部下の育成は一筋縄ではいかないもの
仕事で一人前として認められると、次は自分が部下を持たされ教育係を任されるのが一般的です。初めての部下の育成に、何をすればよいのか、また何に気を付ければよいのか悩む方も多いことでしょう。
部下の育成がうまくいけば、今後仕事がやりやすくなるのはもちろん、教育したあなたの高評価にもつながります。今回は部下の育成で上司が気を付けるべきポイントについてご紹介します。
部下の育成を成功させる4つのポイント
部下の教育係になった時、部下を一人前に育てるためにはどんなことに注意すべきなのか、以下に解説していきます。
1 部下との信頼関係を築く
部下を育成するにあたり重要なのが、信頼関係の構築です。信頼関係を築き本音を言い合えるようになることで、意思の疎通がスムーズとなり、上司は仕事の改善点やアドバイスを伝えやすく、部下はそれを素直に受け止めやすくなります。
もちろん、これはただ仲良くなるのではなく、あくまで仕事における信頼関係を築くということです。プライベートでも仲良くなれるに越したことはありませんが、仕事上でも馴れ合いの関係となるのを防ぐためにも、部下との距離感やコミュニケーションの取り方には十分な注意が必要です。「親しい相手であっても仕事は仕事」と割り切れない方は、プライベートで部下との距離を縮めるのは避けた方が無難でしょう。
2 「自分の当たり前」を部下に押し付けない
誰だって新人の頃は右も左もわからない状態です。しかし、仕事に慣れて一人前になっていくと、初心を忘れてしまいがちです。それゆえに部下を育成する際には「どうしてこんなこともできないんだ」などと感じることもしばしばありますが、それはあなたを育てた上司が感じていたかもしれない気持ちです。自分ができていることを「部下も当たり前のようにやってのける」と思い込むことはやめましょう。
3 部下の仕事に干渉し過ぎない
何も教えることなく全てを丸投げしてしまうのはもちろんNGですが、部下の仕事に過干渉となるのも良くありません。理由は、言われた通りに仕事をこなすだけでは自分で考える力や発想力が身に着かないためです。もし、部下が上司であるあなたを常に頼ってくるようであれば、時には突き放して自立させることも必要でしょう。
4 部下に与える仕事には目標を定める
部下に仕事を与える場合には、明確な目標を定めることも重要です。目標を決めることで、その目標を達成するために何をすればよいのかがイメージしやすくなります。また、自分の成長を実感するとともに達成感も得られやすいことから、今後の仕事へのモチベーションアップにもつながります。
部下の育成で気を付けていることは?社会人15名の声
実際に指導に当たった経験のある社会人15名から、詳しい体験談を伺いました。今後の部下の育成時の参考にしてみてください。
部下を信じてまずはやらせてみる
青い鳥(40歳 事務職)
相手の事を思うあまり、つい力が入ってしまって強い口調になってしまうことがあります。そうなると部下は反発してきますので関係が悪化します。関係が悪化すると他の部下に悪口を広めたりされて空気が悪くなってしまうの後が大変です。
私が心がけているのは、ある程度、部下を信じて仕事を任せてみるということです。初めから強制的に自分のやり方を押し付けると、必ず反発してきていい雰囲気が作れません。やらせてみて失敗したら初めて成功例を見せて教えると、部下の心にも響いてくれます。
また、やり方を初めに教えてしまうと、そのやり方で上手く行かなかった場合に上司を恨むようにもなります。そのため、最初に自分でやらせてみるというのが大事です。
育てるよりも考えさせる機会を
さや(55歳 制作職)
部下はひとりひとり性格が異なり、考え方もそれぞれなので育てるのは大変です。毎日一緒にいる自分の子どもでさえ思うように育てられないのに、ましてや他人のいい大人を育てるなどしょせん無理です。
私は部下の育成では考える機会を与えるようにしています。そうすると、自然と問題解決能力や判断力がつき行動に伴ってきます。無理を承知で丸投げすることもあります。何らかの結果が出るので、それに対して正しいアドバイスを行います。失敗しても対応策を先に考えているので問題は起きません。
一番難しいのは能力のない部下ですが、この場合は無理に育てようと考えず、能力に合った仕事を与えます。伸びる人だけ育成すればよいと思います。
