメモでも時系列がしっかりわかれば有用です。退職届にサインをしてしまった時点で自己都合扱いの退職となりますので注意してください。
2.会社が退職勧奨する理由を聞いて自分の足りない点を改善する
会社が退職を勧めた理由を聞いてみて、自分が直すことで問題が解決するようであれば、頑張って改善してみるというのも良いでしょう。ただし、本当に今の会社で働き続けたいという気持ちが無ければ行うべきではありません。精神的に苦しい状態が続きますし、一度ついた評価を覆すのは簡単ではありませんから、環境をリセットしてしまった方が同じ問題を直すにも良いことが多いです。
3.会社の退職勧奨に納得できない場合は弁護士や労働基準監督署に相談する
会社の退職勧奨が不当だと感じるようなら、証拠をそろえて弁護士や労働組合、労基署などの第三者機関に相談する方法も取れます。労働環境の改善や、理不尽な対応への慰謝料請求などができる可能性があります。
会社の退職勧奨は仕事がやりにくくなるので素直に受けた方がベター
直接的に退職を促すような言葉でなかったとしても一度退職勧奨が行われると、互いの関係に決定的な溝が生じてしまうため、その後は互いにやりにくくなるのは間違いありません。そういった意味では退職勧奨が生じたら受けるのがベターな選択になります。
しかし、ベターな選択をベストの選択にするためには、しっかりと退職に関する条件を整えることが大事です。社宅に住んでいる人なら会社員の身分があるうちに引っ越しの手続きなども済ませておくべきですし、また退職後の生活のことも考えて退職金や失業保険の条件を整える必要があります。家族がいる場合はより慎重に検討し、調整にも時間をかけるべきです。
もしも、退職勧奨に関して兆候が見られるようであれば、事前に転職や引っ越しなどを調べておくと、万が一の場合の備えにもなります。
今は転職をするのも当然という時代になっていますので、退職勧奨があったことで落ち込むより、いかにうまく会社を移るかを考えたほうが良いでしょう。
退職勧奨と気づかないうちに退職を決断しないように退職勧奨の巧妙なやり方に注意する
退職勧奨は一歩間違えば企業と従業員の関係を壊しかねないものであり、また労務トラブルの原因となることもあります。そのため、自然に退職を促すことができるよう、様々な手法が考えられています。巧妙に仕組まれた退職勧奨によって、気づかないうちに退職を決めているケースもありますので、どういった方法があるのか、またその兆候について知っておきましょう。
「この仕事は向いていないのでは」と言ってくる直接誘導パターン
退職勧奨の中でもストレートで典型的なものが直接誘導のパターンです。ある日突然上司や人事部、または役員などから呼び出され、「この仕事は向いていないんじゃないか」「他の仕事の方が向いているんじゃないか」「会社の水が合わないと思ってはいないか」と、適性などが仕事と合わないことを気にしている様子を装って退職勧奨の口実としてくるケースです。中には「辞めた方がいいんじゃないかと傍目に見ていて思う」などと直球を投げてくることもあります。
産業医や人材紹介会社と協力してわかりにくく退職を勧奨する間接誘導パターン
間接的に退職に誘導してくるパターンで、気づきにくいため注意が必要です。産業医と連携して休業やストレスに注意が必要と言ってきたり、また人材紹介会社などと協力してスキルアップやスキルテストの機会を設け、他の仕事の方が向いていると言ってその気にさせる方法などがあります。
「ノルマを増やす」「仕事を減らす」などのパワハラ的な退職勧奨パターン
従業員が会社を辞めたくなるように、企業側が権力に訴えて従業員の気持ちを折りに行くケースもあります。ノルマを増やしたり、逆に仕事を極端に減らしたり、重要な案件からはどんどん外されてしまったりすることもあります。また、あえて厳しく当たられるケースもあります。「追い出し部屋」「窓際」などと呼ばれる特段仕事のない部署への転属を命じられることもあります。
退職金を増やしたり有給休暇を買い取るなど条件提示をするパターン
自己都合による退職を促すために、退職条件を良くして公募する形を取るケースもあります。全社員向けに勧告されるケースもありますが、内内ではすでに退職させたい人が決まっており、引き留めと退職勧奨が裏で露骨に展開する場合もあります。退職金割り増しや、有休の買い取り額を高くするなどの提案が多く見られます。
ちょっと待って!退職勧奨されても決断前に失業保険の給付金額を考えてみよう
退職勧奨を受けたとしても、すぐに退職をするべきでない一番の理由は失業保険の給付にあります。次の仕事がすぐに見つかるわけではありませんし、転職活動すら準備のない状態で勧奨されることがほとんどですから、失業給付をしっかり受けられる状態でないと生活に困ることもあります。
退職後、会社から発行される「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークに提出して失業保険の給付を受けることになりますが、「会社都合の退職」ということになれば、自己都合退職の給付日数(90~150日)よりも長い期間(90~330日)の失業保険の給付を受けることができることになります。加えて、3ヵ月の給付制限期間を待たずに手当の支給を受けることも可能になります。
逆に言えば、自己都合の退職となるとそういった権利が全て放棄されてしまいます。会社側が提案してくる退職の条件を良く考えて比較していく必要があります。
ただし、自己都合退職を断り続けた結果「解雇」になると、その後の就職活動においても少なからず響くことになりますので、どこで折り合いをつけるべきかは慎重に検討しましょう。
退職勧奨は退職勧告に比べて少し柔らかい表現になる
退職勧奨と似た言葉に退職勧告がありますが、退職勧奨も退職勧告もほとんど同じ意味です。強いて言えば、退職勧奨よりも退職勧告は強い言い方、公的な指示という色が強くなります。そのため、退職勧奨については個人個人に行われることが多く、退職勧告が行われる場合には複数人に対して一度に勧告がされるケースもあります。
退職勧奨は事前に兆候を察知してちゃんと準備しておけば怖くない
ある日突然退職勧奨が行われてしまえば、周囲の評価にショックを受けたり、目先の生活や仕事に不安を感じてしまい、適切な行動や判断ができなくなることもあります。事前に兆候を読み取り、適切に準備をしておけば普通の転職活動と一緒ですので特段恐れることはありません。
一番怖いのは、知らないままに退職勧奨に直面することです。知ることで武装して、大きなピンチに備えておきましょう。