自分なりの部下の育成方法
リーリエ(36歳 事務職)
現在、自分のアシスタントを育成中です。部下といっても10歳ほどしか年齢が離れていません。相手は親近感を持っていてくれているようでとてもフレンドリーですが、仕事中に馴れ合いが出ても困るのであまり距離を近づけないように気を付けています。
年齢がそれほど離れていないにもかかわらず、最初はジェネレーションギャップを感じました。そもそも会話する声は小さい、わからないことがあっても自分から聞けない、こちらが指摘しなければメモも取らないなどなど…。人としての基本から教えないといけなかったのは大変でした。
でも、よく思い出してみれば自分の新人の頃もそうやって教えられたのを思い出しました。私の場合はとても怖いお局様でしたが、おかげでとても成長させられたと思います。
部下の育成方法は子育てと同じようなもので、その人それぞれのやり方と、その部下それぞれに合うやり方があると思います。どうすれば部下の長所が発揮されるか、短所がどれだけ目立たなくなるかを試行錯誤していけば、いつか部下が部下を持つ時にも、同じように頑張ってくれるのではないかと思います。
色々なラインで試す
Erik(28歳 事務職)
向上心がある部下なら指導のやりがいは感じますが、育成するにも全く向上心がない、態度も作業内容も改善されない部下には頭を悩まされます。特に私の職場の場合は簡単に首を切れないので、そういう部下は本当に頭痛のタネです。
それでも、飲みに誘ってそもそもどういう人なのかを知るために近づいたり、どういうアプローチがその人には合っているのかを考えます。まずは自分を信頼してもらうために人間関係を築きます。
どうしても相手が心を開かずさらに仕事だってできない、でも頼ってこないし注意しても拗ねるなどダメダメな場合は、その部下と同レベルの役職の人で、できそうな適当な人を見つけて教育係を頼みます。「上司からではなく同期に指導されている!」と感じ、初めて危機感が生まれるからなのか、案外それでうまくいくことも多いです。上からダメな場合は横からというパターンです。いろいろなラインを使い分けることが大切じゃないかと思います。
個性を把握することが大事
りんご(36歳 営業事務)
人それぞれの考え方が違うため、そのアドバイスが本人の考えていることと違っていると、部下のモチベーションが下がりやる気になってくれません。そのため、何か仕事を頼むときややり直しのときは必ず「私はこう思うけど、あなたはどう思う?どう思ってこうしたの?」と一度問いかけてみます。そうすると本人も自分で考える力もつくし、アドバイスも受け入れやすくなるようです。
部下の行動にもそれなりの理由があったり、意見を持っているものです。それを聞く状況を作ってあげることで信頼感がわきます。まず部下の意見も聞いてあげてください。
部下の育成について
勿忘草(25歳 営業職)
部下の育成中にありがちなトラブルが、自分の言いたいことと部下がそれを聞いて行き違いが発生してしまうことです。例えば「これお願いします」と言うと、部下が違う受け取り方をして、結果違うことをしてしまう…といった感じです。
私は部下にして欲しいことがあるときには、質問形式にして一緒に考えるようにしています。「これをこうするとこうなると思うのだけど、あなたはどう思う?」「これをこうすると困ってしまうのだけど、どうしたらいいと思う?」といった聞き方をして、相手に考えて行動することを習慣づけるとよいです。
また、部下がミスをしたり間違ったことをしても、頭ごなしに「ここではこうやってるから」等と言わないように気をつけています。言い方がキツくならないように、子供相手にしないようにすると、関係も良好な状態で上手く育てていけます。
責任感を持たせることが大切
うめさん(40歳 事務職)
わからないことを「わからないから教えてください」と言うこともできない、期限を確認せずにマイペースに仕事をする、報告・連絡・相談をしてくれない…最近はそんな部下が増えているように感じています。
できないことを承知の上で、あえてどこまでできるかを見るために「とりあえず思うようにやってみて」と仕事を任せると、放心状態で何もできず、ある程度慣れてきても工夫することもしないので、効率よく進めることができずミスも多いままです。
自分でやった方がはるかに速くて楽ですが、私は心を鬼にして、部下の成長を見守るように口や手を出さないように気を付けています。ただし、事態が悪化すると自分の身も危ないので、時々ヒントを出すようにもしています。
また、自分の失敗を人のせいにしないように、必ず証拠を残して責任感を持たせるよう意識して指導を行っています。
部下は上司を喜ばせるために働いているわけではないので、よくやってくれたら感謝くらいの軽い気持ちで対応していきましょう。
部下の「気づき」を刺激する
ペッパー(35歳 会計事務)
自分にはできるが部下にはできないこと、その「なぜできないのか」を理解することが部下の育成における第一の難関だと常に感じます。
ついついやりがちなのは「言わなくてもわかるだろう」という上司側の甘えです。例えば業務に対する知識やシステムに関する知識、業界の慣習など、既に体に染み込んでいる側にいると、無意識のうちに相手にもそれを求めている場合があります。
「自分ができるのだから部下にもできる」という思い込みをまず捨てることで、初めて「部下目線」の指示が出せるようになります。
部下が「できない」と言えば「なぜできないと感じるのか、どの部分にハードルを感じるのか」などを詳しくヒアリングすることで、部下の「気づき」を刺激し、部下自身に「自分に足りない部分」を意識させ自己改革へと導くのがベストです。
育成には時間がかかるが長い目で見守る
稲田(34歳 営業職)
部下の育成をするには私自身、仕事に対する能力が心もとないと自覚していますのでその点が非常に大変です。間違ったことを教えていないか、もっと正しい方法があるのではないかと自問自答しながら部下と接しています。
また、いかにして部下にやる気を維持してもらえるかを心掛けています。これは自分のためでもあって、職場で一緒にいる以上仲間なわけですから、お互い嫌な思いをしないように誉めるときは誉め、叱るときは叱る。そんな毅然とした態度で臨んでいます。
ただ、部下を叱るときはしっかり理由を説明することが大事です。理不尽に叱られるのは部下にとっても嫌でしょうから。
部下の育成に悩む人はたくさんいると思いますが、根気強く接することが何よりも大事じゃないかなと思います。昔、自分が上司にされて嫌だったことはせずに部下としっかり長い目で向き合って行ければ良いと思います。
部下を育成するということ
エイト(38歳 事務職)
私が部下を育成する上で大変だと感じるのは、それぞれの能力が目に見えてわからないことです。教えてみたけど、覚えが遅い人もいればサクサクと言われたことができる人、メモを取らなくてもできる人もいれば、どこに書いたかわからなくなるほどメモを取る人もいます。その目に見えない個々の能力を早い段階でこちら側が察知することがまず重要です。
それを理解した上で、部下を育成するにあたり私が気を付けていることは、質問ができる体制や何度でも質問できる環境を作ること、必ずチェックをすることです。たとえわからなくても、聞く体制ができていればわからないまま仕事は行われないですし、間違っていたとしてもチェックができていればミスを見逃すことを防げます。
人が育つには約2年要すると私は思っています。根気強く、否定的なことばかりではなくできたことを褒めて、部下の仕事をする意欲を高めることがよい人材を育てる上では大切だと思います。
若者の育成方法
シロひげ(41歳 建設業)
41歳男性、建設業です。今年の4月から俗に言うゆとり世代の若者が入社しました。ゆとり世代に話は良く耳にしましたが、実際に一緒に仕事をするのは初めての経験でした。その新入社員の教育係となった私は新入社員に仕事を教えつつ、また様子見もしていました。しばらくは特に変わらない態度で仕事をこなしていきました。
しかし、それは突然やってきました。新入社員がミスを犯し、注意するも何も反省している様子がないのです。どうしてかと聞くと、やったしまったことはしょうがないと言うのです。頭に血が昇り、叱りつけようとしましたが、叱られることに耐性のないゆとり世代と聞いていたのでやめました。
このミスがきっかけで、ミスにより何が起こる可能性があるか一つ一つ説明しました。少し大袈裟に、「会社が倒産する事もある」「このミスのせいで、社員全員の収入がなくなり、家族が露頭に迷う可能性だってあるんだ」と伝えました。それには新入社員もショックを隠せなかったようで、ようやく反省を示しました。決して嘘ではありませんが、部下を育てる時には大袈裟にものを伝えることも大切だと感じました。
やってみせて、やらせてみて、任せてみる
komimi(43歳 管理職)
部下の育成で大切なことは、今、自分ができていることがその域に到達するまでどのくらいかかったかを自分の中で理解し、早い上達を望まないことです。
向上心のある人は自分流のやり方を模索します。しかし、部下が考えることは自分が若い時も同じように考えて失敗したものです。大変ではありますが、あえて失敗の機会を与えるのが大事です。
私は部下が失敗するとわかっていても答えは教えないように心がけています。教えてもらった通りのやり方では、自分で考えようとするせっかくのいい素養を潰してしまうからです。
部下自身が失敗することで気付きや工夫が生まれるので、上司である私は失敗した時にフォローできるように構えておくだけです。フォローした場合は部下からの信頼も勝ち得ますし、部下から煙たがられることもなくなります。部下の育成で悩んでいるなら、突き放すつもりで任せてみるというのも選択肢のひとつです。
部下の不満はまめに聞き取る
中年万歳(54歳 技術職)
仕事の現場で状況が切迫しているとき、部下に作業指示(命令口調)をした際、周りのクライアントのことも気にせず不満があからさまに顔や態度に出てしまうことが多々あります。
社内ならともかく、現場では誰が見ているかわかりませんので、現場での部下に対する指示の出し方には気を遣っています。
また、部下に作業指示をする場合、指示する前に、まず部下からどれくらいの品質で時間はどれくらい掛かるかを先に聞くようにしています。聞いた結果、スケジュール上間に合わない場合は、間に合わせるにはどうしたらいいかを考えてもらいます。こうすると不満はあるでしょうが、部下自身が考えた事ですのでしっかりと仕事を完了してくれます。
部下の愚痴を聞いてやることも、部下の成長につながる一歩だと思います。オフィシャルな場ではなく、例えば喫茶ルームや喫煙室で「仕事どうだ」と聞くと、案外本音や愚痴がすんなり出てきます。愚痴をこぼせる上司がいれば仕事はスムーズに運ぶと思います。
部下の育成は非常に大切な業務
次世代育成隊(41歳 製造職)
私は現在11人の部下達と日々業務を行っています。部下の育成では時間との勝負です。時間は無限にあるわけではなく、限られていますから、その限られた時間を有効に使い、いかに部下達を育て上げるかということが大変です。
部下の育成では、まず信頼し合える関係を築きます。部下から上司である私に、気楽に世間話をしてきてくれるような関係です。そうでないと部下が私に言いたいことが言えません。部下が言いたいことは、どのような内容であっても部下にとっては大切なことなのです。
また、信頼関係を築くことで部下のモチベーションも上がり、仕事に対する意欲も湧いてきます。そして、必要に応じて部下と一緒になって物事を解決するのがベストです。
我慢の連続です
ハマゾウ(46歳 会社員)
部下の育成で大変なことは我慢だと思います。部下の育成には手間がすごくかかります。自分の仕事をしながら部下の仕事も見なくてはいけません。下手すると勤務時間は部下の指導に費やされ、部下を帰してから自分の仕事をスタートさせるというときもあります。
また、自分でやれば1時間で終わる仕事でも、部下に任せたがために半日くらいかかってしまうことがあります。顧客から急かされているときにそんな状況になると胃がキリキリ痛みますが、その部下がきちんとできるまでじっくり待つしかないです。
ただ、自分もいつまでも一線で仕事ができるわけではないので、いつかは部下が中心になって仕事が回る日がきます。その日が来るのを信じてじっくりと育成をしていきます。
部下の育成方法は十人十色
「褒めて伸びるタイプか叱って伸びるタイプか」など、部下の育成方法というのはその部下の能力や性格によってベストな方法が変わるものです。
まずは部下がどんな人物なのかを見定めて、その上でベストな育成方法を探っていくとよいでしょう。次世代を担う部下たちの成長を上手に促して、さらなる会社の発展につなげていきましょう。